ネタバレあります、注意!!
<13話あらすじ>
深夜のグルメ番組を見てラーメンを無性に食べたくなってしまったマイケルは、ついつい我慢できずコンビニへ駆け込むことに。そこで手に入れたインスタントラーメンでは飽き足らず、あくる日禁断の場所“ラーメンのテーマパーク”に足を踏み入れてしまう。そして出会ったのは自らをラーメンキングと名乗る男だった。ラーメンについて熱弁するキングにすっかり心酔したマイケルは、家族とともに福岡へ飛ぶ!
(公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)
北海道―――宿泊先のホテルにて深夜のグルメ番組を視ていたマイケルは空腹に耐えかねていた。
食べたい、アレが食べたい。
此処で言うアレとはインスタントラーメンのことである。
手に入れるのは容易だ。
近くのコンビニに駆け込めば良い。
だが……この時間帯に食べるのは健康上どうなのか!?
「食べちゃダメだ、食べちゃダメだ、食べちゃダメだ」
エヴァンゲリオンのシンジ君よろしく、自身に言い聞かせるマイケルであったが……。
十数分後、マイケルの目の前には空になったインスタントラーメンが転がっていた。
やってしまった……大いなる満腹感と多少の罪悪感に包まれるマイケル。
とはいえ、ラーメンは美味しいのだ!!
と言うワケで、その翌日のこと。
マイケルはラーメンを求めて1人でラーメンテーマパークを訪れていた。
ちなみに、ラーメンとは小麦粉を主原料とした麺にローストポークなどの具材を乗せたもののこと。
また、お手軽なインスタントラーメンは世界でも人気である。
そして、ラーメンテーマパークとは多数のラーメン店が並ぶラーメン好きには堪らない場所なのだ。
早速、店舗の1つに飛び込んだマイケル。
衝動に従い醤油味、味噌味、塩味と3杯も平らげてしまう。
やってしまった……昨晩に続いてまたも後悔の念を抱くマイケル。
それにしても人は何故、こんなにもラーメンを食べてしまうのだろうか!?
奥深い悩みに囚われたマイケルは我知らずそっと溜息を吐いた。
「おや、ラーメンでお悩みですか?」
そんなマイケルに声をかける人影が……。
「誰だ!?」とばかりに振り向いたマイケルの視線の先には7杯の丼が積まれていた。
すべてが見事に食べ尽くされている。
そして、丼の陰には見慣れぬ男性が座っていた。
その男性こそ「ラーメンキング」、「ラーメン界にこの人あり」と知られる人物である。
年に千杯食べるという彼の知識量は尋常ではなく、その知識を活かした多数の著書でも知られている。
実はマイケルのラーメン知識も彼の著作によるところが大きい。
憧れのラーメンキングに出会えた喜びに打ち震えるマイケルは彼に先程の疑問をぶつけてみた。
すると、ラーメンキングは「安さと食べ合わせにこそラーメンの魅力がある」と言う。
さらに「ラーメンには多様性があり、理想を捜し歩く楽しみがある」らしい。
「多様性?」と戸惑うマイケルにラーメンキングは説明を始めた。
ラーメンには「タレ」、「出汁」、「麺」の三要素がある。
タレを出汁で割った物がスープとなり、これに麺を絡めた物が「ラーメン」である。
まず、出汁には動物性、魚介、野菜の組み合わせで多様なバリエーションが存在する。
続いて、醤油、味噌、塩の3つが基本のタレとなる。
此の時点でも組み合わせは多数だ。
さらに麺も小麦粉、かん水の配分により変わって来る。
何より風土や季節によっても麺は変化する。
つまり、麺とスープの組み合わせによるラーメンの可能性は無限大なのだ!!
「ラーメンは宇宙だ!!」と熱く語るキング。
これにマイケルは目を潤ませて賛同する。
一方、キングは「稚内に良い店が出来た」と聞くやラーメン行脚に出てしまう。
これに誘われたマイケルだが、リスンたちを思い出し断ることに。
その翌日、マイケルは家族を連れ博多へと向かっていた。
誘いを断ったものの、やはりラーメンへの想いは絶ち切り難く博多の屋台街へ足を運んだのだ。
屋台とは移動式の簡易店舗のこと。
これが多数集まっているのが博多の屋台街である。
其処は餃子、ステーキなどなんでもござれだ。
エミルは周囲を見回し「なんこつ食べたい」と口にする。
どうやら、なんこつもお気に入りのようだ。
しかし、しか〜〜〜し。
今回のマイケルのお目当てはあくまでラーメンである。
ラーメンキングが認めた「博多とんこつラーメン」を食することに。
カウンターに出て来たのは乳白色のスープに満たされた丼であった。
「クリーミィ〜〜〜」
一口啜るや大喜びのマイケル。
これには同じくリスン、アスガー、エミルも大満足だ。
此処でふとマイケルは考えた。
キングは「ラーメンの魅力が多様性にこそある」と語っていた。
つまり、基本を知っているからこそ変化を楽しめるのだ。
だが、ラーメン初体験のアスガーやエミルも楽しめているではないか。
これはどうしたことか、初めてラーメンを食べたエミルでさえ魅了するラーメンの魅力とは!?
またも悩み始めたマイケル。
すると、前回同様に「おや、ラーメンでお悩みですか?」との声が。
まさか……慌てて隣を見遣ると其処にはキングが座っていた。
「此処で出会えるとは!!」感激したマイケルは悩めるラーメンの迷い子に導きの手をとばかりに先程の質問を行う。
多様性こそが魅力ならば初めてラーメンを食べても満足出来るのは何故か?と。
これにフムフムと頷くキング。
「理由はいろいろ考えられるさ。例えば、とんこつで出汁をとったスープは肉食の欧米人にも受け入れやすい。だが、ラーメンの魅力は他にもある!!」
熱く語り出したキングはさらに続ける。
「もっとシンプルになれ、マイケル!!考えるな、感じろ!!ただ1杯の丼こそが全てなのだ!!」
叫ぶや、キングは目の前の丼に挑み始めた。
ズルズル、ズズー。
麺を啜り、スープを吸うラーメンキングの食べっぷりはマイケルを感動させた。
マイケルは何やら答えを得たように「うんうん」と頷き始めた。
「全然。質問の答えになってないわ」
この遣り取りに唖然とするリスン、アスガーたち。
そんな家族のツッコミも届かない様子のマイケルはキングと2人の正解に没入している。
すると、キングの携帯に着信が。
「新潟に良い店が出来たとの情報が入った。君も行くかい?」
気さくに誘いかけるキングに、ふらふらとついて行こうとするマイケル。
だが、エミルに止められハッと正気に返った。
「いや、僕はお断りします」
「そうか……では、失礼しよう!!ラーメンの導きがあらんことを!!」
手を振るマイケルに見送られ颯爽と去って行くキング。
「人にはそれぞれ器がある、僕は自由より家族を選んだ」
何やら1人でまとめに入るマイケル。
「食べ物の為に家族を地球の反対側にまで引っ張りまわすことが自由でなければ何が自由なのかしら……」
リスンの声が夜空に消えて行く―――エンド。
<感想>
原作はマイケル・ブース著『英国一家、日本を食べる』と『英国一家、ますます日本を食べる』(共に亜紀書房刊)。
NHKさんにて毎週木曜日0時40分から1時まで放送中、全24話予定。
前半はマイケル一家を中心としたカートゥーンパート、後半はトシ視点のドキュメンタリーパートからなる。
この13話のテーマは「ラーメン」について。
その魅力について様々に語られました。
具体的には、カートゥーンパートでは「北海道と博多のラーメン事情」を中心に、実写パートでは「ラーメンブルース」と「ポップス調のインスタントラーメンの歌」が取り上げられました。
それぞれ「ラーメンブルース」では各地のラーメンが紹介され「東京ラーメン、富山の漆黒ラーメン、佐野ラーメン。名古屋の台湾ラーメン、和歌山、尾道、喜多方ラーメン、徳島ラーメン、つけ麺」などが挙げられました。
「ポップス調のインスタントラーメンの歌」では「インスタントラーメンに刻みトマトを乗せる」との調理法が歌われていましたね。
すなわち、ラーメンの魅力の1つがその多様性にあるのは間違いないでしょう。
「タレ」、「出汁」、「麺」の組み合わせにより生まれるバリエーション。
そして、ご当地ラーメンに代表されるような土地柄を活かした物も存在する。
それはインスタントラーメンでも同じなのでしょう。
ただ、これは大きな魅力の1つではあるが本編後半に浮上したように「それだけではない」。
その理由は語ることが出来るものから、語り尽くせないようなものまで、おそらく食べている我々1人1人に寄り添うような理由があるのかもしれません。
それこそ、ラーメン道の奥深さなのでしょう。
一方で、カートゥーンパートでは幾つかの遊びが盛り込まれていました。
例えば「食べちゃダメだ、食べちゃダメだ、食べちゃダメだ」でエヴァの碇シンジ君。
さらにラーメンキングの「ラーメン愛」が「スターウォーズ」のフォースそのものでしたね。
こういった遊び心も本作の魅力であり、同様にラーメンの魅力でもあるのでしょう。
ちなみに本作「英国一家、日本を食べる」の旨味も此の点にあるような気がします。
「多様性」とは「展開のバリエーション」、これが多ければそれだけ物語の懐も深くなる。
時にシリアス、時にバラエティ色豊かに、そして「専門性」や「テーマ性」が作品に問われ「ギャップ」や「メリハリ」が作品に彩りを添える。
さらに「視聴者の欲する情報やシチュエーション」が盛り込まれれば……面白いワケです。
次回も楽しみな作品です。
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