2015年04月29日

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第21話「怪物のセオリー2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第21話「怪物のセオリー2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第21話登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

緑川楓:蛍のクラスメート。実は少女探偵であった。

怪物:人中に居ようとも誰も興味を向けない怪物。
大人しい人間:怪物に付き添う不可思議な人影。
栗山将秋:怪物たちが暮らしている部屋の契約者。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

高校生になった赤木蛍は行方不明となっていた兄・圭一と思わぬ形で再会を果たすことに。
なんと、圭一が幽霊として蛍のもとに戻って来たのだ。
しかも、圭一は悪意が関わる事件を察知し悪意を消滅させる能力を手に入れていた。
だが、圭一は現世に介入することが出来ない。
これでは折角の力も無意味である。
其処で圭一から協力を求められた蛍は、兄妹で力を合わせ1人でも多くの人を助けるべく動き出すことに。

そんな中、圭一が怪物と連れ添う人間らしき人影を目撃。
圭一によれば怪物が連続猟奇殺人を行っているらしい。
こうして蛍は怪物を調べることとなったのだが……。
相手に気付かれ襲撃を受けることに。

・前回までのあらすじはこちら。
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第20話「怪物のセオリー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

圭一から聞かされた怪物を調べていた蛍。
だが、相手に気付かれ背後から襲撃を受けてしまう。

怪物により首を絞められた蛍は振り解こうともがくのだが、相手は離そうとしない。
蛍の危機を見かねた圭一は思わず手にしている拳銃を撃つ。

すると、狙い違わず弾丸は怪物の手を射抜いた。
物質的なモノは射抜けない圭一の拳銃だが、相手が怪物だったことが功を奏したのだ。
想像していなかった反撃を受けた怪物は右腕をその場に残し逃走する。

何とか命を拾った蛍。
そんな蛍に楓からメールが届いた。
どうやら蛍が依頼していた怪物たちが暮らす部屋の契約者を突き止めたらしい。

早速、楓と合流したところ、楓の通報により警察が部屋を調べたことが判明。
其処から他殺体が多数発見され、今は大騒ぎになっていると言う。

楓によれば、部屋の契約者の名前は栗山将秋。
目立たないタイプの男性で、人付き合いも皆無だったようだ。
警察は栗山を手配したようだ。

「こんなタイプの男がねぇ……」
意外とばかりに口にする楓。

だが、その写真を目にした蛍は事実と異なることに気付く。
その写真の人物は怪物に付き添っていた男性の幽霊そっくりだったのだ。
すなわち、怪物本人ではない。

此処で蛍はある仮説に辿り着く。
確かに部屋の契約者は栗山なのだろう。
しかし、栗山もまた被害者なのだ。
おそらく怪物は栗山を殺害し、栗山に成り済ますことで犯行の露見を防いでいるのだ。
怪物は頃合いを見計らい、また別の獲物を殺害すると被害者に成り済ますつもりなのだろう。
これまでにも同様のことを続けていたに違いない。
つまり、怪物の犯行は隣人との交流の少ない都会的な犯罪なのだ。

蛍は怪物が栗山という隠れ蓑を失ったことで、次の隠れ蓑となる獲物殺害を急ぐに違いないと判断。
これを阻止すべく誘き出すことに。

その頃、栗山の幽霊を連れた怪物は圭一に奪われた右腕の痛みに苦しんでいた。
また、栗山という格好の立場も失ってしまったことに憤慨していた。
怪物は蛍への復讐心を募らせていたが……。

其処に蛍から栗山名義の携帯にメールが届いた。
何でも紫橋で待っているとのことだが。
怪物は右腕を取り戻すべく紫橋へ急ぐ。

紫橋にて怪物を待ち構える蛍。
待ち人はすぐに現れた。
怪物は蛍を再び襲うとするのだが……当然、圭一もまた控えていた。

圭一は銃口を怪物へ向け発砲。
弾丸は怪物の頭部を射抜き、怪物と化していた犯人本来の人格が表に現れた。

その人格に向け、罪を償うように訴える蛍。
人に戻った犯人はこれまでの犯行を思い出し、罪の意識に押し潰され崩れ落ちた。

こうして犯人は逮捕された。
怪物の被害者として、その行動を見張っていた栗山の幽霊は蛍に一礼すると消えて行った。

蛍はふと思う。
もしかして、圭一が生前に見た「獣を連れた男を含む10人の人々」もこれと同じでは無かったか。
すなわち「獣を連れた男」こそ「怪物となった連続殺人犯」なのではないか―――次話に続く。

いよいよ始まった蛍と圭一の奇妙な相棒物語。
ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように展開などをかなり改変してます。
気になる詳細は「週刊少年チャンピオン」本誌で確認せよ!!

<感想>

「名探偵マーニー」から3ヶ月……我らが木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」に還って来た!!
というワケで、その新作「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」です。
2015年4月8日には早くも1巻が発売されています!!

さて、その21話。
サブタイは「陰謀のセオリー」ならぬ「怪物のセオリー」。

怪物に連れ添う幽霊が被害者である点までは予期していましたが、まさか怪物が被害者に成り済ましていたことまでは想定外でしたね。
隣人との関係が薄い都会ならではの犯行でした。
また、最後まで怪物の名が明かされなかったことで「不特定の誰か」と言った色合いが強まったのもポイントでした。

さらに蛍により「怪物と栗山の関係」が「例の獣を連れた男たち」と重なることも判明。
すなわち、何者かが獣(怪物)と化して犯行を繰り返し、その周囲に被害者を連れて歩いていたことになるのか。
これまではてっきり「10人の中に獣と化した人物が居る」と考えていましたが「獣と化した1人が被害者9人の幽霊を連れている」可能性が高くなったか。
そして、この獣と化した1人こそ「PND」なのか!?
次回も見逃すなかれ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」関連過去記事
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)第1話から第20話までネタバレ批評(レビュー)まとめ

◆関連過去記事
「名探偵マーニー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)まとめ

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これまでの登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

獣を連れた男:圭一の死に関わる人物。獣は殺意のことらしい。
PND(疑われざる者):静香によれば圭一が追っていた謎の人物らしい。獣を連れた男と同一人物なのか?

死神:黒い影の男の正体。

【赤木家とその周辺】
蛍の父:赤木興業の社長。
赤木真知恵:蛍の母。バーのような店を経営している様子。
節:蛍の妹。
和也:蛍の弟。

謎の少年:蛍の初恋相手らしい。11話に登場。
真島慎一:蛍の幼馴染。彼女に恋心を抱いている。9話から登場。

【聖マルス学園関係者】
志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
塞田康平:蛍のクラスの担任教師。割とミーハーらしい。
見場創太:3話ラストに登場した怪しい男。学園の生徒であった。
緑川楓:蛍のクラスメート。実は少女探偵であった。
校長:聖マルス学園の校長。
教頭:聖マルス学園の教頭。

【警察関係者】
緑川宗達:楓の祖父。推理能力に長けた名刑事として有名らしい。
逸見:楓の知人の刑事。
桐島静香:圭一の同期であるキャリア。現在は警察署長に。
大島:南具署の刑事。
光芝:圭一と静香の同期。
久毛山:圭一と静香の同期。
紅梅:圭一と静香の同期。
二階堂:警部。白い服の男。静香に想いを寄せていたらしい。

【その他】
志田高志:りかの兄。りかにストーカーしているとのことだが……。
実山:赤木興業を担当している会計士。
貝塚俊雄:実山会計士事務所の職員。比較的若手。
役丸みつえ:実山会計士事務所の職員。紅一点。
三島:実山会計士事務所の職員。太目。
丸木田:実山会計士事務所の職員。ダンディ。
麻依:貝塚の元婚約者。
緑川宗達:楓の祖父。推理能力に長けた名刑事として有名らしい。
末為良則:12話で遺体で発見される。場津間高校の教師であった。
逸見:楓の知人の刑事。
葉森了:場津間高校の学生。末為の教え子。
葉森美和:蛍が廃病院で出会った女性。了の母で入院していた毛羽病院で落命していた。
間岩:米城警察病院の看護師。
怪物:人中に居ようとも誰も興味を向けない怪物。
大人しい人間:怪物に付き添う不可思議な人影。
栗山将秋:怪物たちが暮らしている部屋の契約者。

「兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿 (1) (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
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2015年04月28日

土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第1話「窓」(4月18日、4月24日)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第1話「窓」(4月18日、4月24日)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

地方県警の広報官・三上(ピエール瀧)は、高校生の娘が失踪し、妻・美那子(木村佳乃)と共に苦悩の日々を送っている。三上は、突然行われることになった警察庁長官視察を取り仕切るよう命じられる。7日間しかなかった昭和64年に発生し未解決の少女誘拐殺人事件「ロクヨン」が、14年の歳月を経てよみがえる。長官による遺族の雨宮(段田安則)宅への慰問を実現しようと三上は奔走するが、雨宮はなぜかかたくなに拒否する。
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複アリ)。

D県警の広報官である三上義信は大きな悩みを抱えていた。
彼の高校生の娘・あゆみが不意に失踪してしまったのだ。
三上は毎夜、妻・美那子と共にあゆみの帰宅を待ちわびているが朗報は聞こえてこない。
むしろ、あゆみの安否ばかりが頭を過り不安を募らせるばかりだ。
いつしか、三上はたまにかかって来た無言電話にもあゆみの姿を求めてしまうほどになっていた。

実はあゆみが失踪したのには深い理由があった。
あゆみは父親である三上の顔に強い嫌悪感を抱いており、ひいてはその娘である自身の顔にもコンプレックスを抱いていたのである。
いつしか、それはあゆみの精神を蝕み、遂にあゆみは三上と激しく衝突した。
そして、あゆみは姿を消したのだ。

また、三上は記者クラブとの深刻な対立にも心を痛めていた。
あゆみの件が負い目となって上層部の意向にがんじがらめにされてしまった三上は、それまでのような信念を通すことが出来ず信用を失ったのだ。
結果、記者クラブの秋川と決定的な亀裂を生じさせてしまっていた。

そんな中、D県警へ警察庁長官視察が行われることが判明。
上層部の意向もあり、三上は記者クラブとの関係を回復させる起死回生の一策として長官による「64(ロクヨン)」事件の被害者遺族・雨宮芳男への慰問を行おうと考える。

「64(ロクヨン)」事件とは昭和64年に発生した未解決の誘拐殺人事件である。
被害者は雨宮の幼い娘・翔子。
犯人は複数回に及び身代金目的の電話を雨宮に入れており、雨宮はこれに従い身代金を支払ったが翔子は惨たらしい他殺体で発見されることとなった。
当時、三上も捜査員としてこの捜査に携わっており、この悲劇的な結末に心を痛めた1人であった。

長官慰問により三上の顔も立つ、「64(ロクヨン)」事件が振り返られることで雨宮にとってもメリットがある。
これは上手く行くかと思われたのだが……。

何処か憔悴しきった雨宮はこれを激しく拒否する。
理由が分からず困惑する三上だが、再考を依頼しその場を去る。

一方、三上と記者クラブの対立は頂点に達していた。
秋川は三上たちの遣り方に反発し抗議文を提出しようと動き出す。
さらには視察に対する取材までをも拒否すると主張することに―――次回に続く。

<感想>

ドラマ原作は横山秀夫先生『64』(文藝春秋社刊)。
ドラマ版は全5回放送予定。

『64』(横山秀夫著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「土曜ワイド劇場」と放送時間が被るということで視聴を泣く泣く諦めていた本作ですが、コメントにて再放送についての情報を教えて頂き視聴することが叶いました。
というワケで、4月24日24時10分からの再放送を視聴しての感想です。

そんな第1話「窓」ですが、かなり原作に忠実な出来。
特に雨宮の「あの手と指」がきちんと描写されていた点は良し。
さらにドラマ自体の雰囲気もテーマに相応しく重厚なドラマと言った印象。

そして、サブタイ「窓」ですが複数の意味が込められていますね。

広報官である三上が記者クラブとD県警とを繋ぐ「窓」であること。
娘・あゆみにとって三上が社会との「窓」であったこと。
また、長官視察に伴う雨宮との「窓」でもある。

このそれぞれの「窓」が1話時点ではすべて閉じられています。
これが話を進めて行くうちに、少しずつ変化を迎える点がポイント。

さらに「64(ロクヨン)」事件に秘められた謎も重要な筈。
2話が楽しみ!!

ちなみに『64』は2016年に映画化も予定されています。
こちらも注目です!!

横山秀夫先生『64』(文藝春秋社刊)が続々実写化!!まずは2015年4月に連続ドラマ化、次いで2016年に映画化とのこと!!

◆関連過去記事
【横山秀夫先生著作記事】
『64』(横山秀夫著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【ドラマ関連】
水曜ミステリー9「横山秀夫特別企画 永遠の時効 謎の数列29、41、51は無意識の自白調書!2つの完全犯罪とオンナの嘘を暴く逆転の取り調べ!」(6月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)

日曜洋画劇場「特別企画 臨場 劇場版 話題作!!テレビ初放送 大ヒットドラマ遂に映画化!!型破り検視官倉石が挑む最大の事件」(6月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【その他】
横山秀夫先生、前橋でのトークショーにて小説観を語る!!

横山秀夫先生7年ぶりの新作『64』、文藝春秋社より2012年10月27日発売決定!!

【速報】横山秀夫先生『臨場』が映画化決定!!キャストはドラマ版と同じ!!

「横山秀夫サスペンス」DVD-BOX、2010年10月27日発売!!

横山秀夫先生『64』(文藝春秋社刊)が続々実写化!!まずは2015年4月に連続ドラマ化、次いで2016年に映画化とのこと!!

文庫版「64(ロクヨン) 上 (文春文庫 よ)」です!!
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月曜ゴールデン「縁側刑事・弐 銃の重さ 話題の藤竜也主演・第二弾!!元刑事の頑固ジジイは刃物で刺され、拳銃を奪われた婦警の孫娘を救えるか?犯人は殺人逃亡犯!?それとも…」(4月27日放送)ネタバレ批評(レビュー)

月曜ゴールデン「縁側刑事・弐 銃の重さ 話題の藤竜也主演・第二弾!!元刑事の頑固ジジイは刃物で刺され、拳銃を奪われた婦警の孫娘を救えるか?犯人は殺人逃亡犯!?それとも…」(4月27日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

元刑事の一徹(藤竜也)は、東京・三ノ輪の一軒家で一人暮らし。以前は孫娘と二人で暮らしていたが、孫娘は、家に寄り付こうとしない。それもそのはず。一徹は近所でも有名な頑固爺さんなのだ。
そんな一徹を心配して世話を焼くのは、近くに住む総菜屋の女将・千恵(石野真子)だけ。刑事だった一徹に世話になった恩から、いまだに彼を慕っているのだった。一徹は千恵から警察官になった孫娘・あさひ(本仮屋ユイカ)の近況を知らされる。西蒲田署地域課穴守稲荷交番に配属されて二年半になるあさひは、仕事にも随分と慣れ、そろそろ大きな手柄を立てたいと思っているようだ。
ある日、あさひは駄菓子屋の主人・治子(吉行和子)が万引きした中学生たちを叱る現場に遭遇する。しかし、どうやらそれは中学生同士の陰湿ないじめのようで、佐久間良(中島来星)という少年が万引きを強要されているらしい。あさひは良に友達になろうと言い、二人は携帯の番号を交換することに。
そんな中、隣の洗足署管轄内で同一犯による強盗殺人事件が発生。交番長の土橋(田中要次)は「相手は凶悪犯。もし遭遇しても一人で確保しようとせず、報告すること」とあさひに念を押す。
ところが、夜勤中に指名手配中の連続窃盗犯らしき二人組みと遭遇したあさひは、犯人威嚇の為に拳銃を発砲。一人を取り押さえるが、もう一人は取り逃がしてしまう。
後日、このあさひの発砲が警察内で問題となり、取り調べを受けることに。憤慨するあさひに、一徹は「拳銃は、人の命を簡単に奪える凶器だ」といい、「威嚇射撃したとき、冷静だったか?」と問う。そして「どんな時も、常に冷静でいるよう心掛けるのが警察官だ」と諭す。
そんな中、新たな事件が発生。なんとあさひが何者かにナイフで刺されて怪我をしたうえ、拳銃を盗まれてしまったのだ。入院先の病院に西蒲田署鑑識課の水原(山崎樹範)が見舞いに来て、捜査の状況を聞いたあさひは、自分の拳銃を奪われたことにショックを隠しきれない。
あさひは一徹の助けを借り、襲われた時の記憶を思い出す。あさひは自分を指したのは金谷真人(石黒賢)だと断言するのだが・・・。
一徹とあさひは、刑事の本質や銃の重みについて考えながら捜査を進める。警察官としてあるまじき失態を犯してしまったあさひは、果たして警察官として立ち直ることが出来るのだろうか?
駄菓子屋を通じて知り合った子供とのすれ違いがさらなる事態を巻き起こし・・・。
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複アリ)。

元刑事の一徹はその名の通り一徹な性格。
そんな彼には孫娘のあさひが居る。

だが、あさひは一徹に反発していた。
しかし、一方で一徹の一徹な性格を引き継ぎ警察官になっていた。

ある日、あさひは亀有治子が営む駄菓子屋で万引きの現場を発見。
その場から逃げ出した犯人を追跡することに。

逃亡した万引き犯は佐久間良という男子学生であった。
良を捕まえたあさひは彼が同級生の女子生徒3人にイジメられており万引きを強要されたことを知る。
あさひは良を励ますべく友達の約束を交わし、何かあったらと連絡先を教えるのだが……。

その頃、人材資源活用センターに勤務する金谷真人は同僚の須藤を激情に駆られて殺害してしまった。
金谷はリストラ候補に挙げられており、僻地の子会社に出向させられた上で退職するようにイジメを受けていたのだ。
このイジメを主導していたのが須藤であった。

須藤はリストラ候補を退職させる担当であり、これまでにも多くの者を退職させていた。
しかも、中には自殺にまで追い込まれた者も居た。

金谷はリストラ候補となったことで妻子に逃げられ、同じ立場であった野本も自殺してしまい精神的に参っていた。
そんな中で、須藤から退職を迫られたことがどうしても許せなかったのだ。
こうして金谷は逃亡生活を開始することに。

その数日後、2人組による強盗殺人事件が発生し、その犯人があさひの管轄内に逃げ込んで来た。
たまたま、これに遭遇したあさひは応援を呼ぶと共に2人と対峙する。

しかし、相手は大柄な2人組の男性である。
あさひだけでは厳しい。
それでも1人を制圧することに成功したあさひだが、残る1人に隙を突かれ取り押さえられてしまう。
追い詰められたあさひは恐怖のあまり携帯していた拳銃で抵抗。
異例ながら犯人に向けて威嚇発砲し、これを逮捕した。

だが、この間に制圧した筈の1人・ダニエルに逃げられてしまう。
さらに、この発砲が問題視され監察官から取調を受けることに。
こうして、あさひは窮地に立たされた。

同じ頃、良はと言えばイジメっ子と対決していた。
あさひの存在が彼の背中を押していたのだ。
だが、イジメっ子たちは助っ人に空手の有段者を呼び寄せた。
良はあさひに助けを求めるべく連絡を取ろうとするが、発砲の事後処理で手一杯のあさひはこれを無視してしまう。
結果、良は徹底的にいたぶれらてしまった。
良はあさひに対し見捨てられたと憎悪を募らせることに。

一方、発砲について落ち込むあさひに対し一徹が「力を持つ者の義務」について諭す。
拳銃とは身を守る武器でもあるが、人の命を奪う凶器でもあるのだ。
当然、使い方次第で大変なことになってしまう。
これを用いる者は常に責任と隣り合わせであり、冷静でなければ使用してはいけないのだ。
あさひは「それは理想論に過ぎない」と反発しつつ、自身に非があることも認める。

事後処理を終えたあさひは良から連絡が来ていたことに気付き、彼を訪ねる。
だが、良は何処か素っ気ない。

その翌晩、巡回中のあさひは何者かに背後からナイフで刺され拳銃を奪われてしまう。
現場から発見されたナイフにはダニエルの指紋が検出された。
あさひを恨んだダニエルの犯行と思われたのだが……。

これに一徹は異を唱えた。
ダニエルの犯行ならばあさひへの復讐が目的となる筈で、奪った拳銃で止めを刺さないのは不自然だと考えたのだ。

拳銃を持つ者の責任を果たすべくあさひは痛む身体を引きずり捜査を開始。
一徹もまた元刑事として孫娘をサポートする。

すると、あさひが意外なことを思い出した。
現場でダニエルではなく金谷の顔を見たと言い出したのだ。
あさひは金谷こそが犯人だと断言するが……。

しかし、金谷の経歴上はそもそも地縁が無い筈である。
其処を選んで身を隠すだろうか?

そんな疑問を吹き飛ばすように、駄菓子屋の女主人・治子が金谷の知人であることが判明。
金谷は子供の頃に坂田夫妻の世話で夏休み中だけ地元に滞在しており、駄菓子屋の客だったのだ。
以来、治子と金谷は長く交流を続けていると言う。

あさひは治子を問い詰め、その行方を問う。
これを明かさない治子。

しかし、治子を尾行した一徹とあさひは金谷の隠れ家を突き止める。
しかも、其処には良も居たのだ。

隠れ家に踏み込むあさひだが、一足遅く金谷と良には逃げられてしまう。
さらに、残っていた治子から驚くべき事実を聞かされる。

なんと、あさひを刺し拳銃を奪ったのは良だったのだ。
どうやら、あさひを恨み拳銃を手に入れイジメっ子に復讐するつもりだったらしい。
ところが、其処を金谷に見咎められ彼に説得された。
今は金谷に付き添われ拳銃を返却しに派出所へ向かったと言う。

どうしても良の犯行を信じられないあさひは、そんな治子の言葉を嘘と決めつけ金谷の後を追うことに。

一方、良は金谷と痛みを分かち合ったことで前向きになることが出来ていた。
良は「自身の責任は自分でなければ取れない」と1人で出頭するべく、金谷と別れる。
これを送り出す金谷。
其処にあさひが駆け付け、金谷を問答無用で逮捕する。

ところが、送り出された良はと言えば、途中でイジメっ子に見つかりまたもいたぶられていた。
遂に耐え兼ねた良は拳銃を持ち出し発砲してしまう……。

異変を察し駆け付けたあさひは「気付いてあげられなかった」と良に謝罪。
これを受けた良は投降することに。
良が撃った一発は空へ向けてのものであり、誰も負傷することは無かった。

こうして、良と金谷がそれぞれの罪で逮捕された。
ダニエルは未だ逃走中、イジメっ子たちも特に咎められはしていない。

あさひは停職6ヶ月を言い渡された。
それはすなわち遠回しの退職勧告である。

これに応じ辞職の決意を固めるあさひ。
だが、215名分の嘆願書が届いたと知り想いを新たにする。
さらに、良からも謝罪と反省の手紙が届いた―――エンド。

<感想>

原作なしオリジナルの「縁側刑事」第2弾。
早速、ドラマ感想を!!

一見、普通の人情物……と見せておいてなかなかになかなかの問題作だったような気がします。

特に内容的に様々な問題を取り扱っていた点は特徴的と言えるでしょう。
まず、テーマとしては「本当の強さとは」があり、これに「イジメ問題」が根底にあります。

例えば、金谷の会社やそれに同調する立場の者からのイジメ。
これは「リストラ問題」も兼ねていました。

そして、良に対する万引き強要や暴力によるイジメ。
これは「スクールカースト問題」も兼ねていました。

金谷と良は同じ立場だったからこそ、共感し合い話し合うことが出来たのです。

そして「本当の強さ」に関連し描かれた「力(拳銃)を持つ者の義務」や「発砲是非」なども難しい問題。
あさひが一徹の言葉を「理想論」として否定していたが、一徹の言葉通り「力を持つ者は決して理想を忘れてはならない」ことも事実である。
理想なき力は暴力に過ぎない、また力には確かな義務も伴うのだ。
力は正しく用いられてこそ、有効なのである。

ちなみに、あの強盗2人に対してあさひが発砲したことの是非を問うのはかなり難しい問題ですね。
なにしろ、あの時点で犯人に向けて発砲しなければどうなっていたかは想像に難くない。
発砲しなければ応援が到着したときには血塗れの死体が転がっていた……なんてことになっていた筈である。
銃口を向けられても動じなかった犯人が空への威嚇射撃で大人しくなるとは思えないし、むしろ銃口を空中へ向けたその隙にあさひが……となるだけだろうし。
なので、本ドラマでは覚悟も無くあさひが拳銃を使用したことのみを問題とすべきで、これまた「力を持つ者の義務」に帰することとなるだろう。

それにしてもコレ、相当に深いテーマだよなぁ。
それぞれ単独で1つのドラマになり得るだけのテーマ。
それが複数用いられつつ、中盤まではかなり上手く扱えていたように思います。
実際、途中まではかなり考えさせれていたし。

ところが、ラストで急にご都合展開に落ち着いちゃった感がある。
あさひを刺してまで拳銃を奪った良が、あの程度で思い留まるとは到底思えないんだよなぁ。
それこそ、金谷に救われていたからにしても金谷の境遇と共鳴すれば余計に憤りそうな気はする。

ただ、そもそも2時間で語り尽くせる内容の問題ではないだろう。
あくまで問題提起の役割を果たしたドラマと考えるべきなのかもしれない。

そう言えば、良は強盗犯に発砲してしまったあさひの事情を知っていて、なお連絡の取れなかったあさひを許せなかったのか。
確かに、期待させてしまったあさひにも責はあるが、仮にあさひがその場を助けたとしても次には繋がらないし根本的な解決にはならないんだよなぁ。
此の点、良も分かっていた筈なのだがそれだけ追い込まれていたのだろう。
おそらく、良にとってあさひは「友達」ではなく「庇護者」だったんだろうなぁ。
だからこそ、肝心のイジメっ子たちではなくあさひへ憎悪が向かってしまったのか。
本来ならば立ち向かうべきは違うのになぁ……。
そして、これにより治子の対処(介入するばかりが正しいとは限らない)が正しかったと奇しくも証明してしまうことに。
「相手に寄り添うだけが相手を想うことではない」となるのでしょうか。
これまた「人と人との関わり方」であり、なかなかに難しいテーマですね。

ちなみに、良が拳銃強奪について「万引き同様にイジメっ子たちに強要された」と主張したら……なかなかにスゴイことになりそうな気がします。
イジメっ子たちはそれまでにも良に対し万引きを強要していたワケだし、状況証拠は揃っていそう。
歩道橋での発砲も「強要されたものの、罪の意識に耐え兼ねて出頭しようとしたところを拳銃を奪われそうになったので抵抗した」と言い張れば、ある程度は通用しそうな気配すらあり。
もちろん、まるきりの偽証になっちゃうので許されざることなんだけど。
ただ、良はイジメっ子たちに対しては一矢報いる権利はありそうなんだけどなぁ。

これまたちなみに、今回のストーリーを客観的に見ると「あさひが自分で事件を作って自分で事件を解決した」と意地悪な見方も出来てしまうなぁ……。
それと、これも意地悪な見方なんだろうけど「血縁の大切さ」も語られたと言えなくもない。
作中によれば、あさひも良と同じようにイジメに遭っていたが一徹の存在により救われたらしい。
だとすると「あさひは祖父に恵まれた為に危機を逃れ、良は恵まれなかった為に罪に手を汚した」とも言えるからである。

う〜〜〜む、こうして振り返ってみるとどうも本作を素直に視られないことに気付くなぁ。
いろいろなテーマがあって活かすにあたっての可能性を感じるからだろうか。
少なくとも、展開の余地がかなりあるように思われる作品だ。

ちなみに本作はキャストも豪華でしたね。
レギュラー陣はもとより、亀有治子役に吉行和子さん、金谷真人役に石黒賢さん、さらにキャストにこそありませんが監察官役に山下容莉枝さんも登場!!
此の点も凄かった。

いろいろと述べてしまいましたが、それだけ語る余地のあるドラマだったと言う証明でしょう。
なかなかに興味深いドラマだったと結論出来そうです。

◆関連過去記事
月曜ゴールデン「縁側刑事 下町育ち頑固一徹な元刑事と新米警官の孫娘〜死ぬ前に一言謝りたい…余命わずかな夫が過去の罪を告白!!七年前消えた妻子を捜し出せるか?唯一のカギは謎の指紋・変体紋!?」(9月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

<キャスト>

今西一徹:藤 竜也
吉村あさひ:本仮屋ユイカ
野々村千恵:石野真子
亀有治子:吉行和子
金谷真人:石黒 賢
土橋八郎:田中要次
水原章一:山崎樹範
秋山剛司:中村育二 ほか
(公式HPより、敬称略)


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