2015年08月02日

「実は私は」第122話「カブトムシを採りに行こう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「実は私は」第122話「カブトムシを採りに行こう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧は本記事下部に移動しました。

<あらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜

「アナザル」こと「絶対に秘密を守れない男」黒峰朝陽は憧れのヒロイン・白神葉子の秘密を知ってしまった。
その秘密とは「白神葉子がハーフの吸血鬼である」こと。
朝陽は葉子の為に、この秘密を守らねばならない―――。
取り巻く人々を相手に、朝陽は秘密を守り抜くことが出来るのか?

矢先、実は宇宙人であった委員長・渚、狼男で肉食系女子な獅穂、悪魔っ娘の茜、未来人の凛、幼馴染のみかん、天使の華恋も加わって……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

廊下を歩く仲睦まじいカップルの姿。
誰あろう、朝陽と葉子である。

「あのこんなこと女の子の私から言うのもなんなんやけど、良ければ今晩……」
何やら言い淀む葉子。

(こ、今晩……!?)
年頃の男子らしく様々な妄想を思い浮かべる朝陽だが。

「良ければ今晩、カブトムシ採りを手伝って!!」
「あっ、うん……」

内心では全力で残念がりつつ、でもこれってデートだよね!!と喜ぶ朝陽。

「朝陽、私も!!」
と、朝陽の頭の上から声がかかる。
そう、朝陽に肩車して貰っていた凛だ。
どうやら、凛もカブトムシに興味を持っているらしい。

「どうやら、私の出番のようねっ!!」
さらに飛び出して来たのは華恋である。
どうやら、カブトムシ採集に自信があるようだ。

その陰では、ほっと胸を撫で下ろした緑苑坂弓と壁を蹴る茜の姿も見える。
なるほど、3人揃って朝陽と葉子の遣り取りを盗み聞きしていたようだ。
弓は葉子の台詞に安心し、茜は不甲斐ないと憤っているのだろう。

とはいえ、こうして朝陽、葉子、凛、華恋からなるカブトムシ採集隊が結成されることに。

放課後に華恋のもとへ集まった一同。
華恋によればカブトムシの穴場とされる裏山は23時頃が最適とのこと。
22時頃に出発するとして時間に余裕がある。
其処で一旦、宿直室へと向かうことに。

なんでも、華恋は此処で生活しているらしい。
校内の見回りの代わりに宿泊費が無料なのだそうだ。
茜に感謝している華恋だが態良く見回りを押しつけられたようだ……何処までも不憫な娘である。

と、華恋の持ち物に「源二郎、桐子、茜、華恋の記念写真」を見つけた朝陽。
どうやら、海に行ったときのもののようで全員が太陽の下で水着姿になって笑っている。
源二郎も人間大の状態で、とても幸せそうだ。
子供っぽい桐子や今と変わらぬ茜と華恋たちも微笑ましい。

これを見ていた朝陽は「あれ?」と何かに違和感を抱く。
だが、それが何かには気付かない。

一方、凛はカブトムシが待ちきれない様子。
カリスマ痴女が支配する未来にはカブトムシが居ないのか……と葉子が同情したところ。
「夜の森には野良痴女が出るから駄目だって……」と悲しそうな凛。
「野良って何?」とばかりに思わずツッコミしそうになる朝陽であった。

それしても……朝陽の中に嫌な予感が芽生える。
22時まではまだ数時間ある、にも拘らず葉子たちは余りにはしゃぎ過ぎている。
こんな時は……。

数時間後、朝陽の危惧は的中していた。
葉子、凛どころか最年長者の華恋でさえもぐっすりと寝入ってしまっていた。
しかも布団まで敷く完全睡眠ぶりだ。
何度も起こそうとする朝陽だが、その度に葉子たちは反発して来た。

気付けば、翌朝を迎えていた。
朝陽は完全睡眠ならぬ完全徹夜達成である。
眠い目をこすりながら「起こそうとしたのに……」とぼやく。
一方、葉子たちは快眠だったようで元気一杯ながら「行きたかったのに……」とぼやく。

そして、葉子たちは決断した。
今晩(23時)こそ裏山へカブトムシ採集に行こう、と。

今度こそ寝ないとの決意も固く、葉子たちは午前中からワイワイと対策を語り合う。
遂には「怪談のCD」までも用意された。

その夜22時ごろ、またも布団の中に収まる葉子たちの姿が。
朝早くからはしゃぎ過ぎたのだ。

ようやく起こしても「怖くて動けない」とぼやく始末。
どうやら「怪談のCD」が此処に来て影響し出したようだ。
もはや、裏山へ赴くことは「カブトムシ採集」ではなく「肝試し」にすり替わってしまった。
今夜も無理だ……と察した朝陽は「せめて家に帰らせて」と訴えるが。

葉子、凛、華恋たちは「怖いから行かないで」と懇願。
その日も朝陽を残し気持ち良く眠るのであった。
朝陽、完全徹夜2日目突入である。

さて、これが幾度繰り返されたであろうか……。
体力の限界を覚えた朝陽はこの連鎖に終止符を打つ必要に迫られつつあった。
時間は23時だが、今晩も葉子たちは布団で就寝中だ。
これを放置すれば今日も徹夜だろう。

もはや一刻の猶予もない。
後でなんと批難されようとも今日こそはヤル!!
目を血走らせた朝陽は虫取り網を手に遂に裏山へ向かうのだが……。

「良し、いいぞ!!良くやった。これで簡単には捕まらないだろう!!」
其処にはカブトムシを特訓する渚の姿が。
どうやら、捕まらないようにと特訓し友情を育んでいたようである。

そんな渚たちと朝陽の目が合った。
次いで、渚の視線が朝陽の持つ網へと移動する。

「まさか……」
絶句する渚の隣からカブトムシが歩み出る。

「そんな……止めるんだ!!仲間を救う為にキミが犠牲になるだなんて!!」
叫ぶ渚、カブトムシはその間にも率先として虫かごへと歩み寄っていた。

「一体、どうしろって言うんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ」
朝陽の叫びが山中に木霊する―――123話に続く。

充実の「実は私は」が読めるのは「週刊少年チャンピオン」だけ。
本誌で確認せよ!!

<感想>

「週刊少年チャンピオン」にて「さくらDISCORD」を連載されていた増田英二先生の新作。
「さくらDISCORD」は未読の管理人ですが、1話を読んで注目している作品です。
コミックス1巻に続き2巻、3巻、4巻、5巻、6巻、7巻、8巻、9巻、10巻、11巻、12巻も重版出来とのことで、目出度い。
さらに、13巻も発売予定。
そして、本作かなり面白い!!

そんな「実は私は」が遂にアニメ化。
テレビ東京系列にて2015年7月6日から放送開始とのこと見逃すなかれ!!
ちなみに、登場人物に黄龍院凛らの名前が無いことを見ると序盤をアニメ化する予定なのかな。
さらに、アニメ版は早くもブルーレイ、DVD化が発表されています。

【第EXTRA話】アニメ版「実は私は」スタッフさんとキャストさんの一部を明らかにされよう!

その122話。
サブタイは「カブトムシを採りに行こう!」。
今回、ギャグ回かと思わせて重大な秘密が盛り込まれていたのかもしれません。

それが朝陽が抱いた違和感。
考え得るのは次の2つ。

1.源二郎が水着姿で日光を浴びていること。
2.源二郎に比べると当時と現在の桐子の変化が小さい。

まず1つ目「源二郎が水着姿で日光を浴びている」こと。
本来、吸血鬼である源二郎が日の光を浴びて行動出来る筈がない。
にも関わらず、源二郎は日光を浴びている。
日焼け止めクリームの可能性もあるが、当時にそれだけの物があったのか?

そして、当時の源二郎は人間大の大きさであった。
これが何を意味するか!?
此処からは憶測ですが「当時の源二郎は吸血行為を行っておらず正式な吸血鬼では無かった」のでないか。

葉子によれば「吸血行為はキスと同じ」で愛する者との間のみで行うこと。
つまり、当時の源二郎は桐子とプラトニックな関係であったと想像出来ます。
言わば、現状の朝陽と葉子と同じ。

もしかして、葉子が朝陽と愛を交わした(=吸血してしまった)場合、葉子にも源二郎同様の何かが起こるのではないか。
だからこそ、源二郎と桐子はそれを危惧しているのではないか。

一方、茜は過去に源二郎を救えなかったことに苦い思いを抱いており、朝陽と葉子にはこれを乗り越えて欲しいと思っている。
つまり、朝陽の真実の愛があれば真祖である源二郎は無理でもハーフである葉子はコレを乗り越えられる可能性があるのではないか。
だからこそ、朝陽と葉子の絆作りに協力しているのではないか。

2つ目「源二郎に比べると当時と現在の桐子の変化が小さい」。
1とは逆に桐子に注目してみるとこちらも違和感になり得る。
源二郎に比べて学生当時と現在の桐子の変化は小さい。
もしかすると、吸血鬼のパートナーは歳を取らないなどのルールが存在するのかも。

う〜〜〜む、いろいろ想像が膨らむぞ!!

今回は他にも「朝日にとって終わらない悪夢」だったり、ラストの「渚サプライズ」と盛り沢山でした。
特にあらすじを見てもお分かりの通り「初日の葉子たちが寝入ってしまう」あるいは「2日目の葉子たちが怪談に怯え動けない」でオチになっても良いところを其処からもう一捻り加えていた点が秀逸。
そして、そのラストを渚が持って行くんだもんなぁ。
しかも、あのラストはまさに渚の特性を活かした最適な物。
先述の謎に加えてかなり面白い回でした。

うむ、今回も充実した回ですな。
多くは語るまい、とりあえず読め!!

そう言えば、上でもお伝えした通りコミックス12巻が発売。
表紙は1巻の葉子、2巻の渚、3巻の獅穂、4巻の茜、5巻のフクちゃんとみかん、6巻の凛、7巻の明里さんに続き、8巻が銀華恋、9巻が渚とみかんのコンビ、10巻が1周回って葉子、11巻は獅穂と凛コンビ。
そして、12巻は―――遂に緑苑坂弓こと源二郎に、その傍らには桐子も!!
となれば、次回は登場順で桃地結香か。
もしかして、凛や閃と共に未来人組で登場かな?
その次が水奈川咲になるのかな?

ちなみに、上記のあらすじは本作の魅力を伝えられるよう改変を加えてまとめていますが、その面白さを伝えきれていません。
やっぱり、あの絵とコマ割りなどのテンポあっての本作。
是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を読んで欲しい。

もう1度繰り返しましょう。
本作に興味を持たれた方には、是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を捜して読んで欲しい。
最近の「週刊少年チャンピオン」は本作など本当に粒揃いでクオリティが高い作品が多い。
注目の雑誌の1つと言えるでしょう。

◆関連過去記事
「実は私は」第1話から第120話まで(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)まとめ

「実は私は」第121話「流しそうめんを食べよう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

登場人物一覧:
黒峰朝陽:主人公、通称「アナザル」。
白神葉子:朝陽の意中の人物。ある秘密が……。
紫々戸獅狼:葉子の幼馴染。彼もまたある秘密を……。
紫々戸獅穂:葉子の幼馴染。彼女もまたある秘密を……。

藍澤渚:クラス委員長。彼女にも秘密が……。
藍澤涼:渚の兄、意外な形で登場することに……。
紅本茜:紅本の親族らしい。彼女にも秘密が……。
紅本明里:教師。彼女にも秘密が……。
黄龍院凛:33話より登場した謎の少女。彼女にも秘密が!?
黄龍丸:凛が駆るドラゴン。52話にて意外な正体が明らかに。

朱美みかん:朝陽の幼馴染。新聞部所属。通称「外道クイーン(オレンジ)」。
岡田:朝陽の友人の1人。通称・岡。眼鏡が特徴。割と友人想いの様子。
嶋田:朝陽の友人の1人。通称・嶋。軽い。
桜田:朝陽の友人の1人。通称・サクラ。渋い。
フクちゃん:「福の神見習い」を名乗る眼鏡。
フクの介:フクちゃんの先輩。やはり眼鏡。
フク太郎:フクちゃんとフクの介の先輩。やはり眼鏡。
フク蔵:フクちゃんとフクの介とフク太郎の先輩。やはり眼鏡。
手崎:文字通り茜の手先な料理教室のシェフ。

朝陽の父:朝陽の家族。22話に初登場。
朝陽の母:朝陽の家族。22話に初登場。
黒峰鳴:朝陽の妹。22話、28話、48話に登場。48話にて名前と顔が判明。92話で高校に進学。
白神源二郎:吸血鬼。額に十字傷を抱く巨人。39話にて名前が判明。
白神桐子:葉子の母で人間。和服の美女。38話にて名前が判明。
銀華恋:茜に続く第2のツノツキ……の筈だったが。58話から登場。

緑苑坂弓:朝陽たちの副担任、実は源二郎。92話から登場。
桃地結香:忍者少女、92話(実際は105話)から登場。ある秘密が……。
閃:鳴、結香のクラスメートの男子。瓶底眼鏡に腰の日本刀がトレードマーク。
水奈川咲:結香、閃、鳴のクラスメート。109話から登場。ある秘密が……。
箱入り娘:114話終盤に登場した謎の人物!?

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posted by 俺 at 12:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

土曜ワイド劇場「温泉若おかみの殺人推理 金沢〜和倉温泉、九谷焼展示会で連続殺人!!“聖地巡礼"の写真に殺人トリック!?消えた600万の器の謎で嫁姑バトル!!」(8月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ワイド劇場「温泉若おかみの殺人推理 金沢〜和倉温泉、九谷焼展示会で連続殺人!!“聖地巡礼"の写真に殺人トリック!?消えた600万の器の謎で嫁姑バトル!!」(8月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

<あらすじ>

中川美奈(東ちづる)は、石川県・能登和倉温泉にあるホテルの若おかみ。夫の新太郎(羽場裕一)は地元警察の刑事で、2人とも毎日、大おかみ・政子(岡田茉莉子)のシゴキを受けながら、元気に働いている。
ホテルではこのほど、2つの展示会が同時に催されることとなった。新進のアニメ作家・若田玲(平山あや)の展示即売会を企画してきたのは、若おかみの美奈。一方、大おかみの政子が進めて来たのは、次の人間国宝と評判の高い九谷焼作家・薮下弘敏(寺田農)の作品展示会。お互いの意地もあり、美奈と政子はそれぞれ負けられないと意気込んでいた。

展示会の前日、薮下や美術商・塚本久(山田明郷)と共にホテルにやって来た薮下の妻・早苗(床嶋佳子)を、玲は「お母さん、どうして25年前、私と父を捨てたの。私はあなたを許していない」とにらみつけた。聞けば、玲は、早苗が前夫との間にもうけた実の娘だという。何やら不穏含みの幕開けに、美奈は嫌な予感を禁じ得ない…。
そしてその美奈の悪い予感が的中! なんと、展示会初日早朝、ホテル近くの漁港で塚本の刺殺死体が発見されたのだ! 新太郎は殿山警部(若林豪)と共に捜査を開始、死亡推定時刻は朝6時から7時の間と思われた。前夜、塚本と玲がホテルのバーで話し込んでいるのを、仲居の小百合(山村紅葉)が目撃していた。玲によると、塚本は薮下の才能を見限っており、玲の原画販売を受け持たせてくれと申し込んできたという。その玲には、早朝、七尾の漁港を見学していたというアリバイがあった。

そんな中、薮下の作品展示会場で騒ぎが起きた。600万円もの価格のついた茶碗が、なんと盗難にあったのだ。展示会にやって来た美術商の死、そして高額な器の盗難…これは一連の出来事なのだろうか…!? 
その矢先、玲の父・竜二(久松信美)が半年前に何者かに殺害されていたことがわかる。竜二はその昔、藪下の弟子だったという。さっそく竜二の死体発見現場を訪れた、美奈と新太郎。竜二が死んだ夜、現場付近の防犯カメラに映っていた不審な男の写真を見た美奈は、驚く。その男は美奈のホテルの宿泊客で、塚本が殺された朝、事件現場で見かけたネット記者・沢井雄一(榊英雄)だった――!
(公式HPより)


では、続きから(一部、重複アリ)……。

中川美奈は、石川県・能登和倉温泉にあるホテルの若おかみ。
夫の新太郎は地元警察の刑事。
新太郎の母・政子は美奈の大先輩で大おかみだ。

これまでに美奈は数多の難事件を名推理で解決して来た。
夫・新太郎はそんな美奈に対し本職として些か忸怩たる想いを抱いている。
そんな美奈が今回関わった事件とは……。

美奈のホテルで2つの展示会が開催されることとなった。
1つは次期人間国宝候補として知られる九谷焼作家の藪下弘敏の個展。
もう1つは新進アニメ作家である若田玲の展示即売会である。

実はそれぞれ藪下を政子が、玲を美奈が強く推して開催に繋がったものだ。
それだけに政子は藪下を、美奈は玲を支援し競っていた。

ところが、それを除いても藪下と玲自身も互いに剣呑な様子。
実は藪下の後妻・早苗は玲の実母だったのだ。
過去、早苗は藪下の弟子の1人・若田竜一と結婚生活を営んでおり玲をもうけた。
しかし、25年前に早苗は突如として夫と娘を捨てて藪下の後妻となってしまったのだ。
結果、若田は傷心からこれまた玲を捨てて姿を消していたのである。
以来、玲は家庭崩壊の引き金を引いた早苗を恨んでいたのだ。

藪下と早苗に憎しみを抱く玲。
そんな玲を不快な想いで見詰める藪下。
そして、何故か最近になって美奈のもとで仲居となった石川咲子までもが藪下に憎悪を向ける。
さらに、宿泊客の1人で記者の沢井雄一も何やら藪下たちに興味があるようだ。

不穏な空気が漂う中、藪下の懐刀と呼ばれる美術商・塚本久が何者かに殺害されてしまう。
死亡推定時刻は午前6時から7時の間と思われた。

捜査に乗り出した新太郎は塚本と玲が何やら話し込んでいたとの証言を得た。
アリバイを尋ねたところ「水曜日ですよね、その日は七尾の漁港を見学してました」と述べる玲。
これに新太郎は「玲に犯行は不可能」と結論付けた。

一方、展示会自体は好評のうちに進んでいた。
藪下はもちろん、玲も人気では負けておらず多くのファンがそのもとを訪れた。
いや、むしろ玲の方が熱心なファンが多いほどである。

例えば、玲の作品に登場した場所を巡り写真撮影したファンも多い。
彼らは本当に楽しそうで、見ている美奈もウキウキしそうになるくらいだ。
美奈はファンが撮影した風景写真を受け取り、これまた会場に展示することに。
特に赤い車が写真に写り込んだ風景は絵画のようですらあった。

ところが、その日の午後に事件が起こった。
展示会場に飾られていた藪下の600万円の茶碗が消えたのだ。
何者かにより盗み出されてしまったらしい。
「弁償」の2文字が頭に浮かんだ政子は大パニックである。

その頃、玲に続き関係者の洗い出しを行っていた新太郎は若田を疑う。
だが、若田もまた半年前に何者かに殺害されていた。

これは一連の事件なのか?
若田の死を調べた新太郎はその犯行現場付近に沢井が居たことを知る。
新太郎は沢井に問い質すが、沢井は偶然その場に居ただけと主張する。

直後、藪下が何者かに襲撃され入院することに。
藪下は犯人を知っているようだが、何故かその名を明かそうとしない。

そんな中、美奈は沢井と咲子の密会現場を目撃してしまった。
その翌朝、沢井までもが何者かに殺害されてしまったのである。

塚本殺害、若田殺害、器盗難、藪下負傷に続いての沢井殺害である。
果たして何が起こっているのか?

新太郎が沢井宅を調べたところ、彼が仕事の収入以外で大金を得ていたことが明らかに。
さらに塚本が若田を殺害する現場を撮影した写真が発見される。
どうやら、藪下が塚本に命じ若田を殺害させたと思われた。

しかも、咲子が藪下の前妻との間の娘だと判明。
その上、咲子の証言から新たな事実が浮上する。

咲子の母は2ヶ月前に病死していたのだが、この治療費を巡りトラブルがあったのだ。
咲子は知人の沢井を頼り、藪下と早苗から1000万円の治療費を引き出した。
ところが、仲介役だった沢井がこれを利用し密かに着服していたのである。
沢井を信頼していた咲子はこの事実を知らず藪下たちが支払いを拒否したと思い込んだ。
結果、母の死が藪下の所為だと恨み、これを衝撃したのだ。
藪下の負傷は咲子の犯行だったのだ。
だが、この際に藪下は支払ったことを繰り返し訴えた。
其処で咲子は沢井に詰め寄ったところ「もっと金になる話があるから」と宥め透かされたのだそうだ。

沢井の「もっと金になる話」とは何なのだろうか?

同じ頃、消えて居た600万円の器がホテルの食堂で発見される。
これに美奈は違和感を抱く。
何故、折角奪った品を食堂に放置していたのか?
これではまるで、それ自体には興味が無かったかのようではないか。

そんな中、早苗が藪下に切りつける事件が発生。
拘束された早苗は塚本と沢井殺害を認めることに。

早苗によれば半年前に若田と再会し旧交を温めたと言う。
ところが、直後に彼が殺害され藪下と塚本の犯行だと直感したのだそうだ。
其処で塚本を殺害したが、沢井にこれを脅迫され彼をも殺害したらしい。
最後に藪下に切りつけたが失敗したとのことであった。

だが、美奈はこの供述に疑問を抱いた。
ふと、玲のファンから貰って飾っていた写真を目にした美奈は違和感の正体に気付く。

その頃、今度は玲が藪下を襲っていた。
其処に駆け付けた美奈と新太郎は真犯人が玲だと指摘する。

玲のファンから貰った写真に赤い車が写っていたのだが、あれは玲の車であった。
時刻は玲が七尾に居たと述べた時刻そのものである。
しかし、写真の風景は七尾ではない。
それどころか塚本殺害現場付近であった。
つまり、玲が塚本殺害現場付近に居たことを示す証拠写真だったのだ。

だが、今の今まで美奈はこれに気付けなかった。
それもその筈、ホテルに飾られていた写真は何者かにより赤い車が写り込んでいない物と摩り替えられていたのだ。
それも盗難騒ぎの間にだ。

そう、器の盗難騒ぎは写真を摩り替える為に引き起こされたのだ。
だからこそ、器を盗んだ犯人・玲はソレを食堂に放置したのである。

そもそも、それを抜きにしても玲のアリバイは存在しようが無かったのである。
何故なら、水曜日には七尾の市場は休みであった。
調べれば分かることだったのだ。

追い詰められた玲は動機について語り出す。

塚本が若田を殺害したことを知った玲は復讐を決意した。
其処で塚本を殺害したのだ。

ところが、これを沢井に目撃されていた。
其処で沢井を口封じに殺害したのである。
ちなみに、沢井の断末魔は「いったぁ〜〜〜」であった。

最後に藪下を狙おうとして、こうして捕まったのである。

そんな玲の前に、早苗が現れ25年前の真実を打ち明けだした。
早苗は玲たちと別れたが、それは本意では無かったのだ。

25年前、早苗は夫・若田と娘・玲に囲まれ幸せに暮らしていた。
そんなある日、藪下と塚本に呼び出され「若田がギャンブルの借金返済のために塚本の500万円を盗んだ」と伝えられた。
驚いた早苗は若田に確認しようとしたのだが、若田は傷害事件を起こし逮捕されてしまう。

それでも拘置所で若田に尋ねた早苗。
ところが、若田は「ああ、借金ね。返したって!!そうそう、藪下先生に取りなしを宜しく頼む。機嫌を損ねられると陶芸の仕事が続けられなくなっちまう」とのたまった。

これに早苗は絶望した。
「やはり、夫は500万円を盗んだのだ」と。
其処で早苗は若田を庇う為に藪下に請われその身を差し出したのだ。

ところが、現在になって若田と再会してみたところ話が違う。
500万円盗難の件は藪下が早苗を若田から奪う為の作り話だったと判明したのだ。
若田は激怒し塚本を呼び出し、これに殺害されたのである。

藪下には殺人教唆の罪が問われることとなった―――エンド。

<感想>

「温泉若女将の殺人推理」シリーズ29作目。
前作が2014年9月13日放送なので、ほぼ11ヶ月ぶりの新作となりました。
若旦那が22作目より中村梅雀さんから羽場裕一さんに変わっています。
前回のネタバレ批評(レビュー)ありますね。
興味のある方は過去記事リンクよりどうぞ!!

では、ドラマ版の感想を。

と、その前に本作で起こった事件と犯人を時系列順に簡単にまとめておこう。

1.若田殺害
2.塚本殺害
3.器盗難
4.藪下負傷
5.沢井殺害
6.藪下殺人未遂(早苗ver)
7.藪下殺人未遂(玲ver)

おおっ、全7件でした。
でもって、それぞれ犯人が。

1.若田殺害→藪下教唆、塚本実行犯
2.塚本殺害→玲
3.器盗難→玲
4.藪下負傷→咲子
5.沢井殺害→玲
6.藪下殺人未遂(早苗ver)→早苗
7.藪下殺人未遂(玲ver)→玲

つまり、玲が殺人2件に殺人未遂1件と窃盗1件。
咲子が傷害、早苗が殺人未遂、塚本が殺人1件だったワケです。
これに沢井の脅迫罪と詐欺罪も加わると。

怖い、怖いですね。
登場人物の大半が殆ど何らかの罪に手を染めています。
倫理的に批判されるべき点も挙げれば若田が玲を捨てたことも児童虐待として挙げられそうです。

ナニコレ、こわっ!!
戦慄しつつ、語って行きましょう。

内容としては「器を盗んだ理由」が結構良かったですね。
「騒動を起こした理由は写真を摩り替える為」これは良かった。

ただ、玲のアリバイそれ自体がなぁ……。
「七尾の市場は休みでした」まさかのアリバイ崩しでしたね。
地元民ならすぐに気付いてもおかしくないし気付くべきことだし。
後、新太郎はアリバイの裏を取っていなかったんだなぁ……と驚愕。
もう「写真の件だけで玲の犯行だぁ!!」で押し切っても良かったかな。

では、此処からは気になった点を。

まず、若田の自然体ぶりに驚いた。
別れた嫁に25年前ぶりに会ったからって、あんなにラフに声をかけられるなんて!!
と思ったけど、そもそも若田はイロイロとなぁ……。

早苗が幸せな家庭って主張していたが……ギャンブルで500万円の借金をこさえて傷害で逮捕される夫なのになぁ。
そして「藪下先生に宜しく!!」だもんなぁ。
挙句、早苗の家出後に玲を捨てるしなぁ。
そもそも早苗が藪下の言葉を信じたのも「若田ならやりかねない」と思っていたからなんだろうし。
若田はちょっと……なぁ。

そう言えば塚本からの窃盗は嘘だったけど、実際にあった500万円の借金を若田がどうやって返済したかが気になる。
傷害事件もあって仄かに漂う犯罪のか・ほ・り。

だからかな、早苗が玲と引き離されたのは痛恨だけど、若田と別れたのは正しいことのように思える不思議!!
たぶん、早苗と玲を一緒に藪下が引き取っていたら問題は起こらなかったんじゃないかと思うんだ。
早苗が玲を引き取れなかったことだけが痛恨事なんだよ。

そう言えば、沢井に騙されていた咲子だが詰め寄って持ち逃げを認めさせた後に説得される理由がないのだが……。
もともと、咲子は「母の治療費」を欲していたのであって現金ではない。
儲け話があろうが無かろうが関係ない筈なのになぁ……それこそ「母親の仇」で復讐してても不思議じゃない。
なのに何故か言い包められちゃう。
あの調子だと沢井が生きていたらまた騙されそうだなぁ……。
玲は此の点、良い仕事をしたのかもしれない。

そんな沢井の断末魔「いったぁ〜〜〜」が何故かツボに嵌った。

ふと今日視聴してて思ったんだけど、このドラマは「各温泉郷に存在する並行世界の美奈のうちの1人の活躍」を楽しむ番組なんだなぁ……。
各回が地続きというワケでもない以上、日本国内の各地で、梅雀さんが新太郎だったり、羽場さんが新太郎だったりする世界が並行して存在しているんだと思うと、なんだかとっても楽しくなった。
各地に散らばるパラレルワールドの美奈さんに乾杯しつつ、次回の新たな土地の美奈さんにも期待!!

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<キャスト>

中川美奈:東 ちづる
中川新太郎:羽場裕一
中川政子:岡田茉莉子
薮下早苗:床嶋佳子
若田 玲:平山あや
薮下弘敏:寺田 農
石川咲子:東風万智子
殿山警部:若林 豪
仲居・小百合:山村紅葉
ネット記者・沢井雄一:榊 英雄 ほか
(公式HPより、敬称略)


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