水曜ミステリー9「冬の特選企画 罪火 花火が消した少女の叫び! 大胆不敵…悪を公言する男VS復讐に燃える母!日記が示す逆転の真相は」(12月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!
<あらすじ>
町村理絵(名取裕子)は、中学校の校長を務める傍ら、犯罪被害者を支援するボランティア活動をしている。理絵の元教え子で今は教師仲間の原口ゆかり(黒川芽以)の父親は、1年前に若者の無謀運転に巻き込まれ亡くなった。しかし被害者と加害者が対話し解決の糸口を探す修復的司法のひとつ、VOM(Victim Offender Mediation)を行ったことで、ゆかりは少しずつ加害者を許す心を持つようになる。
理絵は、同じく元教え子の若宮忍(駿河太郎)のことも気にかけていた。理絵の娘・花歩(美山加恋)、息子の智人(相馬眞太)とも親しくしている若宮だが、20年前の中学生の時に人を殺めた過去があり、少年院を出たあとの担任教師が理絵だった。若宮も被害者家族とVOMを行うことを望んでいたが、いまだ被害者家族の承諾が得られないでいた。
ある日、若宮が帰宅すると家の前で花歩が待っていた。若宮は一緒に蛍を見に行こうと誘う。蛍を見た花歩は若宮にある告白をして驚かせる。後日、勤務先でトラブルを起こしイラ立っていた若宮は、花火大会で若い男と楽しげに話す花歩を目撃。若宮は花歩を人気のない神社に連れて行き、裏切ったのかと問い詰める。その場を立ち去ろうとする花歩を、若宮は手にしていたドライバーで切りつけてしまう…。
警察で事件について聞いた理絵は、殺害された花歩が乱暴されていたことを知る。家では花歩が残した『被害者と加害者がわかりあえる日』と題した読書感想文を読み、泣き崩れる理絵。その感想文は、かつて通り魔殺人で我が子を失った折橋完(大杉漣)の著書『二人のために』について書いたものだった。花歩は「被害者と加害者がわかり合える日は、いつか必ず訪れる、そう信じている」と書いていた。しかし理絵は当事者となった今、犯人を絶対に許せないと思うのだった。
理絵がいない日を狙い、町村家に忍び込んだ若宮は花歩の日記を発見する。「私の中にあるのは若宮さんへの思いだけ」などと書かれた日記を見た若宮は、誤解していたことを知り激しく後悔し、そのまま日記を持ち去る。
そんな中、花歩殺害の犯人として、花歩の高校の担任教師・佐久間良二(清水優)が逮捕される。事件当日、花歩と一緒にいた若い男については「赤い服の男」と「黒い服の男」という二通りの目撃証言があったが、遺体に残された体液が佐久間のものと一致したのだ。
後日、理絵は弁護士の八木沼(山崎一)から、佐久間が殺害について否認していると聞く。また若宮のVOMの件も請け負う八木沼は、花歩からもう一度、若宮の被害者家族に説得して欲しいと懇願されていたことを告げる。「花歩さんは若宮に特別な愛情があったのでは?」と指摘された理絵は、若宮と花歩の間に何かがあったと疑い始める…。
(テレビ東京公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……町村理絵は中学校の校長である。
その傍ら、理絵は犯罪被害者支援のボランティア活動にも参加している。
理絵にはある信念があった。
それは「犯罪被害者と犯罪加害者は分かり合える」とのものだ。
真の反省があれば理解し合えると考えていたのだ。
理絵の娘・花歩と息子・智人もそんな理絵を応援している。
そして、理絵は実際に信念を行動に移していた。
例えば、理絵は元教え子で今は教師になった原口ゆかりを救っている。
ゆかりは1年前に父親を若者の無謀運転により殺されていた。
だが、理絵から教わった被害者と加害者が直接対話することで傷心を癒す解決の糸口を探すVOM法により、少しずつ心を落ち着かせることが出来たのだ。
他にも、これまた元教え子の若宮忍。
若宮は20年前の中学生時代に中村を殺害しており、その罪の意識に苦しんでいた。
それを救ったのが理絵だったのだ。
若宮と理絵は家族ぐるみの交際をしており、花歩や智人も若宮を慕っている。
数年前に若宮が寝たきりの母を火事で失った際も、理絵たちが支えたのである。
今では、若宮にも笑顔が浮かぶほどであった。
理絵にとって、すべては順調に思えたのだが……。
ある晩の事だ。
帰宅した若宮を花歩が「蛍を見よう」と外へと連れ出した。
その日、花歩は若宮にある告白を行う。
数日後、若宮は苛立っていた。
あちこちでトラブルを引き起こした若宮は苛立ちを落ち着けるべく花火大会へと足を向ける。
すると、花歩が見知らぬ若い男と笑って会話していた。
これを目撃した若宮は逆上。
「裏切ったのか!?」と叫ぶや、花歩を人気のない神社に連れて行く。
無言の花歩に対し、若宮は手にしたマイナスドライバーを振り下ろす。
それは狙い違わず花歩の首を直撃。
花歩の首から多量の血が噴き出した。
花歩の遺体が発見され、事件が明らかになった。
理絵は花歩の遺体に辱められた形跡があったと知り、犯人への憎悪を覚える。
それは、理絵自身の信念に反するものであった。
だが、理絵自身にはそれを止めようが無かった。
理絵は花歩の遺品に目を通していた。
其処には理絵自身の信念である『被害者と加害者がわかりあえる日』と題した文章が残されていた。
どうやら、かつて通り魔殺人で我が子を失った折橋完の著書『二人のために』を読んで書いたもののようだ。
花歩は「被害者と加害者がわかり合える日はいつか必ず訪れる、そう信じている」と記していた。
これを目にした理絵はなおさら犯人が許せなくなった。
そんな中、理絵は容疑者が「赤い服の男」と「黒い服の男」の2人居ることを知る。
果たしてどちらが犯人なのか!?
数日後、若宮が理絵の自宅に忍び込み、花歩の遺品から日記帳を見つけ出した。
自分のことについて書かれているのではないかと危惧したのだ。
ところが、中身を読むなり若宮は花歩を殺害したことを激しく後悔することに。
其処には「私の中にあるのは若宮さんへの思いだけ」などと残されていたのだ。
若宮は日記を持ち去ることに。
矢先、花歩殺害の容疑者が逮捕された。
花歩の高校の担任教師・佐久間良二である。
佐久間こそが「黒い服の男」であった。
しかも、花歩の遺体に残された体液と佐久間のDNAが合致したのだ。
だが、佐久間は悪戯は認めたものの、殺人については否定していた。
さらに、理絵は弁護士の八木沼から花歩が熱心に若宮の為に動いていたことを知らされる。
これに、理絵は「もしかして、花歩と若宮の間には知らない関係があったのでは……」と疑い始めた。
一方、若宮はゆかりと同棲を開始していた。
ゆかりは若宮の過去をすべて知った上で愛していると告げる。
これに若宮は苦しげな表情を浮かべることに。
数日後、理絵は『二人のために』の著者・折橋に呼び出された。
なんでも、花歩から手紙が届いていたらしい。
其処には「被害者と加害者は分かり合えない、きっと罪火は消えない」と先の物に比べて落ち込んだ様子の内容が記されていた。
花歩の心境の変化は何を意味するのか!?
若宮に疑惑の目を向け始めた理絵。
理絵は花歩の日記帳が盗み出されたことに気付いていた。
もしも、若宮が犯人ならば日記帳を所持している筈だ。
理絵はゆかりに協力を依頼。
ゆかりは半信半疑ながらも協力することに。
すると、あっさり日記帳が見つかってしまう。
その中には「花歩が若宮のことしか考えられない」こと。
「蛍見物の日に、若宮に愛を告白した」と記されていた。
これを目にした理絵は若宮の犯行を確信。
「赤い服の男」は若宮だったのだ。
一方、ゆかりはショックを受ける。
だが、理絵はさらに追及を行う。
今度は現場から消えた凶器を探すように依頼したのだ。
捜査の結果、凶器はマイナスドライバーであると判明していた。
流石に無いだろう……と思っていたゆかりだが、そのマイナスドライバーでさえもあっさりと見つかってしまった。
その頃、理絵は入手した日記帳にわずかながら改竄の跡が残されていることに気付いた。
改竄部分を復元した理絵は「そんな……」と洩らす。
それは「罪火」に基づく衝撃の事実であった。
翌日、凶器のマイナスドライバーが発見されたことで若宮は逮捕される。
其処に現れた理絵は若宮に真相を明かすよう迫る。
改竄された日記帳を手に、改竄前の内容を述べる理絵。
それにより、日記の内容は180度意味が異なるものとなった。
改竄後:「蛍見物の日に、若宮に愛を告白した」
改竄前:「蛍見物の日に、若宮に罪を告白した」
改竄した点は「罪」を「愛」に変えたこと。
ただ、それだけで意味がまるきり変わってしまった。
改竄後は「花歩が若宮に想いを寄せていた」かに見えた内容。
実際は「花歩が若宮に贖罪の念を抱いていた」ことが分かったのだ。
では、花歩は何の罪で若宮に贖罪の念を抱いていたのか。
それは花歩から折橋への手紙に残されていた。
「きっと罪火は消えない」の一文だ。
本来は「罪火」ではなく「罪過」とすべきところであった。
だが、花歩は自身の罪のインパクトから書き誤った。
「若宮」と「火」と言えば……そう、若宮の母が焼死した事件だ。
理絵は断定する。
失火の原因が花歩にあったのだ、と。
花歩は寝たきりの若宮の母の世話を密かに買って出て誤って焼死させてしまったのだ。
長く罪の意識に悩んだ花歩だが、『二人のために』を読んで罪の告白を決意した。
相反する花歩の手紙はその揺れ動く心を反映したものだったのだ。
そして、蛍見物の日に「愛」ではなく「罪」を告白した。
ショックを受けた若宮だが、花歩の様子を見て出頭するとの彼女の言葉を信じた。
ところが、数日経過しても花歩に出頭の素振りは無い。
苛立っていたところ、花火大会の日に花歩が佐久間と笑っているところを目撃。
どうしても許せなくなり殺害してしまったのである。
だが、花歩の日記を読んだ若宮は花歩が花火大会の後に自首するつもりであったことを知った。
すべては誤解だったのだ。
自身が被害者遺族であり加害者の立場にもなった若宮はさらなる罪の意識に苛まれた。
己の罪に戦慄したのだ。
耐え切れなくなった若宮は「悪人」として贖罪を望み始めた。
其処で日記を改竄し事実を隠蔽した上で、わざとゆかりに発見させた。
さらに、凶器のマイナスドライバーもわざと目立つ場所に隠したのであった。
すべてが明らかになった……その瞬間、若宮に飛び込んで行く影があった。
その正体は―――智人だ。
智人の手にはナイフが握られていた。
若宮の腹部から抜かれたソレは血に濡れていた。
智人は花歩の仇を討とうとしたのである。
続く復讐の連鎖に頭を抱える理絵。
すると、若宮が叫んだ。
「これは自殺だ!!」と。
智人を庇うつもりのようだ。
ゆかりはそんな若宮に取りすがって泣く。
結局、若宮は病院に運ばれ一命を取り留めた。
智人は罪を認め逮捕された。
理絵は改めて犯罪被害者と犯罪加害者の関係修復の難しさを思い知った。
だが、その上で信念を貫くことを選ぶ。
まず、理絵は若宮に代わり中村の遺族のもとへ足を運ぶ―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は大門剛明先生『罪火』(角川書店刊)。
あらすじは次の通り。
<あらすじ>
元派遣社員の男はなぜ、恩師の娘を殺めてしまったのか。人間の大罪と葛藤、そして戦慄の結末!社会派推理の超新星がその才能を遺憾なく発揮した空前の問題作!!
花火大会の夜、少女・花歩を殺めた男、若宮。被害者の花歩は母・理絵とともに、被害者が加害者と向き合う修復的司法に携わり、犯罪被害者支援に積極的にかかわっていた。驚愕のラスト、社会派ミステリ。
(角川書店公式HPより)
著者である大門剛明先生原作のドラマと言えば「水曜シアター9」時代の『雪冤』、「水曜ミステリー9」の『レアケース』などがあります。
いずれも過去記事有りますね。
特に『雪冤』については当ブログもまだまだ初々しい頃で、管理人も振り返ると感慨深いです。
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水曜シアター9 第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞 ダブル受賞作品 雪冤「あなたの息子は無実です〜死刑確定した息子の父に突然の告白電話 再審奔走する父の涙(ドラマスペシャル〜死刑囚の息子は無実だ冤罪を訴える父に届く密告電話!沈黙の15年に秘められた衝撃の真実!)」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)・
「雪冤」(大門剛明著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)・
水曜ミステリー9「レアケース 生活保護課の殺人事件簿 不正受給は許さない格差社会の闇!消えた凶器と4人の容疑者!!衝撃の逆転真相は!?」(3月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)では、ドラマの感想を。
ラスト、日記のたった1文字が変わることで見事に事実が反転する様は良かったですね。
そして、怒涛の終幕から智人の復讐劇。
報復の連鎖は終わらないのか―――と思いきや、理絵がそれを断つべく立ち上がるところも良かった。
かなり複雑なテーマながらも一応の結末に至っている点も特筆すべきでしょう。
全体的にかなりの完成度でした。
それにしても、若宮は犯罪被害者と加害者と両方の立場を経験したからこそ、より深く罪の意味を知ったのかもしれないなぁ。
ただ、如何せんすべてが遅過ぎた。
それと、贖罪を望むならば潔く出頭すべきで佐久間に罪を着せる必要は全くない気がするが、これには触れない方が良いのだろう。
そして、そんな若宮を理解する理絵もまた凄い。
おそらく、犯罪被害者の遺族であり、犯罪加害者の家族にもなったからだろうか。
とはいえ、あくまでも「理屈」と「情」は別物だからなぁ。
これを並立させたのも理絵だからなのかもしれない。
ただ、その境地に至るまでに花歩が過失致死後に殺害され、智人が殺人未遂の現行犯で逮捕されなければならなかったのかと思うと……若宮の業、恐るべし。
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若宮忍:駿河太郎
原口ゆかり:黒川芽以
折橋完:大杉漣
八木沼忠志:山崎一
警察署長:不破万作
森岡雅博:斎藤歩
中村富雄:伊藤洋三郎
佐久間良二:清水優
町村花歩:美山加恋
町村智人:相馬眞太
岸本陽介:森岡龍
水元忠:日向丈 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
「雪冤(ディオニス死すべし改題)」です!!
雪冤同じく「確信犯」です!!
確信犯