2015年08月04日

『一千兆円の身代金』(八木圭一著、宝島社刊)

『一千兆円の身代金』(八木圭一著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

第12回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作!「週刊新潮」「毎日新聞」「産経新聞」…各紙誌で話題!

大物政治家の孫を誘拐した犯人グループの狙いは何か?国家の威信をかけた空前の捜査が、いま始まる。

第12回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作。元副総理の孫が誘拐された。日本政府に突きつけられた犯人からの要求は、財政赤字とほぼ同額の1085兆円の支払いか、巨額の財政赤字を招いた責任を公式に謝罪し、具体的再建案を示すかの二択だった─。警視庁は捜査一課特殊犯係を直ちに全国に派遣し、国家の威信をかけた大捜査網を展開させる。やがて捜査陣は、あるブログを見つけるが……。
(宝島社公式HPより)


<感想>

第12回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。
タイトル『一千兆円の身代金』は受賞時タイトル『ボクが9歳で革命家になった理由』を改題したもの。

第12回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官(仮)』と『一千兆円の身代金(仮)』の2作に!!

なお、同回は他に梶永正史先生『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』も大賞を受賞している。

さて、本作について。
一読した印象では「全体的にかなり諧謔的な作品」だと感じた。

テーマとしては「誘拐事件」を舞台に「財政赤字に対して、その責任の所在と対応について問う」もの。
それは「国民の無関心を弾劾するもの」でもある。
すなわち「日々の生活に追われることを言い訳にして逃げてはならない」との意味もあろう。
これを描くにはテーマがテーマだけに相当の説得力が必要とされる。
さもないとテーマが形骸化してしまうことは明らかである。
これについて成功しているかどうかは本作それ自体を読んで判断して頂きたい。

そんな本作だが、此処からかなり諧謔的な様相を見せる。

まず、これを訴えるのが平岡ナオトを名乗っていた余命幾許も無い伊藤直哉。
ところが、彼自身も日常の中で薄々気にかけつつも行動の機会が無く、死が迫ったから行動する必要に迫られて実行した感じなのである。
当然、「今更感」が生じてその主張には説得力があまり無い。
まるで、去り行く自身の自己アピールの方法の1つとして革命が選択されたかのような印象さえ受けるのだ。
ある種、ファッション的でさえある。

さらに、ナオトが想起した主な弾劾内容が描かれるのが「9歳の革命家」の章になるのだが「9歳の雄真の主張」を借りて語られる為か、この弾劾がどうにも「優等生然とした子供の主張」に留まっており具体性や実効性に欠けるものに終始する。
それは「どこまでも机上の空論」であって「必死さや真に迫るところ」が無い。

これは「9歳でも分かる理屈を、敢えて大人が直視しようとしない」ことを揶揄したものだろうか?
あるいは「その主張の空虚さを演出すること」こそが狙いなのだとしたら、それはこれ以上なく成功しているだろう。

同時に本作では「洗脳の恐怖」を描いたとも言えると思う。
例えば、作中で取り上げられた大きいところでは「国民へのプロパガンダ」などはこの最たるものだろう。
そして、小さいところでは「嘆願ブログ」を目にしナオトにより思想的な調整を施された雄真もそうだろう。
どう読んでも雄真はナオトに共鳴したと言うよりは、思想的な感化を受けて洗脳されたようにしか見えない。
雄真は「汚職疑惑のある人物の孫」との周囲の自身への視線に常日頃から忌避感を抱いており、此処から逃れる為にナオトの思想に依存したのだ。
あくまで雄真が自身の思想を確立出来ていないが故の洗脳である。
此の点、先の「主張の空虚さを演出すること」と併せて「洗脳の恐怖」も描き尽くせている。

ただ、本作ではナオトと雄真の関係を否定的には描かない。
むしろ肯定的に描いており、かなり諧謔的なのだ。

また、誘拐事件の真相についてだがミステリ熟練者にとっては看破することは難しくない。
何しろ、受賞時のあらすじを目にして2013年10月7日に思った内容と実際がそれほど変わらなかった。
とはいえ、本作のメインは此処には無いだろう。
あくまでそれはテーマにこそある筈だ。
此の点も諧謔的である。

第12回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官(仮)』と『一千兆円の身代金(仮)』の2作に!!

かのようになかなか諧謔的な本作、興味のある方は読むべし!!

ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
また、かな〜〜〜りバッサリ省略したり改変していて、あくまで雰囲気を伝えるに留まってます。
正確なところは本作をお読み頂きたく思います。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
今村敦士:刑事、特殊班SIT所属。
高田寛子:刑事、特殊班SIT所属。
片岡晋太郎:今村の上司。
篠田雄一:雄真の父、医師。
国武:雄真の祖父。元副総理大臣経験者。
平岡ナオト:誘拐事件の首謀者と思われる人物。
篠田雄真:誘拐された被害者。
橋本沙織:雄一と同じ病院で働いていた看護師。
伊藤直哉:???

特殊班SIT所属の刑事・今村敦士と高田寛子のもとに上司の片岡晋太郎からある事件の捜査命令が下る。
それは元副総理大臣・国武の孫である篠田雄真誘拐事件であった。

犯人は「財政赤字とほぼ同額の1085兆円の支払い」か「巨額の財政赤字を招いた責任を公式に謝罪し具体的再建案を示すか」の二択を要求する。

これに対し、片岡たちが捜査を開始。
ネット上にて「嘆願ブログ」なる犯人の要求と良く似た内容を掲載していたサイトを発見。
此処から平岡ナオトなる人物を容疑者として調べ始める。

その一方で、あまりの手際の良さから複数犯が疑われ共犯者探しも開始。
浮上したのは橋本沙織なる看護師、沙織は雄真の父で医師の篠田雄一の部下であった。
雄一は沙織と不倫していたが一方的に捨てており、動機が存在したのだ。

その頃、当の沙織はナオトと連絡を取り合っていた。
沙織は雄一の子供を妊娠していたが、それと知らずに堕胎させられていた。
其処で雄一を恨み、復讐の機会を窺っていたのだ。
もちろん、ナオトの共犯者は彼女である。

そして、共犯者がもう1人。
それは当の雄真本人であった。
今回の誘拐は狂言誘拐だったのだ。

雄真はかねてから祖父や父に疑問を持っており、ナオトの「嘆願ブログ」を目にしその思想に感化されていたのである。

一方、雄一への復讐を企んでいた沙織は雄真に密かに接触し彼が「嘆願ブログ」に影響を受けていることを知った。
其処で彼女自身も「嘆願ブログ」に興味を持ちナオトに近付くことに。
遂にはナオトと肉体関係を持ったことから彼の仲間となり雄真と引き合わせたのである。

その頃のナオトは余命幾許も無い状態ながら国を憂い焦っていた。
そんな彼と直接出会った雄真はナオトの情熱を知り、誘拐計画を持ちかけたのだ。
こうして、前代未聞の誘拐計画が実行に移されたのであった。

沙織を介し捜査の手が迫ったことを悟ったナオトは最終計画を実行に移す。
なんと、自らナイフを振り回し「自分が誘拐犯の平岡ナオトだ!!」と叫びつつ騒ぎを起こしたのだ。
耳目を集めることで脅迫状に対する決断を迫ったのであった。
同時に沙織と雄真を庇ったのだ。
当然、ナオトは捜査員たちに取り囲まれることに。

一方、取調を受けることとなった沙織は事前にナオトに教えられた通り「ナオトに脅迫されて手伝った」と供述。
雄真もまた「事件を無かったこと」にするべく登校したところを保護された。

同じ頃、逃げ場を失ったナオトは捜査員に組み伏せられ自決するのであった。

後日、ナオトの本名が伊藤直哉であることが分かった。
また、ナオトからメディア各社に書面が届けられた。
其処には今回の事件の動機について詳細に描かれていた。

そして、あれほどナオトが庇った雄真と沙織も数々の証拠が出て来たことから共犯であることが露見するのであった―――エンド。

2015年10月20日追記

土曜プレミアム「一千兆円の身代金 このミス大賞映像化!香取慎吾が誘拐犯!女児誘拐と国を脅迫する劇場型犯罪!傷を抱える少女に仕掛けた驚きの結末とは」(10月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)追加しました。

土曜プレミアム「一千兆円の身代金 このミス大賞映像化!香取慎吾が誘拐犯!女児誘拐と国を脅迫する劇場型犯罪!傷を抱える少女に仕掛けた驚きの結末とは」(10月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

追記終わり


◆「このミステリーがすごい!」関連過去記事
【第13回】
『女王はかえらない』(降田天著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『いなくなった私へ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第11回】
『生存者ゼロ』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第10回】
『弁護士探偵物語 天使の分け前』(法坂一広著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『僕はお父さんを訴えます』(友井羊著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』(矢樹純著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『保健室の先生は迷探偵!?』(篠原昌裕著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』(岡崎琢磨著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『公開処刑人 森のくまさん』(堀内公太郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第9回】
「完全なる首長竜の日」(乾緑郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ラブ・ケミストリー」(喜多喜久著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ある少女にまつわる殺人の告白」(佐藤青南著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第8回】
「さよならドビュッシー」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『死亡フラグが立ちました!』(七尾与史著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第7回】
「臨床真理」(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第3回】
『果てしなき渇き』(深町秋生著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
第13回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『女王はかえらない』に輝く!!

第12回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官(仮)』と『一千兆円の身代金(仮)』の2作に!!

第11回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『生存者ゼロ(仮)』に!!

第10回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は「懲戒弁護士」に

第9回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は「完全なる首長竜の日」に

2012年(2011年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!

2011年ミステリ書籍ランキングまとめ!!

2010年ミステリ書籍ランキングまとめ!!

ドラマ化される「一千兆円の身代金 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)」です!!
一千兆円の身代金 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)





『女王はかえらない (「このミス」大賞シリーズ)』です!!
女王はかえらない (「このミス」大賞シリーズ)





優秀賞受賞作『いなくなった私へ』です!!
いなくなった私へ





同じく優秀賞受賞作『深山の桜』です!!
深山の桜





◆「このミステリーがすごい!」関連書籍はこちら。


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月曜ゴールデン「警視庁南平班〜7人の刑事〜8 樹海伝説殺人事件!!亡き息子の魂と富士山が繋ぐ連続殺人トライアングル!?富士山噴火1200年後の警視庁が挑む最後の決意」(8月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)

月曜ゴールデン「警視庁南平班〜7人の刑事〜8 樹海伝説殺人事件!!亡き息子の魂と富士山が繋ぐ連続殺人トライアングル!?富士山噴火1200年後の警視庁が挑む最後の決意」(8月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

多摩の高級高齢者ホームで強盗が拳銃を発砲し3000万円を奪って逃走する事件が起きた。通報を受けて南部平蔵(村上弘明)ほか南平班の刑事らが現場に駆けつける。この事件で介護士の河野さやか(石原あつ美)が死亡し、医師の増田聡史(金子貴俊)が重傷を負った。
増田が負傷したことを知って南部は驚く。増田は12年前に暴漢に刺殺された南部の息子・健太(中村優斗)の親友だったからだ。健太は三人の男にカツアゲされていた増田をかばって命を落としたのだった。
三人のうち二人は逮捕されたが、健太を刺した男は未だ捕らえられていなかった。男の手がかりは右手首に彫られた龍のタトゥーだけ。
高齢者ホームの施設長・秋津亮平(金子昇)は事件当日、石川哲夫(伏見哲夫)、佳子(今本洋子)夫妻が3000万円の現金を持って契約に訪れていたと語る。その事実から、ホーム内に犯人を手引きした共犯者がいたのではないかと疑惑が浮かぶ。共犯者とは射撃された河野と増田で、口封じのため撃たれたのではないかと推理が膨らんだところへ、増田が搬送された病院の医師・小倉麻由美(北原佐和子)から増田がいなくなったと知らせが入る。
一方、石川夫婦は犯人の右手首には龍のタトゥーがあったと証言する。その後の調べで、タトゥーは健太を刺した男のものと一致した。
南部と高村(鈴木一真)は犯人の逃走経路を辿り山梨県へ向かう。現地の樋口刑事(黒沢年雄)と合流して捜査を進めたところ、犯人は南アルプスの工事現場で働いていた榊原直也(遠藤要)だったことが判明した。
さらに南部が健太殺害事件の犯人の一人、安藤弘樹(中村僚志)を訪ねると、もう一人の犯人・竹内大輔(中村公隆)が最近タトゥーの男に会ったと話していたことも分かった。だがその後、安藤と竹内が死体となって発見される。凶器は高齢者ホームで使われた拳銃だ。
やがてホームでは最近、入居者が何人も不審な死を遂げており、河野と増田が関わっていたことも明らかになる。
姿を消した増田は一連の事件に関わっていたのだろうか。高齢者ホーム強盗殺人事件の犯人・榊原が健太を殺した張本人なのか。刑事として、そして被害者の父として苦悩しながら捜査を進める南部。かすかな手掛かりを頼りに榊原が潜伏しているアジトを突き止めるのだが…。
(公式HPより)


では、続きから(一部、重複あり)……

南部平蔵は南平班を率いる刑事である。
そんな南部の姿がとある墓地にあった。

南部の傍には妻・敦子と若い男性が1人。
その男性こそ、此の場に南部が居る理由でもあった。

男性は医師の増田聡史。
12年前に死亡した南部の息子・健太の友人であった。
この墓地は健太の眠る場所だったのだ。

12年前、健太は3人組にカツアゲされていた増田を庇い「右手首に龍の刺青をした男」に刺された。
3人組のうち2人は逮捕されたのだが、肝心の「右手首に龍の刺青をした男」だけは正体不明で捕まえられていなかった。

健太の死に責任を感じていた増田は彼の分も生きる為に医者となって人々を救っているのだと言う。
少しだけ慰められる南部……だが、その目が虫を捉えるや悲鳴を上げる。
そう、皆さまご存知の通り、南部は虫が苦手なのだ。

そんな南部の態度にクスリと笑いつつ「ああ、これはハンミョウですよ。別名・道教えと言うんです」と説明する増田。
何でも、健太と共に自由研究で虫について調べていた為に詳しいらしい。

仕事があるので……と別れた増田を見送る南部。
ところが、数時間後に事件が発生した。

場所は福祉施設「よろこびの杜」、高齢者向けの高級老人ホームである。
施設長の秋津亮平と入居予定の石川夫妻が入居費用3000万円を前に何やら話し合っていたところ、突然の乱入者が!!
乱入者は銃を所持しており、天井に向けて発砲。
秋津たちを牽制するや3000万円を奪い、その場を逃走した。
しかも、正門から脱出する前に施設内をうろつき介護士の河野さやかと研修医が銃撃を受けていた。
さやかは死亡、研修医も重傷を負ったのだが……この研修医こそが増田だったのだ。
増田は2ヶ月ほど前に「よろこびの杜」の担当となったばかりだったのだ。

この事件に、我らが南平班が挑むことに。

犯人が3000万円がその場にあることを知っていたことに注目した南部は内通者の存在を指摘。
さらに、犯人がわざわざ施設内を巡ってさやかと増田を銃撃したことから彼らこそが内通者ではないかとの疑惑も浮上する。

そんな中、増田が入院先から姿を消してしまった。
さらに「よろこびの杜」内で不審死が4件も連続発生していることも判明。
ところが、死亡診断書上は自然死とされていた。
増田の上司である医師・小倉麻由美によれば「信じられないが増田の犯行」らしい。
4件の死亡診断書の作成者が全て増田だったのである。

増田の無実を信じる南部。
其処に新たな情報が石川夫妻からもたらされた。
なんと、強盗犯は「右手首に龍の刺青をした男」だったと言うのだ。
南部は強盗犯が健太殺害犯なのではと疑う。

強盗犯の逃走経路を辿り山梨県へ向かった南部たち。
現地で聞き込みを行ったところ、強盗犯が南アルプスの工事現場で働いていた榊原直也と判明する。

では、榊原こそが健太殺害犯なのか……復讐心を胸に秘める南部は榊原に繋がる手掛かりを求めて、12年前の残る2人の犯人のもとを訪れることにした。

まずは「赤丸運送」に勤務する安藤弘樹である。
安藤は榊原の写真を見せられるが「見たこともない」と証言。
最後の1人・竹内大輔についての居所を尋ねると榊原と同じ現場だったことが分かった。
しかも、竹内は其処で「刺青の男を見た」と語っていたらしい。
やはり、榊原のことなのだろうか?

続いて竹内を訪ねた南部であったが、当の竹内は何者かに射殺されていた。
しかも、線条痕から強盗犯が用いた拳銃と合致する。
だが、死亡推定時刻から強盗事件発生よりも前に竹内が殺されていたことに南部は疑念を抱く。

直後、安藤までもが何者かに射殺されてしまった。
この拳銃も先と同様である。

安藤殺害現場からアスベストが検出されたことから、南部たちはアスベスト工場に榊原が潜伏していると考え捜査を開始。
遂に潜伏していた榊原を発見するのだが、バイクに乗って逃走した榊原は事故を起こし死亡してしまった。
ブレーキに細工が施されていたのだ。
だが、榊原のアジトから3000万円が発見されたことで事件解決と考えられてしまうことに。

一方、榊原のアジトから増田の居た痕跡も検出。
ところが、当の増田の姿は其処には無い。
ただ1つ、壁には増田のものと思われる「とんぼ」との文字が残されていた。
どうやら、増田が入院先から消えたのは自身の意志ではなく無理矢理連れ出された為のようだ。
当の増田は何処に消えてしまったのか!?

その夜、榊原の死について敦子に報告する南部。
健太の仇を捕まえられなかったことに涙を流して悔しがる南部夫婦であったが、そんな南部が「健太の自由研究ノート」に気付いた。
其処には「カブトムシ、別名・サイカチムシ」と書かれていた。
さらに、そのノートには「トンボ」の別名も記載されていた。
これを見た南部の表情が驚愕に染まる。
それこそ、増田のメッセージだったのだ。

翌日、南部は秋津に「増田が施設で発生していた連続不審死の犯人だった」と報告する。
これを聞いた秋津、南部が去るや何処かへと車を飛ばし出した。

其処には拘束された増田が横たわっていた。
「罪を背負って死んで貰う」と笑う秋津。

実は連続不審死の犯人は秋津と小倉であった。
これに疑念を抱いたのがさやかだったのだ。
増田はさやかから施設内の連続不審死について相談を受けていた。
調べてみたところ、彼らの犯行に気付きつつあった。
其処に強盗事件が起こり、さやかが射殺され増田も負傷したのだ。

連続不審死について認める秋津。
何でも「入所者を殺害し回転率を上げることで入居費を利益にしていた」らしい。
秋津は「最後のチャンスを与えてやる」と増田を買収しようとするが……。

これを増田は拒否する。
それが健太に教えられたことらしい。

これを聞き、小馬鹿にしつつ口封じしようとする秋津。
其処に南部が踏み込んだ。

南部は秋津の罪を全て告発する。

秋津こそ本物の「右腕に龍の刺青の男」だったのだ。
つまり、健太を殺したのは秋津であった。
秋津は榊原と過去の仲間であり、揃いの刺青を入れていたのである。
12年前の事件後、秋津は刺青を消して「よろこびの杜」の施設長に就任したのだ。

ところが、最近になって榊原は竹内から「12年前に右腕に龍の刺青の男が殺人事件を起こしたこと」を聞かされ、秋津の犯行と気付いた。
其処で秋津を脅迫したのである。

このとき、秋津の中にある計画が浮かんだ。
12年前の犯罪を知る者と現在の犯罪を知る者全てを抹殺する計画だ。
秋津は増田とさやかの行動に気付いており、口封じを狙っていたのだ。

まず、秋津は榊原に「3000万円の報酬」を約束。
代わりに狂言強盗を行い、増田とさやかを殺害するように依頼した。
一方で、竹内を射殺した。

その後、狂言強盗を実行。
ところが、此処で想定外の出来事が起こる。
さやか殺害には成功したが、増田の殺害に失敗したのだ。
秋津は小倉と図り、増田を捕らえ監禁した。

さらに「よろこびの杜」での連続不審死事件に注目されてしまった。
秋津は増田殺害のタイミングを逸し、様子を見ることに。
その傍らで安藤を殺害し、榊原に繋がるアスベストをわざと残した。

こちらの狙いは当たり、南部は榊原のもとへ。
逃げ出した榊原はブレーキの細工で事故死したのである。
こうして、さやか殺害だけではなく健太、竹内、安藤殺害の罪をも榊原に着せたのだ。
そして今また連続不審死事件の罪を増田に着せようとしたのである。

だが、南部の弾劾を聞いていた秋津は笑い出す。
「バァ〜〜〜カ!!証拠が無いだろ」と息巻く秋津。

しかし、それは秋津の思い違いであった。
12年前、増田を庇った健太の鞄に秋津の指紋が残されていたのだ。

この証拠に罪を認める秋津。
しかし、それでも彼は耳障りな笑いを止めようとしない。

秋津に逆上した南部は銃を突き付けてしまう。
そんな南部に健太の声が届く。
健太は復讐ではなく逮捕を望んでいた。

これを受けて南部は秋津を逮捕する。
その罪は南部健太殺害、竹内殺害、安藤殺害、榊原殺害、さやか殺人教唆、狂言強盗、入居者4人殺害の罪と戦慄すべきものであった。

連行される秋津、その背後で南部は拳銃を確認する。
それは空であった。
南部の銃には弾が装填されていなかった、初めから殺す気は無かったのである。

小倉も報酬を受け取り死亡診断書を改竄していたことを認め逮捕された。
増田が作成したとされたソレだが作成者欄の名前を増田に変更したものだったのだ。

秋津によれば「よろこびの杜」に増田が研修医として現れたとき、12年前のあいつだとすぐに気付いたらしい。
一方、増田は秋津が犯人であると気付いていなかった。
秋津は、もしも増田に気付いた素振りがあればすぐに殺そうと考えていたのだそうだ。
これを知った班員たちは「健太が増田を守っているではないか」と噂する。

数日後、入院する増田を南部が訪れていた。
とんぼの別名は秋津、すなわち増田は犯人の名を伝えていたのである。
「すべて健太の導きだった」と呟く増田に頷く南部―――エンド。

<感想>

「警視庁南平班」シリーズ第8弾。
ドラマ原作になりますが公式HPを確認したところ、今回は「鳥羽亮先生原案」とのみクレジット。
このことから「シリーズもの」ではあるものの、内容はほぼオリジナルなのかも。

そして、サブタイも「樹海伝説殺人事件!!亡き息子の魂と富士山が繋ぐ連続殺人トライアングル!?富士山噴火1200年後の警視庁が挑む最後の決意」と熱くなり過ぎて何が何やら些かワケが分からない感じになってますね。
特に「富士山噴火1200年後」と「最後の決意」の関連性が不明です。

とはいえ、その熱さも致し方なし。
それもその筈、遂に南平班最大の敵が登場です。
なんと、南部の息子・健太の仇が今回の敵に。

では、ドラマ版の感想を。

南平班のチームプレー、今回も良かったですね。
でもって、南平班の班長貯金は今回なし。
前回、標語の正体を明かして貯金を切り崩しちゃったからかな。
新たな貯金はしない模様。

でもって、今回の犯人は南部の息子の仇でした。
それだけにとんでもない凶悪犯に。
なにしろ、南部健太殺害、竹内殺害、安藤殺害、榊原殺害、さやか殺人教唆、狂言強盗、入居者4人殺害。
直接手を下しただけでも7人、間接も含めれば9人もの被害者が出ていることに。
何時の間にか施設長の座に収まっていたことも考え合わせると、その座に就く為にこれまでにも何人かは殺害してそうな勢いです。
南平班、良い仕事をしました!!

さて、此処からは気になった点をつらつらと。

何と言ってももっとも気になったのがコレ!!
何故、榊原は秋津の命令に唯々諾々と従ったのか。

榊原が秋津を脅迫していたのに、いつのまにか秋津に命令される立場に。
あれではむしろ脅迫される側の立場だよなぁ。
少なくとも、強盗のリスクを背負わされた上にさやかと増田殺害まで請け負う必要はない筈。
さらに、3000万円入手後はなおさら秋津に従う必要はないし、さっさと逃げれば良かったのに。
なんで、増田の見張りまでやってるんだろ。
あれだと、脅迫じゃなくて雇われたように見える。

でもって、気になると言えば「竹内だけ先に殺害した理由」。
あるいは逆に「安藤だけ後回しにした理由」と言うべきか。
竹内死体発見のタイミングは登山客の気紛れだし予測は不可能だった筈。
タイミングを計るなら、両方ほぼ同時でないと意味が無いような気がする。

他にも、序盤で「連続不審死が増田の犯行だ」と疑われていたが。
2ヶ月目の研修医に4人殺害が可能なものだろうか?
それと2ヶ月で4人の死者が出たら入居者たちは黙っては居なさそうだよなぁ。
「よろこびの杜」の将来にとって必ずしもプラスになるとは思えないのだが、秋津はそれでも良かったのだろうか。
ただでさえ、入居費がかなりするのに悪い噂はマズイような……。

でもって、中盤で榊原死亡後に彼が健太殺害犯だと南部たちが騙されていたけど、健太殺害犯の指紋が残っていたならすぐに照会して確認出来たと思うのだが。
此の点も気になるなぁ……。

とはいえ、いろいろ気になりつつも遂にシリーズ通じて描かれていた健太の死の真相と犯人が逮捕された第8弾。
ある種、シリーズの集大成的な作品となりました。
とはいえ、第9弾、第10弾と続いて欲しいところです。

◆関連過去記事
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月曜ゴールデン「警視庁南平班〜7人の刑事〜6 300年の涙…お六櫛伝説殺人事件!!雪山に眠る4人の悪魔達が今、蘇る!詩が予告する殺人と中山道を結ぶ死のルートとは!?愛の炎が散る…」(4月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)

月曜ゴールデン「警視庁南平班〜7人の刑事〜7 亡霊が引き起こす連続殺人!?軍艦島・オランダ坂・出島 遺された想いが南平班を長崎へ誘う!1000万ドルの夜景を彩る復讐の炎!」(6月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

<キャスト>

南部平蔵:村上弘明

高村六郎:鈴木一真

細谷玲子:伊藤かずえ

溝口史郎:火野正平

南部敦子:岡田奈々

浅田裕久:永倉大輔
富井健次:前田 健
友木哲也:藤沢大悟

秋津亮平:金子 昇

増田聡史:金子貴俊

小倉麻由美:北原佐和子

樋口道彦:黒沢年雄

榊原直也:遠藤 要
南部健太:中村優斗
安藤広樹:中村僚志
竹内大輔:中村公隆 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)


ドラマ第7弾原作「首を売る死体 (講談社文庫)」です!!
首を売る死体 (講談社文庫)





ドラマ第6弾原作「警視庁捜査一課南平班 (講談社文庫)」です!!
警視庁捜査一課南平班 (講談社文庫)





ドラマ第5弾原作「赤の連鎖―強行犯刑事部屋 (光文社文庫)」です!!
赤の連鎖―強行犯刑事部屋 (光文社文庫)





ドラマ第4弾の原作「刑事魂 (講談社文庫)」です!!
刑事魂 (講談社文庫)





同じく南平班シリーズからドラマ第2弾の原作です。
「切り裂き魔―警視庁捜査一課南平班 (講談社ノベルス)」です!!
切り裂き魔―警視庁捜査一課南平班 (講談社ノベルス)





主人公・南部平蔵にちなんで南部繋がりで「南部鉄瓶 チャコケトル23376」です!!
南部鉄瓶 チャコケトル23376





◆その他の鳥羽亮先生「警視庁捜査一課南平班」シリーズはこちら。
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