2016年02月03日

『いまさら翼といわれても 後篇』(米澤穂信著、角川書店刊『小説野性時代 2016年2月号 vol.147』掲載)

『いまさら翼といわれても 後篇』(米澤穂信著、角川書店刊『小説野性時代 2016年2月号 vol.147』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<感想>

2016年1月時点での「古典部シリーズ」最新作『いまさら翼といわれても』の後篇です。

これにより未収録の「古典部シリーズ」短編は『連峰は晴れているか』『鏡には映らない』『長い休日』と本作『いまさら翼といわれても』の4作となりました。
どうやら「古典部シリーズ」最新作の単行本化も近付いている様子。

『鏡には映らない』(米澤穂信著、角川書店刊『野性時代』2012年8月号 vol.105掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『長い休日』(米澤穂信著、角川書店刊『小説野性時代 2013年11月号 vol.120』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

さて、いずれ来る朗報を待ちつつ、早速読んでみたワケです。
すると、一読して驚かされることに!!

まずは、奉太郎の成長ぶり。
周囲に興味を払わなかった奉太郎が『ふたりの距離の概算』など経て此処まで成長したとは……。

一方、えるには思わぬ選択が待ち受けていました。
『いまさら翼といわれても』のタイトルは彼女を示しています。
自由を知らなかった彼女が「いまさら翼(を与える)といわれても」戸惑うのは道理です。
自由を与えられたえるはどうなる!?

奉太郎を変えたえるが今度は変革を求められている。
このとき、奉太郎はえるに何が出来るのか!?

物凄く気になるところで終わった『いまさら翼といわれても』。
早く続きをプリーズ!!

そんな本作を一文字で表現するならば、まさに「急転直下」の「転」!!
必要最小限に多くを語らずも、多くが伝わる作品に仕上がっていました。
ファンは読め、とりあえず読め!!

なお、あらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
興味をお持ちの方は本作それ自体を読まれることをオススメ致します。

<ネタバレあらすじ>

合唱コンクールを控えてえるが姿を消してしまった。
里志によれば「自由」を意味する歌詞の内容に悩んでいたらしい。

周囲の状況から事情を察した奉太郎は横手の協力を引き出し、蔵に隠れていたえるのもとへ。
えるが姿を消した理由は、やはり歌詞にあった。

これまで「千反田家を継ぐ者」として養育されて来たえる。
それは負担でもあったが、彼女にとっての誇りでもあった。
ところが、唐突に後を継ぐ必要が無いと告げられたのだ。

えるは自由を手にした。
だが、その自由をどう謳歌して良いのやら分からない。
それどころか、えるに残されたのは寧ろ喪失感であった。
生真面目なえるはその状況で「自由」を謳う歌詞に反発し、これを拒否したのであった。

えるの気持ちを理解出来ると語る奉太郎。
える自身にどうするかを任せるのであった―――エンド。

◆関連過去記事
「インシテミル」(文藝春秋社)ネタバレ書評(レビュー)

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『ほたるいかの思い出』(米澤穂信著、新潮社刊『小説新潮 2014年7月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『リカーシブル』(米澤穂信著、新潮社刊『小説新潮』連載)ネタバレ書評(レビュー)まとめ

『リカーシブル リブート』(『Story Seller 2』収録、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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【古典部シリーズ】
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「クドリャフカの順番」(角川書店)ネタバレ書評(レビュー)

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「ふたりの距離の概算」(角川書店)ネタバレ書評(レビュー)

『鏡には映らない』(米澤穂信著、角川書店刊『野性時代』2012年8月号 vol.105掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『長い休日』(米澤穂信著、角川書店刊『小説野性時代 2013年11月号 vol.120』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【小市民シリーズ】
「夏期限定トロピカルパフェ事件」(東京創元社)ネタバレ書評(レビュー)

【S&Rシリーズ】
『犬はどこだ』(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【太刀洗シリーズ】
『さよなら妖精』(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『王とサーカス』(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『真実の10メートル手前』(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【シモンズシリーズ】
『913』(『小説すばる 2012年01月号』掲載、米澤穂信著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『ロックオンロッカー』(米澤穂信著、集英社刊『小説すばる 2013年8月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『金曜に彼は何をしたのか』(米澤穂信著、集英社刊『小説すばる 2014年11月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【甦り課シリーズ】
オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)

『黒い網』(米澤穂信著、文藝春秋社刊『オール読物 2013年11月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
探偵Xからの挑戦状!「怪盗Xからの挑戦状」(米澤穂信著)本放送(5月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)

古典部シリーズ『いまさら翼といわれても 後篇』が掲載された「小説 野性時代 第147号」です!!
小説 野性時代 第147号



古典部シリーズ『いまさら翼といわれても 前篇』が掲載された「小説 野性時代 第146号」です!!
小説 野性時代 第146号



単行本版「真実の10メートル手前」です!!
真実の10メートル手前



キンドル版「真実の10メートル手前 (太刀洗万智シリーズ)」です!!
真実の10メートル手前 (太刀洗万智シリーズ)



古典部シリーズ『長い休日』が掲載された「小説 野性時代 第120号」です!!
小説 野性時代 第120号





古典部シリーズ『連峰は晴れているか』が掲載された「野性時代 第56号 62331-57 KADOKAWA文芸MOOK (KADOKAWA文芸MOOK 57)」です!!
野性時代 第56号 62331-57 KADOKAWA文芸MOOK (KADOKAWA文芸MOOK 57)





古典部シリーズ『鏡には映らない』が掲載された「小説 野性時代 第105号 KADOKAWA文芸MOOK 62332‐08 (KADOKAWA文芸MOOK 107)」です!!
小説 野性時代 第105号 KADOKAWA文芸MOOK 62332‐08 (KADOKAWA文芸MOOK 107)





◆米澤穂信先生の作品はこちら。


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『火の粉』(雫井脩介著、幻冬舎刊)

『火の粉』(雫井脩介著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

元裁判官・梶間勲の隣家に、かつて無罪判決を下した男・武内が引っ越してきた。溢れんばかりの善意で、梶間家の人々の心を掴む武内に隠された本性とは? 怪作『虚貌』を凌ぐサスペンス巨篇。
(公式HPより)


<感想>

「人は我が身に火の粉が降りかかったときにどうすべきか」
本作は元裁判官である梶間が彼が無罪にした被疑者・武内と相対するサイコサスペンスです。

既にお分かりのことと思いますが、武内は無実の人ではありませんでした。
すなわち、梶間は自身の手で狂気を野に放ってしまった。
そして、その狂気に追われることに。

同時に本作では「人が人を裁くことの是非」についても触れています。
まずは梶間が武内に行った裁き。
そして今度は梶間が受けることとなった裁き。
立場を変えたことで梶間はその本質の一端を掴みます。
それはおそらく「殺意の有無や動機などで刑が左右されるが、その人間の心情はその人間自身にしか分からない。にも関わらず、それを他者が斟酌して良いのか」と言った問題提起にも繋がることでしょう。

ネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
興味のある方は本作それ自体をご覧頂くべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
梶間勲:元裁判官
梶間俊郎:勲の息子
梶間雪見:俊郎の妻
武内真伍:梶間が無罪にした被疑者

梶間勲は元裁判官。
今は妻や息子である俊郎、雪見夫婦と共に暮らしている。

そんなある日、かつて無罪判決を下した武内真伍が隣家に引っ越して来た。
自身の判決に揺るぎない自信を抱いていた梶間であったが、武内の挙動を目にするうちにそれが危うくなって行く。
武内は善良な仮面で梶間家へと近付いたものの、内に凶暴性を秘めていたのだ。

これに逸早く気付いた雪見は武内を警戒。
だが、俊郎は武内を信頼し切っており雪見の忠告に耳を貸そうとしない。

そんな中、武内の転居先で不審な失踪が相次いでいることが明らかに。
それでも武内を信じている俊郎は彼に誘われるに応じてその別荘へ。

一方、雪見の言葉に真実を見出した梶間は無罪とした判決が誤りであったことを認める。
しかも、武内は今も罪を重ねているのだ。

俊郎を救うべく梶間と雪見は別荘へ。
雪見が警察と合流する中、一足先に梶間は別荘内へ。
すると、其処では俊郎が武内に滅多打ちにされていた。
武内は何度となく梶間が制止しても手を止めようとしない。

手に灰皿を握り締め武内の背後に立つ梶間。
だが、過剰防衛を怖れて躊躇することに。

その間にも俊郎は打ち据えられ続けて虫の息だ。
武内はと言えば熱心に一撃、一撃を加えている。
これに梶間がキレた。

「死ね〜〜〜!!」
梶間は手にした灰皿を勢いよく武内の頭部に振り下ろす。
一回では止まらない、それは警察が飛び込んで来るまで続いた。

武内は梶間の手により死亡した。

こうして、梶間は武内殺害の罪で裁かれることとなった。
殺意の有無が争点となったが、梶間が「死ね」と叫んだことや何度も灰皿を打ち付けたことから殺意が認定された。
一方で、武内のこれまでの犯行も明らかになり、梶間が法律家であったことからも大幅に減刑が為された。

しかし、梶間は知っている。
あのとき、自身に殺意が無かったことを。
梶間は最後まで罪に手を染めることを怖れ躊躇していたのだ。
あの言葉はそれを踏み切らせる為の合図に過ぎなかった。
其処には殺意は存在していなかったのだ。

ところが、殺意が認定されてしまった。
あの高台に居ては此処は見えないのだ……梶間はそれを痛感した。

梶間の罪は殺人にしては軽い1年程度となった。
だが、俊郎は一命を取り留めたものの一生続く麻痺に苦しんでいる―――エンド。

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キンドル版「火の粉」です!!
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