日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第6話「はつ恋」(11月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
夜の倉庫街にて、男性の転落死体が発見された
腹部に刺創が残されていたことから他殺と思われた。
被害者はジャンクアーティスト・山本正人(内浦純一)。
「ジャンクアーティスト」とは廃品などで芸術品を作るアーティストのこと。
遺体発見現場の近くには山本のアトリエがあったことから、其処で腹を刺され突き落とされたようだ。
この捜査に右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)が乗り出した。
早速、現場である山本のアトリエを訪れた2人。
「これ、なんですか?」
「冠城君、取扱いに気を付けてください」
其処に置かれた芸術品の数々にたじろぐ冠城に、右京はこれらが数千万円になることを教える。
さらに、右京はアトリエの床に多数のガラス片を発見する。
どうやら、何かが割られたようだ。
これを目にした右京は不審を抱く。
山本の作風は金属を用いるがガラス片は用いないのだ。
右京は冠城にガラス片を回収するように依頼する。
一方、伊丹たちは山本の恋人・星野玲奈(笛木優子)に聴取を行っていた。
玲奈によれば、山本の死亡時は勤務先の坂上税理事務所で残業していたらしい。
伊丹はそう語る玲奈の身体に傷跡を発見、彼女が山本から暴力を奮われていたことを突き止める。
数時間後、右京は山本のアトリエに残されたガラス片から作品を復元しようと試みていた。
冠城と角田も巻き込まれ一大騒動に。
とはいえ、なかなか捗々しくはいかないようだ。
困った右京に、冠城は「山本のアートディレクター・白石由紀(中原果南)のもとを訪ねてはどうか」と提案する。
冠城の言を認めた右京は由紀のもとへ。
玲奈と山本が初恋同士で結ばれたと語る由紀。
しかし、残念ながら由紀もガラス片の作品について心当たりはないようだ。
ちなみに、由紀と山本の出会いは3年前、彼が作った作品に由紀が惹かれたのが始まりであった。
其処から彼を口説いてようやく2年前に了承を得て、1年前からディレクターとして本格始動した矢先の出来事であった。
由紀によれば山本には天才ならではのムラがあるらしく、小学校当時から彫刻分野で優れた作品を創造し文部科学大臣賞まで受賞していたが何故か辞めてしまっていた。
それからも作品作りには勤しんでいたようだが発表については渋っていたのだそうだ。
「お〜〜〜い、脚立ないか、脚立!!」
山本が死亡しても個展の準備は続いているらしく、由紀の周囲は慌ただしい。
山本殺害当日も由紀は知り合いのもとへ作品を借り受けに行ったとのアリバイがあった。
右京は会場に居並ぶ作品を目を細めて見詰める。
中でも、芥川龍之介『蜘蛛の糸』をモチーフにした作品に興味を示す。
その右隣にはシーツに包まれた三角の作品が立っていた。
続いて、玲奈を訪ねた右京たち。
玲奈によれば山本の暴力は一月ほど前から始まったのだそうだ。
これに山本と玲奈の馴れ初めについて尋ねる右京。
山本は佐賀、玲奈は東京出身で、玲奈が21歳の時に東京で知り合ったらしい。
さらに、最近の山本が「知らない人に尾行され不気味だ」と述べていたとの証言を得ることに。
一方、伊丹たちは玲奈を容疑者としてロックオン。
執拗にアリバイ崩しに挑んでいた。
だが、玲奈のアリバイを証言する坂上は「一緒に仕事をしていた」の一点張りである。
そんな坂上の手には包帯が巻かれていて……。
翌朝、右京は未だに例の作品の復元に挑んでいた。
遅々として進まない右京を揶揄する冠城。
これに右京は意趣返しとばかりに「初恋は何時でしたか?」と問う。
急な問いに戸惑う冠城。
一矢報いた右京は問いの主旨について語り出す。
玲奈と山本は初恋同士だそうだが、玲奈は21歳で山本と出会ったと述べていた。
だとすれば、玲奈の初恋は21歳になってしまう……あり得ないことではないが些か不自然だ。
玲奈の言葉を疑った右京は彼女の身許を調べ、玲奈が施設出身であったことを突き止める。
当時の担当者を訪ねたところ、玲奈の初恋について明かされることに。
何でも近所に泊まりに来ていた「彫刻の子」と呼ばれる少年がソレらしい。
玲奈は彼から「青い鳥」を貰ったと嬉しそうに語っていたと言う。
どうやら、その「彫刻の子」こそ山本だろう。
ただ、担当者によれば2人の交流は一週間ほどと短いものだったようだ。
また、玲奈は父の暴力を受けて施設に引き取られていたそうだ。
「施設出身者であることを隠す為に嘘を吐いたのではないか」と語る担当者。
モチーフが「青い鳥」だと知った右京は遂に壊れたガラス細工の復元に成功した。
出来上がった品は、なるほど確かに「青い鳥」である。
しかし、問題は「何故、これが犯行現場であるアトリエに持ち込まれていたのか」であった。
本来、それは玲奈が山本から貰った品の筈。
つまり、玲奈が持ち込んだか、第三者が持ち込んだかとなるのだが……。
再び、個展会場に由紀を訪ねた右京たち。
先日の『蜘蛛の糸』、その右隣に丸みを帯びたシーツが並ぶ中、由紀は「1ヶ月ほど前に玲奈が別の男と親しくしている現場を目撃した」と語る。
その男こそ、坂上であった。
この話は山本にもしたのだそうだ。
玲奈が山本から暴力を奮われ始めたのは一ヶ月ほど前。
時期的にも合致する。
おそらく、山本は坂上の存在を知り暴力を奮い始めたのだろう。
これを知った伊丹たちにより、坂上が連行された。
無実を主張する坂上だが、右京はその手に巻かれた包帯について触れる。
これを指摘された坂上は事実を語り出した。
坂上は玲奈に想いを寄せている。
だが、玲奈本人から「私は幸せになってはいけない」と本心を明かされ断られたのだそうだ。
ところが、山本の死亡当日。
ナイフを持った山本が坂上を襲撃した、手の怪我はこの際のものだ。
抵抗した坂上は玲奈の本心を山本に教えた。
山本はそれを聞くなり、大きな衝撃を受けた様子で去って行ったと言う。
山本作「青い鳥」の鑑定結果が上がって来た。
すると、20年以上前のジュースの空き瓶に混じり翼の付け根部分にAB型の男性の血痕が見受けられたと言う。
山本はA型、坂上もO型で該当しない。
玲奈はAB型だが女性である。
これを聞いた右京は「なるほど」と何やら頷くや席を立つ。
向かったのは玲奈が育った施設だ。
24年前の1991年、玲奈が山本と出会った頃に玲奈の父が施設を訪れたことがあったらしい。
担当者によれば、その日の玲奈の様子は不可思議だったと言う。
何でも人気が少なく危険とされていた裏山の山小屋から玲奈が出て来たところを目撃したのだそうだ。
裏山の山小屋へ向かった右京と冠城。
右京が廃屋となった其処を調べると、床下から白骨化した遺体を発見する。
さらに遺体の傍には彫刻刀も埋められていた。
右京と冠城は玲奈のもとへ。
白骨死体が玲奈の父ではないかと問い詰める2人。
これに玲奈は白骨死体が父であると認めた上で殺害したと告白する。
玲奈によれば、訪ねて来た父は玲奈に無理心中を迫ったのだそうだ。
だが、右京と冠城は玲奈の父を殺害したのは山本だったと語る。
遺体の傍に彫刻刀が埋められていたからだ。
山本は玲奈を守るべく彼女の父を殺害したのだろう。
彫刻刀が埋められていたのは玲奈に容疑が向かないようにする為だ。
山本は玲奈を愛し、1つの殺人が2人の絆となったのだ。
だが、山本は当時と変わった。
山本が彫刻を辞めたのは過去にそれで玲奈の父を殺害してしまったからだ。
同時に玲奈もまた変わった。
坂上と出会い、彼を愛してしまったのだ。
とはいえ、玲奈は山本殺害については否定。
また、玲奈の「青い鳥」を持ち出したのも彼女では無いらしい。
その午後、右京たちの姿は個展会場にあった。
その前には由紀が肩を落として座り込んでいた。
児童施設の担当者が「笹本調査事務所」なる調査員が玲奈について調べていたことを思い出したのだ。
これに基づき笹本を調べた右京たち。
すると、笹本は由紀が雇い主であることを明かした。
由紀は気に入ったアーティストの過去を調べ上げると弱味を握り、脅迫し従えていたのだ。
山本が玲奈に「知らない人に尾行されている」と語ったのは笹本のことであった。
しかし、山本の過去からは特に弱味は上がらない。
其処で由紀は玲奈にターゲットを変えた。
そして、玲奈と坂上の関係について知ったのだ。
さらに、右京たちは由紀が山本を刺したと指摘する。
由紀のアリバイは知り合いに作品を借り受けに行ったこと。
ところが、借りたとされる作品に疑問があったのだ。
個展会場の写真を手に由紀に迫る右京。
右京たちが最初に由紀に会った日に、其処には三角に盛り上がったシーツが置かれていた。
ところが、先日からシーツは丸みを帯びている。
中身が入替っているのだ。
そして、右京があの日に耳にした「お〜〜〜い、脚立ないか、脚立!!」。
そう、由紀は脚立を作品の代わりとして偽装していたのだ。
これについて由紀の知人も偽証を認めているらしい。
由紀はあの晩のことについて語り出した。
山本は笹本に調べられていることに気付き、由紀のやり方を卑怯だと批判し全てを暴露すると訴えた。
これに由紀は「あんたなんてこの世界で生きていけなくしてやる」と応じた。
直後、山本が由紀に襲い掛かり、抵抗した由紀が山本を刺してしまったのだ。
由紀は逃げるようにその場を去ったと言う。
つまり、山本を殺害したのは由紀ではない。
翌日、右京と冠城は三度玲奈を訪ねた。
玲奈の「青い鳥」を持ち出したのは山本であった。
そして、山本は玲奈に暴力を奮い始めた。
すべては坂上の存在を脅威に思ったからだ。
やがて、山本は坂上を襲撃するが彼から玲奈の本心を聞かされてしまった。
「罪を犯した者」と「犯させた者」であることを痛いほど思い知らされた山本はある行動を決意する。
山本が由紀を追い込んだのは意図的な行動であった。
玲奈が幸せになるには罪を思い起こさせる自身が障害になると考えた山本は、自身を消すべく由紀に刺させたのだ。
その上で、アトリエから転落死を遂げた。
すなわち自殺である。
山本は玲奈を愛するが故に破滅を選んだのだ。
その夜、「花の里」にて。
「初恋、忘れていました」と語る幸子に「初恋は実らない方が幸せなのかも」と応じる冠城。
その意味は「幼いときの恋ゆえに心変わりしない方が信じられない」からだそうだ。
これに「与えられるより与える方が幸せである」と呟く右京であった―――6話了。
<感想>
シーズン14第6話。
脚本は谷口純一郎さん。
サブタイトルは「はつ恋」。
幼き日の淡い「初恋」が「犯罪」により強い絆とされてしまった2人の物語。
視聴していて東野圭吾先生『白夜行』(集英社刊)を思い浮かべられた方も多いのではないでしょうか。
・『白夜行』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
2人を結ぶのは幼き日の犯罪行為。
父の虐待に苦しむ少女、これを助ける少年。
男性が献身的に愛を捧げる一方で、女性が新しい恋に生きる。
最後には男性が死を選ぶ―――など本作と『白夜行』との間にはモチーフとしての共通点も多いです。
言わば、本作は相棒版『白夜行』か。
また、右京の言葉「与えられるより与える方が幸せである」の意味は「愛されるより愛したい」でしょう。
すなわち、山本のスタンスを示しているものか。
それほど山本の恋は献身的でした。
山本が彫刻を辞めたのも、金属作品のみに拘ったのも、当初世に出るのを渋っていたのも全て玲奈の為。
山本が注目を浴びれば玲奈の父親についても触れられる恐れがあるから。
それほど山本は自身を犠牲にして玲奈を愛していた。
だが、同時にそれだけの犠牲を以て玲奈を縛ったとも言える。
何しろ、山本が玲奈と距離を置けばそれを危惧する必要はないのだから。
そして、山本は坂上から玲奈が「私は幸せになってはいけない」と言っていたことを聞かされこれに気付いた。
そのときの山本の衝撃は如何ほどか。
しかも同時に、玲奈が「山本と居ても幸せではない」と思っていることをも突き付けられてしまった。
玲奈の傍に居たいが、傍に居れば玲奈に「犯罪」を思い起こさせる―――まさにジレンマ。
玲奈を幸せにするには自身の存在が障害となる、ならば……と山本が取った手段は「自身の排除」でした。
かといって、姿を消すだけでは玲奈に無言のプレッシャーを与えかねない。
そもそも、自身がそれに耐えられない。
其処で山本は死を選ぶ、まさに究極の自己犠牲。
だが、これもまた裏を返せば玲奈に忘れられない為とも言える。
ただ1つ言えることは「それほど山本は玲奈を愛した」と言うこと―――切ないです。
そして本作では、由紀のアリバイ崩しに映像特有のトリックが用いられていたりもしました。
些かロジックが弱くはありましたがコレはコレでアリでしょう。
ちなみに、中原果南さん2度目の「相棒」出演。
前回は「相棒season9」第11話「死に過ぎた男」での真紀子役でした。
・「相棒season9」第11話「死に過ぎた男」(1月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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