2015年02月22日

「実は私は」第100話「デートしよう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「実は私は」第100話「デートしよう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧は本記事下部に移動しました。

<あらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜

「アナザル」こと「絶対に秘密を守れない男」黒峰朝陽は憧れのヒロイン・白神葉子の秘密を知ってしまった。
その秘密とは「白神葉子がハーフの吸血鬼である」こと。
朝陽は葉子の為に、この秘密を守らねばならない―――。
取り巻く人々を相手に、朝陽は秘密を守り抜くことが出来るのか?

矢先、実は宇宙人であった委員長・渚、狼男で肉食系女子な獅穂、悪魔っ娘の茜、未来人の凛、幼馴染のみかん、天使の華恋も加わって……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

朝陽は張り切っていた!!
そして、興奮していた!!
何しろ、今日は朝陽にとって記念すべき日なのだ。

そう、今日は交際開始後初の葉子とのデートを迎えた日なのである。
朝陽は徹夜して考えた必勝のデートプランを手に勝負の場へと向かう。
向かった先は水族館。

其処では葉子が待っていた。
今日に限っては「流水も耐えて見せる」と熱く語る。
どうやら、水族館に興味を抱いているらしい。
手応えを感じた朝陽は「良しっ!!」と心中で快哉を叫ぶ。

一方、葉子の気がかりはこういった場合に必ず現れる茜のことだ。
茜対策として飴ちゃんを取り出してみるが……特に飛び出して来る様子は無い。
安全を確認した葉子は意気揚々と水族館内へ。
朝陽は慌ててこれを追うのだが……。

安心するにはまだ早かった。
水族館内に置かれた特設ルーム。
其処には実況やゲストが集い、朝陽と葉子の様子を陰ながらウオッチングしていた。
メンバーは茜、桐子、緑苑坂弓である。
他にアシスタントとして華恋と手崎の姿までが並んでいる。

「くっくっく、あの程度の飴で動くとでも……」
不敵な台詞を口にする茜の前には多数のお菓子が積まれていた。
このお菓子により、自制したようだ。

その隣では弓が「あいつら、付き合っとんかぁ!!」と我を忘れて叫び、桐子に「あらあら、まるで源二郎さんみたい」と釘を刺され四苦八苦している。

何とも混沌とした実況席ではあるが、その間に朝陽がアタックを開始した。
さり気なく葉子の手を握ろうと距離を縮めたのだ。

これに「良し、行け」と騒ぐ茜と桐子。
キャラを忘れた源二郎は「許さん、絶対に許さんぞ!!」と弓の姿で本音を洩らす。

しかし、朝陽の狙いは葉子に上手く躱されてしまう。
葉子が意識的に恥らったのではない。
水槽に泳ぐ魚の動きに沿って葉子が動く為に、朝陽の狙いが定まらないのだ。

こうして、朝陽第1の策は失敗に終わる。
だが、流石は徹夜までしたプランである。
第2の策があった。

第2の策、それは「大型水槽で今度こそ手を繋ごう」。
多数の客が居並ぶ大型水槽前で観察を続けることで周囲に押されて密着しつつ、ロマンティックな気分で手を繋ぐとのプランだ。

同じ客たちに周囲を押され、必然的に距離を縮める朝陽と葉子。
肩が触れ合うまでになった2人。
朝陽は此処ぞとばかりに葉子の手に自身の手を伸ばす……。

途端、くぅ〜〜〜と葉子の腹のムシが鳴った。

「まさか、此処で鳴らすか……」
「魚群を見て綺麗よりも先に、美味しそうと感じたのか……」
葉子のポテンシャルのあまりの高さに言葉を失う茜と桐子。
衝撃から立ち直ったところで源二郎が消えたことに気付く。

その頃、葉子が「あっ、マンボウ」と叫ぶ。
これを目にした朝陽は目を疑うことに。

水槽の奥から、マンボウに扮した源二郎が泳いで来たのである。
ざわめく観衆たち、1人葉子だけは「おとんに似たマンボウだねぇ」と感想を述べている。
しかし、朝陽は確信していたそのマンボウが源二郎であることに。

そうこうしている内に、飼育員らしきダイバーが登場。
源二郎マンボウに向けて何かを投げて寄越した。

「あっ、餌かな?」
素直に表現する葉子だが、朝陽は思わず目を逸らす。

何故なら、飼育員がマンボウに投げたものはにんにくの塊だったのだ。
そう、飼育員の正体は桐子であった。
にんにくの直撃を受けた源二郎マンボウはしばらく痙攣を繰り返すとやがて静かになり海面へと浮いて行く。
此処に来て朝陽は茜たちの存在を確信しつつあった。

一方、茜はと言えば「子供の色恋で騒ぎおって」と源二郎を揶揄しつつ大人の余裕を見せていた。
ところが、朝陽と葉子の背後にサクラと明里を見出し、色を失う。

数分後にはペンギン姿の茜が大挙して館内を行進する事態に発展していた。

「おいっ、聖職者が教え子に手を出して良いと思ってんのかぁ!?」
「違うっ、進路指導の相談を受けてただけだ!!」

茜と言い合う明里の台詞と共に飛び交う怒号と罵声。
気付けば多数の茜が明里の手で空へと舞い、館内は大パニックに。

結果、朝陽と葉子は水族館を追い出されてしまう。

(せ、折角、徹夜して考えたデートコースがメチャクチャだ……)
余りと言えば余りの事態に愕然とする朝陽。
そんな朝陽に気付いた葉子は「楽しかったよ」と彼を励ます。
さらに「まだ時間があるから……」と予想外のデート第二部に誘う。

どうやら、ドキドキのデートはまだまだ続くようで―――101話に続く。

充実の「実は私は」が読めるのは「週刊少年チャンピオン」だけ。
本誌で確認せよ!!

<感想>

「週刊少年チャンピオン」にて「さくらDISCORD」を連載されていた増田英二先生の新作。
「さくらDISCORD」は未読の管理人ですが、1話を読んで注目している作品です。
コミックス1巻に続き2巻、3巻、4巻、5巻、6巻、7巻、8巻、9巻も重版出来とのことで、目出度い。
さらに、10巻も発売。
そして、本作かなり面白い!!

ちなみに遂に「実は私は」がアニメ化されるとのこと。
詳細は「週刊少年チャンピオン」の続報を待つべし!!

【朗報】あの「実は私は」が2015年にアニメ化予定とのこと!!

その100話。
遂に100話の大台を達成し、さらに今後に期待を寄せられる本作!!

そんな記念すべき100話のサブタイは「デートしよう!」。
記念回だけに、やはり主役である朝陽と葉子のエピソードに。
しかも「葉子さん、天使や!!葉子さんは天使やで!!」な回ですね。

朝陽と葉子、通算3回目のデートは水族館に。
前2回は交際前の出来事となっており遊園地でした。
それぞれ10話「遊園地に行こう!」と69話「デートプロデュースしよう!」に詳しいですね。

「実は私は」第10話「遊園地に行こう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「実は私は」第69話「デートプロデュースしよう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

当然、交際開始後初のデートを大事にしたい朝陽や葉子。
そんな2人とは裏腹に野次馬は今回も介入します。

それが茜、桐子、弓(源二郎)、華恋、手崎たち。
ある意味、彼女さんのご両親同伴でのデートと言っても間違いないか。

さらに、この面子ならば騒動が起こって然るべし……で、やっぱり騒動が発生。
とはいえ、この騒動により絆をより深めたことになりそうです。
しかも、此処から予想だにしないデート第二部が待ち構えている様子。
あのプール回(19話「泳げるようになろう!!」)を超えるシリアス展開が来るか!?

「実は私は」第19話「泳げるようになろう!!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

でもって、サクラの明里へのアタックも続いていた様子。
これはこれで脈がありそうなだけに注目!!

うむ、今回も充実した回ですな。
多くは語るまい、とりあえず読め!!

そう言えば、上でもお伝えした通りコミックス10巻が発売。
表紙は1巻の葉子、2巻の渚、3巻の獅穂、4巻の茜、5巻のフクちゃんとみかん、6巻の凛、7巻の明里さんに続き、8巻が銀華恋、9巻が渚とみかんのコンビ。
そして10巻は―――1周回って葉子が単独で表紙に!!
うむむ、11巻は誰になるのか……まさか、緑苑坂弓ではなかろうな。

ちなみに、上記のあらすじは本作の魅力を伝えられるよう改変を加えてまとめていますが、その面白さを伝えきれていません。
やっぱり、あの絵とコマ割りなどのテンポあっての本作。
是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を読んで欲しい。

もう1度繰り返しましょう。
本作に興味を持たれた方には、是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を捜して読んで欲しい。
最近の「週刊少年チャンピオン」は本作など本当に粒揃いでクオリティが高い作品が多い。
注目の雑誌の1つと言えるでしょう。

◆関連過去記事
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登場人物一覧:
黒峰朝陽:主人公、通称「アナザル」。
白神葉子:朝陽の意中の人物。ある秘密が……。
紫々戸獅狼:葉子の幼馴染。彼もまたある秘密を……。
紫々戸獅穂:葉子の幼馴染。彼女もまたある秘密を……。

藍澤渚:クラス委員長。彼女にも秘密が……。
藍澤涼:渚の兄、意外な形で登場することに……。
紅本茜:紅本の親族らしい。彼女にも秘密が……。
紅本明里:教師。彼女にも秘密が……。
黄龍院凛:33話より登場した謎の少女。彼女にも秘密が!?
黄龍丸:凛が駆るドラゴン。52話にて意外な正体が明らかに。

朱美みかん:朝陽の幼馴染。新聞部所属。通称「外道クイーン(オレンジ)」。
岡田:朝陽の友人の1人。通称・岡。眼鏡が特徴。割と友人想いの様子。
嶋田:朝陽の友人の1人。通称・嶋。軽い。
桜田:朝陽の友人の1人。通称・サクラ。渋い。
フクちゃん:「福の神見習い」を名乗る眼鏡。
フクの介:フクちゃんの先輩。やはり眼鏡。
フク太郎:フクちゃんとフクの介の先輩。やはり眼鏡。
フク蔵:フクちゃんとフクの介とフク太郎の先輩。やはり眼鏡。
手崎:文字通り茜の手先な料理教室のシェフ。

朝陽の父:朝陽の家族。22話に初登場。
朝陽の母:朝陽の家族。22話に初登場。
黒峰鳴:朝陽の妹。22話、28話、48話に登場。48話にて名前と顔が判明。92話で高校に進学。
白神源二郎:吸血鬼。額に十字傷を抱く巨人。39話にて名前が判明。
白神桐子:葉子の母で人間。和服の美女。38話にて名前が判明。
銀華恋:茜に続く第2のツノツキ……の筈だったが。58話から登場。

緑苑坂弓:朝陽たちの副担任、実は源二郎。92話から登場。
忍者少女:92話から登場、詳細不明。

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実は私は(1) (少年チャンピオン・コミックス)





こちらはキンドル版「実は私は(1)」です!!
実は私は(1)





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「実は私は(3)」です!!
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『迂闊な婦人の厄介な一日』(深緑野分著、新潮社刊『小説新潮 2015年2月号』掲載)

『迂闊な婦人の厄介な一日』(深緑野分著、新潮社刊『小説新潮 2015年2月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

――秘密を抱えた婦人を見舞った厄介な出来事。謎の訪問者の正体は?
(新潮社公式HPより)


<感想>

第7回「ミステリーズ!新人賞」佳作『オーブランの少女』にてデビューされた深緑野分先生の作品。
『オーブランの少女』の書評(レビュー)でも触れたが、文章力、構成力、ストーリーテリングと3拍子に優れた作風が特徴。
間違いなく今後に期待の作家さんの1人であろう。

『オーブランの少女』(深緑野分著、東京創元社刊「ミステリーズ vol.44」掲載)ネタバレ書評(レビュー)

本作『迂闊な婦人の厄介な一日』もそんな作風が存分に発揮された作品。
読み始めるとグイグイ作品世界に惹き込まれ、気付けばきっと読み終えているだろう。
そして、破壊力も抜群!!
管理人が自信を持ってオススメできる短編の1つだ。

本作のポイントは「玄人ゆえの誤認」。
この「玄人ゆえ」の視点がとてつもなく面白い。
さらに、全編に配された伏線が収束して行く様も美しい。
ある秘密を抱えた婦人が体験した事件の真相とは―――あなたも本作を読むべし。

ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
「例の招待状」とかカットしているので、本作それ自体はもっと凄いです。
興味のある方は本作それ自体を読むことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

クリスマス。
鳴り響くジングルベルの傍らで、奥様は夕食の買い物を終えると商店街の中を抜け家路を急いでいた。
その視界に商店街の電気屋が提供するビンゴ大会の様子がちらりと映る。
どうやら、盛況のようであちこちから歓声が湧き上がっている。
ハンディタイプのビデオカメラなどは早くも品切れになっているようだ。

しかし、彼女にとってソレはソレ。
彼女は急ぎ家に戻らなければならない。
何しろ、それは彼女が帯びた使命にも関わることだったから。

奥様の正体は悪人を秘密裏に暗殺する特別捜査官。
今回の任務は、彼女の家の向かい側にある青い屋根の家の住人が対象である。
そして、彼女はその住人を監視するべく今の夫と結婚したのだ。
ちなみに、夫には連れ子が存在しており16歳になる。
生意気盛りで、彼女にとって何とも気に喰わない相手だが仕事の為なので仕方がないと諦めていた。
しかし、感情は収まらない。

それにしても、あのガキ。本当に腹が立つ!!

彼女は胸中で繰り返す。
例えば、こんなことがあったのだ。

継子に嫌われないよう細心の注意で接している奥様。
先日もクリスマスを迎えるにあたり、それとなくプレゼントの希望を尋ねてみた。
すると、そのときは「欲しい物は高くなりそうだからいいよ」と言ったのだ。
だから、本当に要らないのだろうと思っていた。
ところが、夫によるとそれは遠慮しただけで本当は欲しがっているらしい。
仕方なく、今朝になって改めて尋ねてみると「靴下が欲しい」とぬかしやがった。
「高い物」じゃなかったのか、ええっ!?
180度の方針転換である。
要は私が気に喰わないから嫌がらせしやがったのだ。

そう言えば、先頃は何を勘違いしたのかニヤニヤと色気づいた目で自分を見詰めることも気に喰わない。
他にも、ゲームや映画鑑賞に凝っているらしく妙な仲間と部屋に籠っているのもムシャクシャする原因であった。

ああ、何もかもムカつく!!

奥様は心の中で「あのガキ、(自主規制)して(自主規制)してやろうか」と憤る。
実際のところ、歴戦のプロである彼女ならばそれが可能なだけに怖い。
それほど、彼女の中で継子に対する怒りが募っていたのだ。

しかし、だからと言って嫌われるワケには行かない。
奥様は常に継子に対して気を使い続けて居た。

そんなこんなで帰宅した奥様。
早速、厨房に籠って手料理を作ろうとしていたところ。

「ギャー」

何やら断末魔のような声が聞こえて来た。
方角は2階、すなわち継子の部屋だ。
いや、まさかね……そっと聞き流す奥様であったが。

「ギャー」

もう1度、まるで聞かせるように悲鳴が上がる。
間違いない。
やはり、何かが起こったようである。

警戒しつつ、そっと2階に上がって行く奥様。
咄嗟の敵に反応出来るよう身構えながら継子の部屋の扉を開ける。
すると、中には―――。

血塗れの継子が立っていた。
その足元には若く美しい少女が胸を血に染めて倒れている。
何が起こったかは一目瞭然であった。

「どうしよう、どうしよう、殺しちゃった!!」
継子は彼女に見つかったことを知るや、腕に取り縋りつつ大声で喚き始めた。

ああ〜〜〜うるさい。
正直、彼女にとってこんなことは日常茶飯事だ。
特に騒ぎ立てることではない。
やるべきことは、見つからないように処理するだけだ。
だが、平凡な主婦を装う必要がある彼女は仕方なく驚いた表情を作ってみせた。
そして、事情を問い質す。

すると、継子はポツリポツリと説明を始めた。
映画鑑賞を口実に彼女を部屋に連れ込んだ継子は欲望に従いいきなり襲ったらしい。
これに彼女が抵抗し、誤って殺害してしまったと言う。

「どうしよう、どうしよう」と繰り返す継子。

それはこちらの台詞である。
任務を続行する為にはこいつを捕まえさせるワケには行かないのだ。
「このアホ」と心の中で毒づきつつ、奥様は「捨てましょう」と主張する。

これに……「えっ!?」と絶句する継子。

些か過激だったか……とも思う奥様だが、他に方法は無い。

「だから捨てるの。表通りにポイッと。そうすれば誰がやったかなんて分かんないわよ」

あまりにあっけらかんと口にする奥様に驚いた様子の継子。
そんな継子を放置して、奥様は遺体を確認しようと近付いた。
面倒のないように止めを刺しておくべきだと考えたのだ。
ところが、継子が立ち塞がる。

「神聖な遺体に触れるべきではない」と主張したのだ。

これを聞いた奥様は吹き出すのを堪えるのに苦労した。
自分で殺しておいて神聖だとは……本当にコイツは。
呆れ果てる奥様。
いっそのこと、コイツも(自主規制)出来ればいいのに!!

本気でその方法も検討し始めたところで、インターホンが鳴った。
どうやら、来客のようだ。
奥様は取り敢えず片付けるように継子に指示し来客を出迎えることにした。

来客は見覚えの無い小太りの男であった。
男は奥様の顔を目にするなり「坊ちゃんはいらっしゃいますか」と口にする。
しかも、「あの〜〜〜ぼっちゃんの犯罪についてお金を頂きたく」とヌケヌケと申し出たのだ。

どうやら、男は先程の事件を知っているらしい。
奥様はそう結論付けた。
あの2度に渡る悲鳴が漏れ聞こえたのかもしれない。
だとすれば、任務の為にもコイツは口封じせねば……。

決意を固める奥様の前で、男は堂々と上り込むと置かれた家電製品をまじまじと眺め始めた。
何やら値踏みしているようでもある。
だが、全身が隙だらけであった。

奥様は重い花瓶を手に、男の背後に近寄るとこれを叩きつけた。
流石はプロである。
男は一撃で無機物と化した。

さて……奥様は考えた。
2階のアレとは違い、これはプロとして片付けなければならない。
奥様は男をラップで包むと床下収納に押し込めた。

この間、数分である。
如何に奥様が手慣れているか分かるだろう。

と、作業を終えたところでまたもインターホンが鳴った。

今度は何よ!!
叫び出したい気持ちを抑えつつ応対に出る奥様。

立っていたのは先の男とは対照的に痩せぎすな男。
その背後には2人の警官が控えている。

まさか、バレた!?
焦る奥様に男は自身を電気店の主人と名乗る。
なんでも、此処に副店長が来ていないかと言うのだ。

経緯はこうだ。
彼が経営する電気店が不景気の影響で閉店となった。
其処で残った商品を商店街の為にビンゴゲームの景品として提供したのだそうだ。
ところが昨夜未明に何者かにより景品の1つが盗まれてしまった。
副店長はこの犯人を奥様宅の継子だと考え、請求に向かったのである。
店長としては犯人も分からないのに決め付けるのは良くないと考え、副店長を止めに来たのだと言う。

奥様は事情を聞いて納得した。
なるほど、副店長は正しかったのだろう。

そう言えば、継子はクリスマスプレゼントに「欲しい物は高くなりそうだからいいよ」と言っていた。
今朝になって改めて問うと「靴下」と答えたのだ。
あれは、欲しい物を手に入れた故の発言だったのである。

奥様の反応に両親が用意してくれそうにないと判断した継子は景品を盗み出したのだ。
盗まれた景品とは奥様が商店街で見たときに既に無くなっていた「ハンディカメラ」だろう。

そして、副店長が指摘した犯罪とは殺人ではなく継子の窃盗だったのである。

あちゃ〜〜〜。
今更ながら勘違いに気付く奥様だが、もう遅い。
取り繕うように「さぁ、そんな方はいらっしゃってませんよ」と店長を追い返すことに。

それにしても……奥様の中に違和感が残った。
継子は何故、ハンディカメラを盗んだのだろう。

気になりながらも、継子の部屋に戻った奥様は驚きの光景を目にする。
其処には先程まで居なかった筈の若者たちが立っていた。
その手には盗んだハンディカメラと思われる品が握られている。
そして、継子はともかく殺された筈の少女までもがヘラヘラと笑っていたのだ。

困惑する奥様に継子は語りかける。
彼は映画に嵌っており、仲間と一緒に盗んだハンディカメラで撮影を始めたのだ。
継子の犯した殺人事件もフィクションであり映画のシーンの1つである。

その中で継子が母親に助けを求めるシーンがあった。
しかし、撮影であることを事前に伝えるとぎこちなくなりかねない。
其処で迫真の映像を撮影するべくドッキリを仕掛けたのだと言う。

「それにしても、あの反応は無いよなぁ〜〜〜まぁ、上手く編集するけどさぁ」
咄嗟に身構えたことに始まり、死体を捨てようと述べたことまで。
一部始終を撮影していたと語る継子。
どうやら、1階の出来事については気付いていないようだ。

これに奥様は顔色を変えた。
継子がすべてを言い終える前に、腕を十字に構えると窓をぶち割り屋外へ。
ひらりと着地するや走り去ったのである。

その夜、帰宅した夫は奥様の行方を息子に尋ねたが要領を得ない答えしか返って来なかった。
さらに、奥様に頼まれたと名乗る業者が訪れ床下収納から何かを回収して行ったのだが……彼は知らない。

それから1週間のうちに、様々な事が起きた。

まず、向かいに住む住人が何かの事故で爆死した。
続いて、息子が撮影していた自主製作映画のVTRが盗み出された。
さらに、街の電気店の副店長が行方不明になったのである。

そして、相変わらず奥様は帰って来ない。
今、彼の手には奥様から頼まれたとやって来た業者に渡された「今度こそ、良縁結びます」との広告が握られている―――エンド。

◆関連過去記事
『オーブランの少女』(深緑野分著、東京創元社刊「ミステリーズ vol.44」掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『迂闊な婦人の厄介な一日』が掲載された「小説新潮 2015年 02月号 [雑誌]」です!!
小説新潮 2015年 02月号 [雑誌]





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オーブランの少女 (ミステリ・フロンティア)



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