2015年01月31日

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第9話「初恋と殺人装置」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第9話「初恋と殺人装置」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第9話登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

蛍の父:赤木興業の社長。
蛍の母:バーのような店を経営している様子。

真島慎一:蛍の幼馴染。彼女に恋心を抱いている。9話から登場。

実山:赤木興業を担当している会計士。
貝塚俊雄:実山会計士事務所の職員。比較的若手。
役丸みつえ:実山会計士事務所の職員。紅一点。
三島:実山会計士事務所の職員。太目。
丸木田:実山会計士事務所の職員。ダンディ。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

高校生になった赤木蛍は行方不明となっていた兄・圭一と思わぬ形で再会を果たすことに。
なんと、圭一が幽霊として蛍のもとに戻って来たのだ。
しかも、圭一は悪意が関わる事件を察知し悪意を消滅させる能力を手に入れていた。
だが、圭一は現世に介入することが出来ない。
これでは折角の力も無意味である。
其処で圭一から協力を求められた蛍は、兄妹で力を合わせ1人でも多くの人を助けるべく動き出すことに。

・前回までのあらすじはこちら。
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第8話「兄の死のナゾ」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

真島慎一は高校生。
赤木興業に勤務する父を手助けすべく、同じ職場でアルバイトしている。

とはいえ、賃金は余り高くない。
その上、キツイ。
さらに、危険でもある。

正直、同年代の友人たちからは「なんで、そんなとこで働いてるの?」と不思議がられる。
慎一自身もそれについては何度も考えた。
だが、ある1つの理由が彼を赤木興業に捕えて離さないのだ。

その理由が―――幼馴染の少女・赤木蛍である。
慎一は蛍に恋心を抱いているのだ。
もっとも、それに蛍が気付くことは無さそうだが……。

でも、それでも良い!!
慎一は心底そう思う。
もちろん報われた方が良いに決まっている。
でも、せめて傍に居るだけでも……それだけでも慎一は満足なのだ。
しかし、そんな僅かな願いも最近では厳しくなっている。

慎一と蛍は生まれてからずっと同じ時間を過ごして来た。
家は隣近所、学校も同じ。
ところが、高校進学で道が異なってしまった。

蛍は家事万能、成績優秀。
気付けば聖マルス学園に特待生として進学していた。
残念ながら慎一に聖マルスに進むだけの力は無い。
結果、慎一は聖マルス以外の学校に進むこととなった。

以来、慎一と蛍の接点は赤木興業のみとなってしまったのだ。
今では、アルバイト時間を増やすべきかとさえ考えている慎一であった。

そんな慎一の目の前で、蛍は物憂げな溜息を吐いていた。
赤木興業存亡の危機が迫っていたからである。

8話ラスト、蛍の父が狼狽していた理由が其処にはあった。
赤木興業の経理全般を任せていた会計士の実山と連絡が取れなくなってしまったのである。
もしも、この状態が続けば運転資金を持ち逃げされたと同じとなり、赤木興業は倒産してしまうのだ。

溜息の止まらない蛍。
これに見かねた慎一が声をかけて来た。

蛍は事情を簡単に事情を説明する。
顔色を変える慎一。
赤木興業が倒産してしまえば、目の前の愛らしい少女に出会えなくなってしまうではないか!!

思わぬ危機の到来に慌てる慎一は、数日前に蛍の母の店に実山が居たことを思い出す。
それはかなり親しそうな様子であった。
もしかして、其処に何かあるのかも……と洩らす慎一。

これを聞いた蛍は実山と母の関係を疑う。
ふと浮かぶのは、実山が赤木興業の金を母に渡したのではないかとの懸念だ。

家族全体の問題に溜息どころか頭痛まで発生した蛍は「何とかしなければ」と決意を固める。
蛍が目を留めたのは慎一である。

数時間後、蛍は変装した慎一を連れ実山会計事務所の前に姿を現していた。
もちろん、圭一も同行している。
圭一は家族の危機にも関わらず、蛍に悪い虫が付かないようにと寧ろ慎一を警戒していたのである。

一方、実山会計事務所前では大騒動が勃発していた。
赤木興業と同様の事件がたび重なり、クライアントが押し寄せていたのだ。
これでは中に入れない。

そう……普通の人々ならば。
しかし、圭一は幽霊である。
蛍の頼みで扉をすり抜け、中の様子を確認することに。

中では実山会計士事務所の4人の職員が顔を突き合わせて今後を相談していた。
どうやら、実山の行方は彼らも掴めていないらしい。

「先生は何処へ……?」
不安を抑えられない様子の紅一点・役丸みつえ。

「うむむむむむむ」
唸り声を上げ続ける太めの職員・三島。

「電話、繋がりました!!」
ようやっと実山への電話が繋がり受話器を翳す若手職員・貝塚俊雄。

「おっ、よくやった!!」
快哉を叫ぶ髭もダンディな職員・丸木田。

貝塚は繋がった実山への電話をスピーカーモードに切り替える。
実山の声が室内に響き渡った。

どうやら、実山は今回の騒動の責任を取り自殺するつもりらしい。

驚き慌てる4人は警察に通報すると共に、外で待つクライアントに事情を説明しようとする。

これを盗み聞いていた圭一は逸早く蛍に報告。
赤木興業の為にも死なれてたまるか、と蛍は実山の自宅であるマンションへ電車で向かう。

さて、電車内で慎一を置いて来てしまったことに気付いた蛍。
メールで連絡を取りつつ、実山会計士事務所の状況について問う。
どうやら大混乱の極みにあるらしい。

添付された写真を見れば、もみくちゃにされる職員や必死に説明する職員が写っていた。
これを見た蛍は何かに引っ掛かりを覚えるが……。

実山のマンションに到着した蛍と圭一。
例の悪意があれば蛍ではどうしようもない。
其処で圭一を先行させ蛍は階下で様子を窺うことに。

実山の部屋へ向かう圭一は「こういった場合は死を偽装し逃げるのがセオリーだけど」とぼやく。
ところが、室内に入ってみるとそれどころでは無かった。

意識の無い実山が何かの機械に引き摺られていたのだ。
実山の首にはロープらしきものが巻き付いている。
これを機械が巻き取っているのだ。
明らかな殺人装置だ。
放置すれば実山が死亡してしまう。

圭一は慌てて止めようとするが、悲しいかな彼には実体が無い。
翳した手は何度となく空を切るのみだ。
圭一は必死に蛍の名を呼ぶのだが―――次話に続く。

いよいよ始まった蛍と圭一の奇妙な相棒物語。
ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように展開などをかなり改変してます。
気になる詳細は「週刊少年チャンピオン」本誌で確認せよ!!

<感想>

「名探偵マーニー」から3ヶ月……我らが木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」に還って来た!!
というワケで、その新作「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」です。

さて、その9話。

圭一が目にしたのは殺人装置。
これを用いるからには実山の自殺は偽装であり、殺害されそうになっていると判断するべきでしょう。
どうやら、何者かが実山に横領の責任を着せつつ口封じに抹殺しようとしている様子。
そして、わざわざ機械を用いて犯行を進めるからには同時刻に並行して犯人はアリバイを用意している筈。

此処から導き出される犯人の条件は2つ。

1つ、実山の実務に触れ彼の横領を仕立てることが出来るほど身近な人物。
2つ、作中にてアリバイを擁している人物。

これを満たすのは実山会計士事務所の人間のみ。
すなわち、容疑者は貝塚俊雄、役丸みつえ、三島、丸木田の4人。

さて、4人のうち犯人は誰か?
ズバリ、管理人が犯人と見込んでいるのは貝塚俊雄。

何故なら、彼が実山の自宅に電話をした人物だから。
トリックを仕掛けられるのは彼しか居ない。

まず、実山が自殺ではない限り例の電話も犯人のトリックとなる。
おそらく考えられるトリックとしては「事務所で圭一たちが耳にした実山の電話が事前に留守番電話に録音された音声である」こと。

通常ならば、これは前後に不自然な箇所が残る(会話が成立しない)筈だ。
其処で貝塚自身が電話を架けることで不自然に聞こえないように会話を運んだ。

これが可能なのは貝塚のみ。
よって、貝塚犯人説を推す。

さらに蛍が抱いた違和感の正体だが、慎一からの写真には貝塚の姿が写っていない。
このトリック、殺人装置や電話の仕掛けを回収する必要がある(さもないと殺人がバレる)。
おそらく、貝塚はドタバタの隙に実山のマンションへ向かっているのではないか。
だから、写っていない。

……と思いたいところなのだが、蛍の写真についてのみ、この説には弱点が存在する。
実は蛍は事務所の職員が4人であることをそもそも知らない。
つまり、貝塚の存在自体を知らないのだ。
だから、写真に貝塚が写って居なくとも存在自体を知らないのだから違和感を抱く理由が無い。

だが、だとすると蛍が抱いた違和感の正体が分からないことに。
第一、実際に貝塚らしき姿は其処には無い。
意味があると考えるべきだと思うのだが……。

描写にないが蛍と圭一が記憶を共有したのだとすれば差し支えは無くなるのだが、口頭での報告以外に情報共有を行ったのだろうか。
此の点が気になるところ。

とはいえ、物理的にトリックが可能なのは貝塚。
だからこそ、貝塚犯人説も揺らがない筈。
此処は自信を以て推したい。
おそらく、次回以降は現場に現れた貝塚と蛍が対決することとなるのではないか。

そして、9話で注目は真島慎一の登場。
ある意味、圭一に続く蛍の助手的ポジションの彼は今後も蛍を助けるキャラの筈。
また、圭一からは警戒されているようですが、読者は彼のピュアな恋を応援したいところ。

次回も見逃すなかれ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」関連過去記事
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第1話「再会とはじまり」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第2話「もう1つの兄妹」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第3話「もう1つの兄妹2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第4話「恐喝王」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第5話「恐喝王2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第6話「恐喝王3」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第7話「恐喝王4」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第8話「兄の死のナゾ」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

◆関連過去記事
「名探偵マーニー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)まとめ

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これまでの登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

【赤木家とその周辺】
蛍の父:赤木興業の社長。
蛍の母:バーのような店を経営している様子。
節:蛍の妹。
和也:蛍の弟。

真島慎一:蛍の幼馴染。彼女に恋心を抱いている。9話から登場。

【聖マルス学園関係者】
志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
塞田康平:蛍のクラスの担任教師。割とミーハーらしい。
見場創太:3話ラストに登場した怪しい男。学園の生徒であった。
緑川楓:蛍のクラスメート。
校長:聖マルス学園の校長。
教頭:聖マルス学園の教頭。

【その他】
志田高志:りかの兄。りかにストーカーしているとのことだが……。
実山:赤木興業を担当している会計士。
貝塚俊雄:実山会計士事務所の職員。比較的若手。
役丸みつえ:実山会計士事務所の職員。紅一点。
三島:実山会計士事務所の職員。太目。
丸木田:実山会計士事務所の職員。ダンディ。

「名探偵マーニー(1) (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
名探偵マーニー(1) (少年チャンピオン・コミックス)





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「名探偵マーニー(11)(完) (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
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「ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)



posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

赤と黒のゲキジョー「おばさん弁護士 町田珠子 社会が震撼した少女誘拐事件…被告は名門医大生!優等生は何故凶行に走ったか?54歳新米弁護士が暴く一家の闇!事件の鍵は母の秘密と父の自殺(蟹江敬三さん最後の出演作品が登場!社会を震撼させた女児誘拐事件…犯人はエリート医大生!弁護を引き受ける54歳新米弁護士の珠子が見た哀しい一家の闇とは?)」(1月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)

赤と黒のゲキジョー「おばさん弁護士 町田珠子 社会が震撼した少女誘拐事件…被告は名門医大生!優等生は何故凶行に走ったか?54歳新米弁護士が暴く一家の闇!事件の鍵は母の秘密と父の自殺(蟹江敬三さん最後の出演作品が登場!社会を震撼させた女児誘拐事件…犯人はエリート医大生!弁護を引き受ける54歳新米弁護士の珠子が見た哀しい一家の闇とは?)」(1月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

東京拘置所の目の前にある喫茶「夢の木」で働くのは町田珠子(岸本加世子)と店長の石橋大介(蟹江敬三)。この喫茶店に訪れる客は拘置所に来た面会人、老夫婦、金融業者などさまざま。この店の奥に目を向けると手作り感満載の看板がぶら下がっていた。そこには「町田珠子法律事務所」の文字が。町田珠子はれっきとした新人おばさん弁護士だった。しかし珠子への弁護依頼は全く来ず…。弁護士になったことを後悔する珠子。

しかし、そんな珠子にも笑顔が戻ることに。弁護依頼がきたのだ。依頼人は清川涼子(美保純)。息子の清川夏彦(泉澤祐希)が女児誘拐で現行犯逮捕されたというのだ。しかもこの事件はマスコミを大きく騒がせた「葵ちゃん誘拐事件」。名門の東都医大生の夏彦が自分の通う学校の理事長の娘を誘拐した事件。信じられない珠子は即答で引き受けると、早速料理学校で教師をしている息子の泰史(山口翔悟)と嫁で検事の春香(美波)に弁護依頼がきたことを報告する。春香は新人弁護士に世間を騒がせた大きな事件の弁護依頼が来るなんて何か裏があるのではと怪しむ。

珠子は早速事件の調査を進めるために担当刑事のもとへ。そこで説明を受けた珠子は、きょとんとする。何と夏彦が誘拐したのは結城葵(松本来夢)ではなくペットの愛犬・茜ちゃんだというのだ。さらには葵の母・結城佳苗(星ようこ)に身代金を受け取る際にナイフでけがを負わせ、殺人未遂で起訴された。珠子は夏彦に話を聞きに拘置所へ。

そこで夏彦は「全ては裁判で明らかにする」と真相を語ろうとしない…。夏彦の非協力的な態度が何人もの弁護士がさじを投げた理由だった。

戸惑う珠子に春香から連絡が入る。何と検察側が殺人未遂の疑いを取り下げたため夏彦が罪に問われなくなったのだ。ふに落ちない珠子は葵のもとへと向かったのだが。
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)。

喫茶「夢の木」は東京拘置所前にある。
其処には店長の石橋大介と姪の町田珠子が働いている。

とはいえ、「夢の木」は単なる喫茶店ではない。
実は珠子が営む「町田珠子法律事務所」が併設されているのだ!!
だが、「町田珠子法律事務所」が繁盛している様子はない。
何故なら、珠子はこれまでに一件も依頼をこなしたことの無い新人弁護士だったのである。

矢先、遂に珠子に依頼が!!
依頼人の名は清川涼子、ある事件の被疑者となっている息子の清川夏彦を助けて欲しいと言う。

内容を聞いた珠子は狂喜乱舞する。
その事件の名は「葵ちゃん誘拐事件」。
世間を騒がせた大事件だったからである。

夏彦は名門東都医大に通う1年生。
ある日、東都医大の理事長・結城茂の娘である葵を誘拐し身代金を請求したとされていた。
さらに、受け渡しの際に結城の妻・佳苗にナイフで怪我を負わせ殺人未遂の罪にも問われていた。

この事件を解決すれば、一躍有名弁護士の仲間入りだ!!
野望に燃える珠子は一も二も無く引き受けてしまう。

喜ぶ珠子は料理学校で教師をしている1人息子・泰史と、その妻で検事の春香に報告。
これを聞いた春香は「何の伝手もない新人にそんな大事件が舞い込む筈がない」と調べ始める。

すると、意外な事実が判明する。

なんと、夏彦が誘拐したのは人間の葵ではなく、結城家に暮らすペットのプードル・茜ちゃんだったと言うのだ。
つまり、誘拐事件は成立していない。
実際に夏彦が罪に問われているのは佳苗への殺人未遂らしい。

これにモチベーションを削がれた珠子は依頼を断ろうとするのだが……。
涼子が母子家庭であると聞き退くに退けなくなってしまう。
珠子もまた泰史と母1人子1人の家庭だったのだ。

引き受けたからには仕方がない。
夏彦に事情を聞くべく拘置所へ。

夏彦は事前の予想に反し礼儀正しい少年だった。
怒鳴るワケでもなく、冷静に珠子に対する。

ところが、珠子が事件に触れた途端に態度が硬化。
黙秘を貫き「全ては裁判で明らかにする」と主張する。
どうやら、この態度が他の弁護士を退けた理由のようだ。

次の手を模索する珠子。
直後、夏彦が控訴取り下げに。
なんでも、佳苗が上申書を提出した為に控訴取り下げとなったらしい。

殺人未遂事件について、夏彦が佳苗を襲ったワケではなかったことも大きいらしい。
ナイフを所持していたのは佳苗。
つまり、佳苗が夏彦にナイフで襲い掛かっていたのだ。

戦わずして勝ちを収めた珠子。
だが、「全ては裁判で明らかにする」との夏彦の顔に何かが隠されていると背景を調べ始める。

結城が「不正経理」を行っていると聞き付けた珠子は「これだ!!」と結城家に押しかけるが拒否されてしまう。

その夜、涼子に誘われた珠子はストレスもあって赤ワインで強かに酔っ払ってしまう。
涼子は夏彦を東都医大と親交のある海外の学校に留学させると口にする。

翌朝、ベロンベロンとなった珠子の姿がネットに流出し批判を受ける。
涼子によれば結城家の差金ではないか……とのことだが。

しかも、結城茂が殺害され容疑者として夏彦が逮捕されてしまうことに。
これに涼子は珠子ではなく実力派の有名弁護士を起用する。

すっかり蚊帳の外に置かれた珠子。
公園で溜息を吐いていたところ、茜を連れた葵に出会う。
なんでも、家出して来たと言う。

葵は珠子が夏彦の元弁護人と知ると「夏彦を助けて欲しい」と依頼する。
例の誘拐事件も葵が夏彦に頼み込んだらしい。

佳苗が葵ではなく茜を可愛がってばかりいたからである。
実は葵には茜という姉が居た。
ところが3年前に茜は病死。
佳苗は葵を顧みることなく、プードルに茜と名付け葵よりも可愛がっていた。
其処で、葵が夏彦に依頼したのだ。

当初、夏彦は佳苗が葵を選ぶものと思っていた。
しかし、佳苗は茜を選び大金を用意した上に茜を取り戻そうと夏彦を殺そうとさえしたのだ。

結城はこの事実に気付き、控訴を取り下げさせたのであった。

ちなみに、葵が夏彦に頼んだ理由は涼子と結城が裏で繋がっていた為らしい。
葵によれば、涼子が結城を不正経理の件で脅迫し夏彦を東都医大へ裏口入学させていたと言う。

珠子は葵を預かることにした。
一方で、涼子が結城を脅迫していたことが信じられず調べ始める。

すると、涼子が教育熱心であったことを知る。
夏彦を東都医大に入学させる為には手段を選ばないらしい。
思わぬ涼子の顔に戦慄する珠子。

さらに遡ると、涼子の夫・清川にDVの疑いがあったことが判明。
他に10年前に清川が自殺していたとの情報を得た。
清川は左利き、死亡時の状況から左利きでなければ不可能と結論付けられた為に自殺と判断されたらしい。
清川は医療機器販売会社に勤務していたとのことだが……。

その夜、珠子はある仮説を立てる。
もし、涼子が結城を脅していたとすれば留学の件それ自体も脅迫の結果なのではないか。
それを結城に断られた為に涼子がこれを殺したのではないか。
だが、よくよく考えれば、その当日に涼子と飲んでいたのは当の珠子なのだ。
涼子には鉄壁のアリバイがある。

矢先、佳苗が結城殺害の犯人として逮捕された。
佳苗は結城が不正経理を告白しようとした為に、葵の将来を慮って殺害したと供述していた。
逮捕の決め手は左手だったそうである。

現場の状況から結城を殺害した犯人は左利きとされたのだ。
夏彦は右利き、佳苗は左利きである。
これにより、夏彦は釈放された。

左手が決め手と聞いた珠子は10年前の清川の自殺を思い返す。
まさか、あれも……。

思い返した珠子はネットに提供されたベロンベロン写真を確認。
其処には「赤ワインを飲んで」と書かれていた。
何故、「赤ワイン」だと分かるのか、それが分かるのは珠子と一緒だった人間しかいない。

翌日、珠子は清川家を訪れた。
夏彦に対し「それでいいの?」と問いかける珠子。

夏彦が「全て裁判で明らかにする」と語っていた内容。
それこそ、涼子が結城を脅迫していた事実であった。

夏彦は「もうたくさんだ!!」と涼子に叫ぶ。
これに珠子は10年前の清川の死の真相を明かす。

10年前、清川は夏彦に暴力を奮っていた。
そして、清川は謎の自殺を遂げた。

清川の死は左利きだった為に自殺とされていた。
だが、裏を返せば他にも左利きが居れば犯行可能なのだ。
そして、左利きがもう1人居たのである。
それが涼子であった。

涼子は夏彦を守る為に夫を手にかけたのだ。
ネットで騒動を起こしたのも、珠子のこれ以上の追及を止める為だ。

それだけ涼子は夏彦の為に生きていたのである。
珠子は10年前の真相は誰にも打ち明けないと宣言。
涼子と夏彦に結論を一任するのであった。

数日後、春香が珠子をもてなしていた。
普段、そのようなことをしない春香に怯える珠子。

そんな珠子に春香は涼子からの伝言を告げる。
なんと、涼子が清川殺害と結城への脅迫を認め出頭したらしい。
全て珠子のおかげだと語っていたと言う。

珠子に感謝の意を伝える春香。
珠子はやっと嫁姑になれたと安心するのだが……。

春香の作ったカレーを口にするや噴き出してしまう。
それは尋常ではない味であった。

しかし、これこそ嫁の味。
珠子は姑として味を調えフォローする。
こうして出来上がった町田家の味に笑顔が戻る珠子たちであった―――エンド。

<感想>

原作なし、オリジナル作品です。
本来は2014年11月28日の放送予定でしたが、高倉健さん追悼番組「南極物語」の放送で2014年11月21日放送予定であった「前科ありの女たち」が同月28日にずれ込み、結果として放送延期となっていた作品。
そんな本作が2015年1月30日に放送されました。

赤と黒のゲキジョー「前科ありの女たち 私はハメられた…幼い息子を手放し殺人罪で服役した人妻!それは暴力夫と愛人のワナ!獄中での孤独な決意…壮絶な復讐が今始まる 今夜、私は夫を殺す」(11月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)

また、本作は「世直し公務員 ザ・公証人11」に続き、故・蟹江敬三さん最後の出演作となっています。

月曜ゴールデン「追悼…蟹江敬三さんを偲ぶ 世直し公務員 ザ・公証人11 生前贈与を巡り長女殺害!?父親の隠し子発覚で崩壊する家族…失踪したプードルが真相を知る!!」(4月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)

では、ドラマの感想を。

まず取り上げておきたいのは、水曜ミステリー9に「おばさん検事」なるタイトルの番組があること。
奇しくもこれに対し、赤と黒のゲキジョーでは「おばさん弁護士」に。
なんとも対照的です。

水曜ミステリー9「特命おばさん検事!花村絢乃の事件ファイル3 示談金20万円が悪魔の1億円に変わった!?“主婦の財布”が暴く疑惑の交通事故!子連れ検事が巨悪を斬る」(9月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)

さて、これを踏まえて本作。
本作の優れている点は「キャラ設定」ですね。
珠子の立場上、検事と異なり組織だった情報を得ることが出来ない。
其処で、情報源に嫁の春香を充てたのは評価すべきだと思う。

他にも弁護士の先輩を配したことで一般的な弁護士視点も用意され、珠子の親身になり易い点を強調することにもなっていました。

ただ、シナリオが妙に分かりづらいところがあったかな。
一応まとめておくと次のような感じです。

まず、発生した事件は次の通り。

・葵ちゃん誘拐事件(茜ちゃん誘拐事件)
・結城殺害事件
・10年前の清川自殺(実は他殺)

それぞれ犯人は……。

・葵ちゃん誘拐事件は狂言(茜ちゃん誘拐に対して葵と夏彦の共謀)
・結城殺害事件は佳苗の犯行
・清川自殺(実は他殺)は涼子の犯行

でした。
この辺りがイマイチはっきりしなかったかな。
特に「左利き繋がり」と「珠子が涼子の犯行を疑っていた」為に「結城殺害」も「涼子の犯行でアリバイトリックに挑む展開」だと終盤まで信じていたぐらいだし。

確かに振り返れば「結城殺害は佳苗の犯行」と明言しているんだけど、その前の夏彦の犯行が否定されていたことで「コレも否定されるんだろうなぁ」とミスリードさせられた点は否めません。
これが狙っての効果ならば問題ないのですが、狙ってでは無い場合は劇中でもっとはっきり明示しても良かったかもしれません。

それと、涼子が結城を脅迫しているなら珠子を雇う必要が無かったような気もします。
何しろ、取り下げさせることが出来るので。
これは結果が示している筈。

それにしても、キャストが豪華。
蟹江さん、劇中ではかなりお元気そうに見受けましたが……。
シリーズが続けばレギュラーとして登場された筈だけに残念です。

とはいえ、次回にも期待出来るシリーズではあると思います。

<キャスト>

岸本加代子
六角精児
美波
山口翔悟
美保純
蟹江敬三 ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)


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2015年01月30日

「ダイ・ハード ラスト・デイ」(2012年、米国)

「ダイ・ハード ラスト・デイ」(2012年、米国)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

久しく会っていなかった息子ジャック(ジェイ・コートニー)がロシアでトラブルを起こした上に、ある裁判の証人となったと知らされた刑事ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)。身柄を引き取りに現地を訪れた彼だが、そこでテロ事件に巻き込まれてしまう。相変わらずの運の悪さを呪いながらも、混乱状態に陥った状況下でジャックと再会するマクレーン。しかし、なぜか親子一緒に次期ロシア大統領候補の大物政治家、大富豪、軍人らが複雑に絡む陰謀の渦中へと引きずり込まれるハメになり……。
(公式HPより)


では、続きから(一部、重複アリ)……。

「あの男」ことジョン・マクレーン刑事のもとに、疎遠になっている息子・ジャックがモスクワで逮捕されたとの報が届く。
すわ、息子のピンチ。
こうして、ジョンはジャックを救うべくモスクワへと向かうことに。

ところが、駆け付けたジョンの目の前でジャックが居る筈の裁判所が大・爆・発!!
さらに、1人の壮年男性と共に逃げ出すジャックの姿を目撃してしまう。

しかも、逃げ出しただけならまだしも凄腕の武装集団に追われているようだ。
こうして、ジョンは逃げるジャックを追跡しつつ、援護するべく武装集団と交戦を開始する。

泡を喰ったのは武装集団だ。
ターゲットを追っていたところをワケも分からぬオヤジに襲撃を受けたのである。
しかも、このオヤジ強い上にしつこい。

結局、アリク率いる武装集団の追撃は失敗。
ジョンはジャックと合流する。

此処でジョンも知らなかったジャックの正体が判明。
なんと、ジャックは秘密裏にCIAのエージェントとなっていたのである。
しかも、エースとまで目されるほどになっていた。
やはり、蛙の子は蛙なのであろう。

そんなジャックの今回の任務は政府要人のコマロフの保護。
コマロフは政権中枢に位置するチャガーリンの弱味をファイルとして握っており、これを怖れたチャガーリンにより監禁状態に置かれていた。
これと接触し助け出す為に、ジャックはわざと逮捕されたようだ。
ちなみに、コマロフは自身の保護と引き換えにファイルをジャックたちに提供する約束になっているらしい。
これを察したチャガーリンが子飼いのアリクに命じて口封じを目論んだのである。

ジャックはジョンを疎ましく思いつつ、コマロフを連れて国外脱出を図る。
息子を想うジョンはこれに同行することに。

ところが、此処で1つ問題が持ち上がった。
コマロフには娘・イリーナが居たのである。
コマロフはイリーナも一緒でなければ同行しないと主張。

娘を想う心に打たれたジョン。
クレバーなジャックはこれに不満だが、渋々従うことに。

こうして、イリーナと合流を目論むのだが……。
現れたイリーナはコマロフに銃を突き付ける。
アリクによればイリーナは金で寝返っていたらしい。

親子と雖もいろいろな形があるのだ。
我が家を振り返ったジョンは今更ながらに痛感する。

とはいえ、これによりコマロフはアリク一派に連れ去られてしまった。
何とか逃げ延びたジョンとジャックはコマロフの奪回を図る。

アリクたちが向かった先はチェルノブイリ。
こうして、ジョンたちもこれを追跡する。

一方、先にチェルノブイリ入りしたアリクたちに異変が。
イリーナがアリクを裏切り、コマロフと共にこれを殺害したのだ。
同時刻、チャガーリンもまたコマロフの刺客に殺害されていた。

事件の真の黒幕はコマロフとイリーナの親娘だったのである。
追われているように偽装しつつ、実はチェルノブイリに保管された濃縮ウランを横流しすることが目的だったのだ。
この地に辿り着くべく、ジャックとチャガーリンを利用したのである。

この事実を知らないジョンとジャックはコマロフたちを救うべく屋内に侵入。
遂にコマロフと接触する。

だが、流石はジョンだ。
状況からコマロフの裏切りを察した彼は遂にコマロフ親娘と対決を開始する。

もうこうなれば、誰もジョンたちを止められない。
それでも、数の優位を活かしコマロフとイリーナは屋上で決着を着けようとするのだが……。

戦闘ヘリを持ち出したイリーナ。
しかし、そのローターに巻き込まれコマロフは惨死。
これに逆上したイリーナはジョンたちへ向けヘリを突撃させるが躱され爆死する。

屋上から地上へとダイブしたジョンとジャックはプールに着水し無事であった。

当初こそ、ジョンに不満を抱いていたジャック。
だが、今回の事件を通じてジャックはジョンを父として認めることに―――エンド。

<感想>

「ダイ・ハード」シリーズ第5弾。
原題は「ア・グッド・デイ・トゥ・ダイ・ハード(A Good Day to Die Hard)」。
「ラスト・デイ」は邦題だったりします。

そして、ついに「あの男」が海外へ進出です。
と言うワケで、「ダイ・ハード」と言うよりは些か「007」ぽい展開でしたね。
シリーズ第1作と第2作のような「限定空間下で追い詰められた男が繰り広げる逆転劇」と言った印象は薄い。

内容的には「親子対決」と言った感じ。
「ジョン&ジャック親子」VS「コマロフ&イリーナ親娘」かな。
これを面白いと思えるかどうかが本作を楽しめるかどうかの鍵だと思われる。

ちなみに、本作の製作はまさに「大ハード」だったことが判明しています。
なんと、2ヶ月の時間をかけて撮影の為に建設された建物が焼失していたのです。
とはいえ、その時点で公開日が既に決定しており、その後はシナリオを変更しての強行軍だったのだそう。

【ファン衝撃】「ダイ・ハード5」こと「ア・グッド・デイ・トゥ・ダイ・ハード」撮影に暗雲漂う。

なお、主演のブルース・ウィリスさんはシリーズ第6弾製作についても明言しており、かなり意欲的らしい。
シリーズ第1作、第2作のカラーで頑張って欲しいところです。

◆関連過去記事
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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする