水曜ミステリー9「検事・沢木正夫2 公訴取り消し 早すぎた逮捕 二転三転する容疑者の証言…有罪を阻む3人の目撃者!追い詰められた検察の決断!」(12月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!
<あらすじ>
高級住宅街の一軒家で、主人の久能十一郎(森里一大)が殺害される。一報を聞き駆けつけた東京地検検事の沢木正夫(寺脇康文)は、争った形跡のある部屋で一本の毛髪を発見する。
ローン会社社長の十一郎はナイフで数か所刺され失血死。第一発見者の娘婿・孝之(長谷川朝晴)以外の家族は、軽井沢の別荘にいた。孝之は見知らぬ男から懇意にしていたホステスが入院したと呼び出され、その隙に殺害されたという。その男が犯人と睨んだ警部の高槻昭三(今井雅之)は、事件前、十一郎に会わせてくれと強引に家の中に入り込んできたという、少年院出の刈谷務(山田裕貴)を突き止める。目的は十一郎が経営するローン会社・久能興産の就職の頼みだった。さらに刈谷が犯行前日にナイフを買ったことが判明。毛髪もDNAが一致したことから逮捕状を請求。しかし沢木は逮捕には早すぎるのではと危惧する。
刈谷の担当弁護士になったのは、沢木の大学の先輩、朝川恭二郎(宅麻伸)。2人は久々にバーで再会するが、家族を犠牲にしてきたという朝川は、引きこもりになった息子と同い年の刈谷が重なってしまう。刈谷を無罪にすることが息子への贖罪だと語る朝川を前に、沢木はその思いを聞くしかなかった。
沢木の検事室にやってきた刈谷は犯行を否認する。事件当夜は渋谷にいたというが、一緒にいた人物など詳細は頑なに明かさない。
一方、朝川は刈谷の元同僚から、働いていた町工場の森島製作所社長・森島善三(森羅万象)の娘・美紀(金井美樹)と親しかったことを知る。美紀は意識不明で入院中の善三の看病で病室にいた。本人は否定するが、刈谷と会っていた人物は美紀であることを察する朝川。そのことを刈谷に報告すると表情を変え、朝川を解任しようとする。
高槻は、刈谷が以前働いていたパブのオーナーで、医療ジャーナリストの肩書きを持つ土岐万治(小宮孝泰)のもとを訪れる。「久能興産の就職を勧めたのは土岐」だと刈谷が証言したためだ。沢木にも呼び出された土岐は、久能興産とビジネス関係にはあったが、刈谷の証言を否定。
しかし沢木は、土岐が2年前にオープンしたというクラブの資金を、久能興産から借りたのではと考えていた。
証言に矛盾がありながら、刈谷の犯行と見る高槻ら警察。状況証拠だけでは起訴できないため拘留延長の手続きをせざるを得ないと主張する沢木。検事室で意見が対立する中、かかってきた電話をとった事務官の国松敏夫(嶋田久作)は、驚きの表情を見せる。刈谷が犯行を認める自供を始めたというのだ。
しかし沢木は刈谷の話を聞きながら、何かを隠していると思えてならなかった…。
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……大手ローン会社で知られる久能興産の社長・久能十一郎が何者かに刺殺された。
犯行現場に居た十一郎の娘婿・孝之によれば、刈谷務の犯行らしい。
刈谷と十一郎とは数日前から揉めていたのだ。
刈谷が凶器のナイフを購入したことが確認され、刈谷が逮捕された。
取調に対し刈谷は「久能興産への就職を世話して貰うつもりだった」と供述、犯行を否認する。
この捜査検事となったのが沢木正夫である。
「人は過ちを犯すが、正せないことはない」がモットーの沢木は刈谷が何かを隠していると考える。
現に、刈谷はアリバイを主張しつつアリバイ証人については黙秘していた。
さらに、刈谷は医療ジャーナリストとして知られる土岐万治の名前を上げ始める。
土岐はとかく黒い噂の絶えない人物で、十一郎とも影で繋がりがあるとされていた。
土岐について調べ始めた沢木。
直後に刈谷が十一郎殺害を認める供述を始める。
そんな中、新たな事実が判明。
刈谷がある人物に触れることを執拗に嫌ったのである。
その人物とは、刈谷が以前に働いていた森島製作所の社長・森島善三の娘・美紀。
森島が病気に倒れ大倉総合病院に入院し森島製作所が倒産となった後も、刈谷と美紀は交流を続けていたらしい。
そして美紀にはある噂があった。
善三の治療費を稼ぐ為に援助交際をしているらしい。
この噂を調べたところ、犯行当日にも柳田節雄と共に居たことが判明する。
しかも、柳田によれば美紀と共に居たところを刈谷に殴られたらしい。
これが事実だとすれば、刈谷は美紀を慮って沈黙を貫いていたことになるが……。
刈谷の窮状を知った柳田たちがアリバイを申し出たことで事態は一変する。
此処に沢木は「公訴取消し」を決定することに。
一方、自由になった刈谷は何故か狼狽の表情を浮かべていた。
沢木は柳田たちが申し出たタイミングに作為を覚えていた。
其処で柳田と美紀について調べることに。
すると意外な事実が浮上する。
柳田には房江という妹が居たが、2年前に謎の自殺を遂げていたのである。
そして、房江は大倉総合病院の看護師であった。
大倉総合病院は十一郎が債権を押さえており、実質的なオーナーとなっていた。
房江の同僚であった水田加奈子によれば、房江が立ち会った手術で医療ミスがあったらしい。
被害者遺族が訴訟を開始し、房江が真実を明かそうとした矢先の死だったと言う。
房江の死が誰を利したか……それを考えれば何が起こったかは明らかである。
おそらく、十一郎が土岐い命じて房江を自殺に偽装し殺害したのだ。
さらに、他にも被害者が出ていたことが明らかに。
大倉総合病院の医療ミス訴訟に対し原告側弁護人として立ち上がっていた岩田弁護士が不審な死を遂げていたのだ。
どうやら、何者かに殺害されたらしい。
これも十一郎が土岐に命じたものに違いない。
そして、何よりのポイントは大倉総合病院である。
其処には森島美紀の父親・善三が入院している。
調べたところ、善三も医療ミスの被害者であった。
しかも、刈谷は善三に恩義を感じていたらしい。
柳田にとっての房江、美紀と刈谷にとっての善三。
共に大切な人が大倉総合病院により被害に遭っている。
大倉総合病院とは、すなわち、十一郎であり、孝之であり、土岐だ。
沢木は刈谷、美紀、柳田が共謀していたと推測する。
刈谷は柳田たちからのアリバイ証言があることを知りつつ、敢えて逮捕されたのだ。
その狙いは一事不再理に他ならない。
本来ならば、公判中にアリバイ証言を得て無罪に持ち込むつもりだったのだろう。
つまり、刈谷は十一郎を殺害後に逮捕され起訴されることを望んでいたのだ。
ところが、沢木が公訴取消しを選んだことで計画が狂ったのだ。
其処で刈谷は方針を転換した。
敢えて土岐万治の名を上げることで、大倉総合病院の医療ミスに注目させることにしたのだ。
直後、刈谷から沢木宛に連絡が入った。
土岐万治たちと落ち合う約束をしているらしい。
これに立ち会って欲しいのだそうだが……。
沢木は呼び出された場所へと赴くが、刈谷の姿は無い。
まさか、誘き出された!?
いや、何か意味がある筈だ……必死に周囲を探す沢木。
するとその目に、立ち尽くしたまま震える孝之と倒れた刈谷が……。
刈谷は刺されていた。
駆け付けた沢木に孝之は必死に首を振る。
どうやら、土岐が口封じしたらしい。
刈谷は死亡。
孝之はその場で拘束され、土岐は後日逮捕された。
死亡した刈谷は手紙を残していた。
その内容は次のようなものである。
刈谷は善三の医療ミスについて十一郎たちを脅迫したが、拒否された。
其処で逆上しこれを殺害してしまった。
困った刈谷は柳田と美紀の援助交際の事実を掴み、アリバイ証言を行うように脅迫したらしい。
これが成功したので、今度は土岐と孝之を脅迫するとされていた。
刈谷の手紙が正しければ、土岐らを脅迫しようとして刺殺されたことになる。
しかし、沢木にはこれが嘘であることは分かっていた。
刈谷は柳田と美紀を庇っているのだ。
そして、刈谷は初めから殺されるつもりであった。
それにより、土岐たちを加害者として裁き、同時に医療ミスについても注目させるつもりだったのだ。
そんな刈谷の心情を知った柳田たちは全てを語り出す。
2年前、妹・房江を不審な死で失った柳田。
十一郎の命を受けた土岐による口封じだと察し、恨みを抱いていた。
そんな折に、加奈子から善三の医療ミスについて聞かされた。
柳田は同志を募るべく美紀に接触。
美紀は刈谷を紹介した。
刈谷は岩田弁護士の死も土岐による口封じだと述べ、十一郎たちの遣り方の卑劣さに憤った。
さらに、善三の復讐をすると主張したのだ。
其処で、柳田が中心となって復讐計画を練ったのである。
メインとなるのは沢木が気付いたとおり、一事不再理だ。
刈谷が十一郎を殺害後、これを自供する。
いざ、公判になったところで柳田たちがアリバイ証言を持ち出すのだ。
これで刈谷は救われる筈であった。
ところが、此処で誤算が生じた。
沢木の手で公訴取消しになってしまったのだ。
あれが全てを狂わせたと述べる柳田。
美紀と共に罪を認めるのであった。
一方、刈谷殺害で逮捕されていた孝之と土岐。
さらに、房江と岩田殺害の罪でも裁かれることとなった―――エンド。
<感想>
「検事・沢木正夫シリーズ」ドラマ版第2弾。
ドラマ原作は、小杉健治先生による「検事・沢木正夫シリーズ」第1弾『検事・沢木正夫 公訴取消し』(双葉社刊)。
あらすじは次の通り。
<あらすじ>
それは一見単純な怨恨殺人事件と思われた。少年院出の青年・刈谷努の犯行と誰も疑わなかった。しかし、検事の沢木正夫は刈谷の些細な言動に疑問を持ち、事件の洗い直しを始める。刈谷に翻弄され、苦汁を飲まされながらも、沢木は真実を追究するのだった。長篇検察小説『検事 沢木正夫』シリーズ第1弾!
(双葉社公式HPより)
原作となる沢木シリーズは2013年9月の時点で既に完結を迎えています。全4冊。
第1弾が『検事・沢木正夫 公訴取消し』。
第2弾が本作『検事・沢木正夫 第三の容疑者』。
第3弾『検事・沢木正夫 共犯者』。
最終話にして第4弾『検事・沢木正夫 宿命』。
シリーズに興味のある方はアマゾンさんへのリンクを本記事下部に用意したのでチェックしてみては!?
ちなみに、本シリーズはTBSさんにて榎木孝明さん主演で既にドラマ化されているようです。
シリーズは2作品制作され、「殺意の分岐点」と「公訴取消し」が存在しています。
そう言えば、同じ「水曜ミステリー9」、「小杉健治先生原作のドラマ化」と言えば「弁護士 水木邦夫」もありました。
こちらは2014年10月29日に放送されており、割と短いスパンで「検事・沢木正夫」が続いたことになります。
奇しくも主人公の名に「木」と「夫」が含まれているのも特徴でしょうか。
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水曜ミステリー9「小杉健治サスペンス 弁護士 水木邦夫 残り火〜孤高の弁護士が挑む最後の法廷〜3連続通り魔殺人は死刑か冤罪化?凶器・目撃者すべての証拠がクロ!逆転裁判を勝ち取れるか!?」(10月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)では、ドラマ感想を。
手堅くはありましたが、前作に比較して面白みに欠けた印象でしょうか。
先に「第三の容疑者」がドラマ化された理由はソレにあったのかなぁ。
それと1つ気になった点が。
それが、刈谷の遺した手紙。
もちろん、内容は一部を除いて虚偽だったワケですが、それにしても刈谷の主張が通らない点が残されています。
刈谷は柳田と美紀の援助交際の事実を掴み、これをもとに脅迫しアリバイを偽証させたと述べています。
これは不可能です。
何故なら、偽証したアリバイ内容が「援助交際現場に刈谷が乱入した」とのものである時点で、柳田に偽証に応じる必要が無くなる。
柳田は援助交際の事実を隠したい筈なのに、その事実を公にした上でアリバイを偽証する必然性が一切ない。
もちろん、此の点は刈谷が手紙に遺した「虚偽の事実」なのですが、その手紙の内容さえ一貫していないのは流石にどうかなぁ……。
仮に一貫していないなら、その点を沢木に指摘させるべきだったのではないでしょうか。
今回は些か楽しめませんでしたが、原作にはまだストックが存在しています。
未だドラマ化されていない第3弾『共犯者』と第4弾『宿命』のシリーズ化に期待です!!
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沢木正夫:寺脇康文
国松敏夫:嶋田久作
藤井部長:大和田伸也
高槻昭三:今井雅之
柳田節雄:眞島秀和
刈谷務:山田裕貴
久能孝之:長谷川朝晴
土岐万治:小宮孝泰
水田加奈子:つみきみほ
外科医:千葉哲也
安本聡司:山中聡
森島美紀:金井美樹
朝川恭二郎:宅麻伸 ほか
(公式HPより転載、順不同、敬称略)
同名タイトル作品はこちら。
赤カブ検事シリーズで知られる和久峻三先生の「偽証法廷 (光文社文庫)」です!!
偽証法廷 (光文社文庫)