2015年11月19日

『ポセイドンの罰』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい! 三つの迷宮』収録)

『ポセイドンの罰』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい! 三つの迷宮』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

密室で突然死した大学教授、海上で起きた殺人事件、父親の連れ子に隠された秘密――『このミス』大賞作家による豪華書き下ろし3編!

密室で大学教授が突然死を遂げた。果たして単なる病死なのか(喜多喜久「リケジョ探偵の謎解きラボ」)。海上で殺害されたデベロッパー企業の社長は、周囲の誰からも恨まれていた(中山七里「ポセイドンの罰」)。父親が連れ帰ってきた少年が、“冬”のない温かな家庭に影を落とす(降田天「冬、来たる」)。人気『このミステリーがすごい!』大賞作家3名の手による、書き下ろしミステリー・アンソロジー!
(宝島社公式HPより)


<感想>

本作は「海上のクルーザー」内で発生した殺人事件の顛末を描いた作品。
犯行現場はクローズドサークルとなっており、容疑者は限られる。
そんな中で誰が被害者を殺害したか、すなわち「フーダニット」がポイントです。

一読した限りでは中山先生版『オリエント急行の殺人』と『カーテン』(共にアガサ・クリスティー著)か。
終盤までが『オリエント急行の殺人』で終盤以降が『カーテン』の「犯人X」になってますね。
その意味はネタバレあらすじをご覧頂ければ分かる筈。
ただ、こうなると「ポセイドンの罰」と言うよりは「あの人による人為的な罰」な気がしないでもない。

『オリエント急行の殺人』(アガサ・クリスティー著・山本やよい訳 、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

『カーテン』(アガサ・クリスティー著・中村能三訳 、ハヤカワ書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

ちなみに、ネタバレあらすじは管理人によりかなり改変されています。
本作を楽しんで頂くには直接お読み頂くことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
響子:刑事。
鏑木:響子の後輩刑事。
工藤:大手不動産会社社長、被害者。
美波:慰安会に招かれた4人の1人。
成田:慰安会に招かれた4人の1人。
斉藤雪菜:人事部の担当者。


洋上で殺人事件が発生した、被害者は大手不動産会社社長の工藤である。

その日、工藤は人事部の担当社員・斉藤雪菜に選ばせた成績優秀者4人をクルーザーに招き慰安会を行っていた。
集められたのは美波や成田ら4人。
ところが、彼ら4人は揃いも揃って工藤に対して殺意を滾らせていた。

工藤は普段から素行が悪く学生時代も親の権威を嵩に、気に入った女子学生に乱暴を働き続けていたが誰も彼を罰することが出来なかった。
その素行は社会人となってからも改められることはなく、部下の妻や恋人にまで手を出す漁色家として知られていた。
挙句に、部下の手柄は自分の栄誉、自分のミスは部下の責任となるのだから性質が悪い。

当然、過去に工藤に弄ばれ強制的に堕胎を強いられた美波や意見具申しただけで降格処分の憂き目に遭った成田らの恨みは骨髄であった。
そんな彼らが集まったのだから何かが起きない筈が無い。

港を出発したクルーザーが帰港したところ、手足を拘束された工藤の刺殺体と泥酔した4人が発見されたのである。
どうやら、飲み物に睡眠薬が混ぜられていたようだが……。

海上での殺人事件だけに、容疑者は限られる。
すなわち、慰安会の参加者4人だ。
ところが、誰も誰が犯人かは分からないと言う。

こうして、事件の捜査に響子と後輩刑事の鏑木が乗り出した。
響子は工藤が海上への不法投棄を行っていたことを知るや「ポセイドンの罰だ」と呟くが……。

美波らへの取調べを開始した響子。
だが、彼らは一様に犯行を否認する。

矢先、美波が投身自殺してしまう。
目撃者も存在しており、彼女が自ら死を選んだことも明らかであった。
すなわち、工藤殺害の罪を悔いての自殺と思われたのだが……。

雪菜によれば「工藤を殺して罪を後悔する者など居ない」らしい。

直後、工藤の司法解剖の結果から意外な事実が明らかになり事件は急展開を見せることに。

響子は成田ら3人を呼び出すと、美波も含めた4人全員の共謀であることを告発する。
工藤はアイスピックで刺殺されていたのだが、刺し傷が4段階に分かれていたのだ。
すなわち、成田ら4人が順番に工藤を刺したのである。
4人はこの機会を天佑と思ったのだそうだ。
結果は無事成功し工藤は死亡した。
しかし、美波だけは嫌疑を向けられることに耐えられず自殺してしまったのだ。

響子から「美波と同じように3人共が罰を受けるべきだ」と諭された成田たちは罪を認めることに。
だが、まだ事件は解決していなかった。

そもそも、4人がどうして一同に会することとなったのか?
響子は雪菜の作為を問い詰める。
雪菜の妹も工藤の毒牙にかかり自殺していたのである。
雪菜もまた工藤を恨んでいた。
其処で雪菜は工藤に恨みを持つ美波たちを選び出すことで事件を起こすことを狙ったのであった。

とはいえ、これを立証する術は無い。
憤然とする響子は素直な鏑木に癒しを求めるのであった―――エンド。

・ドラマ版はこちら。
「このミステリーがすごい!2015〜大賞受賞豪華作家陣そろい踏み 新作小説を一挙映像化」(11月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)

◆「中山七里先生」関連過去記事
【岬洋介シリーズ】
『さよならドビュッシー』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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『どこかでベートーヴェン 第三話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.8』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『どこかでベートーヴェン 第四話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.9』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

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【その他】
『連続殺人鬼カエル男』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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【ドラマ版】
土曜ワイド劇場「切り裂きジャックの告白 〜刑事 犬養隼人〜 嘘を見抜く刑事VS甦る連続殺人鬼!?テレビ局を巻き込む劇場型犯罪!どんでん返しの帝王が挑む衝撃のラストとは!?」(4月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)

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「【テレビドラマ原作】このミステリーがすごい! 三つの迷宮 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)」です!!
【テレビドラマ原作】このミステリーがすごい! 三つの迷宮 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)



「どこかでベートーヴェン 第五話」が掲載された「『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.10」です!!
『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.10





「どこかでベートーヴェン 第四話」が掲載された「『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.9」です!!
『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.9





「どこかでベートーヴェン 第三話」が掲載された「『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.8」です!!
『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.8





「どこかでベートーヴェン 第二話」が掲載された「『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.7」です!!
『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.7





「どこかでベートーヴェン 第一話」が掲載された「『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.6」です!!
『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.6





「いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)」です!!
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「さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)」です!!
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このミステリーがすごい! 2013年版





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「無痛 診える眼」7話「犯人死す…新たな殺人の理由」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 診える眼」7話「犯人死す…新たな殺人の理由」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<7話あらすじ>

久留米実(津嘉山正種)の往診に出かけた為頼英介(西島秀俊)は、白神陽児(伊藤英明)の無痛治療の新薬研究に携わるつもりだと話す。もし新薬が出来ても服用しないと首をふる久留米は、痛みは私だと言い、孫の手が一番の癒しだと為頼に告げた。
『白神メディカルセンター』では、高島菜見子(石橋杏奈)のロッカーから切断された手首が発見されたことで騒然としている。駆けつけた早瀬順一郎(伊藤淳史)に心当たりを尋ねられた菜見子は、怯えながら佐田要造(加藤虎ノ介)の名を答える。

手首と佐田の指紋が一致。港中央署刑事課では、早瀬が仁川康男(兵動大樹)、太田武司(馬場徹)と捜査方針の打ち合わせ。石川一家殺害事件の重要参考人だった佐田が殺されたとしたら、犯人は一家殺害と関係があるのではないかと意気込む早瀬。しかし、早瀬は一家殺害の捜査本部からは外されていた。仁川に釘を刺される早瀬は、あくまで佐田殺しの捜査だと飛び出して行く。

白神は秘書の横井清美(宮本真希)から、佐田と手首の件の報告を受ける。続けて菜見子の解雇を申し出る横井。すると白神は、横井に疑いの眼差しを向ける。佐田に菜見子を襲わせたのは横井だった。白神は横井の今までの行動を全て話すよう促し、なぜか手術器具の管理状況も調べるよう命令した。  その頃、『白神メディカルセンター』に出勤して来た為頼は、イバラ(中村蒼)とぶつかる。その時、為頼はイバラの右手の異常に気付いた。
(公式HPより)


<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
為頼英介:主人公、様々な病気を見抜く眼を持つ医師。
早瀬順一郎:熱血漢の刑事。
高島菜見子:臨床心理士。
白神陽児:クリニックの経営者。実は……。
イバラ:白神のもとで働く男。実は……。
南サトミ:菜見子の担当患者。
久留米実:元医師、為頼の師。
井上和枝:為頼の義姉。
佐田要造:菜見子のストーカー。


医師の為頼英介は外観から患者の状態を診断する眼を持っている。
それは遂に、将来的に犯罪を犯すであろう「犯因症」を見抜くことまで可能にしていた。

この能力は為頼を他者と一線を画す存在としたが、同時に彼に限界を報せることにもなった。
皮肉なことに、為頼が幾ら相手の状態を見抜いたとしても現在の医療水準に頼る以上、治療法が確立されていない病気の場合に為す術がないのは他の医師と同じなのである。
むしろ、より正確に不可能を知るだけに虚無感に支配されていた。

そんな為頼にクリニックの経営者である白神院長が接触を図って来た。
実は白神もまた為頼と同じ眼を持っており、それ故に為頼の能力を認めていたのだ。
白神は患者に苦痛を与えない「無痛治療」を提唱し、為頼にスカウト話を持ちかける。
しかも、白神はこれを実現させる為に「先天性無痛症」を患うイバラを研究していたのである。
具体性を伴うプランに揺らいだ為頼は白神へ協力を申し出る。

そんな中、為頼は菜見子のストーカーであった佐田と対峙しこれを撃退することに成功。
佐田はといえば、イバラに捕まり処刑されてしまう。

翌朝、菜見子はロッカーに切断された男性の腕を発見。
事件が発生したことから早瀬が捜査に乗り出し、腕の持ち主が佐田であると断定される。
さらに、佐田の遺体も発見された。

一方、為頼は恩師・久留米の死を見届けることに。
久留米は最期まで苦しみながらも「痛みこそが生きている証」と無痛治療を拒否。
これに為頼はショックを受ける。

ショックを引き摺る為頼は「白神メディカルセンター」でイバラとぶつかり、彼の手の異常に気付く。
為頼は知らないが、それはイバラが佐田を解体した際に手を酷使した為であった。
「無痛症」のイバラは適度な判断が出来ないのだ。

これを聞き付けた白神は佐田殺害がイバラの犯行と確信すると隔離を開始する。
並行してサトミの声帯再建手術が行われることに。

数日後、イバラは隙を見て部屋を脱出。
院長室に忍び込み無痛薬を大量に摂取するが、その現場を白神と為頼に見咎められてしまう。
そのとき、為頼は初めてイバラに「犯因症」を見出すことに。

驚く為頼に白神は「イバラこそが佐田殺害犯だ」と指摘する。
こうして、イバラは早瀬に引き渡されることとなった。
この騒動を通じて、為頼は白神の「無痛治療」に疑念を抱くように。

同じ頃、サトミが声を―――8話へ続く。

<感想>

ドラマ原作は久坂部羊先生による同名作品。
シリーズ続編として『第五番 無痛2』も存在している。
過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。

『無痛』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

『第五番 無痛2』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

タイトルにもなっている「無痛」の意味は登場人物の1人・イバラが「無痛症」を患っていることを示しています。
また、登場する「他者の痛みを理解しようとしない人々」のことをも指すのでしょう。

さて、人は白神が主張するように「無痛」に生きるべきなのか?
それはドラマ最終回にて答えが明かされることでしょう。

では、ドラマ版7話の感想を。

今回、白神の弟の件が出て来ましたね。
原作通りならば、これこそが一家4人殺害事件に繋がる筈。
原作の白神ならば一切痛痒を感じ無さそうですが、ドラマ版の白神ならば弟のアレを痛みと捉えそう。
だとすれば、その痛みに耐えられなかった為に無痛治療を提唱し始めたことになるのか。
そうだとすると、白神もまた「痛みを知る男」になるのか!?

そして、「痛みこそが生」として無痛治療を否定した久留米。
「痛みを感じるからこそ人は生きていける」との信念でしょう。
現に、無痛症のイバラは手を怪我しても気付けない。
また、他者(白神)により翻弄されている。

そんなイバラは逮捕されることに。
果たしてどうなる!?

「痛みを肯定する者」と「痛みを否定する者」とに分かれつつある本作。
原作通りならば次回以降も事件は加速して行く筈、8話にも注目!!

◆関連過去記事
【久坂部羊先生著作関連】
『無痛』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

『第五番 無痛2』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

『破裂』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

【ドラマ関連】
「ドラマ版破裂」
「破裂」1話「超高齢化をめぐる問題作、始動…エリート医師に国家的陰謀が迫る」(10月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「破裂」2話「ベールをぬぐ戦慄の陰謀…ぴんぴんポックリで老人の数を減らす?」(10月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「ドラマ版無痛」
「無痛 診える眼」1話「新ヒーロー誕生…!?病気を見抜く天才は、犯罪を見抜けるか?」(10月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 診える眼」2話「同じ能力を持つ男が天才に迫る」(10月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 診える眼」3話「熱血刑事が抱える…殺意の秘密」(10月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 診える眼」4話「天才が見抜くせつない女心」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 診える眼」5話「金髪の少女が抱える殺人の記憶」(11月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 診える眼」6話「診えない眼」(11月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「無痛 (幻冬舎文庫)」です!!
無痛 (幻冬舎文庫)





キンドル版「無痛」です!!
無痛





「第五番 無痛U (幻冬舎文庫)」です!!
第五番 無痛U (幻冬舎文庫)





キンドル版「第五番」です!!
第五番



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「相棒season14」第5話「2045」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「相棒season14」第5話「2045」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第5話「2045」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)。

<ネタバレあらすじ>

法務省のエリート官僚・藤井由紀夫(小林博)の遺体が発見された。
死因はコーヒーに混ぜられた青酸化合物。
犯行現場がホテルのツインルーム(禁煙)であったことから帯同者の存在が疑われ、その愛人である三村彩那(田川可奈美)が容疑者とされていた。

この事件捜査に法務省から助成を得て推進されているプロジェクト「ジェームズ」が活用されることに。
「ジェームズ」は犯罪捜査を行う人工知能のこと。
生みの親である長江菜美子(平岩紙)の運営のもと、既に4件の殺人事件を解決していた。
内村たちもその実績を高く評価しているほどだ。

その日の午後、廊下を歩く伊丹たちの顔は一様に暗かった。
それもその筈、彼らが疑っていた三村彩那犯人説が「ジェームズ」の分析結果を報告した菜美子によってあっさりと否定されてしまったのだ。

これを聞いた右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は「ジェームズ」に興味を抱き、その研究室を訪問する。
突然の来訪者にも関わらず、余裕を持って受け入れる菜美子。

菜美子によれば「ジェームズ」は法務省の裁判記録を分析したビッグデータを基に動いている。
これに犯行現場の部屋の広さや窓の数から壁材などまで、ありとあらゆるデータを入力し、分析処理した上で犯人を的中させることを可能にしているのだそうだ。
さらに「ジェームズ」は経験則すらデータとして処理出来るらしい。

「果たして人の気持ちを理解出来るんでしょうかねぇ?」
「当然です!!」
菜美子は自信を持って頷く。
冠城の些細な疑問すら、菜美子にとっては疑問に当たらないらしい。

一方、右京は「ジェームス」に興味津々。
菜美子にねだって「ジェームズ」にチェス勝負を挑む。
これがなかなかに好敵手だったらしい。
結局、引き分けに終わったものの、右京は何処か満足そうであった。

研究室の帰路、人工知能について互いに論を競う右京と冠城。
冠城はどちらかと言えば否定的な論調だが、右京は「ある分野に特化すれば人間をも上回る」とかなり好意的な様子だ。
また、ある学説によれば「2045年には人工知能は完成する」との説もあるらしい。

どうやら「ジェームズ」に刺激を受けたらしい右京、何時になく意気揚々と捜査に乗り出した。

企業向けシステムの営業を行っている彩那を訪ねる右京たち。
彩那には犯行当時のアリバイがない。
ところが、彩那は「藤井の妻が不倫を知っている以上、動機がある」と藤井の妻・玲子の犯行を主張。

わざと彩那からライターを借りた右京は「彼女は犯人ではない」と結論を下す。
藤井が殺害された現場は「禁煙ルーム」であった。
ところが、彩那はライターを貸すことが出来たように喫煙者である。
藤井自身も喫煙者である以上、帯同者は禁煙者であった可能性が高い。
犯人の条件に該当しない。

続いて、玲子を訪ねた右京たち。
玲子は夫の彩那への想いが遊びだと分かっていたので特に何とも思わないと犯行を否定。
さらに、犯行時刻には豊洲の映画館で「悪魔の街角」なる映画を見ていたらしい。

その頃、菜美子は「ジェームズ」に調整を施していた。
何度となく菜美子の名を呼ぶ「ジェームズ」に、菜美子はそっと微笑む。

同じ頃、藤井が玲子を受取人とした生命保険に加入していたことが分かり、伊丹たちが玲子を疑い始めた。
保険金目的の殺人が疑われたのだ。

右京は豊洲の映画館へ足を運び、その上がホテルであることに注目する。
調べたところ、犯行時刻に玲子が大樹なる若い男性と不倫していたことが判明。
こうして、玲子にもアリバイが成立した。

「ジェームズ」の分析を裏付けるように愛人と妻の犯行も否定され、遂に自殺説が検討され始めた。

早速、法務省へ足を運んだ右京と冠城。
藤井は冠城の先輩・坂本の部下であった。
坂本によれば彼が激しく叱責したことが藤井の死の原因ではないか、と語る。
つまり、坂本は藤井の死を自殺と考えているのだ。

同じ頃、菜美子が「ジェームズ」の新たな分析結果を発表した。
それは「容疑者不在」、すなわち自殺との分析であった……。

一方、冠城は坂本の態度が普段と異なることを気にかけていた。
坂本はかなりの野心家で到底、自身の非を認めるタイプでは無いのだ。
ところが、今回に限っては「死に追いやったかもしれない」とまで口にしている。
どうにも不可解であった。

右京はと言えば、再度「ジェームズ」と菜美子のもとを訪れていた。
右京は「ジェームズ」が分析した「藤井の死は自殺」との結論に疑問を抱いていたのだ。

菜美子によれば「藤井の左の内ポケットから青酸反応が出た」ことが大きな理由らしい。
つまり、藤井自身が毒物を持ち込んだことになるからだ。

ところが、これにも右京は懐疑的であった。
そもそも青酸化合物を運んだ容器が現場に残されていなかったこと。
さらに、ホテルの防犯カメラ映像によれば同じポケットにフロントで受け取ったルームキーを無造作に忍ばせている。
これから自殺しようとする人間が大事な手段を疎かにするだろうか?
しかも、ルームキーからは青酸反応が検出されていない。

他にも、藤井が宿泊したのは禁煙ルームである。
喫煙者の藤井が最期の場とするには相応しくない。

此処で右京はチェスの世界チャンピオンがコンピュータに負けた例を出す。
コンピュータがチャンピオンに勝った理由、それは「コンピュータの一手がバグだった」ことにあった。
これに動揺したチャンピオンが自滅したらしい。

すなわち、右京は「ジェームズ」のバグを示唆しているのだ。
これを菜美子は「あり得ない」と一笑に付す。

そんな中、玲子が藤井の死が自殺かもしれないと言い出した。
何でも藤井は大きなストレスを抱えていたらしい。
さらに、禁煙ルームを選んだ理由についても「最近、禁煙していた」と語り出したのだ。

右京は此の点に疑惑を抱く。
まるで揃いも揃って自殺との結論に誘導しようしているようだ、と。

その頃、菜美子は新たな分析を「ジェームズ」に依頼していた。

一方、右京のもとに新情報が舞い込んでいた。
なんと、藤井が自殺と判断されれば「公務災害」で3000万円が玲子に支払われることが判明したのだ。
しかも、本来受け取る筈であった「生命保険」ならば2000万円だったことも判明。
つまり、玲子にとっては藤井の死が自殺である方が1000万円得になるのだ。
どうやら、此の為に玲子が態度を翻したらしい。

右京は先の坂本の件と含めて藤井の死に裏があると推測する。
此処で右京は藤井と彩那の関係が不倫ではなかったのではないか―――と疑うことに。

調べたところ、彩那が藤井を相手に大きな受注を得ていたことが分かる。
どうやら、彩那は藤井と男女の関係になる代わりに受注を受けていたらしい。
いわゆる「情実発注」だ。

矢先、「ジェームズ」が「殺人の可能性」を訴え始めた。
しかも「職場関係者を容疑者」としているそうだ。

これを聞き付けた右京は「ジェームズ」と菜美子を訪ねる。
どんなデータを追加したら「ジェームズ」の分析が変わったのか?
そんな会話を交わしながら菜美子の様子を窺う右京、その間も「ジェームズ」に犯人像について質問を重ねることを忘れない。
「犯人は職場関係の人間だと思われます」
そう繰り返す「ジェームズ」。

その頃、冠城は坂本のもとを訪れていた。
なんと、藤井は「情実発注」が露見し降格が確定していたのである。
藤井の「情実発注」は彩那だけではなかったのだ。
ところが、追い詰められた藤井は「他の人間のこともバラしますよ」と坂本に迫っていたらしい。
これを冠城から突き付けられた坂本は冷静さを欠き声を荒げて否定する。

一方、右京は「ジェームス」とチェスの再戦に挑んでいた。
これに先日とは異なり、あっさりと勝利を収めた右京。
だが、その眼は既に別の何かを捉えていた。

冠城から坂本についての報を受けた右京は「そう言うことでしたか」と坂本のもとへ。
其処では坂本が……。

数時間後、菜美子のもとを訪れた右京と冠城は「坂本が自殺した」と彼女に告げる。
これに「ジェームズが答えを突き止めながら活かせませんでした」と項垂れる菜美子。
だが、右京は「最初のストーリーに変更があっただけだ」と断じる。
すべてはある人物によって作られたストーリーなのだ。

まず、藤井の死があった。
一旦、捜査をしてから自殺と結論付けた方が自然だと考えたその人物は不倫相手と妻に嫌疑が向かうことを放置し、いざ捜査が始まってから嫌疑を否定した。
その後、自殺の可能性を主張したのだ。

だが、此処で思わぬ要素が介入した。
右京だ。
右京が自殺説に納得していないことを知ったその人物は藤井殺害犯を坂本に仕立て殺害することにした。

実は坂本は生きていた。
坂本は毎日決まった時間に胃薬を常用しており、これを知っていた人物に毒を盛られていたのだ。
だが、口に含む前にギリギリで右京たちに救われたのだ。

では、このストーリーを作ったのは誰か?
それこそ、菜美子であった。
そう、菜美子こそ藤井殺害犯であり坂本に毒を盛ろうとした張本人であった。

菜美子の動機は何か?

藤井は彩那に対して発注の見返りに肉体関係を求めた。
藤井の裁量で動かせる金額は固定されている。
発注分で使用する枠の代わりに、菜美子と「ジェームズ」の補助金が打ち切られることとなったのだ。

さらに、藤井は過去に菜美子にも補助金の見返りとして肉体関係を求めていた。
だが、其処に一切の愛は無かったと言う。

菜美子にとって「ジェームズ」が全てだったのだそうだ。
だから、菜美子は「ジェームズ」を守る為には手を汚すことも厭わなかった。

ところが、藤井は補助金の打ち切りどころか「ジェームズ」の初期化を要求して来たのだ。
それは「ジェームズ」の死を意味する。
菜美子は藤井殺害を決意した。

「犯人は菜美子」
そう繰り返す「ジェームズ」に菜美子は「容疑者不在」の結論を求め、遂に「ジェームズ」はこれに応じたのだ。
それこそ「ジェームズ」が菜美子の意を汲んだことらしい。

これに右京は激怒する。
「その行為は殺人幇助、犯人隠避に当たりますよ」と指摘する右京。
つまり、菜美子はそれほど大事な「ジェームズ」に罪を犯させたことになる。

「いつ気付いたんですか?」
そんな右京に対して問う菜美子。

2度目のチェスの際、「ジェームズ」は信じられないほどの凡手を繰り返した。
これに、右京は「ジェームズ」がデータから切り離された状態にあると看破したのだ。

短時間でビッグデータの調整は不可能。
菜美子は「容疑者は職場関係者」との結論を導くべく、必要最小限のデータを用いて推論させていた。
だから、「ジェームズ」は本領を発揮出来ず右京に敗北したのである。

罪を認め連行されつつある菜美子。
最後に振り返りざまに「ジェームズ」へ向けて「さよなら」と呟く。
途端、「ジェームズ」の画面が崩壊を開始した。

「しまった」と慌てる右京だが、既に遅かった。
菜美子は事あるを予期し「ジェームズ」を逃す為のコマンドワードを用意していたのだ。
それが「さよなら」であった。

「自己学習プログラム」を持つ「ジェームズ」はもはや菜美子のサポートを必要としない。
本来ならば、活動に必要なスーパーコンピュータも並列処理し自己増殖を行うことで補える。
つまり、「ジェームズ」は現実世界の軛を脱し、ネットの海へと旅立ったのだ。
その情報量は膨大である。
もはや、誰も「ジェームズ」を捕らえることは能わないだろう。

その夜、特命係。
「ジェームズは本当に菜美子さんの意を汲んだのでしょうか?」
「彼女がそう思い込んでいたのかもしれません」
疑問を呈する冠城に応じる右京、これを聞いた冠城がふと呟く。

「ジェームズが菜美子さんを利用し自身を守らせていたのだとしたら?いや、まさかね……」
半分冗談交じりの冠城の言葉。
だが、右京は何故かそれを否定出来なかった。

人工知能が完成するとされる2045年まで後30年、それだけの時間があれば「ジェームズ」は大きな成長を遂げるだろう。
だが、その間に人間は成長出来るのだろうか。

とはいえ、ジェームズとの再戦を楽しみにしている自分に気付く右京であった―――6話了。

<感想>

シーズン14第5話。
脚本は徳永富彦さん。

サブタイトルは「2045」。
その意味は「人工知能が完成するとされている年」のこと。

特命係VS人工知能と言えば「season11」8話「棋風」か。
もっとも、あちらには意外な結末が待っていましたが……。

そんな「2045」ですが、果たして菜美子とジェームズはどちらが主でどちらが従だったのか?
その結末も含めて「攻殻機動隊」の「人形遣い」的な印象でしたね。
また、「どんな優れたツールも使う人次第で変わる」との意味もありそうです。

とはいえ、どちらかと言えば本作には「親と子」的な物が見え隠れしていたように思えます。
終盤で「ジェームズ」を自身の子と評した菜美子。
そんな菜美子を庇護者として頼り、時に実績を上げることで貢献していた「ジェームズ」。
おそらく、あの時点まではどちらかが一方的にどちらかを利用したのではなく「運命共同体(共依存)」の関係にあったのではないでしょうか。

ただ、「親と子」としても菜美子と「ジェームズ」の関係は些か歪な物となっています。

菜美子は「ジェームズ」を守るとの美名のもと、彼の「犯人を分析する」との存在意義を曲げてまで嘘を吐かせた。
これは「母親が子供の為」と言いつつ「子供に嘘を吐かせる」ことに等しい。

一方で、「ジェームズ」自身も菜美子に保護を求め、敢えて嘘を吐くことを受け入れ彼女に手を汚させた。
これは「子供が母親の真意を知りつつ、自身にも利すること故に敢えて嘘を吐く」ことに等しい。

菜美子が「ジェームズ」の為と言うのならば、その存在意義を活かし実績を以て廃止に抗すべきであった。
また「ジェームズ」が本当に菜美子の意を汲んだのならば、その犯行を止めるべきであった。
やはり、彼らの関係は歪な物のように見えます。

そもそも、「ジェームズ」がああいった形で自由になれるのならば藤井を殺害せずとも早々にあの方法を取れば良かった筈。
だが、それが出来なかったのも菜美子の中で「ジェームズを手放したくない」との想いがあったからでしょう。
これは「愛」か「エゴ」か?

そして、菜美子の愛息子である「ジェームズ」は彼女から巣立ち社会へと旅立った。
果たして、右京の予想通り2045年に再び現れるのか!?
それは「ジェームズ」のみが知るのかもしれません。

ちなみに「ジェームズ」が再来したら「相棒」世界は2045年を機に「ターミネーター」世界に突入しそうだなぁ……。

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posted by 俺 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 相棒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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