水曜ミステリー9「今野敏サスペンス ビート 警視庁強行犯 樋口顕 殺人逃亡犯 茶髪の男は息子!?アリバイ無し…疑惑と親心 焦る父親刑事の決断」(8月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!
<あらすじ>
ある朝、日和銀行の本店に勤務する富岡和夫(比留間由哲)が自宅で遺体となって発見され、警視庁強行犯係の樋口顕(内藤剛志)が現場に駆けつける。ゴルフクラブで背後から殴られた後、絞殺されたものと見られ、また女性と二人で酒を飲んでいた痕跡があった。さらに、殺される直前に自宅前で茶髪の若い男(浅香航大)と言い争っていたという目撃情報も。一方、日和銀行は、粉飾決算疑惑で家宅捜索が入ったばかり。事件とガサ入れの関連性も視野に入れて捜査が進む。
実際に家宅捜索を行い、富岡と柔道部の先輩後輩という間柄の捜査二課・島崎洋平(柄本明)が、捜査本部に加わる。捜査の強みになるという警視・天童隆一(榎木孝明)の判断で、樋口とコンビを組むことに。思春期の子供を持つ親同士、その思いを共有する二人だったが、そんな島崎の息子・丈太郎(小柳心)は、なぜか自宅で憔悴しきっていた。
捜査により、容疑者は家にいた女性と若い男に絞られるが、男の似顔絵を目にした島崎は眉間にしわを寄せる。一方、銀行に向かった樋口らは、聞き込みにより富岡と一緒にいた女性が元部下・児島美智代(矢吹春奈)であることが明らかに。しかし連絡がつかず、翌日、美智代のマンションに乗り込む。富岡との不倫を示唆するようなものは見つからなかったが、沖縄へ高飛びしていることがわかる。また採取した指紋から、富岡の家にあった指紋が美智代のものであると判明。さらに別人の指紋も見つかり、ゴルフクラブに残されたものと一致。第三の人物は一体誰なのか…?
富岡殺しの容疑者のひとりで、争っていたという茶髪の男の似顔絵を見た島崎は、突然、単独捜査をしたいと言い出すなど不可解な行動を見せる。しかも日和銀行の課長・安斉大悟(冨家規政)の指紋採取を拒まれた樋口は、島崎に家宅捜査で押収した資料の閲覧を依頼するが剣呑な反応をとられる。島崎は一体何を隠しているのか――樋口がそんな疑念を抱いていた頃、少年課の氏家譲(佐野史郎)は、街中で不良に絡まれている若者たちを見かける。氏家が止めに入った途端、慌てて逃げ出す男がひとり。あの茶髪の若い男・エージだ。しかも逃走したエージの前に、笑みを浮かべた美智代が現れる。その晩、島崎は何者かに電話で呼び出され・・・。
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……樋口顕は警視庁強行半係の刑事。
清廉潔白で知られ、上司、同僚、部下からの信頼も厚い。
そして、樋口の親友は生活安全部少年課の刑事である氏家譲。
樋口と氏家は互いに互いを信頼し合っており、ひとたび事件が起これば協力してあたることも多い。
そんなある朝のこと、富岡和夫なる男性が自宅で他殺体で発見された。
どうやら、ゴルフクラブで殴られ昏倒したところを絞殺されたらしい。
富岡は柔道の有段者であり警戒されていては不可能だ。
其処からは顔見知りの犯行と思われた。
これを証明するかのように現場には富岡が女性と酒を飲んでいた痕跡があったことから、犯人は交際相手の女性と思われた。
一方で、富岡が茶髪の若い男性と争っていたとの目撃情報もあり、こちらも容疑者と目されていた。
さらに、富岡は日和銀行の銀行マン。
日和銀行には粉飾決算疑惑で家宅捜索が入ったばかりで捜索自体は空振りに終わっていたが、これと事件の関係性も疑われていた。
これを受けて、捜査本部にオブザーバーが招かれた。
招聘されたのは家宅捜索に参加し、また富岡とも柔道部の先輩後輩関係にあった捜査二課の島崎洋平である。
その夜、島崎と交流を深める為に飲み会を行った樋口。
共に子供を抱える身らしく、樋口は娘・照美のこと、島崎は2人の息子のことで意気投合する。
だが、樋口は島崎が時折見せる影を気に掛ける。
翌日、島崎の提案で日和銀行へ足を運ぶこととした樋口。
島崎によれば、日和銀行総務課の根岸が窓口となっている人物らしい。
樋口は根岸を通じて課長の安斉大悟と面会。
だが、安斉は犯行を否定した上で容疑者の心当たりもないと断言する。
しかし、樋口はこれに納得しなかった。
日和銀行周辺を調べたところ、元銀行員の児島美智代なる女性が浮上。
美智代は富岡の元部下で男女の関係にあったらしい。
どうやら、この美智代が富岡宅に居た女性のようだ。
美智代の行方を追ったところ、沖縄へ向かったことが判明。
指紋からも美智代が富岡の交際相手と確認され、富岡を殺害した美智代が逃亡したものと思われた。
一方、凶器のゴルフクラブから富岡とも美智代とも異なる謎の人物の指紋が検出された。
どうやら、この指紋の主も犯行に加わっていたらしい。
此処から美智代とその人物が共謀し、富岡を殺害したと考えられることに。
その頃、島崎の様子が日に日に不審なモノへと変貌していた。
容疑者候補とされている茶髪の若い男性の似顔絵を目にしては何やら顔を険しくしている。
これに気付く樋口だが……。
その夜、帰宅した島崎は疲れ切った表情を浮かべた長男の丈太郎を励ます。
実は、家宅捜索が空振りに終わった原因は情報漏洩にあったのだ。
大学に通っている丈太郎は卒業を控え、富岡に就職を餌に情報を洩らした。
富岡はさらに島崎にも接触し、丈太郎を盾に家宅捜索の日付を聞き出したのだ。
そう、島崎一家にも富岡殺害の動機が存在したのである。
そんな中、氏家が似顔絵の若い男を発見する。
男に逃亡されてしまった氏家だが、共に居た女性を確保する。
その女性こそ、照美だったのである。
氏家から事情を聞かされた樋口。
照美によれば、男性はエージという名のダンサー。
しかも富岡殺害の犯行当日、照美はこのエージと共に一晩を過ごしていたらしい。
これを聞いた樋口は照美の行動にショックを受ける。
同じ頃、島崎は何時の間にやら東京に戻っていた美智代に呼び出された。
何やら話し込む島崎。
その翌朝、美智代が他殺体で発見されてしまう。
矢先、美智代が富岡以外にもう1人の男性と交際していたことが判明。
どうやら、2股交際をしていたようだ。
一方、エージの身柄が拘束された。
エージは犯行当日に富岡宅の前に居たが犯行は否認。
さらにサラリーマン風の男が入って行くのを見たと証言、ビートがある限り嘘は通じないと主張する。
そして、意外なエージの出自が明らかになった。
エージの本名は島崎栄次。
そう、島崎の次男だったのだ。
照美の件もあり、エージの言葉を信じた樋口はこれを解放する。
エージが拘束されたことを知った島崎は「自分の育て方の所為でエージが富岡を殺した」と錯乱。
これが解放されるや否や連れ出す。
そんな中、ゴルフクラブの指紋の主が判明。
樋口は日和銀行に安斉と根岸を訪ねる。
樋口は犯人は単独犯で美智代に罪を着せるつもりだったと述べる。
真犯人は沖縄に居る美智代を自殺に偽装し殺害するつもりであったが、想定外の出来事が起こった。
事件が発覚するや美智代が東京に戻って来てしまったのだ。
其処でその口を封じたのだ。
そして、樋口が真犯人として名を挙げたのは……根岸であった。
指紋が動かぬ証拠となり、根岸は逮捕される。
直後、島崎がエージを連れ出したことが判明。
しかも、島崎は拳銃を持ちだしていた。
父親に連れられたエージは「あんたが犯人なんだろ?」と問う。
どうやら、エージは父親が犯人だと思い庇っているようだ。
ところが、当の島崎は拳銃を手にエージを殺害しようとする。
「嘘を吐け!!お前が犯人なんだろうが!!」
叫ぶ島崎はエージを射殺しようとするのだが。
此処に樋口が駆け付け、真相を告げた。
エージが無実であることを知らされた島崎は泣きながら謝罪するのであった。
根岸の取調べが行われた。
根岸によれば、富岡が罪の意識に苛まれ粉飾決算について自首すると言い出した。
其処で口封じを行ったらしい。
その後、美智代の裏切りを知っていた根岸は沖縄に姿を隠すよう伝えた。
ところが、美智代が戻って来てしまった為にこれを殺害したのであった。
根岸は「仕方が無かった」と口にする。
そうしなければ組織が守れなかった、と。
これを「お前の保身だろうが!!」と一喝する樋口であった。
その夜、樋口は照美と話し合った。
照美の「一晩共にした」とは「一緒に飲んでいた」との意味であった。
これを知った樋口は若者文化に軽いショックを受けながら、娘の自立を喜ぶのであった。
一方、島崎はダンサーとして輝くエージを目にし彼の生き方を理解する。
後日、島崎は捜査情報の漏洩、拳銃の持ち出しなどを告白しようとしていた。
しかし、樋口はこれに関しては黙って居ようと提案する。
これに戸惑う島崎に樋口は取引をしようと持ちかける。
樋口が「ある殺人未遂事件を報告しなかったこと」と引き換えに島崎も罪を黙っているとの寸法だ。
もちろん、此処での殺人未遂事件の隠蔽は「島崎がエージを殺害しようとしたこと」を指す。
島崎は感謝の涙を流して応じるのであった―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は今野敏先生「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズの第3弾『ビート 警視庁強行犯係・樋口顕』(幻冬舎、新潮社刊)。
<あらすじ>
ベテラン刑事の息子が殺人容疑者に――。この警察小説に酔え!
警視庁捜査二課・島崎洋平は震えていた。自分と長男を脅していた銀行員の富岡を殺したのは、次男の英次ではないか、という疑惑を抱いたからだ。ダンスに熱中し、家族と折り合いの悪い息子ではあったが、富岡と接触していたのは事実だ。捜査本部で共にこの事件を追っていた樋口顕は、やがて島崎の覗く深淵に気付く。捜査官と家庭人の狭間で苦悩する男たちを描いた、本格警察小説。
(新潮社公式HPより)
管理人は未読です。
「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズには2015年8月時点で本作以外に既刊が3冊存在。
それぞれ『リオ』『朱夏』『廉恥』となっています。
このタイトルを耳にして「おやっ?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこのシリーズ過去にもドラマ化されています。
しかも、当の内藤剛志さん主演で。
調べてみたところ、同じテレビ東京系「女と愛とミステリー」枠にて2003年に『朱夏』が、2004年に『リオ』がそれぞれ「警視庁・樋口警部補 朱夏 警視庁脅迫事件」、「警視庁・樋口警部補2 リオ 水曜日の殺人者」としてドラマ化されていました。
さらに2015年2月25日には「今野敏サスペンス 廉恥 警視庁強行犯 樋口顕」として11年ぶりにシリーズが復活。
・
水曜ミステリー9「今野敏サスペンス 廉恥 警視庁強行犯 樋口顕 完全犯罪のストーカー殺人!現場一徹主義の親父刑事が暴く!」(2月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)この『ビート』によって遂にシリーズ既刊4作を全制覇となりました。
ちなみに『リオ』は1997年にNHKにて「日だまり刑事 容疑者リオの涙」として鹿賀丈史さん主演でドラマ化。
残る『ビート』は2011年にWOWOWの「ドラマW」枠にて奥田瑛二さん主演でドラマ化されています。
さらに、『リオ』『朱夏』『ビート』については幻冬舎で発刊後に新潮社へと版元を変えて今も刊行され続けて居ます。
あらすじは次の通り。
<あらすじ>
・リオ
地道な捜査、落としの人間力。「火曜日の連続殺人犯」を追いつめる刑事たち。これが警察小説だ!
「彼女が容疑者だとは、思えない」警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補は、荻窪で起きた殺人事件を追っていた。デートクラブオーナーが殺害され、現場から逃げ去る美少女が目撃される。第二、第三の殺人が都内で起こり、そこにも彼女の姿が。捜査本部は、少女=リオが犯人であろうという説に傾く。しかし、樋口の刑事の直感は、“否”と告げた。名手が描く本格警察小説。
・朱夏
刑事の妻が誘拐された。もっともハードな捜査が今、始まる。この警察小説が熱い!
あの日、妻が消えた。何の手がかりも残さずに。樋口警部補は眠れぬ夜を過ごした。そして、信頼する荻窪署の氏家に助けを求めたのだった。あの日、恵子は見知らぬ男に誘拐され、部屋に監禁された。だが夫は優秀な刑事だ。きっと捜し出してくれるはずだ――。その誠実さで数々の事件を解決してきた刑事。彼を支えてきた妻。二つの視点から、真相を浮かび上がらせる、本格警察小説。
・廉恥
ストーカーによる殺人は、警察が仕立てた冤罪ではないのか? そして組織と家庭の間で揺れ動く 刑事は、その時何を思うのか。傑作警察小説「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズ、待望の第四弾!
(幻冬舎、新潮社公式HPより)
では、ドラマ版の感想。
先述した通り原作は未読なので、あくまでドラマ版単体での感想となります。
テーマは「家族の愛情」か。
樋口家と島崎家、2つの家族が描かれましたね。
樋口は照美の素行を疑い彼女の反発を買ったが、最終的に和解した。
島崎とエージは互いを疑っていたが、その真意を知り最終的に和解した。
そしてタイトルともなった「ビート」。
その意味は「打つ」ということ。
それはエージがダンサーであること以外にも「家族の愛が胸を打つ」ことも意味しているのでしょう。
こんな感じでしょうか。
ただ、ドラマ版が本当にこのテーマならばもう少し深く両者の関係を掘り下げた方が良かった気はする。
例えば、家族関係を表現すべく具体的なエピソードを重ねるとか。
ちょっとテーマが弱かった印象です。
でもって、此処からは気になった点を。
まず、照美はエージのアリバイを語っていたけど、当日のエージは富岡宅で犯人を目撃しているワケだから充分に犯行可能でアリバイとは言えないような……。
さらに、今回に限っては樋口は照美のことがあって島崎の罪を隠蔽したように見えなくもない。
それこそ、日和銀行の隠蔽と同じような……。
だって、この隠蔽は「2時間サスペンス」では第三者に知られることで殺人が起こっても不思議ではない情報だったワケだし。
もちろん、樋口のキャラクター的にこれはあり得ないことなんだけど。
でも、本作単体で見るとそう思えなくもない。
何しろ、島崎の罪を問えばエージも追及され、親しくしている照美にも影響が出るし。
少なくとも、照美から樋口が責められることは間違いない。
あれを気の利いた行動と捉えるか、それとも利己的な保身だと捉えるか……。
此の辺り、ドラマ版前作「廉恥」での樋口を考えればかなり意外な行動でしたね。
とはいえ、逆に「だからこそ、廉恥が先だった」とも言えるか。
「廉恥」が無ければ樋口の性格も分からず、それこそ隠蔽としか考えられなくなってしまう。
前作があるから、樋口なりの配慮なのだろうとも思えて来る。
そして総務課の根岸。
前半には1分未満(島崎の台詞、樋口たちを安斉のもとへ案内)しか出てませんでしたね。
後半も告発されるまで一切登場せず。
あの1分を見逃した視聴者にとっては「誰?」状態だったことは想像に難くないでしょう。
逆に熱心な視聴者にとっては、島崎の台詞にまで登場し登場人物として名前がテロップ表記されたにも関わらず、ほとんどクローズアップされなかった為に「根岸が犯人だ」とすぐに確信出来てしまう。
これを避ける為にも、せめて1分以上のアピールはしても良いと思うけどなぁ。
ちなみに、キャストは素晴らしかった。
内藤剛志さん、柄本明さん、榎木孝明さん、佐野史郎さんの共演。
此の時点で無条件で認めてしまいそうなほどキャストが豪華だった。
シリーズ続編も欲しいなぁ。
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樋口 顕:内藤剛志
氏家 譲:佐野史郎
エージ:浅香航大
樋口照美:逢沢りな
タエ:西内ひろ
児島美智代:矢吹春奈
島崎丈太郎:小柳 心
天童隆一:榎木孝明
安斉大悟:冨家規政
山本尚史:おかやまはじめ
富岡和夫:比留間由哲
谷川茂樹:斉藤慶太
島崎好子:宮田早苗
根岸民雄:斎藤 歩
樋口恵子:川上麻衣子
島崎洋平:柄本 明 ほか
(公式HPより、敬称略)