2015年08月21日

昔話法廷「“三匹のこぶた”裁判」(8月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

昔話法廷「“三匹のこぶた”裁判」(8月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

「三匹のこぶた」「カチカチ山」そして「白雪姫」。昔話の登場人物を裁判にかける前代未聞の法廷ドラマ!第1話は「三匹のこぶた」。三男こぶたが、煙突から侵入したオオカミを、お湯が煮えたぎる大鍋に閉じ込め殺害した。それは、自分の身を守るための正当防衛だったのか?それとも用意周到に準備をした上の計画的犯行だったのか?証人には、殺されたオオカミの母親や長男こぶたが登場。
出演:木南晴夏、加藤虎ノ介、小芝風花ほか
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)

「三匹のこぶた裁判」が開廷された。
この裁判で扱うのは「こぶた三兄弟によるオオカミ殺害事件」。
そして、争われるのは「率先した殺意の有無」―――すなわち「正当防衛か否か」である。
被害者はオオカミ、被告人はこぶた三兄弟の三男・トン三郎だ。

検察側の冒頭陳述によれば「トン三郎宅にオオカミが煙突から侵入。ところが、これをトン三郎たちが待ち構えており真下に用意してあったお湯が煮えたぎった大鍋に閉じ込め煮殺した」らしい。
検察側は「計画的犯行」を主張。
これに対し、弁護側は「あくまで緊急避難的な正当防衛」を唱え真っ向から対立する。

この裁判では検察側と弁護側は以下の立証に奔走した。
検察側は「トン三郎によるオオカミへの殺意の有無。また、その犯行が計画的であること」。
弁護側は「トン三郎にオオカミへの殺意が無かったこと。また、その犯行は身を守る為に仕方が無かったこと」。

まず、証言台に立ったのは被害者遺族であるオオカミの母親だ。
オオカミの母は涙ながらに息子の無念を訴え、トン三郎の非道を叫ぶ。

犯行当日、オオカミのカレンダーに「3時 豚肉パーティー トン三郎の家」とのメモを見つけたオオカミ母。
不安になってトン三郎宅へ様子を見に行ったところ、あろうことか息子が煮詰められている現場を目撃してしまったと言う。
しかも、この際にトン三郎は「オオカミの正しい殺し方」なる本を手にしていたのだそうだ。

これが事実ならば次のようなことが考えられる。

1.カレンダーのメモから、トン三郎がオオカミを呼び出した。
2.トン三郎が手にしていた本から、彼には初めから殺意があったことが証明出来る。

と、此処で弁護側が反対尋問を行う。
論じるポイントは先の2点だ。

まず、弁護人はオオカミ母が目撃した本のタイトルは「オオカミの正しい殺し方」ではなく「折り紙の楽しい折り方」であると指摘。
次いで、カレンダーのメモも「オオカミがトン三郎に呼び出された」のではなく「オオカミがトン三郎を食い殺すべく予定をメモしていたこと」の証拠だと述べた。

これが事実ならば、オオカミのトン三郎への害意は明らかでトン三郎が身を守る為に抵抗しなければならなかったことの有力な証拠となるだろう。

此処でトン三郎の兄であるトン一郎とトン二郎が証言台に。
2人はオオカミに受けた被害について語り、もしもトン三郎がオオカミを鍋で煮殺さなければ酷い目に遭っただろうと述べる。

これに検察側の反対尋問が行われる。
大鍋の蓋の重石に使った漬物石を持ち出した検察側は「これは到底、1人では扱えないもの」と主張。
すなわち、三兄弟で連携の必要があり計画的な犯行でなければ殺害は不可能だったと断じる。
実際の犯行方法から疑問点を指摘したのである。

そして、遂に被告人であるトン三郎が証言台へ。
トン三郎はオオカミに襲われた際の恐怖を赤裸々に述べ「やらなければやられていた」と主張。
あくまで「正当防衛」を訴えた。

これに対し、検察側はトン三郎が犯行の数日前に凶器となった大鍋を購入していた点を指摘。
さらに、都合よくお湯を沸かしていたことと併せて「計画的犯行」と結論付けた。

さて、あなたはトン三郎の犯行は「正当防衛」か「否」か、どう思いますか―――エンド。

<感想>

おとぎ話世界をモチーフにしながらも裁判の本質をリアルに描いたドラマでした。

誰もが知る『三匹のこぶた』の物語。
それ故に視聴者はオオカミの暴虐と、これに対抗しようとした子豚の殺意を知っています。
オオカミは子豚を食い殺すつもりでしたし、子豚はこれを返り討ちにするつもりでした。
「正当防衛か否か」の結論で言えば……明らかでしょう。

言わば視聴者は「神」の視点に立っており、真相を全て見通している状態。
ところが、その状態ですら次々と出て来る新証拠や新証言に翻弄されました。

そう、真相を知っている視聴者でさえも困惑してしまうのです。
これが実際に何も知らずに裁判員の席に座っていたとしたら……。

現実は物語と異なり結末を先に知ることは出来ません。
それこそ、本作の結末が曖昧であるように。
結果、もしかするとあなたは「真実とは違う事実」を「真実」だと認めてしまうかもしれません。
そんな「裁判員の難しさ」や「責任の重さ」を痛感する番組でした。

また、「裁判員の難しさ」を説明する上で「イチから設定を説明する必要がないように、誰もが知る童話を設定に据えたのも特筆すべき点」でしょう。
此の点、とても分かりやすく為になるドラマだと言えそうです。

同時に、本作は上質な「リドル・ストーリー」でもある。
「リドル・ストーリー」とは芥川龍之介『藪の中』やストックトン『女か虎か』のように「敢えて結末を明かさずに読者(視聴者)に結末を委ねる物語」ですが、本作がまさにソレ。

可能性を純粋に物語として楽しむことも出来る、それが「リドル・ストーリー」。
「リドル・ストーリー」に興味がある方は山口雅也先生による『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』(早川書房刊)がオススメです。
中でも『異版 女か虎か』が面白いので読んでみてください。

『異版 女か虎か』(アブラハム・ネイサン著、山口雅也訳、早川書房刊『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』収録)ネタバレ書評(レビュー)

◆関連過去記事
昔話法廷「“カチカチ山”裁判」(8月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

昔話法廷「“白雪姫”裁判」(8月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

実は残酷な童話の世界が赤裸々になる!?「昔話法廷」が2015年8月10日午前10時からNHKさんEテレにて開廷!!

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2015年08月20日

24年ぶり、早川書房さんより新版『海外ミステリ・ハンドブック』が明日(2015年8月21日)発売!!

早川書房さんより、24年ぶりに新版『海外ミステリ・ハンドブック』が2015年8月21日に発売されることが明らかになりました。

8月21日、つまり明日ですね……。
って、明日ぅ!?

というワケで急ぎお伝えするのは上にもある通り、新版『海外ミステリ・ハンドブック』発売の報。
同時に『海外SFハンドブック』も14年ぶりの新版が発売とのこと。
とは言え、いきなり言われても何が何やらだと思うので順を追って説明を。

もともと、早川書房さんから『ミステリ・ハンドブック』という書籍が発売されておりました。
これは、その名の通りミステリマニア向けのガイド本で発売されたのが1991年9月のこと。
「流石に24年も経過したので、その新版を作ろう」との試みが行われて出来たのが新版のようです。
詳しくは『ミステリマガジン 2015年5月号』に掲載された「特集:新ミステリ・ハンドブックを作ろう!」を読まれたし。

そんな新版では10のカテゴリにて100冊を紹介。
気になる内容は次の通り。

<あらすじ>

10のカテゴリーに分け、100冊のミステリをナビゲート。10のカテゴリーは――「キャラ立ちミステリ」「クラシック・ミステリ」「ヒーロー or アンチ・ヒーロー・ミステリ」「〈楽しい殺人〉のミステリ」「相棒物ミステリ」「北欧ミステリ」「英米圏以外のミステリ」「エンタメ・スリラー」「イヤミス好きに薦めるミステリ」「新世代ミステリ」――あなたにぴったりの海外ミステリ「最初の一冊」をお薦めいたします!
(公式HPより)


海外ミステリにこれから挑む方には必携の書となるか!?

でもって同じく14年ぶりの新版となった『海外SFハンドブック』。
こちらは過去に2回ほど発行されており、第1弾が1990年7月、第2弾が2001年4月に発売されていました。
そんな今回はSF作家20人の代表作を紹介するとのことで、アーサー・C・クラークやアイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインライン、チャイナ・ミエヴィル、グレッグ・イーガンなどが取り上げられるそうです。

気になる内容は次の通り。

<あらすじ>

クラーク、ディックからイーガン、チャン、『火星の人』、SF文庫2000番『ソラリス』まで。主要作家必読書ガイド、年代別SF史、SF文庫総作品リストなど、一冊で海外SFのすべてがわかるガイドブック最新版
(公式HPより)


これまたSFファン必携の書となりそう!?

ちなみに情報によると新版『海外ミステリ・ハンドブック』は旧版に比べてビギナー向けだそう。
海外ミステリに疎い管理人もこれで楽しく勉強出来る……かも!?

そして、ガイドと言えば『世界ミステリ作家事典』(国書刊行会刊)の充実ぶりもかなり凄い!!
何しろ「日本推理作家協会賞 評論その他部門」を受賞してます。
興味のある方はこちらもチェックされると面白いかも!!

「海外ミステリ・ハンドブック」です!!
海外ミステリ・ハンドブック





「海外SFハンドブック (ハヤカワ文庫SF)」です!!
海外SFハンドブック (ハヤカワ文庫SF)





旧版「ミステリ・ハンドブック (ハヤカワ・ミステリ文庫)」です!!
ミステリ・ハンドブック (ハヤカワ・ミステリ文庫)





「世界ミステリ作家事典 本格派篇」です!!
世界ミステリ作家事典 本格派篇





「世界ミステリ作家事典―ハードボイルド・警察小説・サスペンス篇」です!!
世界ミステリ作家事典―ハードボイルド・警察小説・サスペンス篇



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水曜ミステリー9「検事・沢木正夫3 共犯者 殺意の三角関係!白マスクの男と鉄壁アリバイの謎!!音の出ないピアノ…復讐の旋律」(8月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「検事・沢木正夫3 共犯者 殺意の三角関係!白マスクの男と鉄壁アリバイの謎!!音の出ないピアノ…復讐の旋律」(8月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

東京・東中野で心臓をひと突きされた男性の遺体が発見され、警視庁捜査一課の梨本克昭(大友康平)から連絡を受けた東京地検検事の沢木正夫(寺脇康文)は、現場に駆けつける。被害者は「東和カルチャーセンター」学長の辻川義和(大和田獏)。辺りの状況から顔見知りによる犯行が高まる中、沢木は偶然、中学時代の親友・瀬崎勝(中村橋之助)と再会する。しかも「東和カルチャーセンター」で歴史講師をしていると聞き、沢木は驚く。

調べによると、辻川はかなりのやり手だったが高圧的な物言いゆえ敵も多く、一カ月程前に催されたホームパーティーでは、辻川の顔写真にナイフが突き刺さったケーキが送り付けられていた。また女性関係も派手で、最近はフラワーデザイン講師の藤木玲奈(高橋かおり)と深い仲となっていた。殺害直前は、現場近くの喫茶店にひとりで現れたという辻川。しかも店主・丘野(ビートきよし)によれば、店に辻川宛ての電話があり、その後、白いマスクの男が現れ一緒に出て行ったという。

そんな中、捜査本部に“辻川の妻・嘉穂(国生さゆり)に男がいる”というタレコミ電話が入る。梨本の調べで、相手は心療内科医の片桐芳彦(二階堂智)であるとわかり、さらにマスクの男の容姿と一致することから容疑者として浮上する。片桐いわく、辻川のDVに関する相談を受けているうちに、付き合うようになったという。しかし誰がタレコミをしたのか?一体何のために…?

沢木と事務官の国松敏夫(嶋田久作)は、辻川の通夜に出向くが、参列者は閑散としていた。そこへ玲奈を連れた瀬崎が現れ、玲奈との結婚を真剣に考えていると宣言する。実は辻川に「玲奈から手を引け」と脅されていたという瀬崎。事件当夜には辻川から呼び出されていたが、玲奈と会うため約束をすっぽかしていた。玲奈も確かに瀬崎とホテルにいたと証言するが、瀬崎は20分ほど席から離れていたという。

瀬崎、玲奈、辻川…この3人の三角関係のもつれが事件と関係しているのか?そんな思いがよぎる中、捜査線上に意外な人物が浮かぶ。そしてそこには、思いもよらない過去の闇が隠されていた…!
(公式HPより)


では、続きから(一部、重複アリ)……

沢木正夫は東京地検の検事である。
日夜、「人は過ちを犯すが、正せないことはない」をモットーに被疑者と向き合い、真実を見詰めている。

ある日、東京・東中野で男性の刺殺体が発見された。
被害者は「東和カルチャーセンター」学長の辻川義和。

辻川は殺害直前まで現場付近の喫茶店に滞在しており、何処かからの電話を受けて何やら頷くと、その後に現れた野球帽にマスク姿の男と共に出て行ったらしい。
おそらく、その男が犯人と思われた。

辻川はかなりのやり手だが敵も多かったようだ。
1ヶ月ほど前にはホームパーティに、ナイフが突き立てられたケーキが届けられる事件も起こっていたらしい。
しかも、辻川には妻・嘉穂が居るにも関わらずフラワーデザイン講師の藤木玲奈と男女関係にあったのである。

それだけに、辻川は用心深い性格であった。
にも関わらず、どうして警戒することなく男について行ったのだろうか?

そんな中、沢木は辻川のスクールで瀬崎勝と再会する。
瀬崎は沢木の中学時代の親友で、かつあげにあった沢木を助けたことから親交が始まっていた。
数年ぶりの再会に驚く沢木だが、さらに驚くことに。
なんと、瀬崎は辻川のもとで歴史講師を務めていたのだ。

思わぬ再会に何かを感じる沢木。

矢先、何者かの密告電話により辻川だけでなく嘉穂にも愛人が居ることが判明。
相手は心療内科医の片桐芳彦であった。
片桐によれば嘉穂が辻川からDV被害を受けており、相談されるうちに親密になったらしい。

こうして容疑は嘉穂と片桐へ。
だが、嘉穂と片桐にはアリバイがあり犯行は不可能であった。
一方、沢木は密告電話の内容よりも、その主を気に掛ける。

その夜、辻川の通夜に出向いた沢木は玲奈と共に居る瀬崎に出会う。
なんでも、瀬崎は玲奈と結婚を前提に交際しているらしい。
だとすれば、瀬崎は玲奈を巡って辻川と対立していたことになる。

これに違和感を抱く沢木。
何故なら、沢木が知る瀬崎は結婚などの決意を軽々しく口に出来る人間では無かったからだ。

ともあれ、瀬崎にも犯行動機が生まれたことで容疑が向かうことに。

しかし、犯行当夜に瀬崎は玲奈と共にホテルに一泊するとのアリバイがあった。
だが、沢木は瀬崎が数分の間だけ席を立ったと聞くや、ある確信を抱く。

辻川が誰かから受けた電話は瀬崎による物では無かったか。
瀬崎は電話で辻川を油断させ、共犯者を迎えにやり辻川を殺害させたのではないか。

直後、共犯者となりうる人物が浮上した。
嘉穂をストーカーしていた篠田洋介である。
篠田は嘉穂を想うあまり辻川を憎んでいたようだ。
例のホームパーティーのケーキも篠田の犯行であった。

そんな中、瀬崎と嘉穂に意外な接点が判明。
なんと、大学時代の瀬崎と嘉穂が交際していたのである。
しかし、ある事故により別れていた。

当時、音大に通っていた嘉穂はピアニストを目指していたのだが瀬崎の運転する車で事故に遭い、腕を負傷し夢を諦めていたのである。

責任を感じた瀬崎は嘉穂に結婚しようと提案するが、同情はいらないと嘉穂がこれを拒否。
結果、2人は別れていたのだ。

今もまだ瀬崎が嘉穂を愛していたのなら篠田と共謀することも可能である。
瀬崎と篠田は「嘉穂を守る為」に辻川を殺害したのだ。
そして、沢木が知る瀬崎ならば篠田を生かしておく筈がない。
篠田は既に瀬崎に口封じされていると思われた。

これを証明するように玲奈から「瀬崎が篠田らしき男と接触していた」との証言が飛び出した。
沢木は瀬崎に罠を仕掛けることに。

翌日、瀬崎を呼び出した沢木は「篠田の身柄が拘束された」と嘘を吐く。
これを真に受けた瀬崎は激しく動揺し、沢木と別れるや車を飛ばしてとある山中へ。
篠田は其処に埋まっている筈であった。

泡を食いつつ、土を掘り返す瀬崎。
すると、奥から篠田の遺体が出て来るではないか!!

首を傾げる瀬崎。
同時に周囲にライトが!!
沢木の命で刑事が瀬崎を尾行していたのだ。
こうして、瀬崎は身柄を拘束された。

沢木に取調を受けることとなった瀬崎は事情を明かし始めた。

嘉穂を愛していた瀬崎。
だが、事故で嘉穂の夢を絶ってしまった。
さらに、嘉穂からも拒否されたことで独身を貫いていた。

そんなある日、辻川から彼の妻を紹介されて驚いた。
嘉穂だったのだ。
嘉穂は笑顔を失っており、瀬崎はショックを受ける。

罪の意識を抱いた瀬崎は嘉穂に「今も愛している」と告げた。
すると、嘉穂は言ったのだ「今も私を愛しているのだったら、証を見せて」と。

愛している証拠を見せろと詰め寄られた瀬崎は嘉穂の為に辻川を殺害することを決意。
嘉穂のストーカーであった篠田を500万円で雇い入れた。

そして犯行当日、瀬崎は喫茶店に辻川を呼び出した。
自身はホテルで玲奈と密会し、途中で待ち合わせ場所変更と称して辻川に連絡を入れた。
この際に迎えをやると安心させることに。
その後、辻川は迎えを名乗った篠田に連れ出され隙をついて殺害されたのだ。

犯行終了後、篠田は瀬崎と合流。
瀬崎が隙を突いて篠田を殺害し、山中に埋めたのだ。

嘉穂と片桐の関係を密告したのも瀬崎であった。
最初に疑惑を向けさせ後に晴らさせることで捜査対象から外そうと狙ったらしい。

すべてを告白した瀬崎は罪に服した。

続いて、嘉穂の取調べを行う沢木。
「私が瀬崎さんを追い込んだのかもしれません」と述べる嘉穂。
嘉穂は辻川を殺したかったが、瀬崎に望んだのは別のことだったと訴える。
嘉穂は辻川と別れ、瀬崎との新たな生活を切り出すことこそをもっとも望んでいたのである―――エンド。

<感想>

「検事・沢木正夫シリーズ」ドラマ版第3弾。
ドラマ原作は、小杉健治先生による「検事・沢木正夫シリーズ」第3弾『検事・沢木正夫 共犯者』(双葉社刊)。
あらすじは次の通り。

<あらすじ>

「愛しているなら証を見せて!」女の悲痛な叫びに男はどう応えたのか? 男は昔の恋人。それも彼女の夢を潰えさせてしまった過去を持つ。犯罪の底に潜む男女の心の闇とは!? 長編検察小説・沢木正夫シリーズ第3弾!
(双葉社公式HPより)


原作となる沢木シリーズは2013年9月の時点で既に完結を迎えています。全4冊。
第1弾が『検事・沢木正夫 公訴取消し』。
第2弾が本作『検事・沢木正夫 第三の容疑者』。
第3弾『検事・沢木正夫 共犯者』。
最終話にして第4弾『検事・沢木正夫 宿命』。
シリーズに興味のある方はアマゾンさんへのリンクを本記事下部に用意したのでチェックしてみては!?

ちなみに、本シリーズはTBSさんにて榎木孝明さん主演で既にドラマ化されているようです。
シリーズは2作品制作され、「殺意の分岐点」と「公訴取消し」が存在しています。
テレビ東京版も3作目を迎え、残るは『宿命』のみとなりました。
『宿命』のドラマ化に期待しましょう!!

では、ドラマ感想を。

サブタイトル「共犯者」は「瀬崎と篠田」でもあり「嘉穂と瀬崎」でもあったんだなぁ。
そして、過去には「瀬崎と沢木」でもあった。
意味深長なサブタイでしたね。

そう言えば……結局のところ、瀬崎も嘉穂のことを理解していなかったのかもしれませんね。
この擦れ違いが悲劇を生んだのかも。
とはいえ、もうちょっとエピソードを重ねないとどうにも軽く感じられたのは難でした。

途中、沢木の罠に嵌り瀬崎が車を飛ばす中、嘉穂がピアノを弾き続けるシーンなんかはアリだとは思うけど……其処に至るまでのシーンでもっと説得力が欲しかったかもしれない。
そしたら、あのシーンの重みがもっと増しただろう。
例えば、若かりし日の瀬崎と嘉穂の楽しい時間を具体的なエピソードで描くとか。
なんだか「ただ、恋人でした」と言われても、2人の関係が上手く思い描けない。
此の点、もっと深い描写が欲しかったかなぁ。

ちなみに、今回はキャストにかなりの工夫が凝らされていましたね。

まず、「水曜ミステリー9」で放送された直近の小杉健治先生原作ドラマは2015年7月1日に放送された「保身」。
実は「検事・沢木正夫3 共犯者」のキャストのうち、中村橋之助さんと嶋田久作さんがこちらにも出演されていました。

水曜ミステリー9「小杉健治サスペンス 保身 正義の刑事が巨大権力に挑む緊迫のドラマ!絞殺事件とひき逃げ…2つの裏に警察が隠す重大な過ち 空白4時間の謎」(7月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)

でもって、本作で何よりも話題を浚ったのが瀬崎役にて橋之助さんが親子共演を果たされたこと。
実は学生時代の瀬崎を演じられたのは橋之助さんのご長男・中村国生さんでした。
流石は親子、それだけにこれ以上ないほどピッタリと役のリレーが上手く出来ていましたね。
ニュース記事によると、これには橋之助さんも大満足だったとか。
今後も国生さんの活躍に期待です。

……と書いていて気付いたのですが、本作にはこちらは苗字ですが同じ字の国生さゆりさんも出演されていたり。
これまた、意外な工夫だったのかもしれません。

◆関連過去記事
【検事・沢木正夫シリーズ】
水曜ミステリー9「検事・沢木正夫 第三の容疑者 完黙する3人目の男と死者が残した謎の言葉!2つの事件が交差する逆転法廷」(9月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「検事・沢木正夫2 公訴取り消し 早すぎた逮捕 二転三転する容疑者の証言…有罪を阻む3人の目撃者!追い詰められた検察の決断!」(12月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【その他】
水曜ミステリー9「小杉健治サスペンス 偽証法廷〜刑事が越えた一線 奇妙な死体!?妻に迫る連続殺人犯の魔の手!証拠能力ゼロ衝撃の逆転判決!!(信じた友は連続殺人犯!?刑事が踏み越えた許されざる一線!守るべきものは正義か?それとも…)」(4月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「小杉健治サスペンス 弁護士 水木邦夫 残り火〜孤高の弁護士が挑む最後の法廷〜3連続通り魔殺人は死刑か冤罪化?凶器・目撃者すべての証拠がクロ!逆転裁判を勝ち取れるか!?」(10月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「小杉健治サスペンス 決断 息子は検事 父はかつての名刑事!18年前の殺人が謎の迷宮入り!?最強の敵と対峙する親子が下した人生最大の決断!!」(3月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「小杉健治サスペンス 保身 正義の刑事が巨大権力に挑む緊迫のドラマ!絞殺事件とひき逃げ…2つの裏に警察が隠す重大な過ち 空白4時間の謎」(7月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)

<キャスト>

沢木正夫:寺脇康文
国松敏夫:嶋田久作
藤木玲奈:高橋かおり
梨本克昭:大友康平
片桐芳彦:二階堂智
斎藤:カムイ
市村みどり:水木 薫
棚橋 剛:錦はやと
篠田洋介:遠藤 要
店主・丘野:ビートきよし
辻川義和:大和田獏
辻川嘉穂:国生さゆり
瀬崎 勝:中村橋之助 ほか
(公式HPより転載、順不同、敬称略)


シリーズ第1弾「公訴取消し―検事・沢木正夫 (双葉文庫)」です!!
公訴取消し―検事・沢木正夫 (双葉文庫)





シリーズ第2弾「第三の容疑者ー検事・沢木正夫 (双葉文庫)」です!!
第三の容疑者ー検事・沢木正夫 (双葉文庫)





シリーズ第3弾「検事・沢木正夫 共犯者 (双葉文庫)」です!!
検事・沢木正夫 共犯者 (双葉文庫)





シリーズ最終巻「検事・沢木正夫 宿命 (双葉文庫)」です!!
検事・沢木正夫 宿命 (双葉文庫)



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