2015年02月14日

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第11話「初恋と殺人装置3」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第11話「初恋と殺人装置3」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第11話登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

蛍の父:赤木興業の社長。
赤木真知恵:蛍の母。バーのような店を経営している様子。

真島慎一:蛍の幼馴染。彼女に恋心を抱いている。9話から登場。
緑川楓:蛍のクラスメート。実は少女探偵であった。

謎の少年:蛍の初恋相手らしい。11話に登場。

実山:赤木興業を担当している会計士。
貝塚俊雄:実山会計士事務所の職員。比較的若手。
役丸みつえ:実山会計士事務所の職員。紅一点。
三島:実山会計士事務所の職員。太目。
丸木田:実山会計士事務所の職員。ダンディ。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

高校生になった赤木蛍は行方不明となっていた兄・圭一と思わぬ形で再会を果たすことに。
なんと、圭一が幽霊として蛍のもとに戻って来たのだ。
しかも、圭一は悪意が関わる事件を察知し悪意を消滅させる能力を手に入れていた。
だが、圭一は現世に介入することが出来ない。
これでは折角の力も無意味である。
其処で圭一から協力を求められた蛍は、兄妹で力を合わせ1人でも多くの人を助けるべく動き出すことに。

・前回までのあらすじはこちら。
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第10話「初恋と殺人装置2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

蛍の父が経営する赤木興業に未曾有のピンチが訪れていた。
経理を任せていた会計士の実山が会社の金を持った状態で姿を消してしまったのだ。
このままでは赤木興業は倒産してしまう。
蛍は工場を救うべく、幽霊となった兄・圭一と幼馴染の真島慎一と共に事態の解明に挑む。

そんな中、実山が何者かの殺人装置により殺害されてしまう。
この犯人は実山会計士事務所の職員・貝塚であった。

矢先、実は少女探偵であった緑川楓も解明に参入。
実山の殺害現場にて貝塚と遭遇してしまう。
当然、貝塚がこれを逃す筈がない。
楓は抵抗虚しく、貝塚に命を狙われてしまう。
圭一のこともあり、楓と関わることを避けたい蛍だが……。

とはいえ、蛍を見殺しには出来ない。
結局、これに介入することに。

楓の首を絞めていた貝塚は蛍に不意討ちを受けて少し怯んだものの、すぐに怒りを露にする。

「お前も、お前もかぁ〜〜〜そんなに金か、金なのかぁ!!」

どうやら貝塚は楓と蛍を実山の若い愛人だと誤解しているようだ。
理性を失ったように蛍へ襲い掛かる貝塚。
その足元では楓が気絶している。

貝塚の狂気に満ちた陰から蜘蛛のような悪意が溢れ出て来た。
それは増殖し、蛍を覆い尽くそうとする。
これを守ろうと飛び込む圭一。
だが、数が多過ぎてどうにもならない。

一方、貝塚は蛍の首筋に手を這わせ始めた。
蛍は呼吸を邪魔され顔色を変える。

そんな蛍に向け、貝塚が動機を語り始めた。
すべては金の為だったらしい。

故郷から幼馴染の麻依と共に上京した貝塚。
2人は結婚を約束した恋人同士であった。
ところが、日々の生活に汲々とするうちに麻依が資産家の男性に乗り換えてしまった。
貝塚は約束を踏みにじられ血の涙を流すことに。
いつしか、貝塚は「金こそがすべてだ」と信じるように。

その頃、貝塚が務める会計士事務所の所長・実山が離婚した。
独身となった実山は蛍の母でバーを営む真知恵に入れ揚げるようになった。

実は真知恵と実山は高校時代の同級生。
実山にとって真知恵はマドンナだったのだ。

真知恵は実山をもてなし、実山は赤木興業の経理を担当することとなった。
いつしか実山は人妻であるにも関わらず真知恵との再婚を夢見るようになった。

しかし、此処で実山は現実を知ることに。
真知恵は実山を客としてしか見ていなかった。
それどころか、同級生として覚えても居なかったのだ。

これを知った実山は逆上し、赤木興業に復讐することに決めた。
資金を持ち逃げし倒産に追い込もうとしたのだ。

この実山の動きを知ったのが貝塚だ。
ならば、この動きに便乗し他の顧客の資産も奪ってしまえ……貝塚は決断した。
その罪は実山に着せて殺してしまえば誰にも分からない。

其処で、今回の事件に繋がったのである。

今や意識も朦朧として来た蛍。
そんな蛍の前で動機を明かした貝塚の顔が蜘蛛に転じた。
貝塚は動機を明かしながら、血の涙を流している。

これに圭一が気付いた。
蜘蛛の子は本体では無い。
あの貝塚の顔こそが本体なのだ。

圭一は手にした銃を発砲。
狙い違わず弾は貝塚に命中、貝塚は倒れ臥す。
圭一の銃弾は貝塚の悪意だけを撃ち抜いていた。

こうして事件は解決した。
実山は死亡、貝塚と楓は気絶との結末である。

楓を気にかける蛍だが、これ以上はどうしようもない。
警察の保護を期待して置いて行くこととなった。

実山のマンションを去る蛍。
事の発端が「初恋」にあったと知り、ある少年の姿を思い浮かべる。
思えば、それが蛍の初恋であった。

一方、慎一はと言えば「いつか蛍ちゃんに告白するぞ!!」とこれまた決意を新たにしていた。

そして、数時間後。
保護された楓は刑事に事情を説明していた。
だが、其処に蛍の名は無い。
しかし……楓は意識を失う寸前に飛び込んで来た蛍の姿をはっきり覚えていた。
蛍の存在に興味を抱く楓―――次話に続く。

いよいよ始まった蛍と圭一の奇妙な相棒物語。
ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように展開などをかなり改変してます。
気になる詳細は「週刊少年チャンピオン」本誌で確認せよ!!

<感想>

「名探偵マーニー」から3ヶ月……我らが木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」に還って来た!!
というワケで、その新作「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」です。

さて、その11話。
サブタイ「初恋と殺人装置」の意味が真に明らかになりました。

なるほど、此処での初恋は慎一であり、実山であり、貝塚であり、蛍であったワケか。

慎一にとっては蛍が初恋相手。
実山にとっては真知恵が初恋相手。
貝塚にとっては麻依が初恋相手。
蛍にとっては謎の少年が初恋相手。

そして、それぞれにとっての殺人装置は。

慎一にとっては蛍に振り回されることとなった装置。
実山にとっては命を絶たれることとなった装置。
貝塚にとっては実山の命を奪う装置。
蛍にとっては事件解決に寄与した装置。

なるほど、サブタイは実に4者を表現していたワケです。

それにしても、この4者のうち実山と貝塚が初恋に破れた。
かくも初恋は厳しいものなのか……慎一はどうなる!?

でもって、蛍の初恋相手の「謎の少年」の正体が気にかかる。
これ、もしかして圭一ではなかろうか。
ただ、台詞から見ると兄妹の関係では無い様子。
今回の真知恵がモテるとの設定からも、蛍父と真知恵は再婚なのかも。
もしかすると、圭一と蛍はそれぞれの連れ子同士で血縁関係にない可能性もあるのではなかろうか……。
だとすれば、蛍の圭一への態度も頷けるが。

同時に、蛍の母の名が「真知恵」であることも判明。
蛍は真知恵に似ているのかなぁ……。
もしも、先の仮説通りに蛍父と真知恵が再婚同士ならば2人の結婚話などは重要エピソードとなりそう。

そして、思わぬ因縁となった蛍と緑川楓の関係。
これは良きライバルとなりそう。
時に対立、時に共闘といった姿が見られそうで何より。
最終的には圭一殺害犯に対して共に戦うかけがえの無い仲間になることでしょう。

そして、次回からは新エピソードが開幕か。
次回も見逃すなかれ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」関連過去記事
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)第1話から第10話までネタバレ批評(レビュー)まとめ

◆関連過去記事
「名探偵マーニー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)まとめ

「フランケン・ふらん 最終話(最終回) Dream」ネタバレ批評(レビュー)

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「Phase20」(木々津克久作、「チャンピオンRED 2012年1月号」掲載)ネタバレ批評(レビュー)

「鋏女(チャンピオンRED 5月号掲載)」ネタバレ批評(レビュー)

「ヴァンパイア・アナライズ (チャンピオンRED 7月号掲載)」(木々津克久著、秋田書店刊)ネタバレ批評(レビュー)

これまでの登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

獣を連れた男:圭一の死に関わる人物。獣は殺意のことらしい。

【赤木家とその周辺】
蛍の父:赤木興業の社長。
赤木真知恵:蛍の母。バーのような店を経営している様子。
節:蛍の妹。
和也:蛍の弟。

謎の少年:蛍の初恋相手らしい。11話に登場。
真島慎一:蛍の幼馴染。彼女に恋心を抱いている。9話から登場。

【聖マルス学園関係者】
志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
塞田康平:蛍のクラスの担任教師。割とミーハーらしい。
見場創太:3話ラストに登場した怪しい男。学園の生徒であった。
緑川楓:蛍のクラスメート。実は少女探偵であった。
校長:聖マルス学園の校長。
教頭:聖マルス学園の教頭。

【その他】
志田高志:りかの兄。りかにストーカーしているとのことだが……。
実山:赤木興業を担当している会計士。
貝塚俊雄:実山会計士事務所の職員。比較的若手。
役丸みつえ:実山会計士事務所の職員。紅一点。
三島:実山会計士事務所の職員。太目。
丸木田:実山会計士事務所の職員。ダンディ。
麻依:貝塚の元婚約者。

「名探偵マーニー(1) (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
名探偵マーニー(1) (少年チャンピオン・コミックス)





「名探偵マーニー 2 (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
名探偵マーニー 2 (少年チャンピオン・コミックス)





「名探偵マーニー(3) (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
名探偵マーニー(3) (少年チャンピオン・コミックス)





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「ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
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『スノーホワイト』(森川智喜著、講談社刊)

『スノーホワイト』(森川智喜著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

「何でも知ることのできる不思議な鏡」をつかって小さな探偵事務所を営む女子中学生・襟音ママエ。自分の頭ではまったく推理をせず、鏡の力に頼りきりのママエだったが、ある事件がきっかけで、悪がしこい名探偵・三途川理(さんずのかわことわり)に命を狙われることになってしまい――!?
(講談社公式HPより)


<感想>

「名探偵 三途川理シリーズ」第2弾。
単行本時タイトルは『スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ』。

本作はその名の通り「白雪姫」がテーマ。
何しろ、鏡も登場するし、継母が敵役だし、毒りんごも出るし、食べたあの人が眠っちゃうし。

そして本作は「第14回 本格ミステリ大賞」を受賞作です。

第14回本格ミステリ大賞(小説部門、評論・研究部門)発表!!栄冠はどの作品!?

シリーズには他に『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人(文庫時「キャットフード」に改題)』と『踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE(2014年12月時点では未文庫)』の2冊がある。

『キャットフード』(森川智喜著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

第1弾『キャットフード』もそうでしたが、今回も「如何にしてルールの裏をかくか」がポイント。
そのルールが今回は「不思議な鏡の使い方」になっています。

すなわち、制限のある鏡の使い方に工夫を凝らす三途川こそが見所。
その為に、前半ではママエによる鏡の使い方が示され、これと比較するように後半に三途川の使用法が配されているのでしょう。
それにより鏡の有用性が劇的に向上する。
まさに、道具は使う人間次第といったところか。

それと、三途川理と緋山燃の因縁がさらに深まる点も見逃せない。

世界観はバッチリ、キャラも魅力的とバランスも良いので是非読んで欲しい作品です。

ちなみに、毎度のことながらネタバレあらすじにはかなり改変を加えています。
すなわち、あくまでエッセンスを伝えるに留まっています。
本作の本質を楽しむ為には原典を読むことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
襟音ママエ:探偵事務所を開く少女
グランピー・イングラム:ママエの助手で小人。七人兄弟の末っ子。
三途川理:天才探偵。驚異的な知力で相手を常に翻弄する。しかし、緋山にだけは……。
緋山燃:天才探偵。三途川の天敵。
ダイナ・ジャパーウォック・ヴィルドゥンゲン:ふしぎな国の王妃


襟音ママエは中学生。
幼い時分に母親を亡くし、母の知人であった小人のグランピー・イングラムと共に暮らしている。

そんなママエが探偵業を始めることに。
実はママエには「世の中のすべてを見通す不思議な鏡」があったのだ。
これさえあればどんな事件もすぐに犯人が分かるのだから万全である。

とはいえ、グランピーは不安を拭えなかった。

まず、「不思議な鏡」といえど完璧では無い。
過去の事は分かるが未来の事は分からない。
例えば、既に起こった事件の犯人を問うことは出来る。
だが、これから起こるであろう事件の犯人を問うことは出来ないのだ。

そして、「不思議な鏡」の存在は公言することが出来ない。
それはママエやグランピーなど「不思議な国」の人間以外には明かせないのだ。
その為、仮に「不思議な鏡」を用いてママエだけに犯人が分かっても「何故、ママエが犯人だと分かったか」を説明できないのだ。

しかも、「不思議な鏡」は「不思議な国」の王家に伝わる秘宝。
世界には王家にあるオリジナルとママエのもとにある2つしか存在しないのだ。
これはママエ自身も知らないことだが、彼女は王家の正当後継者だったのである。
グランピーはお目付け役だったのだ。

とはいえ、ママエがグランピーの諫言を聞く筈がない。
グランピーとしては不本意ながら、ママエに押し切られる形で使用を許すことに。

ママエは「不思議な鏡」を用いて次々と事件を解決。
その解決法に疑問はあったが、一躍有名探偵の仲間入りを果たす。

そんなある日、ママエはある大金持ちから依頼を受けた。
何でも殺人予告が届いたそうで、犯行を未然に防ぎ犯人を突き止めて欲しいらしい。

早速、依頼人宅を訪れたママエ。
すると、其処には他に2人の探偵が雇われていた。

1人が三途川理、もう1人が緋山燃である。
ママエが見る限り、2人は犬猿の仲。
とはいえ、互いに実力を認めているらしく、ママエそっちのけで理路整然と事件について検証し始めた。

こうなると面白くないのはママエである。
グランピーが止めるのも聞かず、ママエは「不思議な鏡」を用いて犯人を突き止める。

その犯人とは……三途川理であった。
なんと、探偵による自作自演だったのである。
三途川は事前に依頼人宅に自分を売り込んでおき、その上で脅迫状を送り付け自分を雇わせたのだ。
とんでもない奴である!!

怒ったママエは「犯人だ」と三途川を指摘するが、その理由を上手く説明できない。
様子を見ていた緋山が助け船を出すのだが、狡猾な三途川に止めを刺すには至らない。
そうこうしている内に、依頼人から3人ともクビにされてしまった。

なんとか三途川の思惑を阻止し満足したママエ。
だが、当の三途川はママエに深い恨みを抱くと共に、何か秘密があると疑い始めた。

同じ頃、不思議な国では王が没し後継者を巡り騒動が勃発していた。
有力だったのは先王の後妻であるダイナ・ジャパーウォック・ヴィルドゥンゲン。
ところが、ダイナがオリジナルの「不思議な鏡」に「もっとも次の王に相応しい者」を尋ねたか、さぁ大変。
此処にママエの存在が露見してしまうことに。

焦ったダイナはママエ抹殺を目論み暗躍し始める。
ママエに恨みを持つ者を探し出したところ、出て来たのは……三途川だったのである。

こうしてダイナは三途川と共謀しママエ抹殺を企むことに。
一方、「不思議な鏡」の存在を知った三途川はダイナをも出し抜き、これを手に入れようと画策し始めた。

三途川はその悪魔的な頭脳で「不思議な鏡」の革新的な使用法を見出した。
制限のあった鏡の使用法を「たら、れば」を用いて拡大したのだ。

例えば、リアルタイムに起こる遠隔地の出来事を映し出すこと。
本来ならば、これもまた制限されることであった。
だが、「もしも、ママエの事務所に盗撮カメラを仕掛けたら映し出される映像を見せろ」と命じることでこれをクリアした。

さらに、本来は不可能だった未来の出来事についても「もしも、こうしたら……」とシミュレーションの形で表現させることでクリアした。
もっとも、これはあくまでシミュレーションなので命じた時点の情報に基づいた分析となるがその精度は驚くほど高い。
もはや、死角はない状態である。

この状態で三途川はママエ暗殺計画を実行に移す。
毒林檎を送り付けたのである。
予定では、ママエが食べて落命する筈であった。

ところが、此処に三途川の仇敵・緋山燃が現れる。
緋山は先のママエの推理に不審な点があったことに興味を持っており、探偵業の先輩として忠告に訪れたらしい。

思わぬ闖入者に狼狽える三途川。
そんな彼の気も知らず、緋山は毒林檎を口にして倒れてしまう。
緋山は意識不明の重体に陥るが、一命を取り留めることに。

さぁ、こうなっては困るのは三途川だ。
もしも、ママエが「不思議な鏡」に「毒林檎事件の犯人」を尋ねてしまえばダイナと共謀していることがバレてしまう。
そうなれば、ママエ殺害は不可能になる上、こちらの世界では裁かれないかもしれないが「不思議な国」で裁かれてしまう。
さらに、緋山が回復すれば同様の真相に辿り着くのも時間の問題だろう。

焦った三途川はママエの持つ「不思議な鏡」と緋山の排除を狙うことに。
真っ先に狙ったのは「不思議な鏡」である。
ママエの事務所を訪問した三途川は隙を見て、何やら叫ぶと鏡を割ってしまう。
ママエの持つ「不思議な鏡」の周辺には割れた鏡の破片が散乱し、何も映さなくなってしまった。

ショックを受けるママエ。
一方、グランピーは三途川の様子に気付き、彼がダイナと通じているのではと疑いを持った。
其処で「不思議な国」に居る兄たちに助っ人を求める。

小人であることを利用したグランピーたちは三途川周辺を調べ「ダイナと繋がっていること」、「次の狙いが緋山であること」を確認する。
しかし、オリジナルの「不思議な鏡」を用いる三途川により確認したことを知られてしまう。

三途川はグランピーたちを警戒し、ダイナにも計画を伏せて動き出す。
ところが、ダイナはどうにも三途川が信用出来ない。
何かを隠しているように感じられたのだ。
もっとも、この感覚は正しい。
なにしろ、三途川は事後にダイナから「不思議な鏡」を奪う方策を企んでいたのだから。

気になって仕方がないダイナは三途川の隙を突き「不思議な鏡」を用いて計画の詳細を知ろうとする。
とはいえ、小人も警戒せねばならない。
其処で「不思議な鏡」に幾つか尋ねることに。

まず、緋山が入院中であることを確認。
続いて、病院の部屋数を確認し7部屋あるらしいことも突き止めた。
次いで、病室すべてに小人が詰めていることも確認した。

7部屋に7人の小人!!
グランピーは7人兄弟だから、ダイナたちを監視する者は誰も居ない。
ほっとしたダイナはついつい鏡に計画を尋ねてしまう。

それは鏡により緋山の担当医師の声を再生し、電話で看護師に偽の指示を与え毒殺するものであった。

途端、ダイナの傍から小人が飛び出して来た。
小人が急を報せたことで緋山はまたも命を拾うことに。

これを知った三途川は大激怒。
ダイナに二度と口出しするなと言い含める。

7部屋に7人の小人が詰めている筈なのに、何故、もう1人小人が監視していたのか?
実は4号室が存在しなかったのだ。
ダイナは「不思議な国」の住人ゆえに知らなかったが「4」は「死」を連想させる為に病室として利用されていなかったのである。
すなわち、部屋数は7部屋でも病室は6部屋。
全部屋に小人が詰めていても、6人しか居ないのだ。
残る1人がダイナを監視していたのであった。

此処に三途川は最終計画を発動することに。
一方、緋山の回復まで彼を守り抜こうと病室前に集まったママエと小人たち。
そんな彼らに、どこからか三途川の声が響く。

それは何時の間にか廊下に飾られていた鏡から響いていた。
そう、その鏡こそ「不思議な鏡」だったのだ。

三途川はママエたちに最終計画の内容を明かす。
この「不思議な鏡」。
使用者との意志疎通の為にディスプレイ機能と発声機能が備わっている。
三途川は其処に目を付けた。

「不思議な鏡」は音量と光量を最大に設定することで「鏡爆弾」になるのだ。
あまりにも勿体なさ過ぎて誰も考え付かなかった悪魔の手法である。
後は三途川が一声唱えるだけで病院は崩れ落ちるのだ。

恐怖のあまりガタガタ震え出すママエたち。
グランピーがもっと三途川を警戒すべきだったと後悔した頃、三途川が息を吸い込んで声を……。

と、此処で鏡が割れた。
とはいえ、三途川の「鏡爆弾」が炸裂したワケではない。

間一髪、目覚めた緋山がその場の状況を察し手にしていた林檎を鏡にぶつけたのだ。
割れてしまえば、鏡は機能を喪失する。
こうして、またも三途川は緋山に敗北を喫するのであった。

それから数日後、「不思議な国」では新女王の戴冠式が行われていた。
玉座に就いたのは……ママエだ。
その傍にはグランピーも居る。
そして、恩人として緋山が紹介された。
さらに、其処には何故か失われた筈の「不思議な鏡」もあったのだ。

緋山はこの事情を説明する。
三途川の性格をよく知る緋山は彼が鏡爆弾を使用したことが不自然だと考えていた。
三途川ならば「不思議な鏡」を欲しがる筈なのだ。

ママエに倒れていた間のことを尋ねたところ、ママエの鏡が割れたくだりに目を止めた。
其処で割れたとされるママエの鏡を手に、元に戻るよう命令を下したのだ。

すると……劇的な変化が訪れた。
なんと、鏡は割れる前同様に目の前の物を映し出したのである。

実は三途川は鏡を割ったように見せかけ、鏡にこう指示を下したのだ。
「周囲の物を映し出せ」と。
これにより、鏡は鏡としての機能を喪失したように偽装されたのだ。

三途川はオリジナルを「鏡爆弾」に用いた後で、こっそりとママエの鏡を回収するつもりだったようだ。

こうして、鏡を取り戻したママエは緋山を英雄として讃える。
ちなみに、三途川とダイナにはそれ相応の処分が下されるようである―――エンド。

◆関連過去記事
『キャットフード』(森川智喜著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『半導体探偵マキナの未定義な冒険』(森川智喜著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

第14回本格ミステリ大賞(小説部門、評論・研究部門)発表!!栄冠はどの作品!?

シリーズ第2弾「スノーホワイト (講談社文庫)」です!!
スノーホワイト (講談社文庫)





キンドル版「スノーホワイト 講談社文庫」です!!
スノーホワイト 講談社文庫





シリーズ第1弾「キャットフード (講談社文庫)」です!!
キャットフード (講談社文庫)





こちらはキンドル版「キャットフード 名探偵三途川理 (講談社文庫)」です!!
キャットフード 名探偵三途川理 (講談社文庫)





シリーズ第3弾「踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE (講談社BOX)」です!!
踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE (講談社BOX)





キンドル版「踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE (講談社BOX)」です!!
踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE (講談社BOX)





「半導体探偵マキナの未定義な冒険」です!!
半導体探偵マキナの未定義な冒険



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