日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season13」第17話「妹よ」(3月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
とあるマンションの一室。
其処ではお馴染みの男が病床に臥していた。
その傍らでは1人の女性が甲斐甲斐しく世話を焼いている。
男は彼女の背中に呟く……美奈子と。
男は捜査一課で経理係をしている陣川(原田龍二)。
そして女性はその妹・美奈子(水崎綾女)。
陣川が風邪をこじらせ、妹を看護に呼んだのだ。
「まったくもうお兄ちゃんたらぁ」
わざわざ呼び出されたことに些か不満な様子を見せる美奈子。
と、不意に何かに気付き立ち上がる。
「ああ〜〜〜っ、お粥が!!」
悲鳴を上げる美奈子、その原因はキッチンのお粥にあった。
目を離した隙に焦げ付かせてしまったのだ。
「おいおい何をしてるんだよ、お前は!!」
「何よぅ!?本当なら彼女にして貰うべきことでしょ」
先程まで寝ていた筈の陣川が飛び起きた。
これに美奈子が反発する。
機嫌を損ねてしまった美奈子はその足で陣川家を飛び出す。
その夜、陣川のもとに美奈子から電話があった。
以降、陣川は美奈子と連絡が取れなくなってしまう……。
翌朝、未だ風邪を引きずる陣川が特命係に現れた。
妹・美奈子が消えてしまったのだ。
美奈子はヘッドハンター。
依頼主の要望に応じ人材をスカウトし紹介する仕事である。
ところが、昨晩のこと。
美奈子が陣川の留守電に変なメッセージを残した。
気になって、美奈子の携帯に連絡を入れたが電源を切っていて繋がらないのだ。
これを聞いた右京(水谷豊)は眉根を寄せる。
ヘッドハンターの仕事上、誰から電話が入るか分からない。
到底、電源を切っておくとは思えないからだ。
どうやら、何かが起こったようだ。
陣川の留守電を聞いた右京。
「もしもし、お兄ちゃん」と美奈子の声の直後に「早く乗せろ」との男の声を見出す。
どうやら、美奈子は何者かに連れ去られた可能性が高いらしい。
その頃、当の美奈子は手足を拘束され廃工場の床に横たわらされていた。
「助けて、助けて」と叫ぶ美奈子。
だが、その声は誰にも届かない。
右京たちが動き出した。
美奈子の部屋を訪れた右京は其処に昨日の夕刊と今朝の朝刊を発見し、昨晩から帰宅していないと判断する。
一方で、美奈子の部屋を物色する。
机の中身を確認した右京は美奈子がスカウトした面々の名刺を発見。
さらに、美奈子のPCに残されたメールから「例の件から手を引かなければ、それ相応の対応をさせて頂く」と書かれたメールを発見する。
一見したところ、かなり不穏当な内容である。
メールの差出人は工藤雄一なる男性であった。
続いて、美奈子が働いているヘッドハント会社「ゴールド・リサーチ社」へ。
だが、社長の高柳沙織も美奈子の行方は知らないと言う。
此処で、沙織と陣川に既に面識があったことが判明。
どうも何度か食事も共にしているようで、例の陣川の病気が出ているようだ。
右京は沙織に美奈子の入退室記録について問う。
沙織によれば16:06が最後で、昨日は美奈子と会っていないとのことだが……。
美奈子のオフィスへ向かった右京。
PCにはロックがかかっており、書類もシュレッダーにかけられた後である。
「ゴールド・リサーチ社」ではその業務の性質上、情報の取り扱いを重要視しており細心の注意を払っているようだ。
それが仇になったか手掛かりらしい手掛かりも無い。
果ては、ゴミ箱の中まで空であった。
右京は近くで作業していた「清掃業者のおばちゃん」に目を留める。
何か情報が無いか尋ねる右京。
すると美奈子が男性に対し「絶対に許さない」と叫んでいたことが分かる。
当の男性を問い質す右京たち。
男性の名は谷口、美奈子の同僚である。
帰りが一緒になったので2度ほど食事を誘ったところ「お付き合いしても良くってよ」と申し込んでも居ない交際を了承されてしまったのだそうだ。
驚き慌てつつ「僕、来月結婚するんだ」と説明したところ、「裏切った。絶対に許せない」と罵られたようだ。
まさかぁ……と笑う甲斐だが、これを聞いた陣川は美奈子ならあり得ると断言する。
どうやら、兄妹そっくりな性格のようである。
さらに、谷口によれば美奈子は「外資系電器メーカーの技術者と交渉中」と語っていたと言う。
当の外資系電器メーカーを訪問した右京。
美奈子は「山本」なる技術者の引き抜きを行おうとしていたのだ。
山本に代わり現れた人事部長の武田によれば、工藤雄一は彼が依頼した調査会社の人間だと言う。
米沢から工藤の身許について連絡が入った。
工藤は「R総合調査事務所の調査員」らしい。
陣川は「工藤が犯人だ」と決めつけ、工藤のもとへ。
右京と甲斐は山本から事情を聴取する。
山本は転職話を受けるつもりだったようである。
何処からどう洩れたのか、引き抜き話が武田に知られてしまい会社に居場所が無くなってしまったのだ。
ところが、話を進めて欲しいと美奈子に伝えたところ「この話、少し待って欲しい」と頼まれ困惑していたのだそうだが……。
その頃、陣川は工藤を問い詰めていた。
だが、工藤は調査の真っ最中。
陣川の大声で調査対象に存在を気取られ、大騒ぎに。
散々な目に遭った工藤は激怒しつつも、陣川に身の潔白を明かす。
美奈子の消えた当日には、工藤は浮気調査を依頼されておりアリバイが存在していた。
ちなみに、工藤が美奈子に辿り着いたのは山本を監視して突き止めたのだそうだ。
一方、当の山本にもアリバイが成立していた。
此処で右京は視点を変更。
美奈子が陣川の部屋でお粥を焦がしたことに注目する。
陣川宅に乗り込んだ右京は陣川の事件ファイルに興味を抱いた。
そう、美奈子は陣川の事件ファイルに気を取られてお粥を焦がしたのだ。
事件ファイルを調べたところ、5日前の強盗傷害事件の被害者・香坂達郎が浮上。
それは美奈子がスカウトした人物の1人であった。
陣川は伊丹たちに頭を下げて香坂の事件について情報を収集する。
概要は次の通りである。
たまたま体調を崩した香坂が早めに帰宅したところ複数人の強盗と遭遇。
慌てて逃げようとしたが、殴りつけられ気絶してしまった。
次に気付いた時には、1千万円相当の絵画を盗まれたのだそうだ。
入院中の香坂のもとへ向かった右京。
香坂によれば、被害に遭ったのは「オーバン・ギャレルの絵」。
時価2000万円相当で、この存在を知る人物は限られているらしい。
だが、美奈子にだけは話してしまったそうだが……。
美奈子宅にあった名刺と過去の窃盗事件を突き合わせた右京。
すると、出るわ出るわ。
なんと、美奈子がスカウトした相手が次々と盗難被害に遭っていた。
「金に困ってるなら言ってくれれば……」
美奈子の犯行だと思い込み、罪を償わせなければと息巻く陣川。
そんな陣川を右京が押し留める。
右京は美奈子が山本のスカウトを中断しようとしていたことから、窃盗とは無関係であると指摘。
もしも、窃盗一味ならば山本のスカウトを中断する必要が無いからだ。
むしろ中断したことから、美奈子は自分の情報が漏れていることに気付き犯人探しを行っていたに違いないと推測する。
右京たちは美奈子の情報にアクセス出来る人物が犯人と考え、社長である沙織へと疑いの目線を向ける。
沙織を問い質す右京たち。
美奈子の立場からすれば情報漏洩に気付けば沙織に報告した筈である。
だがあの日、沙織は美奈子に会っていないと主張していた。
この矛盾は何処から生じるのか!?
情報漏洩について問われ「山本さんの引き抜きは本人が洩らしたのかも……」と躱していた沙織。
だが、執拗に詰問され遂に折れた。
そっと差し出された入退室記録によれば、美奈子の入退室は21:12が最後になっていた。
すなわち、沙織が嘘を吐いていたのである。
沙織によれば確かに報告は受けたが企業イメージが悪化することを怖れて、口止めしていたらしい。
これに右京は美奈子を連れ去ったのは沙織ではないと宣言する。
どうやら、既に犯人の目星を付けたようだ。
数時間後、監禁されていた美奈子のもとに2人組の男が現れた。
「山本の家には俺たちが行く。此処は引き払う」
「あの女はどうする?」
「顔は見られていない、捨てておけ」
犯人の1人がその場に残り、もう1人が何処かへ消えた。
美奈子は犯人の1人の隙を突き、これを昏倒させると車を奪い山本宅へ。
其処には黒ずくめの2人組が!!
黒ずくめは美奈子を昏倒させるが、思わぬ乱入者にその場を逃げ出そうとする。
ところが、此処でさらに右京たちが突入する!!
右京たちは犯人の様子を窺い、現場を抑えようとしていたのだ。
あっさりと逮捕された黒服たちの中には、あの「清掃業者のおばちゃん」こと牧田冬美の姿が。
美奈子が担当した面々の情報が漏洩したのは冬美経由だったのだ。
一見、完璧に見えた「ゴールド・リサーチ社」の情報の取り扱いだが、思わぬ穴があったのだ。
美奈子は紙媒体の書類を破棄する際にシュレッダーを用いていた。
だが、シュレッダー処理された書類は1万ピース程度までならば、人力とコンピュータソフトを駆使すれば復元可能なのだ。
あの夜、美奈子は冬美こそが情報漏洩の主であると気付きこれを問い詰め捕まったのだ。
冬美によれば、最初の標的はクレジットカード会社の情報だったそうだ。
ところが、美奈子が紙媒体を中心に顧客情報を管理していたことからこちらに標的を切り替えたのだそうだ。
「それにしても、何であたしだと気付いた!?」
右京に問いかける冬美。
右京が冬美に目を付けたのは彼女の奇妙な行動が原因であった。
美奈子の部屋のゴミ箱は空だった。
すなわち、既に回収済みだったのだ。
にも関わらず、冬美はその周辺をうろうろしていた。
おそらく、右京たちの行動が気になって監視していた為に違いない。
だからこそ、右京は冬美を疑っていたそうである。
「くそっ、くそ〜〜〜っ!!」
自身の用心深さが仇になったと知らされた冬美は獣のように吠え立てるのであった。
一方、助け出した美奈子を抱き締める陣川。
兄妹の再会を喜ぶ右京たち。
美奈子は右京たちを目にすると「いつも兄から聞いてます。兄の手伝いをして下さってるんですよね」と頭を下げる。
実際はまるっきりの逆である、これに笑うしかない右京たち。
陣川が普段から美奈子に何を言っているか分かろうと言うものだ。
さて、陣川兄妹がその場を去り右京と甲斐が残された。
2人は「もう1つ疑問が残っている」と頷き合う。
数時間後、美奈子と陣川が沙織のもとを訪れていた。
沙織を食事に誘う陣川。
だが、美奈子はそんな陣川を制し「1つ分からないことが……」と沙織に尋ねる。
美奈子は山本の件も含めて過去の転職者たちを調べた。
すると、山本だけでなく香坂が転職を決断した理由も会社に知られたからだったことが分かった。
もちろん、他の面々も同様である。
誰かがスカウトを成功させる為に、情報をリークしていたのだ。
其処に右京と甲斐も現れた。
彼らが注目していた疑問も美奈子と同じであった。
山本の秘密が会社に洩れていた。
誰が会社にリークしたのか。
それは沙織しか居ない。
情報漏洩について右京たちが沙織を問い詰めたとき、その内容については一切触れていないにも関わらず沙織は「山本の転職話が会社に洩れたこと」について口にした。
何故、沙織は山本の転職話が会社に洩れたことを知っていたのか。
そもそも沙織がリーク主だったからだ。
これに沙織はリークを認める。
「転職について保守的過ぎる人々の背中を押したに過ぎない」と主張する沙織。
これを「建前としては素晴らしい」と評する右京。
ヘッドハンター業を成立させるのは成功報酬である。
沙織は自社を成り立たせる為に「秘密保持の原則違反」を犯したのだ。
その夜、花の里には右京たちと陣川、美奈子の姿があった。
陣川はカウンターの端で酔い潰れており、右京たちは美奈子を励ましている。
美奈子は「ゴールド・リサーチ社」を辞めたのだ。
別のヘッドハント会社へ再就職するつもりらしい。
「兄の手伝いだなんて、失礼を言いました」
右京と甲斐にそっと謝罪する美奈子。
陣川の前だからこそ彼の言葉を信じている振りをしたが、既に実体を知っているらしい。
「陣川君は優しい妹をお持ちですねぇ」
右京が目を陣川へと向けると……。
「あんな人だったとは思わなかったよ、沙織さ〜〜〜ん」
これに呼応するように叫ぶ陣川であった―――第17話了。
<感想>
シーズン13第17話。
脚本は金井寛さん。
サブタイトルは「妹よ」。
まさかの陣川君の妹が登場です。
何と言っても陣川兄妹のインパクトに押され気味ですが、テーマは「情報の取り扱い」か。
「ゴールド・リサーチ社」では「情報の取り扱いは万全」とされていました。
ところが、何事にも万全は存在しない。
完璧と思われた処理法も「シュレッダーの限界」との蟻の一穴から崩れることに。
さらに、そもそも取扱いを行う沙織自身が意図的に悪用していたことも判明。
改めて情報の価値がクローズアップされると共に「その取扱いの意味」を考えさせられる結果に。
同時に、冬美が「ゴールド・リサーチ社」に目を付けた理由が「顧客を想うが故に紙媒体中心に。また個人情報の重要性を知り熱心に守っていた美奈子」にあった点は皮肉でした。
とはいえ、当の美奈子は自宅にまで情報を持ち帰ってるし、回想パートでは「日頃から兄である陣川君にその情報をまとめた資料を読ませているし」であまり遵守していたように見えない点もありましたね……どうなんだろ。
まぁ、今回はテーマよりも陣川君のキャラクター像に妹の登場で更なる深みが刻まれたことの方が「相棒」史上にとっては大きい。
此処は次の言葉で締め括りたい。
「陣川君の歴史にまた1ページ」(『銀河英雄伝説』のアレで)。
ちなみに「season13」を以て甲斐が「相棒」を卒業することが判明しています。
こうなると峯秋の去就にも注目が集まります。
なお、詳細は次の記事からどうぞ。
・【至急報】3代目相棒・甲斐享が「相棒season13」にて卒業とのこと。
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