ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
お待たせしました、大傑作完成!
D県警史上最悪の重要未決事件「64」。この長官視察を巡り刑事部と警務部が敵対する。その理由とは? さらに衝撃の展開が−−
D県警の広報が記者クラブと加害者の匿名問題で対立する中、警察庁長官による、時効の迫った重要未解決事件「64(ロクヨン)」視察が1週間後に決定した。たった7日間しかない昭和64年に起きたD県警史上最悪の「翔子ちゃん誘拐殺人事件」。長官慰問を拒む遺族。当時の捜査員など64関係者に敷かれたかん口令。刑事部と警務部の鉄のカーテン。謎のメモ。長官視察の日に一体何が起きるのか? D県警に訪れた史上最大の試練! 組織対個人を緻密に描く横山節は健在。怒涛の、衝撃の、驚愕の長編ミステリーをお楽しみに!(SY)
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
横山秀夫先生による「D県警シリーズ」第4弾。
2013年(2012年発売作品対象)の各種ミステリランキングでは『早ミス』集計期間外、『本ミス』22位、『文春』1位、『このミス』1位―――と2冠を達成した作品。
ちなみに集計期間外だった『早ミス』でもその翌年に2位に輝いています。
それだけでも、本作が高い評価を集めたことが分かることでしょう。
・2013年(2012年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・【2013速報】『ミステリが読みたい!2014年版』発表!!
そんな本作は一気読みがしたくなるほど世界観に没入出来る傑作である。
その主な理由は完成した世界観が先にあることだ。
物語に合せてキャラを作るのではない。
まず完成した世界が其処に存在し、その中でキャラが呼吸し生きているのだ。
だから、常にキャラにとって自然な展開が生じている。
我々読者は其処に時に共感し、時に涙し、時に驚き、その世界に住む血脈を持って生きる人々に出会うことが出来るのだ。
これは本当に凄い事である。
ちなみに内容的には、まさに「執念」との言葉が相応しい。
此の言葉をキーワードに本作に挑むことで、ラストに浮かび上がる真相に対しより理解が深まる筈だ。
とりあえず、此処までをまとめると「読んでおけ!!」とでも言うべき作品だろう。
そんな中、本作の難を無理にでも上げるとすれば……一気読みしたくとも物理的に一気読みが難しいことだろうか。
一気読みしたいのにボリュームがあり過ぎて出来ない。
まだまだ『64』世界を楽しめるとの反面、早く先へ読み進みたいのに進めない。
このジレンマ!!
なお、ネタバレあらすじはかなり改変しています。
二渡とか「幸田メモ」とかかなり重要な部分を端折ったりしてます。
興味のある方は本作それ自体を読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
「翔子ちゃん誘拐殺人事件」―――それはD県警史上最悪の未解決事件である。
詳細は次の通りであった。
昭和64年1月5日、D県警管内にて雨宮翔子ちゃんが誘拐された。
お年玉をもらってくると言い残し昼過ぎに自宅を出た翔子ちゃんは、近くの親類宅に向かう途中で忽然と姿を消した。
後日、犯人から脅迫電話が雨宮のもとへかかって来た。
雨宮は身代金2千万円を支払ったが翔子ちゃんは無残な死体で発見されることに。
結局、犯人は未だに捕まっていない。
この事件はD県警内では触れること自体がタブーとされた。
だが、ただ一言だけ昭和64年に発生したことから通称「ロクヨン」と呼ばれていた。
そして現在、「ロクヨン」事件は後1週間ほどで時効を迎えようとしていたが……。
そんなある日、「ロクヨン」と全く同じ手法による誘拐事件が発生。
被害者は目崎香澄という女子高生。
その父親・目崎正人は娘の安否を憂い悶え苦しむ。
果たして香澄誘拐は模倣犯によるものなのか、それとも同一犯が再び動き出したのか―――D県警に激震が走る。
「ロクヨン」の悪夢を甦らせない為に動き出したD県警。
そして、導き出された結論とは!?
なんと、犯人は「ロクヨン」事件の被害者遺族・雨宮であった。
今回の被害者家族である目崎こそ「ロクヨン」事件の加害者だったのだ。
雨宮は当時の脅迫電話の声を覚えており14年の長い年月をかけ「あいうえお」順に電話帳を頼りに無言電話を行うことで遂に犯人を突き止めた。
そして、復讐に乗り出したのだ。
これに当時の捜査員の1人であり、無念の涙を呑んだ幸田が協力していたのである。
さらに、そもそも香澄は誘拐されても居なかった。
香澄の素行の悪さを利用し、無断で外泊したことを誘拐に偽装していたのだ。
香澄が保護されたことで事件は解決した。
しかし、まだ当の「ロクヨン」事件は解決していない。
雨宮と幸田が告発した目崎をD県警は捕らえることが出来るのか―――エンド。
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