2015年10月30日

『月は囁く』最終話(第16話)「月と鬼女(後篇)」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル11月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』最終話(第16話)「月と鬼女(後篇)」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル11月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
藤村月:陽一の父が再婚したことで、陽一の義妹となった。犯罪心理学と観相学を駆使する天才少女。
藤村陽一:警視庁捜査一課勤務、35歳。
陽一の父:犯罪心理学者。多くの事件解決に寄与した。

大宮日見子:人気女子アナウンサー
目黒:TV局のプロデューサー
原田守:TV局のAD


・前回はこちら。
『月は囁く』第15話「月と鬼女(前篇)」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル9月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

女性にだらしのなかった目黒プロデューサーが殺害された。
殺害現場には人気女子アナウンサー・大宮日見子が倒れており、容疑は彼女に向かう。
だが、日見子自体は殺害を否定し、捜査に乗り出した月も「彼女は嘘を吐いていない」と断言する。

矢先、日見子が現場で「死ね!!」と叫ぶ女性の声を聞いたと供述。
陽一はその声の人物こそが犯人と睨む。

そんな中、日見子の実家を訪問した陽一と月。
すると、日見子が実父から虐待を受けていたことを知る。
その力により父から疎まれ虐待を受けた月は、自身を日見子を重ねて同情する。

一旦、その場を離れた陽一と月だが、ふと月がある可能性に思い至る。
慌てて、日見子の実家に戻ったところ「死ね!!」と叫ぶ女性の声が。

飛び込んでみると日見子が父親を殺害しようとしていた。
いや、凶行に及ぼうとしている姿は普段の日見子ではない。
これを目にした月は「日見子が二重人格である」と説明する。

幼児期から実父に虐待を受け続けた日見子は現実逃避の為にもう1つの人格を作り出したのだ。
その人格は日見子のピンチに登場することになる。

つまり、目黒を殺害したのも日見子の別人格だったのだ。
日見子が聞いた女性の声は彼女自身の声だったのである。

日見子が嘘を吐いていなかったのも当然であった。
彼女自身、その犯行を知らないのだ。

実父を殺害しようとする日見子の別人格を押し留めた陽一と月。
日見子はこうして逮捕された。
だが、日見子の犯行はおそらく罪に問われないだろう。

陽一は月がその力ゆえに苦しんで来たことを知り、改めて家族として共に生きて行くことを誓う。
これに月もまた、陽一を認めるのであった―――エンド。

<感想>

「幇間探偵しゃろく」でお馴染みの青木朋先生が宮崎克先生とタッグを組み、新たなミステリコミックの連載を「ビッグコミックオリジナル 増刊号」で開始されました。
タイトルは「月は囁く」。
捜査官・藤村陽一と、顔相学を修めたその義妹・藤村月が犯罪事件を解決する物語。

まさに陽一(太陽)と月(月)の物語ですが、遂に最終話を迎えました。

さて、「鬼女とはいえ生まれる理由」がある。
日見子の場合は「父からの虐待」が原因でした。
それは奇しくも「月」と同じ。
つまり、日見子はその名の通り「日(太陽)を見る子」ということで「月」と重ねられた存在だったんですね。

そして、真の家族となった陽一と月。
いや、彼らは既に家族でした。
彼らはこれからも共に事件を解決して行くのでしょう。
これを読者として目に出来ないのは寂しい……。

2013年2月から始まった『月は囁く』、実に2年半に及ぶ連載だったんですね。
陽一と月の関係を縦軸、毎回の事件を横軸にドキドキワクワクさせて頂きました。
宮崎克先生、青木朋先生、お疲れ様でした。
次回作にも期待しております!!

また、本作は2015年12月に上下巻にてコミックスが発売予定とのこと。
アマゾンさんのリンクを本記事下部に用意したので興味を抱かれた方はチェックすべし!!

◆関連過去記事
『月は囁く』第1話「月は囁き、花は語る」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第2話「月とドッペルゲンガー」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル5月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第3話「月と幽霊轢き逃げ事件」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル7月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第5話「月とハロウィーンの怪物」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル11月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第6話「月と凶相の微笑み」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル1月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第7話「月と呪いの藁人形・前篇」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第8話「月と呪いの藁人形・後篇」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル5月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第9話「月とブログの女」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル7月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第10話「月と髪切り魔」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル9月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第11話「月と悲劇の怪人」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル11月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第12話「月下のゴミ屋敷」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル1月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第13話「月と婚活狂想曲」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第14話「月と哀しいカナリア」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル7月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第15話「月と鬼女(前篇)」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル9月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

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月は囁く(下): ビッグ コミックス





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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第11話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2015年11月号掲載)

『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第11話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2015年11月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<感想>

『小説宝石』に連載中の『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』―――その第11話。

今回は再び香月視点での物語。
さらに岡野殺害について木更津の推理が語られることに。
これにより、あの人が容疑者として急浮上しました。

また、今回の木更津の推理によると岡野殺害計画は朝霞襲撃前から既に決められていた出来事の様子。
だとすると、岡野は7話での朝霞襲撃のカラクリではなく葛子殺害のカラクリを見てしまったのか。

いずれにしろ、第7話で触れた朝霞襲撃自作自演説が信憑性を増したと言えそう。

『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第7話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年7月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)

とはいえ、まだまだ予断を許さない状況。
未だ西町恵の存在も捨てきれないが……1話の推理は息を吹き返すのか!?

『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)

他にも2話で述べた村雲犯人説の可能性は?
バルトーク『弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽』をモチーフにしたタイトルの意味とは?
楽器の見立てだとすると「清い音」こと「清音」にも意味はあるのか?

そして、シリーズ中での時系列も7話で判明。
作中の台詞によると、今鏡家の事件が1年前の出来事らしい。
つまり、本作『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』は『翼ある闇』から1年後の世界観であることが判明。
9話でも「木更津の同業者が不遇の死を遂げた」旨に触れられていました。
此処での同業者は「メルカトル鮎」を指すのでしょう。
これもまた何かを意味するのか……。

12話にも注目です!!

<ネタバレあらすじ>

・登場人物一覧
木更津:名探偵。香月との関係は……。
香月:今回も香月らしい活躍を……。

村雲:今回の依頼人。
朝霞:村雲の娘、福住とは恋人同士。福住殺害の有力容疑者とされている。
葛子:村雲の後妻で朝霞の継母。第2の被害者に……。
梅昭:村雲の弟。
磐人:村雲の長男。朝霞の兄。
珠代:村雲家の家政婦。

福住:第1の被害者、朝霞の恋人。普愛寮の寮生。
日置:福住の友人。普愛寮の寮生。
亜弓:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。
清音:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。

岡野:福住の手首を発見したコンビニ店員。第3の被害者に……。
西町恵:岡野の憧れの同僚、コンビニ店員。

〜〜〜前回までのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

先輩・西町恵とコンビニのバイトをしていた岡野は切断された手首を発見する。
バラバラ殺人であった。

被害者は大学生・福住。
容疑者はその恋人・朝霞。

この事件に挑むのは木更津と香月。
だが、事件は木更津の頭脳を以てしても膠着状態に陥ってしまう。
果たして、依頼人・村雲の娘である朝霞の無実を証明することが出来るか?

矢先、朝霞の継母である葛子までもが謎の死を遂げてしまう。
さらに当の朝霞が謎の襲撃を受けることに。
しかも、無関係と思われた岡野までも殺害されて……。

・前回のあらすじはこちら。
『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第10話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2015年7月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

岡野が殺害されたことは木更津にとって痛恨事であったらしい。
もっと早くに気付けていれば……と洩らす木更津。

岡野周辺を調べたところ、急に岡野に恋人が出来ていたことが分かる。
此処から木更津は「岡野が事件の犯人を知り、これを脅迫し恋人を手に入れた」と推測する。
だとすれば、犯人は女性の可能性が高い。

さらに木更津は岡野宅から傘が消えていることに注目する。
岡野が殺害された当日は雨が降っていた。
香月は傘を忘れた犯人が岡野宅から持ち去ったものと考える。

だが、木更津はコレを否定する。
それには理由があるらしい。
さらに木更津は「何故、朝霞襲撃後に岡野殺害が行われたのか?」を強調する。

事件関係者は朝霞襲撃により監視が付いていた。
いや、実際は監視に穴があったのだが、捜査陣ならぬ犯人にそれが分かる筈がない。
当然、犯人にとっては犯行の難易度が上がったこととなる。
岡野は口封じに殺害された。
だとすれば、朝霞よりも岡野を先に襲えばリスクを背負う必要は無かった筈なのだが……。
木更津はこれにもある理由を見出しているらしい。

後日、木更津は人形を用意し岡野宅である実験を行う。
ベランダのプランターを利用しホースの水を流すことで岡野を模した人形が死体発見時と同じ状態でその場に転がることに。
殺害当日、ホースの水の代わりに雨により同じことが起こったのだ。

つまり、岡野の死は遠隔殺人だったのである。
犯人はコレを隠す為に傘を持ち去り、現場に居たように偽装したのだろう。

木更津はこのことから「岡野殺害犯人は当日に鉄壁のアリバイを持つ人物」と指摘する。

だが、香月に思い当たる人物はいない。
何故なら、監視に穴があったことで事件関係者のアリバイは不確かになったからだ。

ところが、木更津ははっきりと首を横に振る。
朝霞襲撃により、1人だけ確実なアリバイを得た人物が居るのである。
そう、襲撃を受け入院した当の朝霞だ―――12話に続く。

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