ネタバレあります、注意!!
<2話あらすじ>
東京で一番という天ぷら店を探し、地図をたよりに休日のビジネス街を歩くマイケルたち。道に迷いながらやっとたどりついたその店で出された天ぷらは、外はカリっとしているのに中はふわっとしていて、評判通りのおいしさだった。このすばらしい食感はどのように生まれるのか?マイケルは店主に質問をぶつけていく!
(公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)
真夏の照り付けるような日差しの中、オフィス街を歩くマイケル一家。
今回の目的地はトシに勧められた「天ぷら店」である。
しかし、これから美味しい食べ物に挑むにも関わらず一家の表情は暗い。
それもその筈、マイケル一家はコンクリートジャングルで迷子になっていたのである。
右を見ても左を見ても良く似たビルが立ち並び、現在位置を惑わせる其処。
命綱はトシから貰った手書きの地図1枚だが、今やそれも何処まであてになるのやら。
もはや一家は風前の灯であった。
異国の地で露と果てるか……マイケルが覚悟を決めつつあったその時、異変が起こった。
ドシーン、ドシーン。
聞こえて来たのは大きな地響き。
すわ、ゴジラか、大魔神か!?
慌てふためくマイケルの前に現れたのは、そのいずれでも無く炎天下の中でフリルとリボンに飾られた黒い長袖のゴシックドレスに身を包んだ女性であった。
「ゴスロリだ!!」
噂に聞けど本物を目にしたことが無かったマイケルは声をかけて良いものかどうか戸惑う。
だが、彼とて一家の長である。
この状態を続け、家族を危険に曝すワケには行かない。
思い切って、決死の覚悟で相手に声をかけてみた。
果たして意思疎通は可能なのか!?
時に気取り、時にしどろもどろになりながら、必死に「地図の場所へ行きたい」と相手に訴えるマイケル。
相手はこの照り付けるような日差しの中でも汗1つかかない。
そして、表情すら変えない。
(駄目なのか……)
話が通じない……そんな恐怖にマイケルが捕らえられかけた頃、相手は囁くような小声で「付いて来て」と口にした。
そう、マイケルの意志は相手に通じたのだ。
まさに異文化コミュニケーションの瞬間であった。
「うんうん」とばかりに首を縦に振り、案内をお願いするマイケル。
すると、ほんの僅かで目的地に到達することが出来た。
気付かなかったが、思ったよりも近くまで来ていたようだ。
安堵のあまり感謝の言葉を伝えようとするマイケルだが、ふと見れば相手の姿は既に無い。
「まさか、彼女はオフィス街の妖精!?」と思いきや、エミルが「これ」と何かを拾い上げた。
それは彼女が身に着けていたリボンであった。
どうやら、妖精でも幻覚でもないようだ。
姿を消した彼女に心の中で礼を述べつつ、マイケル一家は天ぷら店の暖簾を潜る。
「いらっしゃ〜〜〜い」
店内からは意気の良い声が彼らを迎え入れた。
早速、座敷に陣取ったマイケル一家は天ぷらを注文する。
テーブルの上に並べられたのは海老を筆頭にしたアツアツの天ぷらだ。
これにアスガーは郷土の「フィッシュ・アンド・チップス」を連想したようで「トマトケチャップが欲しい」と言い出した。
そんなアスガーに、そっと首を横に振ったマイケルは小皿に注がれた天ぷらのつゆに漬けるように諭す。
渋々ジャブジャブとつゆにえび天を漬けるアスガー。
「ケチャップが良いのに……」と不平を零しつつも口に放り込んだ。
そして沈黙する。
(おや、お気に召さなかったか?)
マイケルが不安になった途端。
「うんま〜〜〜い」
突如として叫ぶアスガー、そしてさらに続ける。
「衣がさくさく、中身がふわふわしてる!!何コレ、何コレ!!」
どうやら、思いのほかに彼のお気に召したようである。
先程までの不平不満は何処へやら、本当に楽しそうだ。
ところが一転して憂鬱な表情に。
「なんてこった……これをケチャップに浸そうとしていたのか」
不意にがっくりと肩を落とすアスガー、どうやら未遂に終わったものの自身のあやまちを後悔しているようだ。
天ぷらは食べ方について反省してしまうほどアスガーの心を揺り動かしたらしい。
興味をそそられたマイケル、リスン、エミルたちも次々と天ぷらを口へ。
そして、口々に「うんま〜〜〜い!!」とアスガー同様に叫ぶ。
口福の時は過ぎ、マイケルは店主に天ぷらの秘訣を問う。
これに「天ぷらに専念することはもちろんのこと、何事もやり過ぎないこと」と応じる店主。
衣をつけ過ぎない。
油で揚げ過ぎない。
ひたすら簡素に、それでいて手を抜かない。
必要以上でもなく、必要以下でもない。
此の極意を聞いたマイケルは目から鱗だ。
お腹を「満足」で満たしつつ、店を出たマイケルたち。
アスガーやエミルたちは歩きながら興奮気味に天ぷらについて語る。
しかし、普段なら会話に混ざる筈のマイケルの様子がおかしい。
まさか……。
「まさか、道に迷ったんじゃあ」
マイケルの様子に気付いたアスガーがおそるおそる問う。
これに頷くマイケル。
天を仰ぐマイケル一家。
と、其処にあの聞きなれた振動音が……どうやら彼女が近くに居るようである。
「よし、彼女を探すんだ!!」
マイケルの号令に頷くアスガーたち。
結局、マイケル一家が定宿に戻ったのは数時間後のことだったそうな―――エンド。
<感想>
原作はマイケル・ブース著『英国一家、日本を食べる』と『英国一家、ますます日本を食べる』(共に亜紀書房刊)。
NHKさんにて毎週木曜日0時40分から1時まで放送中、全24話予定。
そんな本作ですが、前半はマイケル一家を中心に据えた特徴的なカートゥーンパート、後半はカートゥーンパートに登場した店や食べ物をトシ視点(但し、トシは登場しない)によるドキュメンタリータッチで描き直したドラマパートからなる。
この2つにより「海外から見た日本」が映し出されており、この「他者から見た自分の視点」が面白い。
例えば、1話では「焼きそば」と「焼き鳥」と共に日本独自に発展した「横丁」の光景が活写される。
なるほど、確かに初見では驚くかもしれない。
これが2話では「天ぷら」と共に「休日のオフィスビル街は人気が無い」、「夏場のオフィスビル街は輻射熱で暑い」、「ゴスロリ文化」などが描かれる。
「ああ、あるある」と頷かされることだろう。
こうして、食と共に独自の文化が20分の中で見事に表現されているのだ。
そして、この視点同様に、この表現の仕方が何とも「粋」なのである。
結果、マイケル、リスン、アスガー、エミルの一挙手一投足に目を奪われることに。
この2話ではアスガーが天ぷらにケチャップを用いようとしたことを反省する際の「まるで工業廃水のように海にケチャップを流し込む様子を思い浮かべる描写」が秀逸でした。
他にも、あらすじからは省きましたがマイケルが名刺についてトシに担がれるシーンも印象的でした。
さらに、トシ役が滝藤賢一さんなのも渋い。
耳に心地よい声である。
全体的に完成度が高い番組です。
ご存知ない方は是非、1度チャレンジのほどを!!
◆関連過去記事
・「英国一家、日本を食べる」1話「新宿・思い出横丁」(4月16日)ネタバレ批評(レビュー)