「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第16話「桐島静香の秘密」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。
ネタバレあります、注意!!第16話登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。
緑川楓:蛍のクラスメート。実は少女探偵であった。
桐島静香:圭一の同期であるキャリア。現在は警察署長に。
大島:南具署の刑事。
光芝:圭一と静香の同期。
久毛山:圭一と静香の同期。
紅梅:圭一と静香の同期。
PND(疑われざる者):静香によれば圭一が追っていた謎の人物らしい。獣を連れた男と同一人物なのか?
これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。
<ネタバレあらすじ>
〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高校生になった赤木蛍は行方不明となっていた兄・圭一と思わぬ形で再会を果たすことに。
なんと、圭一が幽霊として蛍のもとに戻って来たのだ。
しかも、圭一は悪意が関わる事件を察知し悪意を消滅させる能力を手に入れていた。
だが、圭一は現世に介入することが出来ない。
これでは折角の力も無意味である。
其処で圭一から協力を求められた蛍は、兄妹で力を合わせ1人でも多くの人を助けるべく動き出すことに。
・前回までのあらすじはこちら。
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第15話「探偵女と病院と殺人4」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
末為の死の真相は思わぬ形で幕引きを迎えた。
それから数日後、ある女性が物思いに耽っていた。
女性は3年前の圭一を想い、溜息を吐く。
あの頃、圭一は複数の未解決事件に関連性を見出し、これを追及していた。
結果、行方不明になったのだ。
おそらく、何かを掴んだ為に口封じされたのだろう。
だとすれば、圭一の推測は正しかったことになる。
女性は圭一が「疑われざる者」こと「PND」に殺害されたのではと考えていた。
そんな女性の名は「桐島静香」。
圭一の同期にして、現在は警察署長となっている人物だ。
静香は圭一の遺志を継ぎ「PND」を密かに追っていた。
さらに数日が経過した。
静香の姿は同期会の会場にあった。
変わり映えしない光景、今も圭一を想う静香はまたも溜息を吐く。
其処で、ふと周囲に目を凝らした。
すると、意外な人物が目に飛び込んできた。
蛍である。
静香は蛍を見知っていた。
そそくさと蛍に近付いて行く静香。
しかも、親しそうに声をかける。
一方、友人たち(圭一含む)と共に外出中だった蛍は静香に声をかけられて驚いた。
何しろ、蛍は静香を知らないのだ。
そんな様子に気付いた静香は「自身が圭一の恋人だった」と自己紹介する。
あの堅物の兄に恋人が!?
慌てる蛍に睨まれた圭一。
多少の困惑を示しつつ「ああ……」と認める素振りを見せる。
静香から圭一たち同期の集まりに参加していると知らされた蛍。
少しでも圭一殺害犯についての手掛かりが得られればと同期会に参加することに。
会場内には圭一も見知った顔が複数あった。
例えば光芝や久毛山や紅梅と言った面々だ。
さらには蛍自身が見知った顔まで。
もちろん、楓である。
そんな中、蛍は圭一の記憶回復の役に立てばと静香を見守るように指示する。
一方で、周囲を探ろうとするのだが……。
すぐに圭一が帰って来てしまった。
何でも、静香と懇意にしているような男性が近付いて来たので居た堪れなくなったらしい。
さもありなんと同情する蛍。
と、その目の前で当の静香が控室に消えて行く。
その背後からは黒い影の男が連れそう様に歩いている。
あれが圭一が言っていた相手なのだろうか?
さて、それから暫くして……突如、会場に騒動が持ち上がった。
どうやら、静香が消えた控室で何かが起こったらしい。
急いで駆け付けてみたところ、中には倒れた静香が。
どうやら危険な状態のようだ。
とはいえ、集まった面々はこういった瀬戸際に慣れている。
早速、救命措置が行われ静香は一命を取り留めた。
だが、何が起こったのか証言出来るような状態では無い。
其処に南具署の大島が現れる。
大島によれば静香と共に控室へと黒い影の男が消えて行くところを見たらしい。
だとすれば、その黒い影が犯人である。
しかし、当の黒い影は控室から忽然と消えてしまった。
しかも、悲鳴直後に人々が駆け付けており、到底脱出は不可能だ。
大島も同様の考えらしい、何やら考え込む素振りを見せる。
ところが、蛍と圭一の方を見遣るなり「ひっ!!」と奇妙な声を。
さらに突然、ソワソワし始めると外の空気を吸いに出てしまう。
一体、何なんだろう……困惑する蛍だが此処で楓に見咎められてしまう。
額に手を当て迂闊さを呪う蛍に、楓はと言えば「此処で会ったが百年目」とばかりに挑戦状を叩きつける。
今回も犯人を先に突き止める勝負を行うことで白黒つけようと言うのだ。
楓は犯人が敢えて目立つ服装で静香に同行し控室の中へ。
静香に危害を加えた後に服を着替え、悲鳴を聞き駆け付けた面々の中に紛れて逃げたと主張する。
果たして楓の推理は正しいのか!?
一方、蛍は圭一が居た堪れなくなった原因の男性が黒い影の男以外に居たことを聞き出す。
まさか、静香に近付いていた男が2人居たのか!?
蛍の推理はどうなる―――次話に続く。
いよいよ始まった蛍と圭一の奇妙な相棒物語。
ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように展開などをかなり改変してます。
気になる詳細は「週刊少年チャンピオン」本誌で確認せよ!!
<感想>
「名探偵マーニー」から3ヶ月……我らが木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」に還って来た!!
というワケで、その新作「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」です。
2015年4月8日には早くも1巻が発売予定とのこと注目!!
さて、その16話。
サブタイは「桐島静香の秘密」。
どうやら圭一の死の核心の一端に迫る情報を握る女性が登場。
それが桐島静香。
静香によれば「疑われざる者」こと「PND」が圭一の行方不明に関与していると考えているらしい。
読者こそ知っていますが圭一は既に故人。
しかも、その死には「獣を連れた男」が関わっていた様子。
もしかして、この「獣を連れた男」こそが「PND」なのか!?
さらに「PND」が「疑われざる者」と名乗っているらしいことも気になる。
すなわち「疑われないような立場の人間」となるのか?
どうも、これについて静香が調べているようです。
そんな静香が何者かの襲撃を受けることに。
密室から忽然と消えた犯人、その正体とは……。
では早速、静香襲撃犯について推理を進めて行きましょう。
ポイントは静香の後を尾行していた黒い人影を目撃した面々。
まず蛍。そして大島。他にはいない。
さらに次なるポイントは大島が蛍と圭一を目にし驚いていたこと。
蛍を目にして驚く必要は無い。
もしかして……大島は圭一を目視出来ているのではないか。
だから、驚いた。
おそらく、大島は蛍と同じような体質なのだろう。
だから、幽霊を目視出来る。
もちろん、蛍も同様。
だとすれば、この2人だけが目視し得た黒い人影もまた幽霊である可能性が高いのではないか。
つまり、あまりにも人としてはっきりしていた為に幽霊ではなく人として認識されてしまったが静香を襲ったのも幽霊だったのではないか。
ならば、楓の主張するトリックは不要である。
犯人が幽霊ならば犯行を完遂させた後に圭一同様に壁を透過して逃げ遂せれば良いだけなのだから。
今後については、おそらく「静香周辺に2人の男が居た」ことを気にかけた蛍。
圭一が静香の傍を離れる原因となった男性に確認し「黒い影については見なかった」との証言を得て、自身の特異な力を思い出し上記の推理に辿り着くと言った流れか。
さて、この「犯人が幽霊である」との推理が正しいとすれば問題はこれが人為的なものかどうか。
これについては前回の末為殺害自体がそうであったように誰か裏に黒幕が居ると考えるべきでしょう。
では、幽霊を操り静香を襲わせた犯人とは誰か?
可能性は2つ。
1つ目、静香が圭一周辺について調べていたところを襲撃されたことを考えればこの刺客は「PND」が送ったもの。
2つ目、場所が場所だけに同期(光芝、久毛山、紅梅)の誰か。
このどちらかではないだろうか。
仮に1つ目だとすれば「PND」が幽霊を操ることが出来ることとなり、例の「獣を連れた男」との類似点も増える。
確かにこれもあり得るが……個人的には2つ目の仮説を推す。
同期の誰かならば、あの形で犯行を果たしたことでアリバイは完璧過ぎるほどに完璧になるワケだし。
3人の中で特に怪しいのは紅梅かなぁ……。
もしかすると、静香が「PND」捜査の際に紅梅周辺を探っており、「PND」とは関連性の無い紅梅自身の犯罪(汚職)を突き止めてしまったのかもしれない。
果たして、管理人の推理は的中するか!?
次回も見逃すなかれ!!
木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。
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木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。
「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。
衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。
既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。
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赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。
獣を連れた男:圭一の死に関わる人物。獣は殺意のことらしい。
PND(疑われざる者):静香によれば圭一が追っていた謎の人物らしい。獣を連れた男と同一人物なのか?
【赤木家とその周辺】
蛍の父:赤木興業の社長。
赤木真知恵:蛍の母。バーのような店を経営している様子。
節:蛍の妹。
和也:蛍の弟。
謎の少年:蛍の初恋相手らしい。11話に登場。
真島慎一:蛍の幼馴染。彼女に恋心を抱いている。9話から登場。
【聖マルス学園関係者】
志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
塞田康平:蛍のクラスの担任教師。割とミーハーらしい。
見場創太:3話ラストに登場した怪しい男。学園の生徒であった。
緑川楓:蛍のクラスメート。実は少女探偵であった。
校長:聖マルス学園の校長。
教頭:聖マルス学園の教頭。
【警察関係者】
緑川宗達:楓の祖父。推理能力に長けた名刑事として有名らしい。
逸見:楓の知人の刑事。
桐島静香:圭一の同期であるキャリア。現在は警察署長に。
大島:南具署の刑事。
光芝:圭一と静香の同期。
久毛山:圭一と静香の同期。
紅梅:圭一と静香の同期。
【その他】
志田高志:りかの兄。りかにストーカーしているとのことだが……。
実山:赤木興業を担当している会計士。
貝塚俊雄:実山会計士事務所の職員。比較的若手。
役丸みつえ:実山会計士事務所の職員。紅一点。
三島:実山会計士事務所の職員。太目。
丸木田:実山会計士事務所の職員。ダンディ。
麻依:貝塚の元婚約者。
緑川宗達:楓の祖父。推理能力に長けた名刑事として有名らしい。
末為良則:12話で遺体で発見される。場津間高校の教師であった。
逸見:楓の知人の刑事。
葉森了:場津間高校の学生。末為の教え子。
葉森美和:蛍が廃病院で出会った女性。了の母で入院していた毛羽病院で落命していた。