2014年10月02日

【解答編第3話】「狐火流し殺人事件」第10話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

【解答編第3話】「狐火流し殺人事件」第10話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

「金田一少年の事件簿R」第3弾は「狐火流し殺人事件」!!
6年前の想い出の地である「白狐村」に集った旧友たち。
しかし、その裏では強い悪意が蠢いていた。
2ヶ月前の茉莉香に続き、光太郎、凛が殺害されることに。
その犯人は……神小路陸であった。
第10話……陸はその動機を告白する!!


【「狐火流し殺人事件」登場人物一覧】
金田一:主人公。最終エピソードまで犯人にも被害者にもならないでしょう。
美雪:言わずと知れた金田一少年のベストパートナー。最終エピソードまで犯人にも被害者にも(以下略)。

月江茉莉香:金田一のカブスカウト仲間。当時は男勝りな少女であったが……。
桃瀬心平:金田一のカブスカウト仲間。高身長。
霧谷凛:金田一のカブスカウト仲間。茉莉香の義姉妹。
蝉沢忍:金田一のカブスカウト仲間。痩せた。
緋森美咲:金田一のカブスカウト仲間。美女。
鐘本あかり:金田一のカブスカウト仲間。蛇に噛まれた娘。
梨村亮:金田一のカブスカウト仲間。イケメン。
神小路陸:金田一のカブスカウト仲間。靴紐を貸し渋った男。
乾光太郎:金田一のカブスカウト仲間。茶髪。

凛の父:茉莉香の母と再婚した。
茉莉香の母:凛の父と再婚した。
川原刑事:所轄署の刑事、金田一に好意的。

<あらすじ>

・前回はこちら。
【解答編第2話】「狐火流し殺人事件」第9話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

金田一の推理により、茉莉香、光太郎、凛殺害を認めた陸。
その動機を明かし始めた。

6年前、陸の家庭は父が再就職したばかりで経済的に困窮しており母がパートをかけもちしてやっとの状況であった。
陸はそんな頑張る母が大好きだったのだ。

そんな中、どうしても陸はカブスカウトのキャンプに参加したかった為に無理を知りつつも両親に頼み込んだ。
父は反対するが母が応援したこともあり、陸はキャンプに参加を許される。

そして、例の遭難事件が発生しつつも無事に帰宅することが出来た。
陸は興奮しつつ冒険譚を母に語って聞かせた。
そして、疲れ果てたのか寝入ってしまった。

ふと、何やら騒がしさに目を覚ました陸。
寝ぼけつつ騒動のもとである台所へ足を運ぶと……其処では母が倒れ父が慌てふためいていた。
事情を問うべく陸が尋ねるが、父は彼を睨みつけると無視しながら救急車を呼んだ。
しかし、母は息を引き取ってしまった。

周囲からは急病と聞かされた陸。
だが、それ以来、父は人が変わったようになり陸に虐待を始めた。
耐え兼ねた陸は不良になり、家へ帰ることも少なくなった。

そして半年前、父が倒れた。
原因は母を亡くしてから続けていた深酒である。
父は死の床で陸に謝罪する―――すまなかった、と。

あの日、倒れた母は「水筒に……陸……蜂が」と言い残したのだ。
どうやら、陸がキャンプに持参していた水筒の中にスズメバチが入っていたらしい。
これに刺されたためにアナフィラキシーショックを起こし絶命してしまったのだ。

母はこれを陸がやったことと思い彼を庇った。
だからこそ、陸に死因が告げられなかったのだ。
父もその遺志に従ったが、妻を奪った陸を許せず恨み続けた。
だが、死の床で「陸が結末を理解した上で行ったワケではない」と思い直したのだと言う。

ところが、陸にとってこれらの告白は青天の霹靂であった。
何しろ、水筒にスズメバチを入れた覚えなど全くないのだ。
完全な濡れ衣である。
まさか、そんな理由で父から疎まれていたとは……。

驚いた陸は父に無実を伝えようとするが……既に父は事切れた後であった。
陸は愕然としつつ、この許されざる悪戯を仕掛けた人物を憎んだ。
犯人はあのときのメンバーの中に居るに違いない。

そんな中、茉莉香と凛が白狐村に住んでいることを思い出した陸。
リーダー格だった茉莉香ならば何か知っているかも……と事情を聞くべく村を訪れた。

すると、天の配剤か。
偶然にも茉莉香と道で行き会った。

なにしろ6年ぶりである。
2人は積もる話をするべく社へと移動した。
買い物帰りの茉莉香はナイフで皮を剥いたリンゴをその場で陸に振る舞う。
これに咽喉を潤わせつつ、陸はスズメバチの悪戯について問うた。
此の時点で陸に殺意はない。
あくまで真相を聞きたかっただけだ。
だから、スズメバチで母が死んだことは臥せた。

すると、茉莉香が過剰反応を示したのだ。
茉莉香はスズメバチを水筒に入れたのは彼女であることを認めた。
靴紐を貸し渋った陸への天誅だったのだそうだ。
これには凛と光太郎も加わったらしい。
挙句「6年前のことを今更持ち出すなんて……相変わらずイ〜〜〜ンケ〜〜〜ン」と陸を攻撃し始めたのである。

この言葉を聞いた陸は逆上した。
事情を知らない茉莉香にとっては些細な悪戯のつもりだったのだろうが、それにより陸は両親を失ったのだ。
許せる筈がない。
陸は茉莉香に詰め寄ろうとした。
これに茉莉香が抵抗し、手にしたナイフで陸が負傷する。

「大丈夫!?」
此処で茉莉香が陸を気遣った。
これが尚更陸の気に障った。
何故、その気遣いをあのときに見せてくれなかったのか?
お前らがあんなことをしなければそもそも……。

数分後、気付いた時には茉莉香は死亡していた。
こうして、陸の復讐が始まったのである―――11話に続く。

<感想&推理>

「金田一少年の事件簿」が「金田一少年の事件簿R」として帰って来ました。
その第3弾は金田一の過去にも関わる「狐火流し殺人事件」です!!

今回はその第10話(解答編3話)。
今回、明かされたポイントは次の1つ。

・陸の動機

これは茉莉香たちに非がありますね。
幼い為に事の重大性を理解していなかったかと言えば、蜂騒動の様子から「蜂が命の危険に繋がる」と認識していたのは明らか。
にも関わらず、故意にスズメバチを仕掛けた。
水筒を選んだのも開けたらどうなるかある程度理解出来た筈で、明らかに悪意が含まれています。
未必の故意と言い換えても良い。

しかも、靴紐貸し出しを渋られた当事者であるあかりではなく、無関係な茉莉香が何故、勝手に裁く必要があるのか?
さらに、陸は茉莉香たちと異なりあかりにきちんと付添までしています。
むしろ、無責任だったのは茉莉香たちでしょう。
いや、全員では移動できないし、残ったメンバーにもリーダーが必要だったから茉莉香が残留したのも理解出来る。
だが、だからと言って少なくとも茉莉香たちに陸を責める権利は無い。

これを茉莉香たちも理解している。
だからこそ、ああ言った陰湿な方法で攻撃した。
そうでなければ、堂々と批判すれば良い。
つまり、真に「イ〜〜〜ンケ〜〜〜ン」なのは陸では無く、この言葉を発した茉莉香本人であった。

おそらく茉莉香の行動は単にリーダー格と自負する独善的な自己満足にしか過ぎないでしょう。
これに追従したのが光太郎と凛だったとすれば、まさに陸にとっては悲劇としか言いようがない。
3人も居て、誰も止めようとしなかったことになるのですから。
あいつは気に喰わない、だから天誅だ―――では、暴漢と変わりません。
言わば、1対多を目的とするイジメの構図と一緒。
だからこそ、陸は憤った。
これはイジメ被害者の加害者への逆襲だったのです。

そもそも、陸には負い目もあった。
無理を言ったキャンプ参加が引き起こした悲劇です。
陸の中には「自分が参加を強く希望しなければこんなことにはならなかった」との想いも根強いに違いない。
しかも、両親の誤解は最期まで解けなかった。
弁明する機会すら与えられなかった。
だから余計に犯人が許せない。
と言っても殺害は行き過ぎですが、何らかの形で贖罪して欲しいと望むのは自然な成り行きだと言えるでしょう。
だからこそ、衝動的な犯行に繋がったものか。

とはいえ、この騒動の発端を考えれば……実は金田一自身に行き着く気がしないでもない。
好奇心を満たそうとして冒険し遭難しなければ、此の展開はあり得なかったワケだし。
靴紐の流れに導いたのも金田一だしなぁ……。
アレが無ければ……と陸が考えなかっただけ彼は冷静なタイプなのではなかろうか。
そんな陸を追い詰めた茉莉香たちは相当罪深いよ。

まぁ、金田一の場合は茉莉香たちと異なり悪意も全く無いワケなんだけど。
でも裏を返せば、それだけナチュラルに遠因を作ったことに……少し怖いなぁ。

そして、気になるのは心平の挙動。
どうにも何かを知っている様子を見せていた彼。
これまでのところ、他のメンバーが過去の情報について何らかの形で金田一に提供しています。
残った心平も最終話で何か告白しそうな予感。
果たして!?

ちなみに、陸のタコ焼き問題は……永遠の謎になりそうだなぁ。

今回は此処まで。
いよいよ次回(11話)にて「狐火流し殺人事件」も完結。
如何なるラストが待つのか―――注目せよ!!

◆「狐火流し殺人事件」関連過去記事
「狐火流し殺人事件」第1話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「狐火流し殺人事件」第2話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「狐火流し殺人事件」第3話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「狐火流し殺人事件」第4話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「狐火流し殺人事件」第5話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「狐火流し殺人事件」第6話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

【次回は解答編】「狐火流し殺人事件」第7話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

【解答編第1話】「狐火流し殺人事件」第8話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

【解答編第2話】「狐火流し殺人事件」第9話(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

◆シリーズ関連過去記事
・「金田一少年の事件簿R」より「亡霊校舎の殺人」のまとめはこちら。
「亡霊校舎の殺人」(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)まとめ

・「金田一少年の事件簿R」より「雪鬼伝説殺人事件」のまとめはこちら。
「雪鬼伝説殺人事件」(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)まとめ

・「金田一少年の事件簿」より「薔薇十字館殺人事件」のまとめはこちら。
「薔薇十字館殺人事件」(「金田一少年の事件簿」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)まとめ

・「金田一少年の事件簿」より「香港九龍財宝殺人事件」のまとめはこちら。
「香港九龍財宝殺人事件」(「金田一少年の事件簿」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)まとめ

・「金田一少年の事件簿」より「暗黒城殺人事件」のまとめはこちら。
「暗黒城殺人事件」(「金田一少年の事件簿」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)まとめ

・「金田一少年の事件簿」より「人喰い研究所殺人事件」のまとめはこちら。
「人喰い研究所殺人事件」(「金田一少年の事件簿」、講談社刊「週刊少年マガジン」連載)まとめ

・「金田一少年の事件簿」より「ゲームの館殺人事件」のまとめはこちら。
「ゲームの館殺人事件」まとめ(「金田一少年の事件簿」より)

・「金田一少年の事件簿」より「錬金術殺人事件」のまとめはこちら。
「錬金術殺人事件」まとめ(「金田一少年の事件簿」より)

・同じく「高度1万メートルの殺人」のまとめはこちら。
「高度1万メートルの殺人」まとめ(「金田一少年の事件簿」より)

・さとう先生による読み切り「トキメキトキナ消失宣言」のネタバレ批評(レビュー)はこちら。
「別冊少年マガジン」(講談社)より「トキメキトキナ消失宣言」ネタバレ批評(レビュー)

【ドラマ版】
ドラマ版「金田一少年の事件簿 香港九龍財宝殺人事件・アジア北米同日放送〜美雪誘拐!破滅の街の悲劇…死体出現密室トリックの謎はすべて解けた!」(1月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件 マレーシアのジャングルで合宿中の生徒達が次々と消えた…太陽と月が交わる時暴かれる驚愕のトリック!謎はすべて解けた!」(1月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一少年の事件簿N」第1話「銀幕の殺人鬼・2つの密室を行き来する鍵!?犬が重大ヒント 驚愕トリックを完全再現&本格推理にあなたも参加…キャラ爆発!笑って泣けるニューヒーロー誕生」(7月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一少年の事件簿N」第2話「ゲームの館殺人事件 最凶の脱出クイズ!」(7月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一少年の事件簿N」第3話「夏合宿!開かずの間の鬼火怪談(鬼火島殺人事件 前編)」(8月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一少年の事件簿N」第4話「鬼火島解決!大どんでん返し驚愕の真犯人はお前だ!!(鬼火島殺人事件 後編)」(8月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)

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「金田一少年の事件簿N」第7話「真夏に降る雪の足跡トリック…暗闇の犯行唯一のミス(雪影村殺人事件)」(9月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一少年の事件簿N」第8話「最終決戦!十字架密室推理対決(薔薇十字館殺人事件 前編)」(9月13日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一少年の事件簿N」最終話(最終回、第9話)「薔薇十字館解決編 恋の謎も最終解決!(薔薇十字館殺人事件 後編)」(9月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)

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シリーズの1つ「金田一少年の事件簿 錬金術殺人事件(上)(週刊少年マガジンKC)」です!!
金田一少年の事件簿 錬金術殺人事件(上)(週刊少年マガジンKC)





「金田一少年の事件簿 錬金術殺人事件(下)(週刊少年マガジンKC)」です!!
金田一少年の事件簿 錬金術殺人事件(下)(週刊少年マガジンKC)





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◆金田一少年の事件簿シリーズコミックはこちら。


◆金田一少年の事件簿シリーズ映像作品はこちら。
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水曜ミステリー9「鉄道警察官清村公三郎11 房総ローカル列車殺人レール!運転士の夢阻む悲劇……容疑者4人のアリバイを崩せ!!(房総ローカル列車殺人レール 妖刀村正の呪い)」(10月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「鉄道警察官清村公三郎11 房総ローカル列車殺人レール!運転士の夢阻む悲劇……容疑者4人のアリバイを崩せ!!(房総ローカル列車殺人レール 妖刀村正の呪い)」(10月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

鉄道警察隊東京駅分駐所の巡査部長・清村公三郎(小林稔侍)は、ある日の休日、いすみ鉄道で千葉県・大多喜町に向かっていた。 そこで美しい運転士・坂上莉緒(藤谷美紀)に目を奪われる。いすみ鉄道には、一般の社会人でも運転士の訓練を受けられる自社養成乗務員制度があり、莉緒はその訓練生。かつて運転士を夢見た清村の興味津々な様子を見た莉緒は、清村を食事に誘う。莉緒の恋人・井上治(河相我聞)も加わった3人での夕食を終え、宿に向かう清村の耳に男の悲鳴が飛び込んでくる。駆けつけると日本刀が深々と刺さった酒造会社社長・坂上幸一(おかやまはじめ)の遺体を発見。鬼の姿も目撃し追いかけるが、姿は林の闇に紛れてしまう。

翌朝、再び現場に向かった清村は、大多喜署の刑事・寺島義彦(林泰文)から、この地に住んでいた伝説の刀匠・村正の話を聞く。村正の刀は徳川家と数奇な因縁があり“妖刀”と呼ばれるようになった。しかも村正は死後も鬼となって刀を打ったという。その鬼を鎮めるべく作られた祠を、幸一は酒蔵を作るため1年前に壊した。そして幸一に刺さっていた刀が妖刀…。まさか村正が蘇ったのではと考える寺島の横で、伝説を利用した何者かの犯行と推理する清村。その冷静ぶりに、寺島から協力して欲しいと懇願された清村は休暇を延長する。早速、幸一の妻・佳恵(秋本奈緒美)、弟・健二(羽場裕一)、顧問弁護士・田中紀明(相島一之)に話を聞くが、皆心当たりがないという。
一方、幸一の妹が莉緒であることがわかり清村は動揺する。

ある日、清村たちは観光センターの今泉恵子(寺田千穂)に呼び止められ新たな情報を得る。1カ月前、幸一と健二が金絡みで揉めているのを目撃したというのだ。東京に戻った清村は、寺島と共に健二のオフィスへ。経営が厳しく借金を頼み断られたのは事実だが、事件当夜は仕事をしていたという。しかし隣の部屋に日本刀が…。更に清村は、東京にいた佳恵にも会いに行き、彼女の腕に傷を見つける。幸一の暴力によるものだった。また、田中は、莉緒が幸一と揉めていたことを明かす。ひとり母親が違う莉緒は、亡くなった母を父と同じ墓に入れて欲しいとお願いするも受け入れてもらえず、屈辱的な暴言も吐いた幸一らを恨んでいた。

金で揉めていた健二、DVを受けていた佳恵、母親のことでいざこざがあった莉緒…幸一に恨みを持つ3人が容疑者として浮上するが、いずれも決め手に欠けていた。
しかしある夜、今度は東京に鬼が姿を現し日本刀で男を突き刺す。刺されたのはなんと健二だった…!
(水曜ミステリー9公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)。

清村公三郎は鉄道警察隊東京駅分駐所の職員である。
同時にかなりの鉄道マニアであり、知られてはいないが鋭い推理で幾つもの事件を解決して来た実績も持つ。

そんな清村は鉄道マニアの血が騒ぎ、休日は家族もそっちのけであちこちの鉄道を巡っている。
今日もいすみ鉄道に乗車し千葉県大多喜町へ。
其処で女性運転士・坂上莉緒と出会う。
莉緒は自社養成乗務員制度の適用で運転士となった訓練生であった。

運転士に興味津々の清村に好感を抱いた莉緒。
清村と莉緒は彼女の恋人・井上治を交えて食事を共にするほど親しくなった。

ところが、その夜―――莉緒の異母兄で坂上酒造の社長である坂上幸一が何者かに惨殺されてしまう。
どうやら、般若面の人物に妖刀・村正で斬り付けられたようだ。

坂上家には莉緒、幸一の他に次の面々が居た。
幸一の妻・佳恵、幸一の弟・健二、顧問弁護士・田中紀明である。
憔悴する莉緒を見かねた清村は乗りかかった船とばかりに地元の刑事・寺島と捜査に乗り出す。

すると、観光センターの今村恵子から有力な情報が寄せられた。
なんでも、幸一と健二が財産を巡り争っていたらしいのだ。
健二には幸一殺害の動機が存在したワケだが……。

ところが、佳恵も幸一から虐待を受けており恨んでいた。
しかも、莉緒自身も幸一どころか健二とまでも衝突を繰り返していたのである。

そんな中、今度は健二が般若面に村正で殺害されてしまう。
続いて佳恵までもが般若面に村正で殺害されることに……。
まさに般若面による連続殺人である。

坂上家に連なる3人が殺害されたことで容疑は唯一の相続人である莉緒に向かう。
だが、莉緒にはいずれの場合にもアリバイがあった。

矢先、当の莉緒が般若面に襲撃を受ける。
この場に行き合わせた清村は般若面と対決しこれを捕まえることに成功する。
般若面の正体は顧問弁護士の田中であった。
だが、田中はこれまでの犯行については否定する。
どうやら、本物の般若面に便乗し莉緒を殺害することで坂上家の財産を奪うつもりだったようだ。

田中を問い詰めた清村は、彼が今村恵子を疑っていることを知る。
どうも、恵子が坂上家について調べていたらしい。

恵子と坂上家の繋がりを調べた清村。
すると、25年前に発生した坂上酒造の失火事件が浮かび上がる。

当時、坂上酒造は経営危機にあり、この失火により保険金で持ち直していた。
そして、この失火の原因とされたのが恵子の父・今泉だったのである。

もしかして、この失火は保険金詐欺だったのではないか。
其処で犯人とされた今泉の復讐に恵子が動いたのでは……そう考えた清村は恵子のアリバイを調べる。
しかし、健二の際にこそアリバイが無かったが、幸一と佳恵殺害時には確たるアリバイが存在することが判明する。

だが、清村には25年前の失火事件が関わっているように思われてならなかった。
其処に、莉緒が3人を殺害したと出頭して来る。
莉緒によれば人を雇って殺害したのだと言う。

これを聞いた清村は莉緒が誰かを庇っていると察する。
だとすれば、恋人の井上しか居ない。

井上の過去を調べた清村は彼の母・黒田晴美が25年前の失火で死亡していたことを突き止める。
井上にも幸一たちを殺害する動機があったのだ。
だが、井上には幸一殺害時にこそアリバイがないが、健二と佳恵殺害時にはアリバイが存在していた。
特に佳恵殺害時には終電車に乗り遅れ犯行現場から遠く離れた地にあったのである。

しかし、これを聞いた清村は真相を突き止めた。

莉緒、井上、恵子を集めた清村は今回の連続殺人が「1人による連続殺人」ではなく「2人による連続殺人」だったと指摘する。
井上と恵子による共謀だったのだ。

幸一殺害は井上による犯行。
健二殺害は恵子による犯行。
佳恵殺害は井上による犯行だったのである。
すなわち、互いにアリバイの無い時こそが実行犯となっていたのである。
しかし、佳恵殺害時には井上にはアリバイがあった筈だが……。

このアリバイも崩れていた。
終電後、井上は軌道バイク(軌道自転車)を用いて近くの別の鉄道まで移動し現場へ向かっていたのだ。

清村に犯行を暴かれた井上は動機を明かす。
25年前、経営に行き詰っていた幸一、健二、佳恵は保険金詐欺を目論み、今泉に命じて放火させた。
ところが、この現場を黒田晴美に目撃されたのだ。
其処で幸一と健二が晴美を気絶させると、放火に巻き込み口封じしたのである。

今泉はこれを後悔しており、その手記を恵子に預けていた。
これを目にした恵子は真相を知り、井上に報せた。
其処で井上たちが復讐に乗り出したのである。

莉緒は井上の犯行に気付き、これを庇おうとしていたのであった。

井上は莉緒を巻き込み運転士の夢を危険に曝したことを詫び、逮捕される。
これに莉緒は自身の夢を成し遂げることを誓うのであった―――エンド。

<感想>

「鉄道警察官 清村公三郎」シリーズ第11弾。
前作は2013年6月12日に放送されており、実に1年3ヶ月ぶりのシリーズ新作となりました。
前作などについては過去記事がありますね。
興味のある方はリンクよりどうぞ!!

ちなみに、この「鉄道警察官 清村公三郎」シリーズは、島田一男先生「鉄道警察隊」シリーズ(徳間書店刊)が原作。
原作に興味のある方は、本記事下部にあるアマゾンさんのリンクよりどうぞ!!

では、ドラマの感想をば。

最初に気になったのが、これは清村が言うような「不連続殺人」ではないのではないか―――ということ。
確かに実行犯こそ2人だけど「共謀による連続殺人」に過ぎず、単に互いのアリバイを補完しただけで「不連続殺人」の定義にはあたらない気がするのだが。
そもそも「不連続殺人」ってそんな意味だったっけ……。
なので、ネタバレあらすじではその部分は改変してます。

ちなみに「不連続殺人」と言えば坂口安吾著『不連続殺人事件』が思い浮かびます。
読者への挑戦状も付された作品です、あなたは犯人を突き止められるか!?
『不連続殺人事件』については本記事下部にアマゾンさんへのリンクを用意しています。
興味のある方は是非!!
でもって、『不連続殺人事件』についてはこんな過去記事もありました。

映画版『不連続殺人事件』が2012年3月14日にDVD化決定!!

おっと、脱線した。
再びドラマの感想に戻って。

そう言えば、久しぶりに羽場裕一さんが悪役で被害者役だった気がする。
驚いた。

でもって、清村強い、強い。
偽般若こと田中相手に大奮闘でしたね。

そして、般若面の井上は白獅子姿を髣髴とさせたり。
ちなみに、井上のアリバイトリックが軌道バイクである必然性はあったのか……。
普通のバイクで道路を行くのでは駄目だったのだろうか?
あまりに特徴的過ぎて露骨に証拠が残ったようだし。

前回(第10弾)が人情物として完成度が高かっただけに今回はちょっと残念。
本作のポテンシャルはこんなものではない筈。
シリーズ次回に期待!!

◆関連過去記事
水曜ミステリー9「鉄道警察官清村公三郎10 SL・大井川殺人ルート 天才外科医が堕ちた運命の罠!遠い汽笛が暴く殺人連鎖の謎と時刻表トリック(“白い巨塔”に挑む鉄警の意地!天才外科医が堕ちた罠!!山間に響く涙の汽笛)」(6月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「鉄道警察官清村公三郎9 九州殺人紀行 特急ゆふいんの森と新幹線さくらを結ぶ完全犯罪トリック!謎の忍錠と女刑事が堕ちた罠!!(特急ゆふいんの森号九州大分殺人ルート犯人射殺事件の裏に隠された闇!蝶だけが知る鉄壁のアリバイ)」(11月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「鉄道警察官清村公三郎8 鎌倉・江ノ電幻の600系追憶の殺人事件花嫁人形が謎解く女の哀しい夢!時刻表の罠を暴く執念の捜査!!(鎌倉・江の島・幻の600系追憶の殺人事件 花嫁人形が暴く記憶を失くした女の謎!時刻表に秘めた黒い罠!!)(鎌倉・江の島〜追憶の殺人〜記憶を失くした女の謎!江ノ電だけが知っている湘南の海に消えた純愛!!)」(2月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「復活シリーズ第一弾!!鉄道警察官清村公三郎 秩父長瀞殺人レールSLの汽笛は弔いの響き…第二の人生の夢が消えた!幻の列車が暴く悲しみの不在証明(秩父・長瀞連続殺人SLを愛す定年の重役殺しを鉄警が暴く!)」(10月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜シアター9「鉄道警察・清村公三郎最後の捜査線『北海道SLニセコ殺意の汽笛エリート官僚の堕ちた罠!小樽〜東京1100キロ幻列車の正体を暴け』(鉄道警察官 清村公三郎6 SLニセコ号 殺意の汽笛)」(3月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

<キャスト>

清村公三郎:小林稔侍
坂上莉緒:藤谷美紀
寺島義彦:林泰文
井上治:河相我聞
坂上健二:羽場裕一
坂上佳恵:秋本奈緒美
清村市子:丘みつ子
橋本玲子:根岸季衣
田中紀明:相島一之
坂上幸一:おかやまはじめ
今泉恵子:寺田千穂
山手徹:斉藤清六
山崎萌:小林千晴
加藤:熊面鯉 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)


シリーズ原作「鉄道警察隊 走る捜査線 (徳間文庫)」です!!
鉄道警察隊 走る捜査線 (徳間文庫)





「不連続殺人」と言えば本作「不連続殺人事件 (角川文庫)」です!!
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鉄道ミステリーといえば、西村京太郎先生。
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