『四季シリーズ(春 Green Spring、夏 Red Summer、秋 White Autumn、冬 Black Winter)』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。
ネタバレあります、注意!! <あらすじ>
・『四季 春 Green Spring』
科学者・真賀田四季。 幼くして発現する、真の天才。 圧倒的人気のカリスマ、真賀田四季の物語、第1弾。 天才科学者・真賀田四季(まがたしき)。彼女は5歳になるまでに語学を、6歳には数学と物理をマスタ、一流のエンジニアになった。すべてを一瞬にして理解し、把握し、思考するその能力に人々は魅了される。あらゆる概念にとらわれぬ知性が遭遇した殺人事件は、彼女にどんな影響を与えたのか。圧倒的人気の4部作、第1弾。
・『四季 夏 Red Summer』
四季、13歳。 あの夏、あの島で何が起こったのか? 孤島の事件、その真相を描く「四季」4部作、第2弾。 13歳。四季はプリンストン大学でマスタの称号を得、MITで博士号も取得し真の天才と讃えられた。青い瞳に知性を湛えた美しい少女に成長した彼女は、叔父・新藤清二と出掛けた遊園地で何者かに誘拐される。彼女が望んだもの、望んだこととは? 孤島の研究所で起こった殺人事件の真相が明かされる第2弾。
・『四季 秋 White Autumn』
犀川助教授と西之園萌絵。四季と再びの邂逅を試みる。四季が残したメッセージは、何を示す?
妃真加(ひまか)島で再び起きた殺人事件。その後、姿を消した四季を人は様々に噂した。現場に居合わせた西之園萌絵は、不在の四季の存在を、意識せずにはいられなかった……。犀川助教授が読み解いたメッセージに導かれ、2人は今一度、彼女との接触を試みる。四季の知られざる一面を鮮やかに描く、感動の第3弾。
・『四季 冬 Black Winter』
生と死そして時間。 すべてを超越し存在する、四季。 天才の成熟と到達。「四季」4部作、美しき完結編。 「それでも、人は、類型の中に夢を見ることが可能です」四季はそう言った。生も死も、時間という概念をも自らの中で解体し再構築し、新たな価値を与える彼女。超然とありつづけながら、成熟する天才の内面を、ある殺人事件を通して描く。作者の1つの到達点であり新たな作品世界の入口ともなる、4部作完結編。
(講談社公式HPより)
<感想>
天才・真賀田四季について「過去、現在、未来」を描いた4部作。
当初はシリーズではなく『四季』とのタイトルで1冊になる予定だったそうである。
なおタイトルである『春 Green Spring』、『夏 Red Summer』、『秋 White Autumn』、『冬 Black Winter』の意味は、それぞれ「青春、朱夏、白秋、玄冬」とのもの。
これについて詳しくは「Vシリーズ」の『赤緑黒白』に描写がある。
各巻はそれぞれ―――
『春 Green Spring』が「四季の幼少時の出来事」(Vシリーズと関連)。
『夏 Red Summer』が「四季による両親殺害の経緯」(S&Mシリーズ、Vシリーズと関連)。
『秋 White Autumn』が「ミチルの死の真相」(S&Mシリーズ、Vシリーズ、Gシリーズ、Xシリーズと関連)。
『冬 Black Winter』が「未来の四季」(S&Mシリーズ、百年シリーズと関連)。
について描かれている。
それぞれのリンクと特徴について述べると。
まず『春 Green Spring』では「Vシリーズ」の『赤緑白黒』のラストの意味が明かされる。
・
『赤緑黒白』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) 続いて『夏 Red Summer』では「四季による両親殺害の真相」が明らかに。
また、紅子との再度の遭遇も描かれる。
他にも西之園博士との対話についても触れられており、此の点は後のGシリーズにも繋がるか。
・
『すべてがFになる』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) 特筆すべき『秋 White Autumn』はこれまでの伏線の集大成的な作品となっている。
『有限と微小のパン』後の犀川と萌絵が描かれ、犀川、萌絵、保呂草、亜樹良たちから見た四季が語られているのも注目だろう。
さらに、ミチルの死の真相が明かされ『すべてがFになる』のソレとは異なる事実が判明する。
それと、萌絵と紅子の対面も見所だろう。
・
『すべてがFになる』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・
『有限と微小のパン』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) そして『冬 Black Winter』では未来世界に生きる四季が描かれている。
それは「百年シリーズ」と密接に結びつくことに。
ある意味、本「四季シリーズ」こそが他シリーズを繋ぎ止める「扇の要」とも言える作品なのである。
キャラもほぼオールキャストだし、ファン必読のシリーズです!!
なお、ネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
真賀田四季:まさに天才の名に相応しい天才の中の天才。
栗本其志雄:『春』では複数の意味を持ち、『夏』以降では四季の人格の1つ。
新藤清二:四季の叔父。『夏』の重要人物。
犀川創平:「S&Mシリーズ」の主人公。『秋』では萌絵との関係に進展が!?
西之園萌絵:犀川の恩師の娘にして犀川の教え子。院生になった。
保呂草潤平:美術品窃盗犯。『夏』で四季と意外な出会いを果たす。
各務亜樹良:『四季』シリーズの重要キャラで保呂草の恋人。四季を支援する組織の元メンバー。
瀬在丸紅子:「Vシリーズ」の主人公。犀川創平の母。
林:紅子の元夫で警部。フルネームは犀川林。犀川創平の父。
・『四季 春 Green Spring』
四季は生まれながらの天才少女であった。
周囲は彼女に常にひれ伏す。
四季は亜樹良らを仲間に加えて行く。
そんな中、四季は紅子と出会い彼女に興味を抱く。
一方で、四季は其志雄との出会いと別れを経験する。
・『四季 夏 Red Summer』
四季は叔父である新藤へ淡い想いを募らせて行く。
一方で、立ち寄った遊園地にて保呂草と出会い彼に興味を抱くが丁重に拒絶される。
これに並行し、亜樹良が四季のもとを去る。
さらに四季は紅子と再会。
これを仲間に加えようとするが此処でも拒否されてしまう。
四季は紅子に心を残しつつ、新藤との関係を押し進めようと計画。
やがて、それは彼と関係を結ぶことで結実するが……。
これにより四季は妊娠、反対した両親を新藤と共に手にかけることとなる。
・『四季 秋 White Autumn』
『有限と微小のパン』の後のこと。
萌絵が院生となり、犀川との関係は新たな局面を迎えていた。
萌絵はそろそろ犀川との間柄をステップアップさせたいと考えていたのだ。
だが、当の犀川は未だに四季について想いを馳せていた。
これに嫉妬を抱く萌絵。
しかし、そんな萌絵の気持ちすら犀川は理解してくれない。
ようやっと犀川が萌絵に指輪を贈っても、犀川は未だに四季について考えているのである。
そして数日後、四季の残したレゴ(『すべてがFになる』の物)に意味を見出した犀川。
其処に残されたメッセージに従い海外へ。
これに萌絵も同行することに。
一方、保呂草も四季の残したメッセージに気付いた。
どうも、四季は犀川に何やら興味を抱いているようだ。
もしも、それが犀川に危害を与えるものならば紅子の為にも阻止せねばならない。
こうして、保呂草は各務亜樹良と接触することに。
彼女は四季を支援する組織の元メンバー、何かを知っているのではないのかと思ったのだ。
しかし、今の亜樹良は特に知らされては居なかった。
保呂草は犀川を守るべくこれと合流することに。
とはいえ、それは彼にとって苦汁の決断であった。
何故なら、萌絵には彼が泥棒であることを知られているからだ。
だが、背に腹は代えられない。
自身を救うべく現れた保呂草と犀川は旧交を温める。
レゴの指し示す先へ向かった4人。
其処には四季からのビデオメッセージが残されていた。
四季は「ミチル」殺害(『すべてがFになる』の出来事)について当時明かさなかった事情を語り始めた。
ミチルの死は四季の手によるものではなく、彼女自身の自殺であったこと。
これを生かすべく、細胞を保存しようと解体したこと。
最後に、ミチルをクローンとして生き返らせるべく脱出を図ったこと。
これを聞いた犀川は何かに納得したように大きく頷く。
彼なりに吹っ切れるところがあったようだ。
とはいえ、それでも萌絵は納得がいかない。
帰国後、萌絵は思い切って犀川の母である紅子のもとを訪れた。
紅子は四季についての思い出(『赤緑黒白』での出来事)を語る。
紅子の明敏さに触れた萌絵は「流石は犀川先生のお母様」と感嘆することに。
しかし、未だに四季への嫉妬は晴れない。
これを紅子は「愛する人を扇風機にするのか太陽にするのか」と問う。
自分に振り向かせようとするのは扇風機のように一方向しか愛せない人。
だが、太陽のような人ならば満遍なく愛することが出来る。
相手を扇風機にするのか、太陽にするのかは萌絵次第だと告げたのだ。
紅子は犀川の父・林を扇風機にしてしまった……と反省していた。
これを聞いた萌絵は何だか肩が軽くなった気がするのであった。
・『四季 冬 Black Winter』
四季は振り返っていた。
想えば長きに渡り人の世を生きた。
今、四季は犀川たちとは別の時間軸にその身を置いていた。
この世界では、ミチルはクローンとして生を謳歌している。
他に思い出すのは犀川のこと。
彼は四季にとっても特別な存在であった。
とても興味深い存在だったのである。
だが、萌絵の手前介入することが憚られた。
だから、孤独を選んだ。
今、四季は数百年後の世界を彼女自身の手で構築していた。
四季は再び、ゆっくりと目を閉じた―――エンド。
◆関連過去記事
【Vシリーズ】
・シリーズ第1弾。
『黒猫の三角』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・シリーズ第10弾にして最終話。
『赤緑黒白』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) 【S&Mシリーズ】
・シリーズ第1弾。
『すべてがFになる』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・シリーズ第2弾。
『冷たい密室と博士たち』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・シリーズ第3弾。
『笑わない数学者』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・シリーズ第4弾。
『詩的私的ジャック』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・シリーズ第5弾。
『封印再度』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・シリーズ第9弾。
『数奇にして模型』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) ・シリーズ第10弾にして最終話。
『有限と微小のパン』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー) 【ドラマ版】
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「すべてがFになる」1話「冷たい密室と博士たち(前編)」(10月21日放送)ネタバレ批評(レビュー) ・
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