2014年10月17日

『月は囁く』第11話「月と悲劇の怪人」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル11月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第11話「月と悲劇の怪人」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル11月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
藤村月:陽一の父が再婚したことで、陽一の義妹となった。犯罪心理学と観相学を駆使する天才少女。
藤村陽一:警視庁捜査一課勤務、35歳。
陽一の父:犯罪心理学者。多くの事件解決に寄与した。

井川勤:月が大学で講師を勤める講座の受講生。9話「月とブログの女」で登場。
黄田秀花:演劇に挑戦する女子大生。


月が講師を勤める大学では、学生による「オペラ座の怪人」の公演が近付いていた。
この演出を担当したのが月の講座の熱心な受講生・井川(9話「月とブログの女」に登場)ということで、月もこれに密かに協力することに。

演者を眺め見た月は、ヒロイン役の黄田秀花が周囲から孤立していることに気付く。
井川によれば秀花の普段の行動が反発を招いているらしい。

秀花は特に愛想が悪いワケではないが、どちらかといえばおっとりしたタイプ。
ところが、舞台設置の最中に秀花が信じられないようなミスをした。
なんと、舞台装置を吊り上げる為に轢いていた紐を途中で手放してしまったのである。
当然、舞台装置は落下し危く怪我人が出る惨事になりかねない事態だったのだ。
ところが、秀花は紐を手放すなり慌てて楽屋裏に逃げてしまったのだと言う。
他にも、楽屋裏で怪しい薬物を注射していたなどと誹謗中傷の的になっていた。
これにより、他の舞台参加者からは「やる気がないなら辞めればいいのに」と揶揄されていたのだ。

月は秀花の顔を見るなり、何かに気付くが……。

公演当日、月は陽一を伴い舞台の観覧に来ていた。
舞台上では感情の対立こそあれ、秀花の優れた演技で観客を魅了していた。

ところが、もうすぐラストというところで秀花が急に動かなくなってしまう。

「マズイ!!」
これを見るや月は慌てて怪人・ファントムの衣装を身に纏い秀花のもとへ。
周囲が見守る中で口づけを交わす。
さらに、秀花を抱き上げ咄嗟のアドリブで舞台に幕を下ろすのであった。

思わぬ波乱こそあったものの、舞台は好評のうちに終了。

ほっと一息つく面々の前で月は真相を明かす。
実は秀花は1型糖尿病の患者だったのだ。
つまり、インスリンが欠かせない。
そう、噂となった楽屋裏の注射はインスリン注射であった。

そして、1型糖尿病患者の特徴として急な意識喪失が挙げられる。
秀花が舞台装置の吊り上げに失敗したのもこの為であった。
インスリン注射の必要があった為に慌ててその場を離れた姿が逃げたように見えたのである。

秀花は愛する祖母に舞台上にて自身の元気な姿を見せるべく、降板させられないようにこれを秘密にしていたらしい。

だが、月は秀花の顔を見るなりこの事実に気付き、何か事情があるに違いないと察した上でフォローすることを決意していたのである。
其処で公演の様子を窺っていたのだ。
この月の配慮が奏功することに。

先程、秀花が動かなくなったのは1型糖尿病の症状が出た為であった。
月は秀花を救うべく舞台上に駆け上がると口づけを交わした。
口づけはジュースを口移しに飲ませる為の手段だったのである。

こうして全てを知った演者たちは秀花と和解。
翌日以降の公演を無事に乗り切ったのだそうである―――11話に続く。

<感想>

「幇間探偵しゃろく」でお馴染みの青木朋先生が宮崎克先生とタッグを組み、新たなミステリコミックの連載を「ビッグコミックオリジナル 増刊号」で開始されました。
タイトルは「月は囁く」。
捜査官・藤村陽一と、顔相学を修めたその義妹・藤村月が犯罪事件を解決する物語。

まさに陽一(太陽)と月(月)の物語です。

では、11話を読んだ感想を。
う〜〜〜ん、10話が良かっただけに今回は微妙かなぁ。
どちらかと言うと、演劇を舞台にしたものではないがほぼ同じような主旨の話を見たことがあるし(それでなくとも、今回のエピソードは医者が主人公の漫画とかドラマで割と多いと思う)。
出来れば月には9話や10話のような活躍こそが似合うと思うのだけど、読者の我儘なのだろうか。
なので、今回は個人的に合わなかったかな。

とはいえ、人によっては「良かった」と思われる方も居ると思う。
是非、これを体験する為にも本作それ自体を読んで欲しい。

ちなみに、ルナは父親に対しトラウマがある様子。
その天才的な力により、父に虐待されていたのかな。
結局、父と母はこれが原因で離婚。
そして、母が陽一の父と再婚といった流れか。

ルナとしては離婚の原因が自身にあると考えて、以来、人と距離を置くようになったか。
ところが、無邪気な陽一に癒されていく展開か。
イイですね。
最終的にはルナがトラウマとなった父と和解する(乗り越える)展開もありそうかな。

興味を抱かれた方は是非、『ビッグコミックオリジナル 増刊号』にて本作を確認されたし。

◆関連過去記事
『月は囁く』第1話「月は囁き、花は語る」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第2話「月とドッペルゲンガー」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル5月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

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『月は囁く』第10話「月と髪切り魔」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル9月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

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「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第90話「プラクルアン」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年11月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第90話「プラクルアン」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年11月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
森羅:主人公。C.M.B.の指輪の主。多大な影響力を持つ。
七瀬立樹:森羅のパートナー。身体を動かすことが得意。

シルバー:石油メジャーの当主。世界的な資産家。
シダ:タイ人の少年。明るく朗らかな働き者であったが……。

<90話あらすじ>

森羅と立樹は、先頃に死去した石油メジャーの当主・シルバーの遺族に呼び出された。
彼らによれば、シルバーの遺品の中にあまり価値の分からない品があるらしい。

生前のシルバーは「無駄なモノは容赦なく切り捨てる」思考法の持ち主。
だとすれば、価値がないとは考えにくい。
きっと、分からないだけで価値があるに違いない。
其処で「CMBの指輪」の持ち主である森羅に鑑定を依頼したのだ。

これを一目見た森羅は「プラクルアンだ」と指摘する。
「プラクルアン」はタイの有名なお守りのこと、一般に市販もされている。
森羅によれば、シルバーが所持していたそれは特に珍しい物でもなくごく一般的な品らしい。

興味を失った様子の遺族の中で、1人だけシルバーの孫娘が森羅に新たな依頼を申し込む。
生前のシルバーは容赦のない性格、お守りとは言えプラクルアンを大切にしていた理由を知りたいと言うのだ。
何でも、シルバーは死の数年前から急に「人助けをしなさい。それは鏡のようなものなのだ」と周囲に語っていたらしい。
この変化にも関わっているのではないかと考えているようだが。

こうして、森羅たちはタイへと向かう。
プラクルアンを手に聞き込みを行ったところ、シダなる少年が浮上。
お金は無いが、明るく朗らかな働き者だそうである。
だが、数年前から自堕落な生活を始めており最近では姿をめっきり見なくなったらしい。

この数年前に注目した森羅。
調べたところ、シルバーもその時期にタイに渡航しており、どうやら事故に遭ったところをシダに命を救われていたことを突き止める。
シルバーは命の恩人であるシダに大金を支払った。
その代わりにシダがシルバーに渡したのがプラクルアンだったようだ。

これを聞いた孫娘はシルバーがシダに感謝し親愛の情から大切に保管していたと解釈。
思わぬ祖父の姿に満足しつつ彼の地を去る。

だが、残った森羅は真相を知るであろう人物のもとへ。
その人物はシルバーの顧問弁護士であった。

森羅はシルバーがシダを殺したと指摘する。
数年前、すべてを所持していたシルバーは飽きていた。
そんな中、事故が発生しシダに命を救われる。
これに生きている実感を得たシルバーはシダに嫉妬する。

シダは若く健康的だ。
シルバー死後も生き続けるだろう。
これがシルバーには堪らなく許せなかった。
其処で自身が生きているうちはシダを生かしておき、死後に後を追わせる方法を思いつく。

シルバーはシダの勤労意欲を奪うべく毎月、大金を届けた。
これにシダは自堕落な生活に陥って行く。
その依存度は年月を重ねるごとに増して行った。

そして、シルバーが死亡。
死の直前、シルバーは弁護士に命じてシダへの送金をストップした。

送金を止められたシダだが、事情が呑み込めずただじっと送金を待った。
そのうちに自堕落な生活が原因で体調を崩し動けなくなってしまう。
しかし、待てど暮らせど大金は届かない。
やがて絶望したシダは命を絶ってしまったのである。

森羅はシルバーの行動が恩を仇で返す行為であると弾劾。
シルバーの身勝手に命を落としたシダの冥福を祈るべく、あのプラクルアンを墓前に供えるのであった。
もう2度と誘惑に踊らされないように、と―――エンド。

<感想>

「月刊少年マガジン」2014年11月号掲載「90話 プラクルアン」です。

本作を読んで、山田耕筰先生「待ちぼうけ」を思い出しました。
あれも1度の成功に味を占めた猟師が、来るかどうかも分からない獲物をずっと待ち続ける物語でしたね。
人間は1度でも成功を体験すると、ついついそれに甘えちゃうんだろうなぁ。
此の点、シダの場合はあくまで大金だったんだから、貯金するなりそれを元手に起業すれば良かったのに。
そしたら、シルバーの罠に嵌ることは無かったかもしれない。
それとも、それすらシルバーは妨害したのだろうか。

だとすると、シルバーと関わったこと自体がシダにとっては「災い」だったワケで。
でもって、その時点でのシダは「プラクルアン」を所持していたワケで。
となると、お守りとしての効果が期待出来るかどうかとなると……。
にも関わらずソレを返却しても……この辺りがどうにもモヤモヤするなぁ。

正直、シルバーの恐ろしさが主題だったんだろうけど、何故かシダばかりが気にかかりました。

難しいですね……。
この複雑な心境を是非とも『月刊少年マガジン』本誌をご覧頂き体験して欲しい。
もちろん、次回にも期待です!!

◆関連過去記事
【「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」シリーズ】
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「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第81話「ゴンドラ」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年1月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第82話「ライオンランド(前篇)」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年2月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第83話「ライオンランド(後篇)」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年3月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第84話「兆し sign」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年4月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第85話「アステカのナイフ」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年5月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第86話「爆破予告」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2014年7月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

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「Q.E.D.証明終了 代理人」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン+(プラス) 2014年8号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

2013年6月発売「C.M.B.森羅博物館の事件目録(23) (月刊マガジンKC)」です!!
C.M.B.森羅博物館の事件目録(23) (月刊マガジンKC)





2013年6月発売「Q.E.D.証明終了(45) (月刊マガジンKC)」です!!
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