【登場人物一覧】
刑事:村井を追う刑事。
村井:刑事が張り込んでいる被疑者。
ユウナ:刑事が間借りする部屋の主人。
<あらすじ>
刑事が被疑者・村井を張り込んでいた。
今、刑事はユウナ宅に間借りして村井の家を見張っている。
村井が戻って来るとの情報があったからだ。
ところが、刑事は此の張り込みに何処か集中出来ない。
村井宅を監視する自分が誰かに監視される視線を感じていたからだ。
その視線の主こそユウナであった。
ユウナは何故か執拗に刑事を監視し続けた。
惚れられたのか、それとも恨みか?
理由は分からないが、刑事が村井宅を監視するように、刑事へのユウナの監視は続く。
これに恐怖を覚えた刑事はユウナに警戒心を抱くのだが……。
だが、何処かで刑事はユウナを甘く見ていた。
ある夜、差し出された飲み物を口にした途端、深く寝入ってしまう。
どうやら、ユウナに一服盛られたらしい。
意識を取り戻した刑事は自身の手荷物が漁られていることに気付いた。
其処には村井についての資料も混ざっていたのだ。
刑事は尚更、ユウナを警戒することに。
一方、ユウナはと言えば自室で「ドラマ」を視聴しながら興奮していた。
何やら考え込む様子のユウナだが……。
それから数日後、ユウナの自室から悲鳴が轟いた。
慌ててユウナのもとへ駆け付けた刑事は驚く。
なんと村井がユウナを殺そうとしていたのだ。
刑事はユウナを守ることに成功するが、村井に刺されて死亡してしまう。
そんな刑事に対し、ニッコリと微笑みかけるユウナ。
手には何故かカメラが握られていて……。
数時間後、ユウナは別の刑事に取調を受けていた。
村井が逮捕され、ユウナにメールで誘き出されていたことが分かったからだ。
そう、ユウナは刑事が眠った隙に村井のメールアドレスを手に入れていたのだ。
「何で、こんなことをした!!」
仲間の死に憤る刑事はユウナを厳しく問い詰める。
そんなユウナの視線の先には一冊の手帳が開かれた状態で置かれていた。
其処には「見たい物ランキング」が並んでいる。
5位「張り込み」、2位「殉職」と記されたソレ。
共に今回を通じて達成している。
実はユウナは「刑事ドラマ」の熱烈なファン、ドラマの名シーンを実際に目にしてみたいと考えていたのだ。
そして今、ユウナは猛烈に感動している。
何しろ、遂に1位を達成したのだから。
その手帳の1位には「取調」との文字が―――エンド。
<感想>
フジテレビ系「世にも奇妙な物語」放送25周年を記念した2号連続特別編の第2弾。
第1弾は「美女缶」のコミカライズ版でした。
・「美女缶」(志水アキ画、講談社刊「週刊少年マガジン」掲載)ネタバレ批評(レビュー)
そんな本作ですが、まさにマニアの業を描いた作品。
ユウナは「刑事ドラマ」の名シーンを自身で目にするべく、刑事を犠牲にしました。
最初から「殉職」とそれに続き「取調」を受けることまで視野に入れて村井を誘き寄せたのでしょう。
目的を達したユウナの笑顔は狂気の域にまで達している。
そんな本作はユウナの欲望を「殉職」で留まらず、「取調」にまで繋げた点に捻りがありましたね。
あれにより、ユウナの業の深さが浮き彫りになりました。
また、刑事のユウナへの不信感が募るエピソードの裏に村井のメールアドレス取得が隠されている点も良し。
ただ、惜しむらくはユウナが最初から何かありそうな女性として描かれていたこと。
これが絶世の美女で、監視される刑事も「悪い気はしない」とさえ思うほどだったら、よりギャップが引き立ったと思う。
例えば、刑事がユウナに対して心を寄せて、離して、拒絶する流れを描くとか。
これを「起承転結」で表現すると。
起:張り込みの間借り先の住人が絶世の美女でデレデレする刑事、もしかするとこれを機会に交際出来たらとさえ夢想する。
承:そんな彼女に監視され、少し気味悪い反面で何処か嬉しい。
転:ところが、一服盛られたことで「あいつは普通じゃない」と一転。
結:刑事が村井と対峙するもユウナに邪魔され刺される、これを見たユウナが手帳を手に狂喜乱舞。取調についても発言し事情が判明。刑事が「やっぱり普通じゃなかった」と呟きつつ殉職。
こんな流れ。
また、本作はその性質上からドラマ向きなシナリオでしたね。
どちらかと言えば、ドラマ化した方が映えたかも。
そして、「刑事ドラマ」と「マニアの業」という点に「スキップ!山田くん」を思い出しました。
「スキップ!山田くん」は「時間スキップ」と「2時間サスペンスファン」の組み合わせを巧みに描いた作品。
かなり面白いので興味のある方はチェックすべし!!
・「スキップ!山田くん」(大場つぐみ作、ろびこ画、集英社刊『週刊ヤングジャンプ』掲載)ネタバレ批評(レビュー)
◆「世にも奇妙な物語」関連過去記事
・「美女缶」ネタバレ批評(レビュー)
・「美女缶」(志水アキ画、講談社刊「週刊少年マガジン」掲載)ネタバレ批評(レビュー)
【ドラマ化原作】
・『殺し屋ですのよ』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『来世不動産』(升野英知(バカリズム)著、小学館刊『東と西 2』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『殺意取扱説明書』(東野圭吾著、集英社刊『毒笑小説』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『燔祭(鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまでより)』&『クロスファイア(上・下巻)』(宮部みゆき著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『憑かれる(「崩れる 結婚にまつわる八つの風景」収録)』(貫井徳郎著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『時計じかけの天使(「原色の想像力 創元SF短編賞アンソロジー」収録)』(永山驢馬著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ドッキリチューブ』(小林泰三著、東京創元社刊『完全・犯罪』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・「人間電子レンジ」(竹本友二作、小学館刊「8 はち 1巻」収録)ネタバレ批評(レビュー)
・『ニートな彼とキュートな彼女(「原色の想像力〈2〉 創元SF短編賞アンソロジー」収録)』(わかつきひかる著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)