2015年10月29日

水曜ミステリー9「信州山岳刑事 道原伝吉4 列車ジャック!護送中の女を拉致!!標高2857mに眠る1億5千万円の謎」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「信州山岳刑事 道原伝吉4 列車ジャック!護送中の女を拉致!!標高2857mに眠る1億5千万円の謎」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

広大な北アルプスが管轄の安曇野北警察署は、山での事故に備え山岳遭難救助隊も常駐する日本でも珍しい警察署。ある日、主任の道原伝吉(松平健)と降旗節子(雛形あきこ)は、結婚詐欺犯の廣田浅子(小沢真珠)を電車で護送していた。と、その時、人質らしき菅井栄子(小野真弓)に銃口を突きつけた男・根岸左知男(石垣佑磨)が背後に現れる。しかも浅子にはめられた手錠に気づいた根岸は、手錠をはずし自分のほうへ来るようにと指示する。道原の制止も聞かず、到着した須坂駅で下車。駅のロータリーに止まっていた、老舗旅館『千華苑』の送迎ワゴンに乗り込み、女将の重村由美子(あめくみちこ)と大番頭の関本武彦(大浦龍宇一)を乗せたまま逃走。しかもこのまま逃げたい浅子は、「常念岳に大金がある」と言い始め…。

緊急配備が敷かれ、『千華苑』にも緊迫した空気が流れていた。心配そうにニュースを見つめる娘の沙耶(遊馬萌弥)。友達で道原の娘・比呂子(谷内里早)と道原の妻・康代(斉藤慶子)も付き添っている。そこへ旅館に由美子から電話が入る。犯人の要求は、登山用の装備品一式を用意すること、そして午後5時に常念岳の万年岩に警察の誰かが一人で来い、というもの。その知らせを聞いた道原は、「行かせて欲しい」と名乗り出る。捜査一課の古澤武則(賀集利樹)は反対するが、管理官の鷲崎孝文(宅麻伸)は、山に詳しい道原にその役を託す。やがて常念岳鳥川西トンネル付近でワゴン車が発見される。その頃、車を降りた根岸らは登山道を歩いていた。4人の人質は苦痛と疲労で顔を歪ませていた…。

約束の場所へ向かった道原は、指示通り装備品を渡しながら、人質の解放を求める交渉を始める。ところが、勝手に後方から追ってきていた古澤を見つけた根岸は激昂し、人質を連れて森の中へ消えてしまう。なぜ根岸は山に必要なもの以外何も要求してこないのか?動きづらいのになぜ人質を4人も取ったのか?そして常念岳には一体なにが?根岸の目的がつかめない道原だったが、実は単なる拉致誘拐事件ではなかった――。
(水曜ミステリー9公式HPより)


では、続きから(一部、重複アリ)……。

道原伝吉は安曇野北警察署に勤務する刑事である。
安曇野北署は山岳での事件も担当する為、勤務する者は山についての知識が不可欠とされている。
中でも、道原は山についてずば抜けて詳しく「山岳刑事」との異名で呼ばれていた。

そんな道原は手配中の結婚詐欺犯・廣田浅子を護送することとなった。
ところが、其処に拳銃を構えた根岸左知男なる男性が菅井栄子を人質に現れた。

根岸は浅子を渡すように要求。
浅子は味方が現れたとばかりに根岸に同行してしまう。

根岸と浅子は近くに停車していた老舗旅館『千華苑』の送迎ワゴンに乗り込み逃走。
ワゴンには『千華苑』の女将・重村由美子と大番頭の関本武彦も同乗しており、彼らも人質にされたと思われた。
浅子は「常念岳」へ向かうよう根岸に指示する。

こうして大事件が発生。
栄子の夫・菅井利一も報を聞くや現地へ駆け付ける。

その頃、道原は沙耶に頼まれた由美子奪還に動こうとしていた。
実は由美子の娘・沙耶と道原の娘・比呂子は親友だったのだ。

其処に根岸から要求が届く。
登山用の装備品を用意すること、また17時に常念岳にある万年岩へ人を寄越せとの指示であった。
これに道原が応じることに。

道原は万年岩へと赴くと根岸へ交渉に及ぶ。
だが、根岸の不信感は根強くこの交渉は決裂。

矢先、関本が沢に転落した状態で発見される。
一命を取り留めた関本は病院へ運ばれるが、その足元を目にした道原は疑念を抱く。
道原が用意していない筈の山岳用靴下を履いていたのだ。
偶然、人質となった筈の関本が何故!?

そんな中、根岸が3年前に松本市で発生した富岡夫妻殺害の被害者遺族であったことが判明。
富岡夫妻宅からは1億5千万円が奪い去られており、犯人は2人組だが未だに捕まっていなかった。

根岸の行動の理由が此処に在ると見た道原は菅井や浅子を調べ、意外な事実を突き止めた。
なんと、富岡夫妻殺害の犯人こそ菅井と浅子だったのだ。
根岸は菅井と浅子に復讐するつもりらしい。

矢先、菅井が姿を消した。
どうやら浅子を追ったようだ。
根岸たち一行が常念ヒュッテに滞在していると知った道原は現場へ向かう。

ところが、常念ヒュッテでは大騒動が起こっていた。
其処に隠していた筈の1億5千万円が消えていたのだ。
大混乱の中、菅井が到着し根岸と対峙する。

此処に道原たちも駆け付け、菅井たちの犯行を暴露した。
これにより根岸は投降。

だが、由美子がその場から逃げ出してしまう。
実は根岸には黒幕が居たのだ。
それこそ、由美子であった。

由美子は『千華苑』の経営難を切り抜ける方法を模索していた。
ある日、菅井と浅子が1億5千万円について会話する現場を盗み聞きしてしまう。
其処で隙を突いてコレを奪ったのだ。
その後、菅井と浅子を口封じすべく根岸に3年前の真相を教えたのであった。
そして、今回の事件に繋がったのだ。

関本も協力者であった。
だからこそ、最初から山岳用の靴下を着用していたのだ。
だが、途中で由美子に反対し揉み合う内に沢へと突き落とされてしまったのである。

関本の生存を知った由美子も投降し、こうして事件は解決したのであった―――エンド。

<感想>

「信州あづみ野の名刑事道原伝吉の捜査行」シリーズ第4弾。
第2弾からシリーズタイトルが「信州山岳刑事 道原伝吉」に変更になっていますね。

原作は梓林太郎先生『反逆の山』(実業之日本社刊)。
あらすじは次の通り。

<あらすじ>

護送中に女性の人質をとり山中へ逃走した殺人犯。
道原刑事の執念の追跡がはじまった!

殺人犯を護送中の列車で、突如拳銃を持った男が女性を人質にとる事件が発生した。護送を担当していた豊科署の道原刑事と伏見刑事は、人質の生命の安全を最優先に、殺人犯である浅井を解放するという苦渋の決断をした。

拳銃を持った男は、さらに小淵沢駅で駅前に止めてあったワゴンを乗っていた民宿の女将ごと誘拐。浅井と人質の女性を連れて八ヶ岳山中に逃げ込んだ。慌てる警察をあざ笑うように、翌日男から諏訪市役所に電話が入った。登山用具をそろえろという。しかも色やサイズまで細かな指定をしてきた。

いったい男は何をしようとしているのか。どこに行こうとしているのか。警察を翻弄するように次々と要求を出してくる男に、道原らは男の真意を測りかねていた。そしてさらに事件は上高地へと展開していく。姿の見えない犯人と捜査員の死闘を描く長編山岳ミステリー。
(実業之日本社公式HPより)


ちなみに「月曜ゴールデン」でも同一原作によるシリーズが「山岳刑事シリーズ」としてドラマ化されていますね。
こちらの道原伝吉は大杉漣さん。
興味のある方は過去記事リンクをどうぞ!!

なお2015年10月に廃止が発表されていた「水曜ミステリー9」ですが、あくまで放送枠としての廃止とのこと。
枠を「水曜エンタ」に変えつつ「2時間サスペンス」があれば「水曜ミステリー9」として放送され続けることが明らかになっています。
一安心。

【2015年10月】「水曜ミステリー9」最後の作品は「奥多摩駐在刑事3」ではなかった!?其処には意外な真相が!!

では、ドラマ版の感想を!!

由美子、手を汚さずに口封じを目論むとは……かなりの悪でしたね。
それにしても由美子が根岸と共に人質を演じてまで現場に出向く必要があったのかは疑問だなぁ。
むしろ、無関係を装いそうなものなんだけど。謎だ。

そして、根岸の台詞「死ぬ気で手に入れた拳銃だ」が少し気になった。
ネットで購入したらしいのになぁ……。

今回、かなりサスペンスフルでしたが、これまでに比べると全体的に些か薄味な印象でした。
とはいえ、全体的に舞台を活かしていて良かったのではないでしょうか。

◆「梓林太郎先生」関連過去記事
水曜ミステリー9「信州あづみ野の名刑事道原伝吉の捜査行(1) 長崎雲仙島原湯煙地獄 長野〜長崎連続殺人800キロ捜査行雲仙島原湯煙り地獄!謎の遺言“一切闇処”と菩薩のような女!?(あの伝説の名刑事が松平健主演でドラマ化原作は、梓林太郎!)」(6月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「信州山岳刑事 道原伝吉2 北アルプス殺人行(信州あづみ野の名刑事道原伝吉の捜査行2)」(5月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「信州山岳刑事 道原伝吉3 報復 北アルプス連続殺人!仕組まれた滑落死 リンドウの花と死者の最後の叫びが暴く完全犯罪!!」(4月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【月曜ゴールデン版「道原伝吉」こと山岳刑事シリーズ】
月曜ゴールデン「山岳刑事 日本百名山殺人事件 山岳サスペンスの最高峰をついに映像化!美しき北アルプスの大自然で起こった謎の連続殺人…絶景に隠されたトリックにヤマデカが挑む!」(8月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)

月曜ゴールデン「山岳刑事2 ヤマデカが挑む山岳サスペンス第2弾!!〜北アルプスの連続遭難死はすべて計画殺人だった…美しき雪山と犯人だけが知る“音”の遠隔操作と時間トリックを暴く」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【旅行作家・茶屋次郎シリーズ】
水曜ミステリー9「旅行作家・茶屋次郎 笛吹川連続殺人事件〜美女を狙う保険金殺人の罠!容疑者2人の死が迷宮の扉を開く」(11月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「旅行作家・茶屋次郎 箱根早川殺人事件〜“哀し過ぎる約束”禁断の愛が殺意を招く 老舗旅館と人気芸妓の封印された過去の謎(兄弟の“秘密の約束”が悲劇を呼ぶ!芸妓弁護士VS茶屋の名推理)」(9月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「旅行作家・茶屋次郎12 大井川殺人事件 “父の手”が遺したメッセージ!?25年の秘めごと 密室自殺の逆転推理」(9月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

<キャスト>

道原伝吉:松平 健
降旗節子:雛形あきこ
鷲崎孝文:宅麻 伸
重村由美子:あめくみちこ
根岸左知男:石垣佑磨
道原康代:斉藤慶子
廣田浅子:小沢真珠
古澤武則:賀集利樹
関本武彦:大浦龍宇一
四賀義範:森田順平
菅井利一:川口力哉
菅井栄子:小野真弓
岡島良彦:内浦純一
牛山耕二郎:前田 健
小室 均:瀬野和紀 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)


「反逆の山 (ジョイ・ノベルス)」です!!
反逆の山 (ジョイ・ノベルス)





「信州穂高婚礼の惨劇―人情刑事・道原伝吉 (徳間文庫)」です!!
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2015年10月28日

「相棒season14」第3話「死に神」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「相棒season14」第3話「死に神」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第3話「死に神」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)。

<ネタバレあらすじ>

「他人の運転する車が苦手だそうなのに君も物好きですねぇ」
「いえ、あそこに居ても暇ですし」
運転席の右京(水谷豊)の言葉に助手席の冠城(反町隆史)が応じる。
どうやら、右京が預かっていた証拠品を返却しようとしたところ、冠城が同行したらしい。

「そう言えば……角田課長に言われたんですが右京さんと出かけると事件に出会うって本当ですか?」
「そんなことはありませんよ」
唐突に尋ねた冠城に気分を害したとばかりに憮然として応じる右京。

だが、視聴者は真実を知っている。
そして、冠城もすぐに真実を知ることとなる。
何しろ、言った傍から集い来るパトカーを目撃したからだ。
その先には何か事件が起こっている筈であった。

数分後、パトカーの目的地には伊丹や米沢たちの姿があった。
その足元には女性が倒れている。
いや、より正確には「女性の遺体」が倒れていた。

此処はIT企業で成功を収めた雨宮一雄(葛山信吾)の別荘。
其処で管理人が女性の遺体を発見し通報に及んだのであった。

女性遺体の身元を確認する伊丹たち。
彼女の名は尾崎美由紀(中島亜梨沙)というらしい、何故か携帯電話は所持していなかった。
また、どうやら死因は服毒死のようだ。
だが、不思議なことに口にした筈の毒物らしきものが見当たらない。

と、例の如く右京と冠城が登場。
伊丹は彼らを発見するや苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
そんな伊丹の反応を新鮮だと喜ぶ冠城。

此の間にも右京は現場の不審な点を発見していた。
美由紀の手には観葉植物の葉が握られていたのだ。
しかも、葉には何か見慣れない粒が付着していた。

「それ、観葉植物専用の培養土(ハイドロビーズ)ですよ」
右京の視線を察し、口を挟む冠城。
なるほどと納得した右京は別荘内に観葉植物が無いことを確認し、遺体が別の場所から運び込まれたと断ずる。
だとすれば、第三者の関与が疑われることとなる。

其処へ事件の報を聞いた雨宮が駆け付けて来た。
雨宮によれば美由紀は元恋人だと言う。
だが、結婚を迫られたので別れたらしい。

伊丹たちは雨宮を疑い捜査を開始。
しかし、右京たちは別荘の管理人が週に一度月曜に見回りを行うことを聞き、雨宮の犯行に疑惑を抱く。
何故なら、この日が月曜日だったからだ。
雨宮が犯人ならばわざわざこの日を選ぶとは考えづらい筈であった。

と、右京たちの視界の隅で車が動いた。
車はするするとUターンすると山を下りて行く。
車体に「中村ケミカル工業」と記された車を注視する右京。

「ね、ほら言ったとおりでしょ」
数時間後、特命係へ戻ると何故か得意げな角田が待っていた。
どうやら、右京たちが事件に出くわしたことを聞いたらしい。

「それにしても、青年実業家なんてね!!」
何やら「青年実業家」という言葉に不満を抱いているような角田の様子に、興味を持った冠城。
すると、角田はテレビを顎で指し示す。

其処ではある実業家の結婚報道が行われていた。
リポーターの若田によれば「女優・青山奈央がレストランを経営する青年実業家・下田浩一と結婚した」らしい。
どうも、角田は青山奈央のファンだったようだ。

「な〜〜〜んだ」
味気ない結末に肩を竦める冠城。

一方、右京は「中村ケミカル工業」について調べ始めた。
あの山道の先には雨宮の別荘しかない。
つまり「中村ケミカル工業」の車は雨宮の別荘が目的地だったのだ。
ところが、現場を見るなり目的を果たしたかのように引き返した。
右京はこれには何かあると見たのだ。
ホームページを調べた右京は「中村ケミカル工業」の社長・中村隼(近藤公園)に注目する。

続いて、右京たちは米沢のもとへ。
米沢は美由紀がネット上の人生相談掲示板で相談していたことを突き止めていた。
米沢は掲示板の記載を右京たちに確認させる。
それによると……。

2年前、美由紀が山歩きしていたところ負傷してしまい、其処をサファイアに救われたのが出会いだったのだそうだ。

ちなみに、どうやらサファイアとは恋人のことらしい。
つまり、雨宮のことになるのだろう。
掲示板によれば、彼がサファイアの指輪を着用しているのがその所以のようだ。

そして、美由紀は「サファイアに結婚を申し出たが、別れを切り出されたこと」についても相談していた。

これに対してのレスがいずれも辛辣極まりない。
「遊ばれているだけ」、「格差あり過ぎ」、「別れた方が良い」。
そんな中、ただ1人だけが「相談に乗りましょう」と答えていた。

これが何度か繰り返され、数日前に「皆さん、長い間ありがとうございました」との投稿を最後に美由紀の相談は締めくくられていた。

「問題は解決していないのに、妙ですねぇ」
感想を口にしながら右京は美由紀の遺留品に目を留める。
其処には「兎が印刷されたワインコルク」が。
「こんなワインがあるのでしょうかねぇ」右京は何やら気に掛ける。

一方、伊丹たちの捜査は難航していた。
雨宮が自宅マンションに居たとアリバイを主張したのだ。
雨宮によれば犯行時刻にはマンションコンシェルジュと接触していたのだそうだ。

右京はと言えば、米沢から「美由紀が口にした毒物がシアン化ナトリウムと判明した」ことを告げられていた。
さらに米沢は冠城が右京の相棒かと問うが、右京は「単なる同居人」としか答えない。

中村ケミカル工業を訪れた右京。
すると、社長の中村は不在であった。
なんでも、中村は駅前の「フクモリ」なる喫茶店に居るらしい。

右京はその間に「中村ケミカル工業」を観察して回ることに。
すると「シアン化ナトリウム」を用いていることに気付いた。
しかも、美由紀が所持していたハイドロビーズと同じ物までもが其処にあった。
目配せし合った右京と冠城は「喫茶フクモリ」へ。

その頃、中村は喫茶フクモリにて若い女性と密会していた。
何やら渡された女性はそそくさとその場を去ってしまう。

入替るように現れた右京たちから、犯行現場に居たことを問われた中村は「単なる散歩です」と誤魔化す。
笑って流す右京だが、冠城はシアン化ナトリウムと観葉植物の提出を促すことに。
「君、なかなか強引ですね」冠城を評する右京の言葉である。

同じ頃、伊丹たちは雨宮を疑いアリバイ崩しに挑んでいた……。

翌朝、冠城は右京にある推理を述べていた。
あれから冠城は「人生相談掲示板」を改めて眺めていたところ「ヘリファルテ」なる存在に気付いたのだ。
この「ヘリファルテ」こそ「相談に乗りましょう」と答えた人物であった。
「ヘリファルテ」とはスペイン語でハヤブサのこと、中村の名前は「隼」だ。
冠城は「ヘリファルテ」が「中村」ではないかと考えたのである。

さらに冠城は美由紀が「ヘリファルテ」と直接相談していたらしいことを突き止めていた。
どうやら、美由紀が相談途中で打ち切ったのは「ヘリファルテ」の存在が大きいらしい。

右京は「ヘリファルテ」が関わったトピックを調べて、ある共通点に気付く。
それは「悉くトピック主が自殺を仄めかして」おり、結果として「ヘリファルテと直接連絡を取り合っている」ことであった。
冠城は「中村が弱ったトピック主にナンパ目的で近付いたのでは」と自説を述べるが……。

一方、アリバイ崩しに挑んていた伊丹たちだが雨宮のアリバイを逆に証明する結果に終わる。

並行して、中村から提出された「シアン化ナトリウム」と「観葉植物のハイドロビーズ」が美由紀のソレと合致した。
右京と冠城は中村に事情を問うことに。

すると、中村は隠していた美由紀の携帯を取り出すや驚くべきことを言い出した。
中村が工場へ戻ったところ、美由紀が自殺していたと言うのである。
美由紀は携帯に遺書を残しており、其処には「雨宮家の別荘に運んで欲しい」と記されていた。
中村はこれに従っただけだと主張したのだ。

さらに、中村は5年前のエピソードを語り出した。
中村の当時の交際相手が難病で死亡したのだが、家で最期を迎えたいとの彼女の望みを果たせなかったらしい。
その後悔があり、美由紀の遺志を果たしたのだそうだ。

矢先、中村は伊丹たちにより取調を受けることとなった。
伊丹たちは雨宮から「美由紀がストーカーされていた」との情報を得ていた。
「このストーカーが中村ではないか」と疑われたのだ。

そんな中、右京は「兎のコルク」が「家紋」だと突き止める。
美由紀も雨宮も家紋は兎ではない―――では、誰の物なのか!?

メディアで雨宮と美由紀のスキャンダルが報じられ始めた。
その論調の多くは下田と青山奈央カップルと対比しているようだ。
これを目にした右京は「なるほど、そうでしたか!!」と叫ぶや駆け出す。
咄嗟のことに対応できない冠城。
右京は脇目も振らず「冠城くぅ〜〜〜ん!!」と呼ぶ。
慌てて右京を追う冠城。
どうやら、右京も冠城を「同居人」と呼びつつも「相棒」として認めているようだ。

右京と冠城が向かったのは下田が経営するレストランであった。
右京は下田に「創業10周年を記念したワイン」を求める。
そのコルクこそ美由紀宅で発見された品と同じであった。
さらに、下田浩一の手にはサファイアが輝いていた。
右京と冠城は下田を「美由紀さんを知っていますね」と問い詰める……。

その翌日、右京は雨宮を訪ねた。
「美由紀は自殺だった」との結論を述べる右京たち。
中村の供述はその点においては正しかったのだ。

恋人をサファイアと呼んでいた美由紀。
その理由は恋人がいつもサファイアの指輪を身に付けていたからだ。
だが、雨宮はサファイアの指輪をしたことがない。
むしろ、身に付けていたのは下田であった。
右京は報道される下田の手にあるソレに気付いたのであった。

そう、美由紀の本物の交際相手は下田だったのだ。
だが、下田は青山奈央を選び、美由紀を捨てた。
其処で美由紀は死を選んだのである。

では、雨宮は恋人を騙った理由は何か?
その目的は中村に殺人の罪を着せる為だ。
何故なら、雨宮の妹・遥は半年前に「ヘリファルテ」こと中村に相談し自殺してしまっていたから。

「あいつが妹を殺した」
遥が「ヘリファルテ」に誘導され自殺したと述べる雨宮。

雨宮は「ヘリファルテ」が中村であることを突き止めた。
其処で工場を訪れたところ、美由紀が自殺していたのだ。
その携帯に残されていた遺書を目にした雨宮は下田の名を自身の名に書き換えた。

見ず知らずの美由紀の恋人を騙ったことの危険性を問う冠城。
しかし、雨宮はもちろん右京もそれについては大丈夫との確信があったのだろうと述べる。
美由紀は遺書で初めて恋人の名前を中村に明かしており、下田は新婚である以上は事実を明かすことはないからだ。

一方、右京は遥の死について興味を抱く。
遥は千葉のビルで転落死を遂げていた。
だが、そのビルは特に遥と関連性は無かったのだ。

翌日、中村は保釈された。
一方で、何処かのビルの屋上へと上って行く女性の姿が。
この女性は中村が「喫茶フクモリ」で密会していたあの人である。
女性は屋上に辿り着くと「今から飛び降ります 早紀」とのメールを中村へ送る。

これを目にした中村は早紀が飛び降りすると宣言したビルへ急ぐ。
結果を見届ける為だろう。
しかし、其処に待ち構えていたのは早紀ではなく右京と冠城であった。

「早紀さんは保護しましたよ」
右京の言葉に狼狽える中村。

右京は遥が死亡した千葉のビルが中村の取引先であることを指摘する。
こうして中村に疑惑を抱いた右京は、掲示板で「ヘリファルテ」に相談していた女性を調べた。
そして、「ヘリファルテ」への相談者の自殺率の高さに驚いた。

中村が誘導していることに確証を抱いた右京は早紀に行きつき保護したのだ。
早紀によれば中村から「人は来ない、景色も良い。死ぬには最適な場所だ」と教えられたのだそうだ。

中村は「相談者を思い留まらせるべく努力して来た。それでも心を変えない相手にのみ協力した」と叫ぶ。
だが、右京は「あなたがそんなことを繰り返しているのは過去に犯した罪を正当化する為でしょう?」と冷静に告げる。

右京の問いに顔色を変える中村。
5年前に起こった中村の婚約者の死は彼による他殺だったのだ。

中村の婚約者は病床で苦しみ続け死を望んでいた。
其処で中村はこれに応えたのだそうだ。
その罪の意識を正当化する為に自殺を仄めかす人々を止めるでもなく、率先して死へと追いやったのだ。

「どんな理屈を付けても、あなたのやったことは殺人だ」
「あなたのその行為は死神と同じなんですよ」
理論武装し正当性を主張する中村に、冠城と右京が止めを刺す。
こうして、中村は逮捕された。

その夜、右京は冠城を「花の里」へと連れて行く。
「あら、新しい相棒さんですか?」
にこやかに問う幸子だが、右京も冠城を互いを頑なに「相棒」だとは認めようとしない。
こんなところも何処か似ている2人であった―――3話了。

<感想>

シーズン14第3話。
脚本は金井寛さん。

サブタイトルは「死に神」。
テーマはその名の通り「周囲を死へと誘い込む中村の行動」についてでしたね。
ミステリ的には「変則的な操りの構図」と言えるでしょう。
主に「真犯人がアリバイ作成」に利用するパターンが多いかな。
その点、今回はコレ自体が目的となっていました。

中村の行動は作中で指摘を受けた通り、利己的かつ卑劣な行いと言えるでしょう。
死を選んだ美由紀や早紀たちですが、ネット上で相談を行った時点で気持ちを理解して貰える相手を探していた筈。
中村はそんな気持ちに漬けこんで、味方面して近付くと彼女たちを弄んだ。
それは冠城が「弱った心に漬けこむナンパ目的」と語っていたことと何ら変わりがない。
いや、「ナンパ目的」ならば支えになるかもしれないが、中村の行いには先が無い。
尚更、酷いとしか言いようがない。

そもそも、中村がきちんと相談に乗っていれば彼女たちは生きることを選んだことでしょう。
上にもある通り、ネット上で相談していたのは味方を探してのこと。
味方の言があれば違う道を選んだ筈なのです。
実際、遥は死の2日前に雨宮に接触しようとしていたし生きることを望んでいた。
場合によっては立ち直ったに違いありません。

それにしても、中村の行動は「罪の正当化」と言うよりも「趣味」にすら見えた。
何しろ、正当化ならばわざわざ現場に足を運び見届ける必要が無い。
もしかすると、中村は婚約者をその手で殺害して以来、その道に目覚めてしまったのではないか?
だから、獲物を求めて彷徨い歩いていたのではないか。
そうとすら思えてしまう。

一方、着々と冠城が右京の相棒の座を固めつつあるように見えますね。
今回、冠城は「ハイドロビーズ」と「ヘリファルテ」で重要な手掛かりを右京に提示していましたし。
さらに、右京もわざわざ冠城を同行させているし、口では「同居人」と言いつつも「相棒」として認めている証でしょう。
さらに、前々回「右京=鬼、冠城=仏」前回「右京=紅茶、冠城=コーヒー」に続き「右京=洋酒、冠城=ワイン」と印象的な対比が続いています。
少しずつ定着しつつある冠城、次回にも期待です!!

ちなみに、中村の行動については「ネット上の人生相談」が出て来たところで予想がついた方も多いのではないでしょうか。

この「変則的な操りの構図」でふと思い出した作品を何作か挙げたいのだけど、ネタバレを避ける為に敢えて「変則的な操りの構図を用いつつもコレがメインではない作品」を紹介しておきます。

それが天祢涼先生『キョウカンカク』、アガサ・クリスティー『カーテン』。
先述した通り、それぞれコレがメインでは無いので安心して是非読んでみて下さい。
しかも、オススメの作品です!!

『キョウカンカク』(天祢涼著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『カーテン』(アガサ・クリスティー著・中村能三訳 、ハヤカワ書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

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『明智小五郎、獄門島へ行く(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年10月号』掲載)

『明智小五郎、獄門島へ行く(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年10月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<感想>

2015年8月における「金田一耕助VS明智小五郎シリーズ」最新作。その後篇です。
今回は金田一ではなく、明智が主人公の短編作品となっています。
また、前作と今作は鏡写しの関係にあるとも言えるでしょう。
簡単にまとめると次の通り。

前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』では「江戸川乱歩が創造したパノラマ島」で「横溝正史が創造した金田一耕助」が活躍。
今作『明智小五郎、獄門島へ行く』では「横溝正史が創造した獄門島」で「江戸川乱歩が創造した明智小五郎」が活躍。

言わば「舞台」と「人」との組み合わせが入替っているワケです。
そして、トリックもこの関係に沿っていました。

此処から前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』の内容について触れています。
ご注意ください!!


例えば前作は本作前篇の71ページ(『小説野性時代』掲載時)でも匂わされていましたが「舞台」に大きな鍵が隠されていました。
そして、今回は「人」にこそ大きな鍵が隠されていたワケです。

また、前作では「消えた(離散した)筈の島民が実は○○」でもありました。
今回は「存在している筈の島民が実は○○」となっていました。
まさに対になっていたワケです。

しかも、前作ラストの金田一への電報が此処に来て活きて来ることに!!

さらに、意外な動機もポイントでした。
これにより、子供が残され「少年探偵団」に繋がったのも良かったですね。
そして、落語から擂鉢を連想させていたのも印象的でした。

そして、さらなる広がりを見せる「金田一耕助VS明智小五郎シリーズ」世界。
前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』と本作『明智小五郎、獄門島へ行く』により、短編集『金田一耕助VS明智小五郎みたび』の存在も見えて来たか。
今回もファン必見です!!

ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
明智小五郎:ご存知、名探偵。
文代:明智の良妻。
小林少年:明智の右腕。
金田一耕助:こちらもご存知、名探偵。
鬼頭早苗:『獄門島』の登場人物。金田一とのロマンスは有名。
清水巡査:『獄門島』の登場人物。

・『明智小五郎、獄門島へ行く』前篇はこちら。
『明智小五郎、獄門島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年9月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

明智に命じられ島内を単独捜査していた小林少年。
その前に現れたのは狐面の集団であった。
以降、小林少年は消息を絶ってしまうことに。

当の明智はと言えば、文代夫人と共に何やら動き出していた。

その頃、獄門島の港には旅芸人の一座が訪れていた。
彼らは一路、本鬼頭を目指す。
これに戸惑う島民たちだが「1月前に興業の依頼を受けた」と告げられるや、何故か押し黙ってしまう。

遂に鬼頭家へと押し入った一座。
そんな一座を捕らえようと清水巡査が駆け付けた。
其処へ屋敷内から怪しい男性が巡査に飛び掛かる。
これを手助けする一座たち。

捕らえられた巡査は「お前ら、俺が誰だか知っているのか」と絶叫。
これに対し「お前は知らないが、こちらの方は知っている」と応じる声が。

見れば、それは金田一であった。
どうやら明智の電報を受けて駆け付けたらしい。

そんな金田一が巡査を知らないと否定した。
しかも、怪しい男性の方を知っていると語ったのだ。

金田一によれば、明智に対し清水巡査を名乗っていた人物は偽物らしい。
そして、偽物に飛び掛かった人物こそが本物の巡査だったのだ。
軽く挨拶を交わす金田一と清水巡査に絶句する偽物。
清水巡査によれば、1ヶ月ほど前から座敷牢内に閉じ込められていたのだそうだ。
同じことが島全域で起こっていたのである。

その頃、擂鉢山内では大騒動が起こっていた。
捕らえられていた本物の獄門島民が脱出し、偽の島民を召し捕っていたのだ。
こうして偽の島民は一掃された。

一方、鬼頭の婿養子はこの事態に狼狽していた。
そんな彼をさらに驚かせる出来事が。
目の前に早苗が立っているのだが、彼が知る“どの早苗”とも別人なのである。
本物でも偽物でも無い早苗なのだ。

そもそも、どの早苗とはどういうことか?
そう、彼こそが偽の島民を用意した黒幕であった。
実は選挙が行われるにあたり、ある人物を当選させるべく島民を入替えていたのだ。
もちろん、早苗も偽物にすり替わっていた。
ところが、彼の前に立つ早苗は本物でも偽物でも無い、第3の早苗なのだ。

慌てる鬼頭はその場を逃げ出す。
残された早苗に明智が声をかけた。
その正体こそ、文代夫人の変装だったのである。
誰あろう、この変装で偽島民を翻弄し擂鉢山の本物の島民を解放させた功労者は彼女であった。

逃げ出した鬼頭。
その周囲を狐面たちが取り囲む。
この光景に肝を潰した鬼頭は気絶し捕まった。

狐面の正体は小林少年と少年探偵団獄門島支部の面々であった。
鬼頭は選挙権のある大人だけを捕まえて入替えていたのだが、難を逃れた子供たちが抵抗運動を続けていたのだ。
それが狐面の正体であった。

また、例のタコも彼らの仕業である。
落語をモチーフにしたもので其処から擂鉢山を連想させ、人質の在処を明智たちに教えていたのだ。

偽物と黒幕が逮捕され、本物が助け出されたことで事件は解決した。

明智と金田一は獄門島を去ることに。
本物の早苗に別れを告げる金田一。
明智もまた今は消えつつある幻想的な完全犯罪に想いを馳せつつ、その島を後にする―――エンド。

◆関連過去記事
【金田一耕助VS明智小五郎シリーズ関連】
『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

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『金田一耕助、パノラマ島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年3月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『金田一耕助、パノラマ島へ行く(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年4月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『明智小五郎、獄門島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年9月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

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【ドラマ化情報】
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「KvsA」の正体判明!!土曜プレミアムSPドラマ「金田一耕助vs明智小五郎」だった!!

【朗報】「KvsA」続編製作中とのこと!!つまり「金田一耕助VS明智小五郎」第2弾放送決定!?

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