ネタバレあります、注意!!
登場人物一覧:
掟上今日子:「最速探偵」にして「忘却探偵」の名を冠する少女。
隠館厄介:あらゆる事件に巻き込まれる男。
紺藤:出版社の編集者。
里井:有名漫画家。
<あらすじ>
あらゆる事件の容疑者となってしまう男・隠館厄介。
そんな隠館に出版社の編集者・紺藤が助けを求めて来た。
何でも紺藤が担当している漫画家・里井について問題が発生したらしい。
里井が所持していた100万円が盗み出されたのだが、犯人から返して欲しければ1億円を寄越せと脅迫電話がかかって来たのだそうである。
100万円の為に1億円……通常ならば考えられないことだが、里井はこれに応じるつもりのようだ。
其処で紺藤はこの謎について解き明かし、犯人を突き止めて欲しいらしい。
過去、出版社でアルバイトしていた際にも事件の容疑者とされたところを紺藤に救われていた隠館は恩を返すべく掟上今日子を紹介する。
現れた今日子は隠館についての記憶をすっかり喪失していた。
些かがっかりしつつ依頼を行う隠館。
今日子はこれに「解決は最速、秘密保持に関しても安心して欲しい」と宣伝しつつ引き受ける。
何しろ、今日子はどのような秘密でも「1度寝てしまえば」すっかり忘れてしまう。
同じ理由で、その日の内に解決する宿命を背負っているのだ。
早速、今日子たち一行は里井のもとへ。
何やら思い悩んだ表情で今日子たちを迎え入れる里井。
今日子が自己紹介し、彼女をリラックスさせようとするがその表情は変わらない。
里井によれば100万円はスタジオの冷蔵庫に保管していたらしい。
ところが、何者かに盗み出されてしまったのだ。
数少ない情報から、少しでも手掛かりを掴もうと更なる質問を重ねる今日子。
だが、里井は肝心の「100万円を1億円で購入しようとする理由」については頑なに明かそうとしない。
「探偵さんには分からないんです」と繰り返すばかりだ。
それどころか「里井の漫画」や「そのアイデアノート」について尋ねるや激怒さえしてしまう。
だが、今日子はこの僅かな遣り取りから真相に辿り着いていた。
里井にとって100万円は1億円払っても取り戻したい品であると指摘する今日子。
つまり、里井が盗まれた100万円は現金としての価値だけではなく別の意味があるのだ。
此処で今日子は里井が忘れっぽい性質であることを指摘する。
里井は今日子に自己紹介されながらも彼女を「探偵さん」と呼び続けた。
何故なら、今日子の名を覚えていなかったからだ。
そして、アイデアノートについて触れるや激怒した。
これが何を意味するか?
1万円には紙幣番号が記されている。
里井はその番号を日常生活に纏わる様々な物の暗証番号にしていたのだ。
言わば、メモ代わりだ。
当然、其処には漫画のアイデアが保存されたPCのパスワードも含まれる。
他にもネットバンキングなどの暗証番号もあったに違いない。
1万円が100枚ある以上、100通りのパスワードとなっていたのだ。
それが失われてしまえば、里井は何1つ出来なくなってしまう。
里井にとって、その価値は確かに1億円支払っても惜しくないものだったのである。
では、犯人は誰か?
里井にとって盗まれた100万円の意味を介することが出来る人物。
それは彼女の身近な人物に限られる。
此処に今日子は「里井のスタッフの1人だろう」と指摘する。
そして、里井も犯人に気付きつつ庇っているのだ。
この指摘を受けて紺藤が調べたところ、ベテランのチーフアシスタントが犯人であることが判明した。
すべて今日子の推理通りだったのである。
事件を解決し、その場を去る今日子。
そんな今日子を見送りつつ、紺藤は「彼女を海外で目にしたような……」と口にする。
だが、紺藤が知る今日子はもっとおどおどとした印象の人物だったそうだ。
ふと、今日子の過去を全く知らないことに気付いた隠館は複雑な想いを胸にするのであった―――エンド。
<感想>
西尾維新先生原作『掟上今日子の備忘録』が浅見よう先生によりコミカライズされました。
連載が開始されたのは「月刊少年マガジン 2015年9月号」から。
その2話「隠館厄介A」です。
今回は「何故、100万円に1億円を支払うのか?」との「ホワイダニット」の回でした。
100万円は通常で考えれば「通貨」としてのみ価値がある。
しかし、其処には別の側面もありました。
今回は、そんな1つの事物が持つ別の側面を活かした見事な回でしたね。
言わば、属性について問う展開。
あの解答には、思わず「おおっ!!」と唸らされました。
ただ、100万円ということで100通りのパスワードがあるワケなのですが「どの1万円がどのパスワードに対応しているか」を分かっている時点で相当に記憶力が優れているような気がします。
これが覚えられるならパスワード自体も覚えられそうな気も……。
「アイデアノートが入ったPCのパスになる1万円が盗難され100万円を要求された」的なストーリーの方がより納得出来たかも。
そう言えば、似たような話を何処かで見たような気がする……。
そして、クローズアップされる今日子の過去。
此の点も気になります。
そう言えば、今日子は眠りにつくことで基本情報に立ち戻ると言った形のようです。
それ以外のことは身体に記したメモにより情報を得ている様子。
つまりはメモを偽装することさえ出来れば今日子の行動を操ることも出来そうですが……。
なかなか興味深い設定ですね、次回にも期待!!
また『掟上今日子の備忘録』は日本テレビ系にて実写ドラマ化も決定。
こちらも期待!!
ちなみに、あらすじでは良さを伝え切れてません。
本作自体を読むべし!!
◆関連過去記事
・「掟上今日子の備忘録」第1話(西尾維新原作、浅見よう画、講談社刊「月刊少年マガジン 2015年9月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)
・西尾維新先生「傷物語」がアニメ映画化決定!!