2015年02月25日

「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第6話「英玖保の憂い」(作画・星野泰視 原作・アガサ・クリスティー、小学館刊『ビッグコミックオリジナル』連載中)ネタバレ批評(レビュー)

「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第6話「英玖保の憂い」(作画・星野泰視 原作・アガサ・クリスティー、小学館刊『ビッグコミックオリジナル』連載中)ネタバレ批評(レビュー)です!!

登場人物一覧:
英玖保嘉門:往年の名探偵、引退を考えていたが……。ポアロポジション。
朝倉平助:英玖保の元助手、ブラジルから帰国した。ヘイスティングズポジション。
日之元警部:英玖保や朝倉と知己の警部。共に多くの事件を解決した英玖保を信頼している。

ABC:英玖保に挑戦状を送り付けた犯人。
阿部:ABCに執着する男。

芦屋留三:安の別れた夫。
芦屋安:煙草屋を経営する老女、第一の被害者。
土浦まり子:安の姪。

<6話あらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

バーバラ・アレンの死の真相を暴いた名探偵・英玖保嘉門。
そんな英玖保に「ABC」を名乗る人物から挑戦状が届く!!

矢先、浅草の「芦屋煙草店」の店主・芦屋安が何者かに殺害されてしまう。

・前回はこちら。
「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第5話「戒厳令下の殺人」(作画・星野泰視 原作・アガサ・クリスティー、小学館刊『ビッグコミックオリジナル』連載中)ネタバレ批評(レビュー)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

浅草にある「芦屋煙草店」の店主・芦屋安が何者かに殺害された。
現場に「ABC汽車時間表」が置かれていたことから、英玖保嘉門はこれをABCによる犯行と確信する。

ABCに迫る手掛かりを求めた英玖保は日之元警部の捜査に同行する。
英玖保の指摘に加え芦屋留三にアリバイが成立したことから、日之元警部は「芦屋煙草店」の常連客に目を向ける。
ところが、特に怪しい人物は浮かび上がらない。

そんな中、安の姪である土浦まり子が現れる。
まり子は「安の仇を討ってくれ」と英玖保に依頼。
英玖保はまり子の気持ちを汲みつつ「これはABCと英玖保との決闘」であると宣言する。

とはいえ、英玖保も正直なところ行き詰まりを感じていた。
あまりにも犯人に繋がるデータが少な過ぎるのだ。

2件目、3件目の犯行が続かない限り犯人逮捕は難しいと弱音を吐く英玖保。
だが、そんな英玖保を朝倉が力強く励ます。
英玖保は朝倉の励ましを受けて、ある人物を思い出す。

実は浅草に足を運んだ際に、不審な眼鏡の人物と擦れ違っていたのだ。
その人物は芥川龍之介『歯車』の一節を口ずさんでいた。
もしかして、彼こそが「ABC」なのではないか……。

一方、英玖保が疑惑を抱いた相手は下宿で何やら用紙に向かい格闘していた。

「もし、阿部さん」
其処に下宿の女将から声がかかる。
慌てた阿部は書きかけの用紙を本の下に隠す。
其処には「A 浅草 芦屋煙草店」に続き「B」の文字が―――7話に続く。

<感想>

エルキュール・ポワロが名探偵・英玖保嘉門として我々ファンの前に再臨しました!!
この英玖保嘉門、まさにポアロそのものの容姿です。

そして、その助手である朝倉もまた、まさに和製ヘイスティングズとの風貌。
これはかなり期待出来そうな作品ではないでしょうか。

その6話、サブタイは「英玖保の憂い」。
どうやら、原作のアレクサンダー・ボナパート・カストにあたる人物が登場したようです。
それが阿部、彼は芥川龍之介『歯車』の一節を口ずさむ人物。
なかなかにインパクトがあります。

そして、彼が「B」のメモを用意していたことで前回の予想通り「ABC」順の犯行が確定。
「いろは」でも「五十音順」でもない様子。

ただ、今回説明がありましたが、日本の刊行物なのに時刻表が「五十音表記」ではなく「ABC汽車時間表」なのは些か気になるなぁ。
前回に比べればだいぶ払拭出来ましたが未だ違和感が残ってます……。
とはいえ、犯人が「ABC」を名乗っている以上、これは仕方がないか。

そして、被害者についても気にかかる点が。
原作だとイニシャル「AA」の人物が被害者となりました。
本作でもそれをモチーフに「安(やす)」さんが殺害されることに。
本作だと、芦屋の妻なのでフルネームは「芦屋安」。
これならば「安(やす)」を「あん」と読ませて「AA」と読めなくもない。

ただ、あらすじにもあるのだけど本作では安は芦屋と離婚していたらしい。
だとすると、苗字が変わってしまうのではなかろうか。
イニシャル「AA」にならない気がするのだが……。

もしかすると、本作ではラストの表記通り「浅草」にある「芦屋煙草店」なので「A」の犯行になるのだろうか。
だとすると、以降の「B」「C」の犯行も地名と店名の組み合わせになるのだろうか。
確かに「B」は日本の名前では難しい気がするし……。
まぁ、それも「B」の犯行で判明しそうですね。

いよいよ英玖保嘉門の大活躍が始まります!!
なお、3話までの原作『厩舎街の殺人』は早川書房『死人の鏡』収録作品なので興味のある方はチェックするべし!!

そうそう、ポアロと言えば2015年1月には三谷幸喜先生版「オリエント急行の殺人」が2夜に渡って放送されました。
こちらでのポアロポジションは「勝呂武尊」。

フジテレビ開局55周年特別企画「オリエント急行殺人事件 第1夜(前編) 原作アガサ・クリスティ 黒幕三谷幸喜 史上最も豪華な容疑者たち・世紀の話題作は今夜発進!」(1月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

フジテレビ開局55周年特別企画「オリエント急行殺人事件 第2夜(後編) 原作アガサ・クリスティ 黒幕三谷幸喜 犯人側から事件を描く世界が初めて目にする復讐劇・今夜完結!」(1月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

過去には赤冨士鷹も居ましたし、今度は勝呂武尊に英玖保嘉門とポアロこそ、まさに八面六臂の活躍を示す怪人物となりつつあるようです。
同時にこれはシャーロック・ホームズに続くエルキュール・ポアロブーム到来の兆しか!?

それを証明するように「カフェ・ポアロ」も期間限定オープン。
こちらは2015年2月27日(金)までです。

さらに幻のシリーズ続編『ポアロとグリーンショアの阿房宮』も2015年1月9日に発売!!

2015年はポアロがブームに!?先駆けとなる「カフェ・ポアロ」が期間限定でオープンとのこと!!

やっぱりポアロブーム!!幻のポアロシリーズ続編『ポアロとグリーンショアの阿房宮』が2015年1月9日発売!!

ポアロシリーズと言えば、公式に正統続編として認められた『モノグラム殺人事件』もあります。
ファンはチェックせよ!!

これまでの登場人物一覧:
英玖保嘉門:往年の名探偵、引退を考えていたが……。ポアロポジション。
朝倉平助:英玖保の元助手、ブラジルから帰国した。ヘイスティングズポジション。

・「厩舎街の殺人」編(1話から3話まで)
馬老大人:華僑の元締。英玖保の依頼人。
加藤警部:地元の警部。
バーバラ・アレン:被害者。
プレンダーリース:バーバラと同居していた女性。
西喜一郎:バーバラの婚約者。
ユースタス:バーバラの元夫。貿易商。

・「ABC殺人事件」編(4話以降)
日之元警部:英玖保や朝倉と知己の警部。共に多くの事件を解決した英玖保を信頼している。
ABC:英玖保に挑戦状を送り付けた犯人。

芦屋留三:安の別れた夫。
安:煙草屋を経営する老女、第一の被害者。

◆関連過去記事
「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第1話(作画・星野泰視 原作・アガサ・クリスティー、小学館刊『ビッグコミックオリジナル』連載中)ネタバレ批評(レビュー)

「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第2話「南京街の事件」(作画・星野泰視 原作・アガサ・クリスティー、小学館刊『ビッグコミックオリジナル』連載中)ネタバレ批評(レビュー)

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「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第5話「戒厳令下の殺人」(作画・星野泰視 原作・アガサ・クリスティー、小学館刊『ビッグコミックオリジナル』連載中)ネタバレ批評(レビュー)

◆関連過去記事
【書評(レビュー)】
・「ホロー荘の殺人」ネタバレ書評(レビュー)
「ホロー荘の殺人」(アガサ・クリスティー著、中村能三訳、早川書房刊)

『オリエント急行の殺人』(アガサ・クリスティー著・山本やよい訳 、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

・ポアロシリーズ最終作「カーテン」ネタバレ書評(レビュー)はこちらから。
「カーテン」(アガサ・クリスティー著・中村能三訳 、ハヤカワ書房刊)

「ねじれた家」(アガサ・クリスティ著、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

【映像化作品】
フジテレビ開局55周年特別企画「オリエント急行殺人事件 第1夜(前編) 原作アガサ・クリスティ 黒幕三谷幸喜 史上最も豪華な容疑者たち・世紀の話題作は今夜発進!」(1月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

フジテレビ開局55周年特別企画「オリエント急行殺人事件 第2夜(後編) 原作アガサ・クリスティ 黒幕三谷幸喜 犯人側から事件を描く世界が初めて目にする復讐劇・今夜完結!」(1月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【映画化関連情報】
【速報】ミス・マープルものがディズニーで映画化されるとのこと!!

アガサ・クリスティ原作「ねじれた家(Crooked House)」が映画化!!

アガサ・クリスティー原作映画「ねじれた家」キャスト発表!!

シュワちゃんがアガサ・クリスティ原作映画に出演!?「そして(敵が)誰もいなくなった」な映画のタイトルは「サボタージュ(原題)」!!

映画「オリエント急行殺人事件」がリメイクとのこと!!

【イベントその他】
アガサ・クリスティー生誕120年展覧会開催中!!

金沢にてアガサ・クリスティー原作「検察側の証人」舞台上演決定!!

舞台「検察側の証人」東京公演決定!!

「名探偵ポワロ」ニュー・シーズン DVD-BOX3は2010年12月3日発売開始!!

アガサ・クリスティ「ポアロにうんざり」発言にファン「え〜〜〜っ!!」と叫ぶ

「ザ・リッツ・カールトン大阪」にて「アガサ・クリスティー ナイト」開催!!

【注目】「アガサ・クリスティ大事典」が話題に

「名探偵ポワロ DVDコレクション」刊行中!!

アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』が初の邦版翻案ドラマ化!!その名は「オリエント急行殺人事件」!!

2014年の今もポアロシリーズ続編が刊行されていた!?その名も『モノグラム殺人事件』(早川書房刊)に注目せよ!!

2015年はポアロがブームに!?先駆けとなる「カフェ・ポアロ」が期間限定でオープンとのこと!!

やっぱりポアロブーム!!幻のポアロシリーズ続編『ポアロとグリーンショアの阿房宮』が2015年1月9日発売!!

「ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)」です!!
ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)





『厩舎街の殺人』収録「死人の鏡 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)」です!!
死人の鏡 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)





「名探偵ポワロDVDコレクション 25号 (厩舎街の殺人) [分冊百科] (DVD付)」です!!
名探偵ポワロDVDコレクション 25号 (厩舎街の殺人) [分冊百科] (DVD付)





「モノグラム殺人事件 (〈名探偵ポアロ〉シリーズ)」です!!
モノグラム殺人事件 (〈名探偵ポアロ〉シリーズ)





これを読めばあなたもアガサ・クリスティー通!!
「アガサ・クリスティー完全攻略」です!!
アガサ・クリスティー完全攻略





こちらもアガサ通必読の書!!
「アガサ・クリスティ大事典」です!!
アガサ・クリスティ大事典





こちらは「名探偵ポワロ 全巻DVD-SET」です!!
名探偵ポワロ 全巻DVD-SET





アガサ・クリスティを語るには下記の3作は必須!!
是非、この機会に一読を!!

「そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)」です!!
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)





「アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)」です!!
アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)





「オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)」です!!
オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)



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『悪性の境界線』(知念実希人著、角川書店刊『小説野性時代 2015年3月号』掲載)

『悪性の境界線』(知念実希人著、角川書店刊『小説野性時代 2015年3月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<感想>

患者に共感できる研修医・諏訪野が主役となる短編シリーズの第2弾。
前作『彼女が瞳を閉じる理由』に続き『小説野性時代』(角川書店刊)に掲載されました。
前作『彼女が瞳を閉じる理由』については過去にネタバレ書評(レビュー)してますね。

『彼女が瞳を閉じる理由』(知念実希人著、角川書店刊『小説野性時代 2014年2月号 vol.123』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

ちなみに、個人的にこのシリーズには「研修医・諏訪野シリーズ」と命名していたりします。

そんなシリーズの第2弾となる『悪性の境界線』。
今回の諏訪野は前回の精神科から外科へと研修先を異動。
其処で遭遇した「ある患者」が心変わりした理由を追うこととなります。
言わば「心変わりした理由(動機)を問うこと」すなわち「ホワイダニット」ですね。

これがなかなかに興味深い内容となっており、医療ミステリとしては見逃せない作品となっている。
「ホワイダニット」が解き明かされた際には「なるほど!!」と膝を打ったほどだ。
特にタイトルにこそ深い意味が隠されているのもポイントです。

本シリーズが今後も続くであろうことを考えれば、見逃せない回と言えるのではないでしょうか。
読むべし!!

そして、作者の知念実希人先生と言えば「天久鷹央の推理カルテシリーズ」第2弾『天久鷹央の推理カルテ2 ファントムの病棟』が発売!!
こちらも見逃すなかれ!!

シリーズ第2弾!!知念実希人先生『天久鷹央の推理カルテ2 ファントムの病棟』が2015年2月28日発売予定とのこと!!

なお、「ネタバレあらすじ」はまとめ易いように大幅な改変を加えた上にかなり端折ってます。
特に、近藤関連でそれが大きいです。
本作を正確に味わうには、本作それ自体を読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

諏訪野:研修医。
冴木:諏訪野の先輩。外科医。
近藤:冴木の担当患者。
幸子:近藤の娘。
謎の男:近藤の前に現れた男。


研修医の諏訪野は外科医の冴木のもとで研修を行っていた。
諏訪野の目前では、患者の近藤とその娘・幸子が神妙な面持ちで冴木の説明に耳を傾けている。
近藤の体内に悪性の腫瘍が発見され、これを腹腔鏡手術あるいは開腹手術により除去することへの説明がされていたのである。

執刀医である冴木は「腹腔鏡手術」を提案。
腹腔鏡手術ならば肉体への負担は軽くなる筈で、此の点では近藤はかなり見込みがあった。

これに幸子は不安そうな表情を浮かべるが、近藤自身は至って気楽な様子で同意を示す。
手術に関しては入念な準備が行われた上で、数週間後を目途にするとの結論が伝えられていた。
これに対しても近藤は「保険に入っているから入院費は大丈夫」と了承していたのである。

ところが……。

その日の内に近藤が「近日中の手術でなければ退院する」と言い出した。
しかも、肉体的な負担が大きくなる開腹手術を強く希望したのである。
これに、諏訪野と冴木は激しく困惑することに。

どうやら、近藤の考えを180度転換させるような何かが起こったようである。
諏訪野は理由がある筈と考えて、これを調べ始めた。

すると、近藤が心変わりする直前に謎の男が病室を訪れていたことを突き止めた。
どうも、此の男と会話したことが理由のようだ。

冴木は「怪しげな治療法を勧めに来たセールスマンではないか」や「手術自体を早めようとしていることから借金の取り立てではないか」と幾つか仮説を立ててみるが、諏訪野にとってそれはどうにもしっくり来ないものばかり。
実際、幸子に事情を尋ねてみても「分からない」と繰り返すのみである。

そんな中、謎の男が再び近藤を訪れた。
諏訪野は冴木の許可を得て、これに接触することに。
そして意外な事実を突き止める。

改めて、近藤と幸子の前に立つ冴木と諏訪野。
諏訪野は謎の男の正体が保険会社の営業マンであることを語り、其処に近藤の心変わりの理由があったことを明かす。

実は保険の支払条件に問題があったのだ。
今回、近藤が加入していた保険が支払われるには「悪性」と認められる必要があり「腫瘍が腹腔内に浸潤していなければならなかった」のである。

通常はこの場合だと開腹手術が一般的である。
ところが、冴木の説明では腹腔鏡手術で対処可能とのことであった。
つまり、腹腔内への浸潤は認められない可能性が高い。
だとすれば、保険は適用されなくなってしまうのだ。
まさに「保険適用上の悪性かどうかの境界線」が原因であった。

保険金額は3000万円。
近藤としてはどうしても欲しい。
其処で、近藤はこの条件を満たす為に近日中の開腹手術を強行に主張したのであった。

理由を知った冴木は近藤を緊急手術の対象にすると宣言。
本来、それは緊急性の高い患者にのみ適用されるもので近藤はこれに該当しない。
しかし、事情を知った冴木は敢えてこれを強行する。
だが、術式自体は近藤の意に反し腹腔鏡手術であった。

手術は無事成功し、冴木は近藤に告げる。
「手術後に行った病理検査の結果、僅かに腹腔内への浸潤が認められたが手術により根治した」と。
すなわち、近藤は完治し保険の適用条件は満たされたのである。

冴木に感謝する近藤。
そんな様子を見ていた諏訪野は「もしや……」と考える。
そう、冴木は敢えて保険の適用条件が整うように動いたのではないかと。
諏訪野は「外科も良いなぁ……」と微笑むのであった―――エンド。

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知念実希人先生、新作刊行予定を明かす。タイトルは『50/50ダンス(仮)』とのこと。

知念実希人先生、新作長編はタイトル『ブラッドライン』!!2013年7月発売予定とのこと!!

知念実希人先生、受賞後第一作は短編『泡 -統括診断部の事件カルテ-』に!!『小説新潮 2013年6月号』に掲載予定とのこと!!

第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」受賞作決まる!!

知念実希人先生長編第3弾のタイトル判明!!その名は『優しい死神の飼い方』2013年11月発売予定とのこと!!

知念実希人先生『統括診断部の事件カルテ』が書籍化とのこと、その名は『天久鷹央の推理カルテ』(新潮社刊)に!!

シリーズ第2弾!!知念実希人先生『天久鷹央の推理カルテ2 ファントムの病棟』が2015年2月28日発売予定とのこと!!

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