日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season13」第14話「アザミ」(2月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
15年前、車から降りると黒い服を着用した少女は何かに慌てたように自室へ向かう。
其処には少女の分身が居る筈であった。
「お嬢様!!」
背後から家政婦・田代の声が上がるが、今の少女にそれは届かない。
「お願い、無事でいて」
少女は祈りを心に秘め、必死に走る。
だが、飛び込んだ先にあったのは少女の祈りに反する光景であった。
少女と寸分違わぬ姿形を持ったもう1人の黒服の少女が其処に倒れていたのである。
もう1人の少女は既に事切れていた。
そして、息絶えた少女の手には一輪のアザミの花が握られていた。
それを知っているは倒れた少女と同じ顔を持つもう1人の少女だけであった。
そして現在、15年前に悲劇が起こった同じ別荘。
其処に手錠で拘束された女性の姿があった。
女性は何やら思い詰めた表情を浮かべると必死に固定電話に手を伸ばす。
ボタンを押すと共に機械音が響く。
女性はほっと息を吐くが、直後に硬直する。
その目に兎の着ぐるみに身を包んだ人影が映ったのだ。
人影の手には硬質なロープが握り締められていた……。
自身の行く末を察した女性が悲鳴を上げた。
だが、人影は止まらない。
翌朝、特命係では角田がある事件について右京(水谷豊)に語っていた。
これを聞いた右京の顔色が変わる。
慌てて米沢のもとへ向かうと事件について尋ねることに。
被害者は老舗ヴァイオリン工房として知られる「新宮工房」の社長夫人・新宮孝子(栗田よう子)。
新宮家の別荘で絞殺死体となって発見されていた。
検視の結果、死亡推定時刻は12時から17時の間。
しかし、殺害された孝子は16時2分に、夫である蔵人(鈴木綜馬)の携帯に電話を入れていた。
これは固定電話から採取された孝子の指紋と、蔵人の携帯に残された着信履歴が証明している。
どうやら、助けを求めたらしい。
これにより、実際の犯行時刻は16時2分から17時の間と思われていた。
なお、蔵人はその日に限って携帯を忘れていたらしく電話に出られなかったと言う。
ちなみに、「新宮工房」では蔵人と孝子が大手楽器店との提携話を進めており、これに反発する者の犯行も疑われていた。
同じ頃、伊丹たちは蔵人とその姪・響(笹本玲奈)の取調べを行っていた。
普段、響は工房で事務手伝いをしているそうである。
響によれば、土曜日の12時30分頃に孝子を別荘へと送り届けた後、15時ごろに工房へ戻りマイスターの仕事を見学していたらしい。
一方、蔵人は湘南方面にドライブに出かけておりアリバイは無い。
伊丹たちは蔵人に容疑の目を向ける。
しかし、右京は拘束された孝子が通報するでもなく、わざわざ蔵人に電話していたことに疑問を抱く。
其処には何か理由があるのだ。
新宮工房にマイスターの板倉を訪ねた右京。
板倉は名演奏家で知られるクラウス・ローゼの愛器を担当するほどのベテランであった。
そんな板倉によると、響は証言通り15時から19時まで板倉と共に居たそうである。
板倉によれば響の楽器職人としての才は卓越したものらしい。
音色に優れ、新宮家の後継者にこれ以上相応しい人物は居ないのだそうだ。
「海外留学させるのも響で良かったんだよ。それをわざわざ横田になんて……」
愚痴る板倉。
横田守は新宮工房のマイスターの1人。
蔵人と孝子の肝煎りでドイツに留学しマイスターの資格を取ったが、板倉から見るとそれほどでもないらしい。
ちなみに、響の父は新宮幸人と言い、板倉も認める凄腕だったのだそうだ。
ところが、夫婦揃って事故死してしまったのだと言う。
当時、先代は幸人を後継者と考えており、蔵人は絶縁され大型スーパーの台湾支店に居たらしい。
本来ならば幸人が工房を継ぎ、順当に響が後継者になる筈だったのに……と板倉は口惜しそうだ。
現在ではこの状況が逆転。
響は蔵人に横暴の限りを奮われているのだそうである。
何やら考え込む右京に甲斐が情報を運んで来る。
なんでも、蔵人には愛人が居るらしい。
つまり、孝子と蔵人の夫婦仲は決して良くなかったのだ。
にも関わらず、拘束された孝子は蔵人に電話を入れている……右京は2人が何か別のことで繋がっていたと主張する。
数時間後、右京は響に声をかけていた。
実は15年前に右京と響は面識があったのだ。
15年前、幸人夫妻が事故死を遂げ、これを悼む為にクラウス・ローゼが緊急来日し新宮家でパーティーを開いた。
其処に右京も居たのである。
クラウス・ローゼはパーティーで演奏を披露。
この際、孝子と蔵人は「以前にリサイタルで耳にしたものと寸分違わぬ名演奏」と褒め称えた。
そのとき、1人の少女が「それは違う」と毅然と指摘した。
少女の名は奏、響の双子の姉である。
奏はクラウス・ローゼが使用したヴァイオリンが以前のリサイタルの物とは「全く別」であると叫ぶ。
これを聞いたクラウス・ローゼは目を見開き驚いた。
奏の指摘は正しかったのである。
クラウス・ローゼは「この娘こそ、新宮家の後継者に相応しい」と奏を絶賛した。
ところが、その奏が数日後に謎の事故死を遂げた。
死因はスズメバチに刺されたことによるショック死。
別荘の近くには大きなスズメバチの巣があり、これが原因とされていた。
当時の担当刑事によれば、これに響が異を唱えていたと言う。
「奏はスズメバチのことを知っていたのに窓を開ける筈がない。慎重で怖がりなのに」と幼い身で何度も再捜査を求めたらしい。
だが、当時から新宮家で助手をしていた横手が「奏が窓を開けるところを目撃した」と主張した為に事故とされたのである。
当の横手を訪ねた右京。
これに横手はヘラヘラと笑いながら孝子殺害を否定する。
横手は「階段をうっかり踏み外しちゃって、手をね〜〜〜」と見せつける。
どうやら、骨折しているらしく絞殺は不可能なようだ。
右京は15年前に新宮家で働いていた家政婦を探すよう甲斐に指示。
一方で、ティーカップが床に転がっていたにも関わらず、中身が零れた様子がないことに注目する。
さらに、米沢にある依頼を行う。
その頃、響は15年前の夜を思い出していた。
あの夜、奏は蔵人と孝子を指して「あの人たちはアザミのような人たちよ」と批判していたのだ……。
その翌日、右京は響に呼び出され別荘を訪れる。
響が差し出したのは一冊のアルバムであった。
15年前に別荘近くに滞在していたスイス人の写真家が撮影していた当時の様子である。
何かの役に立てばとのことらしい。
此処で右京は15年前のことについて触れる。
15年前、パーティーの席で音色の違いに気付いたのは奏ではなく響であった。
これを響が奏に伝え、奏が指摘したらしい。
どうやら、響は臆病な性格で奏が勝気な性格だったようだ。
この遣り取りに気付いた右京が響にこれを伝えたところ「内緒よ」と当時の響ははにかんだそうだ。
「そう言えば、そう言ったこともありましたね」と微笑む響。
何やら、驚いた様子だが……。
新宮家の家政婦・田代から当時の証言を得ることが出来た。
田代は蔵人と孝子の横暴を訴える。
どうやら、蔵人たちは新宮工房を乗っ取ろうと奏と響を目の仇にしていたようだ。
奏と響は常に監視されていたらしい。
田代は常々、奏たちの身を案じ蔵人たちに反抗しないように言い含めていた。
あの奏が事故死した日、田代は響を病院に連れて行っていたのだが、その際も同様の会話が交わされたと言う。
しかし、響は「アザミのような人たちだと奏が言っていた」と聞かない。
どうやら、棘で周囲を傷付けると言いたいらしい。
これに田代が反発した。
その前日、孝子が奏と響に香水を与えていたことを引合いに出し「それほど悪い人じゃない」と告げたのだ。
さらに、先日のパーティーで奏に面子を潰された孝子が激怒していたことも教える。
ところが、此処でやにわに響の顔色が変わり、別荘に帰ると繰り返したのだそうだ。
結果、戻ってみると奏が死亡していたのだそうだ。
と、此処で右京がアルバムで見つけたある写真について尋ねる。
それは「スズメバチの捕獲器」であった。
なんでも、蔵人の手によるもので捕獲器内で蜂が溺れ死ぬ仕掛けになっているらしい。
さらに、アルバムから写真を貼り直した痕跡を見出す右京だが……。
矢先、孝子殺害容疑で蔵人が逮捕された。
蔵人の車から犯行に使用されたと思しき品が見つかったのである。
これを聞いた右京は「すべてが分かった」と叫ぶ。
数時間後、右京の前に響、板倉、蔵人が居た。
右京は事件の真相を語り出す。
孝子が何故、通報せずに蔵人に連絡を入れようとしたのか。
それは15年前の犯罪で2人が運命共同体となっていたからである。
蔵人と孝子は姪・奏を殺害していたのだ。
動機は奏がクラウスに後継者と認められたことに危機感を募らせたものであった。
しかし、あの日、奏と響は入替っていた。
つまり、響とされていた少女の正体こそ奏だった。
15年前に死亡したのは響、病院に居た少女こそが奏だったのだ。
あの日、響は奏の身を案じ入替りを提案した。
それが自身の死に繋がることまでは想像もしていなかったに違いない。
蔵人が居た台湾ではスズメバチ生け捕り用の捕獲器というものがある。
これを用いて捕獲したスズメバチを蔵人は冷凍した。
冷凍されたスズメバチは常温で再び動き出す。
そして、スズメバチは黒い色、甘い香に惹き付けられる性質がある。
奏と響は普段から黒い服を好んでいた。
さらに前日になって孝子が与えた香水があった。
孝子は夫が凍らせたスズメバチを伏せたティーカップの中に隠した。
これを奏(実際は響)の部屋にお茶と一緒に届けた。
時が過ぎ、カップの中のスズメバチが活動開始。
それを知らない奏(実際は響)が咽喉の渇きを覚えお茶にしようとしたところ、襲われたのだ。
蔵人と孝子は部屋の外から響の悲鳴が収まるまで中の様子を窺った。
その後、窓を開け放ちスズメバチを逃がした。
この際、孝子は兎の着ぐるみに身を包んでいた。
防護服の代わりだったのだ。
横手は手袋から孝子であるとすぐに気付き、この秘密と引き換えにドイツ留学を手に入れたのであった。
蔵人、孝子はもちろん横手も信じられないと気付いた奏は孤立無援であった。
身を守るべく響を名乗ることに。
一方で、奏は新宮の音色を守ろうと必死に努力することに。
ところが、あろうことか蔵人と孝子は提携することでそれすら売り渡そうとしていた。
奏は此処に復讐を決意した。
まず、横手を訪問するとペーパーウェイトを彼の手に叩きつけた。
さらに、写真家から手に入れた当時の写真を見せつけ横手の偽証を脅迫した。
もっとも、そんな都合の良い写真は存在していない。
あくまで、本物の写真を加工したものだ。
此の為に、アルバムに貼り直した痕跡が残った。
犯行当日、奏は孝子を別荘に送り届けるとこれを拘束し「警察に15年前の真相を告げる」と脅迫した。
慌てた孝子は蔵人に電話を入れる。
しかし、奏は別荘の固定電話に繋がるルーターから電話コードを抜いていた。
これにより電話端末自体は機能しているが、物理的に配線が接続されていないので外には繋がらない。
孝子が何度架電しようとも不通が続く。
一方、奏は孝子が蔵人に電話を入れる様子を窺う。
指紋が電話機に残ったことを確認するや、これを殺害する。
犯行終了後、アリバイ工作の為に15時に板倉のもとへ。
別荘では16時少し前に、横手が現れた。
横手は奏に脅迫されており、子機から蔵人の携帯へ電話を入れる。
これが16時2分の電話の正体だ。
すなわち、犯行時刻は15時よりも前だったのである。
その後、奏は蔵人の車に証拠品を隠し、彼に罪を着せようとしたのである。
右京は既に米沢に依頼し子機から横手の痕跡(グラスファイバー)を検出していた。
物的証拠である。
また、横手自身も取調を受け、すべてを明かしたそうである。
右京が奏たちを呼び集めた時点で事件は解決していたのだ。
「きっさまぁ〜〜〜育ててやった恩を忘れやがって!!」
「もともとはあなたたちが響さんを殺害したからでしょうが!!」
奏に向け憤る蔵人に一喝する右京。
「違う、私は……妻に唆されたんだ」
途端に蔵人は孝子に責任を押し付け始めた。
其処に伊丹たちが到着し、これを連行する。
次いで、奏に手が伸びて……。
「1つだけ、お願いがあります!!」
叫ぶ奏。
その内容は蔵人と共に連行しないで欲しいとのものであった。
それほど、蔵人を忌むべきものと考えていたのだ。
これに頷く右京。そんな右京に奏が問う。
「いつから私が響ではなく奏だと気付いていたのですか?」と。
右京が現在の響が奏ではないかと疑ったきっかけは、15年前の担当刑事の証言であった。
当時、響は「スズメバチのことを知っていたのに窓を開ける筈がない。慎重で怖がりなのに」と奏の事故について訴えた。
だが、慎重で怖がりなのは奏ではなく響の方だ。
念の為、右京は15年前のエピソードを持ち出し確認した。
あのとき、右京は響に声をかけたが人見知りがちな響は逃げてしまったのだ。
「内緒よ!!」と会話する事すら出来なかったのだ。
「そんな娘でした……」
響を懐かしむ奏。
右京にアルバムを見せたときから、奏はこの結末を望んでいたらしい。
蔵人と孝子の罪を明らかにし、響の仇をとろうと決めたのだそうだ。
「あなたがこんな形でしか奏さんに戻れなかったことがとても残念です」
「私は杉下さんに会えて良かったと思ってます」
ようやく自身を取り戻した奏の目には涙が光っていた。
すべてを終えて右京は響の部屋にカスミソウの花束を供える。
それはもっと早くに気付いていれば、あのときの少女を救えたかもしれないのに……との右京の後悔から来る痛恨の念であった―――第14話了。
<感想>
シーズン13第14話。
脚本は太田愛さん。
サブタイトルは「アザミ」。
その花言葉は「復讐」。
すなわち、奏による響の復讐を表現したもの。
だからこそ、今回のサブタイトルとなったのでしょう。
しかも、他に花言葉として「満足」や「安心」と言った意味も存在しています。
この「満足」や「安心」が復讐を果たしてのものなら、なんとも壮絶です。
同時に「アザミ」は劇中にて奏が蔵人と孝子を評した際の言葉でもあります。
その意味は棘で周囲を傷付けて止まないとのもの。
結局、蔵人と孝子は最初から最後までコレでした。
それにしても、もっと早く右京と再会していれば奏が復讐に手を汚すこともなかったかもしれないと思うと痛ましい……。
奏としては常に孤立無援な状況だったのでしょう。
蔵人と孝子は明確な敵だし、横手もその仲間、家政婦の田代も本意(奏と響に身を守らせる)はどうあれ蔵人たちの肩を持つ、板倉は味方になるかもしれないがそのときは彼がクビになるだけでしょう。
奏の味方は分身である響、ただ1人だった。
その唯一の味方も既に無い。
奪われたのだ―――しかも、なんとも惨たらしい殺害方法で。
これは怒って当然でしょう。
その怒りの深さが犯行方法に表されているようにも思います。
そして、右京が現れた。
このときの奏の心の動きはどうだったのでしょうか。
中盤、奏は過去を思い出し「(蔵人と孝子を)アザミと評した」ことを思い出します。
その翌日に右京を呼び出し、これに自身の犯行を露見させかねないアルバムを託す。
其処には、亡き響の悲劇を周囲に報せると共に、自身は「アザミ」にならないようとの配慮があるように思えてなりません。
そして、自分を取り戻す―――との意味も其処にはあったのではないでしょうか。
それは奏の身の破滅に直結します。
しかし、それに繋がると知りながらも彼女は縋った。
右京に告発された時、一度死んだ筈の奏が甦ったのかもしれません。
もしも、右京が看破しなければ奏は永遠に響としてしか生きていけなかっただろうから。
ラスト、右京は奏と響の部屋にカスミソウの花束を置きます。
カスミソウの花言葉は「ありがとう」、「清い心」、「切なる願い」だそうです。
これは響が「清い心」のまま死亡してしまったこと、また奏が自身を取り戻したことで復讐心から解き放たれ「清い心」を回復したことを示しているような気がしてなりません。
それは右京自身の「切なる願い」でもあるのではないでしょうか。
ちなみに、本日(2015年2月4日)に「相棒ファン」を驚愕させる報が飛び込みました。
3代目相棒である甲斐享が「相棒season13」にて卒業だそうです。
詳細は次の記事からどうぞ!!
・【至急報】3代目相棒・甲斐享が「相棒season13」にて卒業とのこと。
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