ネタバレあります、注意!!
<6話あらすじ>
私立の女子中学校の校舎の管理作業員として働き始めた厄介(岡田将生)。今度こそ仕事が長く続けられるようにと慎重に行動していた厄介だったが、またしても事件に巻き込まれる。
ある日の放課後、厄介は用具室で生徒が意識を失って倒れているのを見つける。部屋にはガスボンベから噴き出すCO2ガスが充満していた。厄介は生徒を助け出そうとするが、なぜかドアが開けられなくなって部屋に閉じ込められてしまう。どんどん酸素が薄くなる中、厄介は様々な仕事で培った能力を駆使して警報機を鳴らし、二人は一命を取りとめる。
厄介が助けた生徒は、3年生の逆瀬坂雅歌(浅見姫香)。現場には遺書が残されていたため、雅歌の自殺未遂と思われた。
人助けをしたはずの厄介だったが、またしても不運に見舞われる。厄介が雅歌を殺そうとしたという噂が世間に広まり、厄介は犯人扱いされてしまう。厄介の無実を証明するには雅歌の証言が必要だったが、彼女は命に別状がないはずなのに、なぜか眠ったまま目覚めない。厄介は、今日子(新垣結衣)に事件の真相を明らかにしてほしいと依頼する。
今日子は、学校内での調査を開始。雅歌のクラスメイトによると、雅歌は名前もろくに憶えられておらず、他人との接触を避けていたことが分かる。
今日子は厄介とともに事件現場の用具室へ向かい、厄介に事件当時の話を聞く。厄介は記憶をたどるうち、現場近くでもう一人の少女の姿を見たことを思い出した。今日子は、第二の少女が雅歌を殺そうとした可能性を考える。
雅歌は自殺しようとしたのか、それとも第二の少女による殺人未遂なのか?
そして、雅歌が目覚めない理由とは? 今日子は、事件の裏に隠された少女の複雑な心理に迫る!
(公式HPより)
登場人物一覧:
掟上今日子:「最速探偵」にして「忘却探偵」の名を冠する少女。
隠館厄介:あらゆる事件に巻き込まれる男。
絆井法郎:今日子が所属する探偵斡旋所の所長。
逆瀬坂雅歌:隠館が助けた少女。
<あらすじ>
あらゆる事件に巻き込まれる男・隠館厄介は掟上今日子に恋をした。
掟上今日子はどんな事件でも1日で解決する「最速探偵」にして、完璧な守秘義務を誇る「忘却探偵」。
それもその筈、今日子は一度寝てしまうと記憶がリセットされてしまうのだ。
当然、隠館のことも一度寝てしまえば忘れてしまう。
果たして、この恋は報われるのか!?
一方、その体質から職を転々とせざるを得ない隠館。
先頃、勤めていた古書店を退職し、今度は名門女子中学校の管理作業員として働き始めた。
ある日の放課後のこと、此処最近になって連続で廊下を濡らす不届き者が出現。
これに不満を抱えつつ後始末をしていた隠館は用具室で意識を失い倒れていた女子生徒を発見する。
慌てて室内に飛び込んだところ、中にはボンベから噴出したガスが充満していた。
窓を開けようにも、窓は接着剤で固定。
入って来た扉から逃げようにも引き戸はドアノブが外され動かすことが出来ない。
まさに万事休す。
此処で隠館は以前に勤めていた出版社で覚えたサバイバル術を実践することに。
手近な懐中電灯などを利用し咄嗟に火種を起こすと火災報知機を起動させたのだ。
これにより、人が駆け付け少女も隠館も救出されたのだ。
隠館は意識を回復し、少女・逆瀬坂雅歌は何故か眠り続けていた。
そんな中、倒れていた少女が下敷きにしていた遺書らしき一文が人気バンドの歌詞だったことが判明。
当初はバンドに影響されての自殺未遂が考えられたが、本人が特にバンドに興味を示していなかったことから一転。
殺人未遂が疑われ、この容疑が隠館に向かってしまう。
さて、こうなれば隠館が頼るのは今日子しかいない。
こうして今日子が出馬することとなった。
今日子はモデル雑誌の関係者を装い学校に潜入。
情報を集めることには成功するが、その代償に少女たちの玩具にされてしまう。
如何な今日子と雖も奔放な若者の力には勝てなかったのだ。
弄ばれた今日子は傷心を抱えつつ、逆瀬坂雅歌が印象の薄い少女であったことを突き止めた。
いや、むしろ意図的に自身の存在を押し隠していたらしい。
どうやら、極端に他者に自己を知られることを怖れていたようだ。
これは図書室の司書教諭の証言からも裏付けられた。
彼によれば、逆瀬坂雅歌は特に絞ることなく雑多なジャンルの本を借りていたようだ。
これまた、自身の好みのジャンルを知られないようにした為だろう。
現場の用具室を訪れた隠館と今日子。
隠館は当日のことを思い返し、現場から逃げ出す第二の少女を思い出した。
これを聞いた今日子は自分たちを監視する影に気付いた。
その影の正体こそ、第二の少女である。
隠館を遠ざけるや第二の少女から事情を聞き出す今日子。
さらに、逆瀬坂雅歌が隠館と意外な繋がりを持っていたことを突き止めた。
此処に今日子は全てを見抜いたのだ。
隠館に真相を語り出す今日子。
それは「逆瀬坂雅歌が被害者ではなく加害者だった」ことだ。
しかも、本当の被害者こそ隠館だったのだ。
実は隠館と逆瀬坂雅歌は以前の勤務先の古書店で店員と客の関係だったのだ。
古書店の店主は巧妙に隠されていたかに見えた逆瀬坂雅歌の好みのジャンルをプロの業で見抜いていた。
其処で何となく隠館に「彼女はこの本がきっと好きだろうね」と語っていた。
これを耳に留めていた隠館は逆瀬坂雅歌が来店した際に、その本を「好きでしょ」と奨めた。
この出来事は逆瀬坂雅歌にとって「自分のすべてを見抜かれた」と思わせるに十分な出来事であった。
同時に顔から火が出るほどの羞恥を味わった。
それでも、古書店に足を運ばなければそれで済んだ話だったのだが……。
選りにも選って隠館の側から逆瀬坂雅歌に近付くこととなった。
もちろん、隠館にその気は一切ない。
そもそも、隠館は逆瀬坂雅歌があのお客であることすら覚えていなかった。
だが、逆瀬坂雅歌にそれが分かる筈が無い。
彼女は隠館を見るたびに、さらなる屈辱を味わうことに。
こうして、一方的に憎悪を募らせた逆瀬坂雅歌はやがてソレを殺意へと昇華させた。
其処で用具室に罠を張り、隠館を誘き寄せるよう廊下に水を撒いたのだ。
もちろん、一度では成功しない。
これを繰り返し、遂に成功に至ったのである。
逆瀬坂雅歌は自身に恥をかかせた隠館を道連れに自殺するつもりだったのだ。
ところが、隠館を殺し損ねたどころか、当の本人に命を救われた。
尚更、恥ずかしくてどうしようもない気持ちに陥っているのである。
だから、眠り続けているのだ。
第二の少女はこれを目撃し、隠館たちを気にかけていたのであった。
知らないこととは言え、逆瀬坂雅歌の心の中に土足で上がり込んでいたことを教えられた隠館。
だが、相手に良かれと思っての行動である。
神ならぬ人の身では避けようもない衝突であった。
むしろ、隠館が怒っても仕方がない動機である。
しかし、隠館はそれだけ逆瀬坂雅歌が傷付いていたことを知り、彼女を助けたいと決意する。
隠館は意識を回復したにも関わらず眠った演技を続ける逆瀬坂雅歌にそっと語りかける。
それは隠館の半生の物語、また彼の反省の物語でもある。
其処には体質上、苦難を強いられ続けて来た彼の歴史がある。
人生とは恥をかくもの、そして恥を怖れず生きて行かなければならないことを隠館は逃げることなく、怯えることなく赤裸々に語って聞かせる。
きっと、そのことが逆瀬坂雅歌にとってプラスになると信じて。
そして逆瀬坂雅歌もまた、そんな隠館の気持ちにそっと涙するのであった―――7話に続く。
<感想>
ドラマ原作は西尾維新先生『掟上今日子の備忘録』シリーズ(講談社刊)。
ちなみに『月刊少年マガジン』では浅見よう先生によりコミカライズされています。
そのドラマ版6話です。
今回は「被害者が加害者に転ずると同時に生ずる意外な動機」がポイントでしたね。
まさに「ホワイダニット」の妙でした。
「恥」とは適度に意識すれば人を活かす規律となるが、過度に意識すれば人を殺す凶器になる。
そして、思春期特有の自尊心は時に人を大胆にし、時に人を臆病にする。
これは人それぞれだが、その根底には共通した想いが流れている。
すなわち「今しかない時間」と「いずれ訪れる巣立ちの時への期待と恐怖」だ。
逆瀬坂雅歌は人一倍、羞恥心(自尊心と置き換えても良いだろう)が強かったのだろう。
だから「他者と関わり合うことで衝突し、みっともない姿を曝すこと」を恥じ「今しかない時間」を1人で費やし「いずれ訪れる巣立ちの時への期待と恐怖」を誰とも分かち合うことなく抱え続けた。
結果、恥を友人と分かち合うこともなかった。
恥をかくことに慣れていない逆瀬坂雅歌は恥をかくこと自体にさらなる恐怖心を抱くことに。
それはさらに逆瀬坂雅歌を追い詰め、彼女は周囲からの攻撃を怖れて余計に自身の殻に閉じ籠った。
そもそも、外界との接触が無ければ余計な摩擦も恥をかくリスクもないと考えたのだろう。
だが、それは同時に彼女の世界を小さくすると共に限界を定めてしまった。
世界が小さければ多くの意見を目にすることが出来ず視野が狭くなる。
限界を定めてしまえば諦めるのも早くなる。
だから、彼女はあっさりと自身と隠館を道連れに死を選ぶことが出来た。
視野が狭く、諦めも早ければ、それが如何に独善的な判断であるかを考慮する余裕も持つことは出来ない。
だが、隠館はそんな逆瀬坂雅歌を許し、彼女に彼なりに感じている生きることの本質を説いた。
生きることは恥をかくことだ、と。
生きていく中で恥をかく場面は多々ある、と。
でも、それでも人は生きて行く。
「羞恥心が強い」ということは裏を返せば「失敗を恐れる」つまり「完璧主義者」。
「完璧主義者」は目標が定まれば努力を惜しまない。
それこそ、隠館殺害を目論み何度となく罠を繰り返したように。
きっと、適度な恥を怖れず前向きになった逆瀬坂雅歌は強力な武器を手に強く生きていける筈です。
それこそ、隠館が望んだことなのだから。
……と、格好付けてみたが些か恥ずかしい。
とはいえ、これまた適度な羞恥なのではないでしょうか。
それにしても、隠館は今日子の観察者と化してますね。
今日子にとっての毎日は同じ一日を何度も繰り返しているのと同じような物。
つまり、『七回死んだ男』や「リピートアウターミー」などある種のループ物と同じ。
隠館は何度もアタックを繰り返し最適解を見出すことも出来るかも……と思いきや既に急接近してますね。
意図せず、今日子の本質に近付いていると言えそうか。
・『七回死んだ男』(西澤保彦著、講談社刊)ネタバレ批評(レビュー)
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次回にも期待!!
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【コミカライズ版】
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