2015年10月15日

「英国一家、日本を食べる」21話「サムライのしょうゆ」(10月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「英国一家、日本を食べる」21話「サムライのしょうゆ」(10月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<21話あらすじ>

四国にやってきたマイケルたち。旅の目的は香川名物の「うどん」…ではなく日本の調味料の代名詞ともいえる「しょうゆ」だった。立派な武家屋敷の老舗しょうゆ蔵で一家を出迎えてくれたのは、武士の末えいだという男。こだわりの製法や新商品の説明をしていたが…。
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)

瀬戸大橋を渡ったマイケル、リスン、アスガー、エミルたち、向かった先は香川県だ。
其処は「うどん」の国である、立ち並ぶのは「うどん」店の数々。

此処で「うどん」について説明しよう!!
「うどん」とは小麦粉にうどん粉を練って混ぜ……って、ちょ〜〜〜っと待った!!
実は今回のテーマはうどんではないのだ。

では、何かと言うと……「醤油」なのだ!!
「醤油」とは大豆、小麦、塩、麹箘などを用いて作られる調味料である。

マイケルによればルイ14世の隠し味にも用いられたとまで噂されているらしい。
また、醤油蔵は日本国内でワイナリーの如く存在し、1500軒もあるのだそうだ。

そして今回、マイケルたちが取材に訪れた醤油蔵はもともとは武家屋敷で300年の歴史があるらしい。
しかも、侍の末裔が経営しているのだ。

強面の侍を思い浮かべ緊張するアスガー。
ところが……。

「いらっしゃ〜〜〜い!!」
出迎えたのは緊張感を感じさせない当主の幸田菊之進であった。
強面よりもどちらかと言えば中性的な雰囲気の持ち主である。

拍子抜けするアスガーをよそに幸田は説明を開始する。

醤油には薄口と濃口があり、関西では薄口、関東では濃口が人気らしい。
また、幸田の醤油蔵では1本1万円の「侍プレミアム」が自信作なのだそうだ。

麹造りこそ醤油の要と語り、醸造蔵を「生きている」と評する幸田。
蔵内の微生物が働きかけることで味の深い醤油が出来るようだ。
その為に200年も前の樽を今も使用しているのだ。

これに驚くマイケル。
とはいえ、幸田によれば「伝統を重視しつつ、ぐいぐい攻めても居る」らしい。
その1つがアイスクリームに合う醤油であった。
これにはアスガーもエミルも大満足だ!!

柔和な幸田に「侍には見えない」と断言するアスガーであったが。
一般の見物客の横を通り過ぎた幸田の顔色が一瞬で変化する。
それはアスガーの想像した侍そのもの。

侍モードとなった幸田は見物客の1人に近付くと鞄を強引に奪い取る。
その中には厳重に梱包されてはいたが納豆が入っていた。

納豆菌は麹菌よりも強い。
もしも、蔵内に持ち込まれれば醤油への影響は免れない。
どうやら、商売敵が紛れ込んでいたようだ。
「醤油作りは戦」と宣言する幸田にアスガーは侍の姿を見た。

その後、幸田から「侍プレミアム」を美味しく食べる方法として卵かけごはんを勧められたマイケル。
生卵は苦手と逃げ出そうとするのだが、侍モードの幸田に押し切られ口にすることに。

すると……マイケルはあまりの美味しさに宙を舞う!!

気付けばマイケルは1万円する「侍プレミアム」を2本も購入していた。
幸田は侍の血を引いた凄腕の商人だったのである―――エンド。

<感想>

原作はマイケル・ブース著『英国一家、日本を食べる』と『英国一家、ますます日本を食べる』(共に亜紀書房刊)。
NHKさんにて毎週木曜日0時40分から1時まで放送中、全24話予定。

前半はマイケル一家を中心としたカートゥーンパート、後半はトシ視点のドキュメンタリーパートからなる。

この21話のテーマは「醤油」について。
そんな今回ですが、具体的にはカートゥーンパートでは「300年続く醤油蔵」を中心に、実写パートでは「醤油の意外な使い方として煎餅」が取り上げられました。

まずはカートゥーンパート。
エミルの「うどん」連呼がキュート!!
あれ、最後までやって欲しかったなぁ。
さらに「TKG」も登場、美味しそうでした!!
幸田自身のギャップもなかなかに良かった。

そして実写パート。
米に醤油と言えば「醤油煎餅」ということで新潟市にある煎餅工場が取り上げられました。
この工場では1日3000リットルも醤油が消費。
担当の村田さんの案内で工場内へと向かいますが「埃取り」に「エアシャワー」に「複数の扉」と安全管理に余念がない。
そして入った工場内では「伸ばした生地を半月状にする煎餅」が生産中。
この煎餅は1秒間に1500粒も生産されるのだそうで、出来上がったのは「柿の種」でした。

また「新潟」にあって「柿の種」と「まがりせんべい」なので工場は「亀田製菓」のもののようです。

ちなみに本作「英国一家、日本を食べる」の旨味も此の点にあるような気がします。
「カートゥーンパート」と「実写パート」とのギャップが肝要なのです。
これにより深い味わいの作品が出来上がる。
この「素材を活かすこと」が視聴者の心を動かすのでしょう……面白いワケです。
次回も楽しみな作品です。

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原作「英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)」です!!
英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)





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同じく原作「英国一家、ますます日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)」です!!
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こちらは同作者によるシリーズ最新作「英国一家、フランスを食べる」です!!
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「無痛 診える眼」2話「同じ能力を持つ男が天才に迫る」(10月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 診える眼」2話「同じ能力を持つ男が天才に迫る」(10月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<2話あらすじ>

為頼英介(西島秀俊)は、通り魔事件で負傷して白神メディカルセンターで治療を受けた義姉、井上和枝(浅田美代子)の退院を手伝いに行く。するとセンターの院長、白神陽児(伊藤英明)が為頼に院内を案内したいと伝えてきた。ためらう為頼だが和枝の勧めもあり、白神のもとへ。

白神は為頼を歓迎し、最新設備が整った施設を案内。為頼が驚いたのは診療を待つ患者が少ないことだ。白神は裕福な患者から医療保険外のオプションサービスで特別料金を取り、その分を医師の数を増やすことなどで質の高いサービスに務めると言う。為頼は、これからも自分の診療所では手に負えない患者に白神の病院を紹介すると告げた。
一方、早瀬順一郎刑事(伊藤淳史)は為頼の能力に高い関心を寄せ、ネットなどで調べていた。そんな時、管内で殺人事件が発生。被害者は山田輝久(有薗芳記)というアパートの住人で、自室で腹部を刺されて死んでいた。しばらくすると、工藤一尊(ジジ・ぶぅ)という男が挙動不審で逮捕される。工藤は自ら山田殺しを告白するが、取り調べた早瀬は何か腑に落ちない。早瀬は取り調べを同僚に任せて出かける。

早瀬が向かったのは、診断学の権威で為頼の恩師、久留米実(津嘉山正種)の家。早瀬は久留米から、為頼には殺人を犯す人間に顕れる犯因症が見えると教えられた。

果たして工藤は、本当に山田を殺したのか? 早瀬は為頼に、工藤の面通しを頼む。早瀬に従い、工藤を診た為頼は…。
(公式HPより)


<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
為頼英介:主人公、様々な病気を見抜く眼を持つ医師。
早瀬順一郎:熱血漢の刑事。
高島菜見子:臨床心理士。
白神陽児:クリニックの経営者。実は……。
イバラ:白神のもとで働く男。実は……。
南サトミ:菜見子の担当患者。
久留米実:元医師、為頼の師。
井上和枝:為頼の義姉。


医師の為頼英介は外観から患者の状態を診断する眼を持っている。
それは遂に、将来的に犯罪を犯すであろう「犯因症」を見抜くことまで可能にしていた。

この能力は為頼を他者と一線を画す存在としたが、同時に彼に限界を報せることにもなった。
皮肉なことに、為頼が幾ら相手の状態を見抜いたとしても治療法を現在の医療水準に頼る以上、治療法が確立されていない病気の場合に為す術がないのは他の医師と同じなのである。
むしろ、より正確に不可能を知るだけに虚無感に支配されていた。

ところが、そんな為頼にクリニックの経営者である白神院長が接触を図って来た。
実は白神もまた為頼と同じ眼を持っており、それ故に為頼の能力を認めていたのだ。
白神は患者に苦痛を与えない「無痛治療」を提唱し、為頼にスカウト話を持ちかける。
これに揺らぐ為頼であったが……。

矢先、知人の刑事・早瀬からある事件への捜査協力を求められる。
被害者は山田輝久なる男性、容疑者である工藤一尊はすぐに身柄を拘束され罪を認めていた。
だが、早瀬は工藤の様子から彼が偽証していると判断する。

其処で早瀬は為頼にアドバイスを求めたのだ。
工藤を一目見た為頼は彼の犯行ではないと確信。
さらに工藤にある病状を見出す。

為頼の助言を受けた早瀬は被害者である山田について調べ、彼が白神メディカルクリニックを受診したが費用を捻出出来ず門前払いを受けていたことを知る。

この事実を知った為頼は白神の理想に思わぬ罅が入っていることに気付く。
一方で、山田の遺体状況を確認し事件の真相を看破する。

山田には典型的な鬱症状が現れており自殺だったのだ。
工藤は重症筋無力症を患っており、この治療費に困り罪を認めて治療しようとしていたのだ。
こうして、真相は明らかとなった。

同じ頃、白神がイバラと密会していた。
手を負傷したイバラだが解くに痛みを訴える様子も無い。
それもその筈、彼にはある秘密が―――3話へ続く。

<感想>

ドラマ原作は久坂部羊先生による同名作品。
シリーズ続編として『第五番 無痛2』も存在している。
過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。

『無痛』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

『第五番 無痛2』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

タイトルにもなっている「無痛」の意味は登場人物の1人・イバラが「無痛症」を患っていることを示しています。

では、ドラマ版2話の感想を。

やはり全体のストーリーラインは原作に沿いつつ、各話の合間に為頼と早瀬が相棒としての絆を深めるような事件を挿入する感じのようです。
今回は山田の事件が完全にオリジナルでしたね。
もちろん、早瀬の犯因症も同じです。

その早瀬の犯因症ですが「罪を強く憎むが故に罪を犯しかねない」との二律背反が興味深いです。
此の点で大テーマである「無痛」と絡めることが出来ればかなり面白くなりそうな気がします。

また原作にもあった白神が為頼を誘うシーンにも震えました。
あのシーンを見事に再現出来ていたと思います。
この調子で原作の名シーンを上手く再現してくれれば!!

原作通りならば次回以降も事件は加速して行く筈、3話にも注目ですね!!

◆関連過去記事
【久坂部羊先生著作関連】
『無痛』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

『第五番 無痛2』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

『破裂』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

【ドラマ関連】
「無痛 診える眼」1話「新ヒーロー誕生…!?病気を見抜く天才は、犯罪を見抜けるか?」(10月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「破裂」1話「超高齢化をめぐる問題作、始動…エリート医師に国家的陰謀が迫る」(10月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 (幻冬舎文庫)」です!!
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「相棒season14」初回2時間スペシャル第1話「フランケンシュタインの告白」(10月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「相棒season14」初回2時間スペシャル第1話「フランケンシュタインの告白」(10月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第1話「フランケンシュタインの告白」(10月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)。

<ネタバレあらすじ>

夜の西多摩刑務所内にて、受刑者の1人・荒木秀典が持ち込んだナイフで胸を突き自傷した。
傷が浅かったことと同房の者が気付き大騒ぎとなったことで荒木は一命を取り留めた。

事態を収拾した刑務官の増淵万里は「またか……」と溜息を吐く。
今月に入って既に同じような自傷事件が3件も発生していたのだ。
増淵は事の元凶を思い浮かべ顔を顰める。

その名は梅津源平(井之上隆志)、古株の受刑者である。
荒木の自傷も梅津に感化されたものなのだ。

数日後、梅津は発作を起こし死亡した―――。

同じ頃、花の里の幸子のもとに無期限停職中の右京(水谷豊)から手紙が届いた。
其処にはヨーロッパの風景が写り込んでいた。
右京はヨーロッパに居るのである。
とはいえ、右京あるところ事件あり。
右京は現地で次々と難事件を解決し、もはや欠かせぬ存在とされていた。

一方、元特命係の部屋には新たな主が入っていた。
「暇ですか?」
「ええ」
いつになく畏まった角田が部屋の主に声をかけ、主がこれに応じる。
右京不在の間に部屋の主となった人物の名は冠城亘(反町隆史)、人事交流の名目で法務省から警視庁に出向しているキャリア官僚である。

それから数週間後、西多摩刑務所。
一見、平穏に思われた其処で凄惨な事件が発生する。
作業中の受刑者・美倉(小柳心)が刑務官の田代(栩原楽人)を刺殺したのだ。
その場で身柄を拘束された美倉は刑務官の藤森と井川の取調べを受けることに。
ところが、美倉は警視庁の捜査を求めて黙秘を貫く。

その夜、冠城は上司である法務事務次官・日下部彌彦(榎木孝明)に呼び出され美倉の捜査に参加するよう命じられる。
こうして冠城は伊丹(川原和久)らと共に捜査に参加することに。
伊丹は冠城に「おたくの居るあの部屋ね、魔物が棲んでいたんですよ」と洩らす。
もちろん、此処での魔物とは「あの人」のことだ。

取調を開始した伊丹や冠城に対し美倉は驚くべきことを語り出した。
なんと「田代が梅津を殺した」と語り「動機は敵討だ」と主張したのだ。
これに興味を抱いた冠城だが、直後に首を傾げることとなった。
美倉は「死んだ梅津から田代に殺されたと教えられた」と口にしたのだ。

美倉の言葉が事実だとすれば梅津の幽霊が美倉に無念を訴えたのか?
不可思議な謎に頭を悩ませつつ、特命係へ戻った冠城は見知らぬ人物と出会う。

其処には風変わりな男が座っていた。
眼鏡をかけた中肉中背の男、何処か神経質そうな素振りを見せている。
そう、誰あろう彼こそ杉下右京である。
右京は古巣へ戻って来たのだ。

その足で峯秋を訪ねる右京。
峯秋は「ダークナイト事件」により次長職を追われ今は閑職に追いやられていた。
とはいえ、以前の鋭さは未だ健在らしい。
右京が無期限停職で踏み止まって居られるのも彼の力だ。

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その夜、花の里を右京が訪れる。
帰還を祝う幸子と米沢。
米沢はお祝いとばかりに「美倉の事件について」右京に教える。

翌朝、元特命係にまたも右京の姿があった。
右京は傍の冠城に美倉事件について語りかける。
「本当に幽霊か、はたまた妄想か……」
右京の語り口に興味を惹かれた冠城は彼と共に捜査を続けることに。

そう、捜査権のない右京は冠城を動かすことでその権限を借りて動き出したのだ。
とはいえ、冠城も只者ではない。
冠城は敵を作らないよう「美倉の供述が嘘であることを証明する為」との大義名分を用いて捜査を開始する。

冠城の手腕に興味を抱いた右京。
さらに、冠城が事務次官の日下部と親しいことを知り目を細める。

右京は増淵立ち会いのもと、美倉の取調べを開始。
美倉によれば「深夜の雑居房の耳元で何かを囁く声がした」と言う。
ソレは自身を梅津だと名乗るや、田代に殺されたと無念を繰り返し訴えたらしい。
美倉は夢でも妄想でもないと断言するが……。

次いで、梅津死亡時の状況について調べる右京。
第一発見者である田代から急報が入り、医師が駆け付けたところ梅津は独居房内にて既に心肺停止状態で死亡していたのだそうだ。
ちなみに、田代は受刑者からも慕われていたらしい。

梅津が独居房で死亡していたことを聞いた右京は「美倉と梅津の接点」について疑問を呈する。
独居房に居る限り、美倉は梅津を知り得ない筈なのだ。

これについて、増淵は梅津が独居房入りした理由を明かす。
それは他者への影響を配慮してのことであった。

なんと、西多摩刑務所内には梅津と同じ胸元の傷を持つ42名の受刑者が居るのだそうだ。
刑務官らは彼らを「信者」と呼んでいた。
彼らは梅津を信仰し、憧れから同じ傷を抱えるようになったのだそうだ。
彼ら信者にとって梅津は「神」であった。

梅津は強盗殺人の罪で服役していた。
入所直後は荒々しく、常に懲罰房の常連であった。
ところが3年ほど経過した頃、教誨師を務める僧侶・慈光に出会い梅津は生まれ変わった。
梅津は勤勉になり書物という書物を読み通した。
遂には六法全書まで読みこなしたのだ。

これが5年間続いた。
周囲は梅津に改悛の情が見られたとして雑居房に移した。
ところが直後に事件が起こる。

沈黙の5年間に法律知識を身に着けた梅津が公然と反発を始めたのだ。
梅津は暴力に加え理論武装したのである。
そして、逆に増淵らを恫喝するようになったのだそうだ。

当然、弾圧は強まる。
だが、梅津は屈しない。
いつしか、受刑者たちは梅津を支持するようになった。
そして梅津は受刑者たちの神になったのだ。

これを怖れて梅津は独居房に監禁された。
当然、増淵が知る限り梅津と美倉に接点はない。
だが、梅津の存在については噂として語られる。
増淵は「美倉が隠れ信者だったのだろう」と述べる。
42名の信者以外に、何人居るのかも分からない隠れ信者も存在するらしい。

翌朝、右京と冠城は梅津の教誨師を担当した寺の住職・慈光を訪ねた。
慈光によれば梅津の精神力と向上心には驚異的な点があったらしい。
説法を得意とする慈光でさえも、梅津の前には無力だったのだそうだ。
梅津は「贖罪を強いる者たちが出世の為にしか行動しない」と批判した。
そして、そんな者の下では「本当の贖罪は達成出来ない」と唱えたのだそうだ。

その夕刻、峯秋に呼び出された右京と冠城。
峯秋は冠城に右京と付き合うことがどれだけ危険か釘を刺す。
どうやら日下部が冠城を護るべく手を回したようだ。
だが、冠城はどこ吹く風だ。

翌日、右京は勤務成績を調べ受刑者への態度が田代と正反対とされる伊達宏に目を付けた。
田代は受刑者からの評判が良く、逆に伊達は厳しい存在として知られていたのだ。

右京から取調を受ける伊達は意外な情報をもたらす。
どうやら増淵が受刑者に甘い田代を嫌っていたらしい。
増淵は常日頃から秩序を乱すと田代を責め立てていたのだ。
増淵を怖れた刑務官たちは田代に対して冷たかったようだ。

これを聞いた右京は増淵が美倉を使って田代を殺害したとの仮説を立てる。
増淵は邪魔な田代の殺害を目論んだ。
だが、直接手を下すのはリスクが高い。
其処で、梅津信者を利用して殺害したのだろう。

これに疑問を呈する冠城。
どうやって田代が梅津を殺害したことを知ったのか?
また、もしもそれを知ったとしたら田代を殺害せずとも事実を告発すれば良い。
美倉を利用する必要はない。

右京は冠城の疑問をもっともと肯定しつつ、だとすれば……と話を続ける。
つまり、田代の梅津殺害がそもそも作り話だったとすれば!?
だからこそ、梅津の幽霊が必要だったのではないか!?
右京の推理を妄想だと一笑に付す冠城だが……。

その夜、冠城は藤森と井川の2人と密会。
右京の推理を彼らに教えると対処するように促した。

翌日、冠城の助言は早速実行に移され増淵は体調を崩したとして長期休暇に入った。
接触を避け逃げるつもりなのだ。

だが、右京は休暇中の増淵を訪問すると主張。
右京は不意を突き増淵から真相を聞き出そうと目論んだのだ。
だが、冠城はそんな右京の意に反し密かに増淵に右京の来訪を教える。
不意討ちを避けた増淵は堂々と右京を迎え撃つ。

梅津信者の炙り出し法について問う右京。
驚くべきことに、その方法とは梅津の私物を用いた踏絵であった。
そしてこの踏絵について、美倉を担当したのは増淵だったのだ。
しかし、増淵は美倉が隠れ信者であることを報告していなかった。

増淵が美倉の正体を見抜けなかったのか?
それとも、敢えて見逃したのか?
この指摘に増淵は口ごもってしまう。

増淵宅を辞去した右京は冠城の情報漏洩を察し狙いを問う。
これに冠城は「真相に辿り着く為」と応じる。
右京の攻めに怯えた増淵が自身を頼るよう図ったのだ。
方法こそ違えど目的は同じなのである。

深夜2時過ぎ、西多摩刑務所内で異変が起こった。
受刑者たちが刑務官を襲い一斉蜂起したのだ。
刑務官から鍵が奪われ、次々と解放された受刑者たちは歓喜の声を上げ廊下へと飛び出して行く。

事に気付いた刑務官たちが集結する中、受刑者たちは刑務官を人質に取ると応援の刑務官たちと対峙した。
蜂起したのは梅津信者たち、彼らの要求は「増淵の身柄」である。

呼び出された増淵は事態を知るや身を守るべく寮の自室に立て籠もった。
さらに冠城に助けを求める。
駆け付けた右京と冠城はある計画を立てることに。

未だ対峙する刑務官たちと梅津信者。
其処へマスクを着用した増淵が現れる。
人相は……確認出来ない。
増淵を引き渡すと見せかけて、中身は伊丹たちと入替っていたのだ。
これに不意を突かれた梅津信者たちは一撃を受けて取り押さえられることに。

捕らえられた梅津信者によれば田代の仇を取る為だったらしい。
なんと「増淵が美倉を利用して田代を殺害した」と伊達に教えられたのだそうだ。

早速、伊達の取調べが行われることとなった。
伊達は「美倉と同房の木村たち」から教えられたと語り出す。

それによると、増淵は美倉が梅津信者と気付きつつ見逃したのだ。
さらに木村たちは増淵から美倉に幽霊を信じさせろと命じられたのだそうだ。

伊達はこの事実を上司に報告したが相手にされなかった。
其処で梅津信者に洩らしたのだ。

伊達によれば増淵は西多摩刑務所の暴君なのだそうだ。
増淵が恐ろしく、伊達を含めた刑務官らは受刑者に正当な更生を求められないらしい。
それでも信念に従った田代は増淵に謀殺されてしまった。

一斉蜂起を乗り切り、一息吐く増淵。
其処へ右京たちが現れる。
もちろん、増淵の罪を告発する為だ。

増淵は木村たちを使い美倉の両手両足を抑え込み、視界を奪った上で梅津を騙って敵討を訴えた。
美倉は梅津と面識がなく、梅津の声を知らない。
梅津への信仰もあってあっさりと引っかかってしまったのだ。

こうして増淵は殺人教唆により逮捕されることとなった。

それにしても、梅津信者たちはどうやって連絡を取り合っているのか?
これについて、右京は刑務所内で貸出される本を気に留める。
だが、当然のことだが本に書き込むことはおろか折り目をつけることすら禁じられている。

右京は梅津信者は受刑者だけではなく刑務官にも居るのではないかと主張し貸出担当官を疑う。
調べたところ、詩集に奇妙なチェックが入っていた。
ソレを拾い上げると「深夜2時一斉に」と記されていた。
昨晩の一斉蜂起を示唆したものだ。
貸出担当官・坂崎もまた隠れ信者だったのである。

坂崎の所持品を調べたところ、梅津の遺品である『源氏物語』が発見された。
坂崎によれば田代が所持していたらしい。
『源氏物語』の中には「次が来たら決行や 先生に言われたらそうせなあかん」と印がつけられていた。

改めて慈光のもとを訪問した右京。
梅津の死が正確には病死ではなく自殺だと指摘する。

「次が来たら決行や先生に言われたらそうせなあかん」
この意味は次の通りだ。

「次に発作が起きたら自殺を決行する。慈光先生に言われたのだからそうせねばならない」
梅津は持病の発作に苦しみながら、敢えて治療せず自殺したのだ。

では何故、田代は梅津の遺品を所持していたのか。
田代は梅津に死を促した人物の存在を突き止めたのだ。
そして、田代は慈光に真偽を確かめた。

梅津に自殺を促したのは慈光であった。
慈光にとって理論武装した梅津は制御出来ない怪物であった。
慈光は梅津を「罪」と呼び「その存在が自身を苦しめる」と冷酷に告げたのだ。

梅津は慈光から「失敗作」との烙印を押されたことを知った。
だから死を選んだのだ。

田代はこの罪について慈光自身を問い詰めた。
だが、慈光が身の処し方について悩むうちに田代が殺害されてしまったである。

そもそも梅津はどうして慈光の罪を告発するような証拠を残したのか?
それは梅津が生まれ変わった彼にとっての創造主である慈光の意志に沿ったことを伝える為だった。

その夕方、大河内が右京を訪ねてやって来た。
久方ぶりの再会に挨拶を交わす右京、そんな右京に大河内は贈り物を手渡す。
それは無期限停職解除の報であった。
実はタイミングを計っていた峯秋がこれを機会に捻じ込んだらしい。

こうして改めて特命係の主に復帰した右京。
一方、冠城も日下部から許可を得て特命係に残留することとなった。

「冠城君」
「右京さん」
互いに呼び合う2人、此処に新生特命係が誕生したのである―――1話了。

<感想>

シーズン14第1話。
脚本は輿水泰弘さん。

内容的に「死者の声を聞いた復讐」で「ハムレット」を思い浮かべましたが、サブタイトルは「フランケンシュタインの告白」。
また「相棒season9」第15話「もがり笛」以来の刑務所が舞台となったストーリーでした。

「相棒season9」第15話「もがり笛」(2月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)

テーマは「神(創造主)と創造物」か。
「フランケンシュタイン」とは「名もなき怪物」を作った博士の名であり、博士によって作られた「名もなき怪物」それ自体でもある。

フランケンシュタインは創造主となるべく新たな生命の創造に挑み成功した。
それが「フランケンシュタインの怪物」。
だが、この怪物はフランケンシュタイン自身の思惑を超越し「優れた知識」と「優れた力」を手に入れた。
これに恐怖したフランケンシュタインは怪物を放逐するが、怪物は最後の願いとして彼に対となる花嫁を求める。
しかし、嫌悪感に包まれていたフランケンシュタインはこれを拒否。
創造主に捨てられた怪物は怒りのあまりフランケンシュタインの家族を惨殺してしまう。
フランケンシュタインは復讐を誓い、これを追う。
とはいえ、頑丈な怪物と異なりフランケンシュタインは人間であり追跡の果てに途上で儚く散ってしまう。
生き残った怪物だが、創造主への敬意は残されており彼もまた命を絶つ。

以上が「フランケンシュタイン」の簡単なストーリー。
正確なところは確認して貰いたい。

つまり、梅津は慈光の教化によって生まれた「創造物」であった。
もちろん、梅津にとって慈光は「創造主」であり「神」である。
だが、梅津は慈光の意志に反し現代社会の規律に波を起こす存在であった。
梅津のやり方は自身の罪を棚に上げて相手の非に漬け込む手法だったからである。
しかし、梅津自身の非を問うことは極めて難しい。
正当な手段では罪を問えず、非合法な手段では勢いづかせるだけだ。
この瞬間、梅津は慈光にとって「怪物」となった。
慈光は梅津を否定し彼の死を望むようになる。
そして、梅津は慈光の意を汲み死を選ぶ。
とはいえ、梅津は最後に自身を怪物にした慈光へ復讐する。
それが『源氏物語』の手掛かりであり田代であった。

言わば、慈光がフランケンシュタインであり、梅津が怪物の関係ですね。
サブタイ「フランケンシュタインの告白」は「慈光の告白」であり「梅津の告白」でもあると言えるでしょう。

同時に荒木や美倉らにとって梅津もまた「神(創造主)」である点も重要でしょう。
つまり、梅津は「慈光にとっての創造物」であり「美倉らにとっての創造主」であったワケです。

ただ、慈光と梅津の関係はもう少し中盤で強調してくれても良かったかなぁ。
その方がより理解し易かったと思う。

また、此の点が重要なのですが梅津によってもう1人の怪物が生じています。
それがエゴの怪物・増淵。
梅津の存在に刺激され、遂には田代を謀殺するまでの怪物ぶりを発揮した彼もまた「梅津の創造物」だと言えるのかもしれません。
一方で増淵は伊達らの上に君臨した暴君でもあり、これまた「創造主(増淵)が創造物(伊達)に反逆された」と言えなくもない。
ちなみに、伊達の裏切りを増淵に教えてしまうと後々事件に繋がりそうだなぁ……冠城罪深い。

でもって、もう1人怪物……いや、伊丹曰く魔物が。
ええ、右京さんです。
彼もまた自身の信ずる絶対的正義のみを拠所に誰をも寄せ付けぬ怪物なのです。
本作は「そんな怪物の復活譚」と言えなくもない。

ちなみに、中盤までは梅津と田代の死は「梅津を真実の神にする為」とかと思ってました。
梅津が真に神となる為に死を選び、美倉のもとに死を訴えたとして復活を果たし、受刑者の神となる。
この梅津の復活を演出すべく、美倉と田代が殉教者となった的なストーリーを想像していたのですが違いましたね。

想像と異なったと言えば「右京の復帰法」。
てっきり、冠城の要請で日下部が上層部を動かすのかと思いきや峯秋の鶴の一声だとは……此の点も想定外でした。

冠城と言えば右京とコンビのカラーを明確に区分すべく「冠城=仏、右京=鬼」的なポジションにしている点は面白かったですね。
とはいえ、目指すところは「真実」と同じ。
まさに、取調のコンビみたいでキャラが理解し易い。
このキャラが暫定なのか、今後も続くのかも気になるところです。

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posted by 俺 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 相棒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする