2016年03月23日

夏樹静子先生、死去……

夏樹静子先生が2016年3月19日にお亡くなりになっていたことが分かりました、享年77歳。

夏樹静子先生と言えば『第三の女』や『Wの悲劇』など数々の名作を世に送り出し、その映画化やドラマ化によりミステリの普及を推進、さらには多くの社会問題を作品中で取り上げることで問題提起を行われていました。

特に「2時間サスペンスファン」にとっては「検事・霞夕子シリーズ」や「弁護士・朝吹里矢子シリーズ」でご存知の方も多い筈。
また『Wの悲劇』は映画化、スペシャルドラマ化、連続ドラマ化を果たしただけでなく『MURDER AT MT.FUJI』のタイトルで海外でも知られているほどの作品。

月曜ゴールデン夏樹静子原作「Wの悲劇」(1月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

著作以外にも「グリーン碁石」の開発や心因性による病気の治療についても提言されるなど活躍は枚挙に暇がありません。

夏樹静子先生、読売オンラインにて囲碁について語られる!!

2007年には「日本ミステリー文学大賞」も受賞されており、今後も更なる活躍が期待されていた中での訃報となりました。

また、奇しくもそのちょうど一ヶ月前となる2月19日には『薔薇の名前』の著者で知られるウンベルト・エーコ氏もお亡くなりになられています。
ご冥福をお祈り致します。

◆夏樹静子先生関連過去記事
【書籍】
「見えない貌」(夏樹静子著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「てのひらのメモ」(夏樹静子著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「天使が消えていく」(夏樹静子著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「第三の女」(夏樹静子著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『死なれては困る』(夏樹静子著、徳間書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

『光る崖』(夏樹静子著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【ドラマ】
【検事・霞夕子シリーズ】
金曜プレステージ 夏樹静子サスペンス・検事・霞夕子「首吊り死体が歩いた!悲劇の始まりは1年前の交通事故…歯科医の死体!残された親指の指紋の謎が解けた時…事件の真相が明らかになる(森を歩く死体)」(2月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「3週連続・罪と女とミステリー第2夜 夏樹静子サスペンス・検事霞夕子〜無関係な死〜猟銃に撃たれた老人・痴漢に間違えられた男…2つの事故に疑惑が生じた時女たちの運命が変わる…!」(9月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「検事 霞夕子3 年一回の訪問者〜ピアノの音が聞こえる日は殺人が起きる!?元女弁護士が容疑者になった理由・衝撃の過去を持つ女」(6月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「夏樹静子サスペンス 検事 霞夕子4 誤認逮捕〜もう失敗できない!1年前濡れ衣で人生を狂わされた男の周りで再び起こる怪事件…!かつてミスをした刑事はどう挑むか…?」(6月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「夏樹静子サスペンス 検事 霞夕子5 幻の罪 夫の死をイメージすることは罪なのか?夫が本当に死んだ時、死がもたらす利害と愛憎が浮かび上がる…!」(12月13日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「夏樹静子サスペンス 検事 霞夕子6 不能犯 同じ日の真夜中に複数の無関係な人間が同一人物を刺殺!?こんな偶然あるわけない…!法律を悪用する強敵の意外な正体」(5月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)

赤と黒のゲキジョー「夏樹静子サスペンス 検事霞夕子7 死人に口あり 運び出された遺体が口を開き、男の名前を言って息絶えた 犯人の名?あるいは…死者の遺したメッセージに込められた執念」(10月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【イソベン・里村タマミの事件簿シリーズ】
月曜ゴールデン 夏樹静子サスペンス「見えない貌〜イソ弁里村タマミの事件簿〜ダムに美しき水死体!出会い系美人妻の孤独と禁断愛…真相を追う母を襲う新たな殺人…真実のカギは親子愛」(6月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

月曜ゴールデン「夏樹静子サスペンス 霧氷〜イソベン・里村タマミの事件簿〜我が子を殺しました 育児疲れの母が落ちたワナ!霧に消えた更なる殺人!嫉妬・愛憎…家族の秘密とは?」(10月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【弁護士・朝吹里矢子シリーズ(フジテレビ版)】
金曜プレステージ「夏樹静子サスペンス弁護士・朝吹里矢子〜古都・おさない証言にゆらぐ老舗〜能登和倉温泉・目撃者は5才児金沢−東京繋ぐ犯行のシナリオ」(12月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【弁護士・朝吹里矢子シリーズ(テレビ東京版)】
水曜ミステリー9「夏樹静子サスペンス 逆転弁護士ヤブハラ 証言拒否 資産家セレブ一族の連続殺害事件!美しき内縁の妻の2つの顔…黒い保険金6000万円と封印された謎の遺書」(2月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「夏樹静子サスペンス 逆転弁護士ヤブハラ2 京都嵐山・17年前の謎 無罪判決は誤審…!?酷似した殺人で再逮捕に 弁護士生命の危機!血染めの手袋が鍵に…完全アリバイの盲点(京都・十七年前の真実)」(10月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【その他】
月曜ゴールデン夏樹静子原作「Wの悲劇」(1月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

NHKドラマスペシャル てのひらのメモ「あなたは本当にわが子を放置したの?裁判員に選ばれた一人の主婦がたどり着く真実」(10月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ワイド劇場「夏樹静子作家40年記念 天使が消えていく〜小さな命を守れ!欲望の街を走る女性記者!死者からの手紙!驚愕の結末とは!?」(10月30日放送)ネタバレなし感想

土曜ワイド劇場「女刑事・左近山響子 90便緊急待避せよ 復讐殺人フライト!!ハイジャック未遂の罠隣席は、連続殺人犯!?立ち聞きされた密会」(5月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「夏樹静子・作家40年記念 第三の女 運命の出会いは交換殺人の幕開けフランスで愛しあったあの女は一体誰なのか禁断の恋はエリート准教授を転落させていく…」(12月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「夏樹静子サスペンス 女請負人〜仕掛けられた女の罠〜女便利屋に舞い込んだ殺人依頼!?狂わされた犯罪計画…不審死の男と暗躍するストーカーの正体は?なりすまされた容疑者 真犯人との騙し合い!哀しき女の罪を暴け!」(9月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「夏樹静子サスペンス “無敵の法律事務所”弁護士橘明日香 動機証拠も十分な依頼人の無罪を勝ち取れるか!?赤い帽子の謎…脅迫状と指輪が暴く悲しき復讐!(弁護の鉄人)」(6月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【その他情報】
夏樹静子先生インタビュー記事が「asahi.com」に掲載!!

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ラベル:夏樹静子 3月19日
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「実は私は」第152話「血を吸おう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「実は私は」第152話「血を吸おう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧は本記事下部に移動しました。

<あらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜

「アナザル」こと「絶対に秘密を守れない男」黒峰朝陽は憧れのヒロイン・白神葉子の秘密を知ってしまった。
その秘密とは「白神葉子がハーフの吸血鬼である」こと。
朝陽は葉子の為に、この秘密を守らねばならない―――。
取り巻く人々を相手に、朝陽は秘密を守り抜くことが出来るのか?

矢先、実は宇宙人であった委員長・渚、狼男で肉食系女子な獅穂、悪魔っ娘の茜、未来人の凛、幼馴染のみかん、天使の華恋も加わって……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今日の朝陽は一味違っていた。
今日の朝陽には決意が漲っていた。
今日の朝陽はヤル男であった。

それもその筈、朝陽は葉子と同じ部屋で2人きりの勉強会を行っていたからである。

葉子をちらりちらりと横目にしつつドギマギする朝陽。
一方、葉子もまた同じ状態であった。

いや、葉子の場合は朝陽とは違う。
そう、葉子は吸血衝動に悩まされていたのだ。
無造作に曝け出された朝陽の首筋に沸き上がる衝動が抑え切れない葉子。

もはや、朝陽とは恋人同士である。
葉子が素直に頼み込めば朝陽も応じる筈であったが……。
「吸血はいやらしいこと」と考えている葉子はその一歩が踏み出せない。
こうして、何とか朝陽から切り出してくれないかと遠回しに伝えようと奮闘が始まった。

まずは「のどが渇いた」と訴え「赤いものが飲みたい」と繰り返した。
しかし、相手は朝陽である。
「トマトジュース飲む?」と返されてしまった。

机を叩いて悔しがる葉子。
そんな葉子の視界に驚くべき光景が飛び込んで来た。
なんと、朝陽の首筋に蚊が張り付いていたのだ。
しかも、無造作に朝陽の血を吸っていた。
その姿は葉子にとって羨ましいとしか言えないものであった。

あの野郎〜〜〜!!
憤った葉子だが、ふと思いついた。
蚊の真似をすれば朝陽も気付くのではないか!?

ボールペンを口に咥え手をパタパタと仰ぐ葉子。

突然、奇行に走った葉子に朝陽は絶句する。

そんな朝陽の様子を見て、諦めたように葉子は「蚊の真似をしていた」と教えることに。

「蚊の真似……あっ!!」

これにようやく朝陽は事態を察した。
すなわち、葉子が吸血衝動に苛まれていることに。

急に頬を赤らめてしまった朝陽だが、葉子へそっと首筋を差し出す。
こうして、葉子は思う存分衝動を満たすのであった。

さて、事を終えて……。

「それにしても蚊が多いような……」

周囲を見回す朝陽と葉子。
確かに普段に比べると数が多いようだ。
妙だなぁとまじまじ見つめたところ、中に見覚えのある角付きの蚊が。
そう、茜だ!!

「茜ちゃん!!」
事の一部始終を覗き見されたことを知った葉子は激怒するのであった―――153話に続く。

充実の「実は私は」が読めるのは「週刊少年チャンピオン」だけ。
本誌で確認せよ!!

<感想>

「週刊少年チャンピオン」にて「さくらDISCORD」を連載されていた増田英二先生の新作。
「さくらDISCORD」は未読の管理人ですが、1話を読んで注目している作品です。
コミックス1巻に続き2巻、3巻、4巻、5巻、6巻、7巻、8巻、9巻、10巻、11巻、12巻、13巻、14巻、15巻も重版出来とのことで目出度い。さらに16巻も発売。
そして、本作かなり面白い!!

2015年7月にはアニメ化も果たしており、シーズン2製作の報が待たれます。

【第EXTRA話】アニメ版「実は私は」スタッフさんとキャストさんの一部を明らかにされよう!

また、本作が遂に舞台化とのこと。
こちらも注目です!!

増田英二先生「実は私は」が舞台化とのこと!!

その152話。
サブタイは「血を吸おう!」。

何とも甘酸っぱいエピソードでしたね。
イチャラブな朝陽と葉子、蚊に化けた「お邪魔虫」の茜。
とはいえ、茜の行動はデバガメでもありつつ老婆心も含んでいるのかも。
そんな日常の一幕でした。

うむ、今回も充実した回ですな。
多くは語るまい、とりあえず読め!!

そう言えば、上でもお伝えした通りコミックス15巻も発売。
表紙は1巻の葉子、2巻の渚、3巻の獅穂、4巻の茜、5巻のフクちゃんとみかん、6巻の凛、7巻の明里さんに続き、8巻が銀華恋、9巻が渚とみかんのコンビ、10巻が1周回って葉子、11巻は獅穂と凛コンビ、12巻は緑苑坂弓と桐子の夫婦コンビ、13巻は桃地結香、14巻は水奈川咲と葉子に!!
そして15巻は獅穂たち三人娘に!!ああ、嶋よ……。
こうなると16巻は「明里とさくら」か「明里、茜、華恋」かなぁ。
と思いきや16巻表紙は「ウェディングドレス姿の明里」に、一瞬誰だか戸惑うほどの変身ぶりを見せる表紙となっていますね。
どうやら、17巻は「みかんと岡」か「みかん単独」になりそうか。

ちなみに、上記のあらすじは本作の魅力を伝えられるよう改変を加えてまとめていますが、その面白さを伝えきれていません。
やっぱり、あの絵とコマ割りなどのテンポあっての本作。
是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を読んで欲しい。

もう1度繰り返しましょう。
本作に興味を持たれた方には、是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を捜して読んで欲しい。
最近の「週刊少年チャンピオン」は本作など本当に粒揃いでクオリティが高い作品が多い。
注目の雑誌の1つと言えるでしょう。

◆関連過去記事
「実は私は」第1話から第150話まで(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)まとめ

「実は私は」第151話「焼き芋を作ろう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

登場人物一覧:
黒峰朝陽:主人公、通称「アナザル」。
白神葉子:朝陽の意中の人物。ある秘密が……。
紫々戸獅狼:葉子の幼馴染。彼もまたある秘密を……。
紫々戸獅穂:葉子の幼馴染。彼女もまたある秘密を……。

藍澤渚:クラス委員長。彼女にも秘密が……。
藍澤涼:渚の兄、意外な形で登場することに……。
紅本茜:紅本の親族らしい。彼女にも秘密が……。
紅本明里:教師。彼女にも秘密が……。
黄龍院凛:33話より登場した謎の少女。彼女にも秘密が!?
黄龍丸:凛が駆るドラゴン。52話にて意外な正体が明らかに。

朱美みかん:朝陽の幼馴染。新聞部所属。通称「外道クイーン(オレンジ)」。
岡田:朝陽の友人の1人。通称・岡。眼鏡が特徴。割と友人想いの様子。146話にてフルネームが「岡田奏」と判明。
嶋田:朝陽の友人の1人。通称・嶋。軽い。124話にてフルネームが「嶋田結太」と判明。
桜田:朝陽の友人の1人。通称・サクラ。渋い。
フクちゃん:「福の神見習い」を名乗る眼鏡。
フクの介:フクちゃんの先輩。やはり眼鏡。
フク太郎:フクちゃんとフクの介の先輩。やはり眼鏡。
フク蔵:フクちゃんとフクの介とフク太郎の先輩。やはり眼鏡。
手崎:文字通り茜の手先な料理教室のシェフ。

朝陽の父:朝陽の家族。22話に初登場。
朝陽の母:朝陽の家族。22話に初登場。
黒峰鳴:朝陽の妹。22話、28話、48話に登場。48話にて名前と顔が判明。92話で高校に進学。
白神源二郎:吸血鬼。額に十字傷を抱く巨人。39話にて名前が判明。
白神桐子:葉子の母で人間。和服の美女。38話にて名前が判明。
銀華恋:茜に続く第2のツノツキ……の筈だったが。58話から登場。

緑苑坂弓:朝陽たちの副担任、実は源二郎。92話から登場。
桃地結香:忍者少女、92話(実際は105話)から登場。ある秘密が……。
黄龍院閃:鳴、結香のクラスメートの男子。瓶底眼鏡に腰の日本刀がトレードマーク。132話で苗字が判明。
水奈川咲:結香、閃、鳴のクラスメート。109話から登場。ある秘密が……。
箱入り娘:114話終盤に登場した謎の人物!?

稲葉:葉子のクラスメイト。
松本:葉子のクラスメイト。
佐々木:葉子のクラスメイト。彼氏と別れたばかり。

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『一年半待て』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)

『一年半待て』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

推理小説の第1集。殺人犯を張込み中の刑事の眼に映った平凡な主婦の秘められた過去と、刑事の主婦に対する思いやりを描いて、著者の推理小説の出発点と目される「張込み」。判決が確定した者に対しては、後に不利な事実が出ても裁判のやり直しはしない“一事不再理”という刑法の条文にヒントを得た「一年半待て」。ほかに「声」「鬼畜」「カルネアデスの舟板」など、全8編を収録する。
(新潮社公式HPより)


<感想>

短編集『張込み』に収録された一編。
収録作はいずれも珠玉の名作ですが、中でも本作は一際の輝きを放つ傑作。
手に汗握る一篇です。
ラストのサプライズも素晴らしい。
展開の妙も含めて、まさに色褪せない作品と呼べるでしょう。

さと子は「一年半」により無実を得た。
だが、同じ「一年半」により動機にまでなったモノを失ってしまったワケです。
この諧謔的な結末。

さと子の唯一の計算違いは「相手もまた人間である」ことを忘れていたことでしょう。
さと子が計算し行動したように、相手もまた考え行動する。
あの状況に陥れば、さと子の身を案じていろいろと調べることは想像に難くなかった筈。
だが、さと子はこれを考慮しなかった。
結果として、さと子は笑うことになったのか、泣くことになったのか!?
この辺りが読者として興味が尽きません。

夫・要吉を殺したさと子。
そんなさと子を救った支持者・たき子の前に現れた岡島の正体とは!?
是非、本作を読んでサプライズを体験して欲しい。

ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
須村さと子:夫・要吉殺害で逮捕された女性。
須村要吉:被害者。
高森たき子:婦人評論家、特別弁護人に名乗り出る。
脇田静代:さと子の友人。
岡島久男:たき子の前に現れた男。


須村さと子が夫・要吉殺害の罪で逮捕された。
さと子は取調で経緯について語り出した。

10年前、さと子は職場で要吉と出会い結婚した。
その後、子宝にも恵まれ平穏な日々が続いていた。
要吉が仕事をクビになった際も、代わりにさと子が仕事に出ることで生活を支えた。

さと子は要吉の分まで稼ぐ為に保険のセールスレディになった。
歩合給だったこともあって当初こそ収入が安定しなかったが、年若く弁も立ったさと子はコツを掴むと瞬く間にトップセールスを叩き上げることとなった。

だが、これが仇となった。
要吉はさと子に生活を依存し始めたのである。
やがてエスカレートすると昼日向から子供を放り出して酒を飲むようになった。
それでも要吉を愛するさと子は小遣いを与え、夫の自由を許した。

しかし、さと子の収入に影が差すようになった。
他社が新たに参入した結果、競争が激化し契約が伸び悩み始めたのである。
此処でさと子は思い切った手に出る。

敢えて遠方に足を運ぶことにしたのである。
しかも、ターゲットを絞った。
当時、ダム工事に従事していた労働者に注目したのである。
とはいえ、ただの労働者ではない。
安定して掛け金を支払ってくれる相手でなければ駄目だ。
其処でさと子は監督者や技師などに声をかけた。
彼らは会社で保険に加入しているが、もしもの危険を常に不安視していた。
さと子に声をかけられれば一も二もなく加入を約束したものだ。
こうして、さと子はまたもトップに立った。

一方、要吉は更にさと子への依存を深めるようになっていた。
もはや、要吉から生活を支える気持ちは消えていた。

そんな折である。
さと子は友人・脇田静代と再会した。
静代はバーを経営していたが、客が少なく困っていると言う。

其処でさと子は静代に要吉を紹介した。
要吉は静代の店に頻繁に足を運ぶようになった。
さと子としてはどうせ要吉が飲み歩くならば知り合いの静代の店の方が安心出来た。
また、静代は要吉にかなりサービスしているらしく飲み代が格安で賄えるのも魅力であった。

ところが、これが失敗だった。
いつしか、要吉は静代と男女の仲になってしまったのだ。
もはや、要吉はほとんど家に寄りつかず、たまに帰って来たかと思えば金を無心する始末。
しかも、これを断れば容赦のない暴力が振るわれる。
暴力は子供たちにも向かっていた。

ある日、さと子は子供が殴られている現場に遭遇した。
口から血を流す子供の姿を見たさと子は激怒した。
気付けば要吉はさと子の手により絶命していたのである。

以上がさと子が語った要吉殺害の経緯である。
こうして逮捕されたさと子だが、この経緯から彼女には世の婦人たちの同情が集中した。

そんな中、婦人評論家の高森たき子は先頭に立ってさと子を擁護した。
たき子は「さと子さんの犯行には理由がある、言わば正当防衛だ」と主張し、特別弁護人まで買って出た。
これが奏功したのか、半年ほど後にはさと子は無罪を勝ち取っていた。
一事不再理の原則により、さと子は自由の身になった。

たき子はこの結果を当然として満足していた。
ところが、たき子のもとを岡島久男なる男が訪ねて来たことから急転する。

岡島はある疑惑をたき子に告げた。
「すべてがさと子の計算通りなのではないか」と。

高揚した気持ちに水を差すような岡島の言葉に不快感を露にするたき子。
だが、岡島はそれに構わず彼の推理を述べて行く。

まずは当時の要吉の状態だ。
要吉は殺害される1年程前からさと子に夫婦関係を拒否されていた。
要吉はこれを不満として知人に洩らしていたのだ。
其処に静代を紹介された。
お預けを喰らっていた要吉は一も二も無く静代に飛び付いた。
また、静代もそう言った性向の女性だったことも分かっている。
さと子としてみれば腹を空かせたオオカミに餌を与えたようなものだ。
どうなるか結論は分かり切っていた筈なのだ。
にも関わらず、2人を引き合わせた。
それは犯行後に世間の同情を惹く為の布石だったのではないか。

続いて、さと子の心境について。
数年前からさと子は要吉を支えることに疲れ果てていた。
其処にダム工事で働く精力的な異性を目にすればどうなるか。
当然、心惹かれたのではないか。
しかも、相手が夫よりも知的な技師だとすれば尚更だろう。

相手も満更では無い筈だ。
女っ気のない現場でのことである。
若く才気もあるさと子と結婚したいと思う者が出ても不思議ではない。

しかも、さと子はダム現場では未亡人を名乗っていた。
もちろん、当初は契約に繋げる為だったのだろう。
しかし、この話を信じた者が求婚したとしたら。
さと子にとって再婚の為には要吉が邪魔になる。
其処で要吉殺害を決意したのだ。

実は、さと子は求婚者の愛を受け入れた際に「一年半待ってほしい」と伝えていた。
求婚者は意味も分からずこれに応じた。

さと子にはある計算があった。
まず、要吉を性的飢餓状態に追い込むために半年。
そして、静代を引き合わせて要吉殺害の事情を作るのに半年。
さらに、裁判を争い無罪を勝ち取る為に半年。
計一年半だ。

これを聞いたたき子は憤懣遣る方ない様子で岡島に問い質した。
「一年半との言葉に証拠はおありですの、それも推測なんでしょう」と。

だが、岡島は平然と呟く。
「いいえ」と。
続く岡島の言葉はたき子を驚愕させた。

「何故なら……実際に彼女が私にそう言ったからです」

言うなり立ち上がった岡島、その言葉の意味は1つしかない。

「すべては彼女の計算通りでした。ただ、1つだけ計算違いがありました」

もはや、驚きのあまり言葉を失ってしまったたき子。
そんなたき子を意に介さず、背中を向けた岡島は言葉を続ける。

「それは……真相を知った相手の男が去ってしまったことですよ」

言うや、部屋を退室する岡島。
其処には1人、たき子だけが残された―――エンド。

◆松本清張先生関連過去記事
【小説】
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生誕100年記念作 松本清張ドラマスペシャル〜霧の旗「歌舞伎界のプリンスが現代劇初主演!原作と異なる衝撃のラスト!魔性の女3人に振り回される傲慢敏腕弁護士誰もが陥る心の闇と罠の先に待つ真実の幸せとは?真犯人は誰?」(3月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ 文化庁芸術祭参加作品 松本清張2夜連続SP球形の荒野・前編「連続殺人の裏に隠された昭和史の光と影〜奈良古寺に残る亡霊の筆跡!」(11月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)

土曜プレミアム 松本清張2夜連続SP球形の荒野・後編「昭和39年東京オリンピック開催日にすべての謎は明かされる!刑事も涙した戦争で引き裂かれた父娘の結末」(11月27日放送)ネタバレ批評(レビュー)

サスペンス特別企画「砂の器〜松本清張の最高傑作遂に放送へ!秋田−東京−伊勢−出雲、日本縦断3000キロの殺人捜査!!操車場の死体とカメダの謎!?二人の刑事が追う宿命…」(9月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

サスペンス特別企画「砂の器〜松本清張の最高傑作遂に完結へ!日本縦断3000キロの捜査が暴く連続殺人の罠!?二人の刑事が見た父子永遠の旅!!天才作曲家の殺意…衝撃の結末」(9月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「松本清張3週連続スペシャル 張込み〜平凡な幸福を壊す殺人者!美しい人妻の秘められた過去!密会現場で刑事が最後に見た真実(3週連続松本清張特別企画“張込み” 強盗殺人犯追う刑事逃亡の果てに昔の女は家族を捨てるか?)」(11月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「松本清張3週連続スペシャル 鉢植を買う女〜愛したから殺した!?金に執着する女2人の戦い!死体が語る消えた3000万と花壇の謎(3週連続松本清張特別企画“鉢植を買う女” 愛する殺人…優雅な暮らしの金貸し女が愛欲に溺れたとき、不幸は始まった)」(11月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「松本清張企画最終章 聞かなかった場所〜謎に満ちた夫の急死!燃える山鹿灯籠が暴く愛人との密会…女性官僚が堕ちた獣道(3週連続松本清張特別企画“聞かなかった場所” 夫に愛人が?女性官僚が堕ちた罠…俳句に隠された密会の屋敷)」(11月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)

松本清張没後20年特別企画『市長死す 死体になるまでの5日間に市長が見たものは何か?日記に隠された市長の意外な一面が驚くべき真実を浮かび上がらせる!たった一行の文章に秘められた誰も知らない12年前の出来事…53年ぶりに隠れた名作を映像化!』(4月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)

松本清張没後20年特別企画「ドラマスペシャル 波の塔 汚職官僚連続殺人!!捜査検事に仕掛けられた女の罠!?“点と線”に続く大ベストセラーを完全映像化!東京〜京都〜富士、証言者を追う1000キロの旅衝撃の結末」(6月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)

松本清張没後20年特別企画「危険な斜面 偶然再会した元恋人によって、眠っていた“出世欲”に目覚めてしまった男…しかし芽生えたのは殺意だった!普通の男から悪魔へ…このまま男は昇りつめるか転落するか?」(9月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ 松本清張没後20年特別企画第3弾「疑惑 夫殺しの疑いをかけられた若き悪妻はシロかクロか?個性派女性弁護士が史上最強の悪女と闘う〜無実だったら覚えていろ!衝撃の真相とは」(11月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「松本清張没後20年特別企画 事故〜黒い画集〜 疑惑の事故が招く連続殺人!不倫密会の代償点と線を結ぶ捜査が暴く死体移動トリック」(12月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

テレビ朝日開局55周年記念 松本清張没後20年 2週連続ドラマスペシャル「十万分の一の偶然〜激突!事故か殺人か!?東名高速四重衝突!!一枚の写真が暴く赤い火の玉の謎…結婚目前に消えた娘〜父の追跡」(12月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)

月曜ゴールデン「松本清張没後20年スペシャル『寒流』〜黒い画集より〜エリート行員の不倫の恋が上司の嫉妬を生み運命が転がる!一体誰が悪で誰が善なのか?幻の名作の意外な結末とは」(1月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「松本清張没後20年特別企画『留守宅の事件』〜証明より〜妻は何故殺されたか?密会と密告の罪深い闇 空白5日間の不在証明を追う刑事達の執念」(4月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「テレビ朝日開局55周年記念 松本清張二夜連続ドラマスペシャル 三億円事件 戦後最大の未解決事件〜衝撃の推理初映像化!!消えた真犯人VS保険調査員!!最後の真実」(1月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「テレビ朝日開局55周年記念 松本清張二夜連続ドラマスペシャル“黒い福音” 国際線スチュワーデス殺人事件!昭和最大の未解決事件に挑む定年刑事&若手エリート刑事!!真犯人は誰か!?衝撃の結末」(1月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「フジテレビ開局55周年記念特別番組 松本清張ドラマスペシャル 時間の習俗 点と線の名刑事コンビ登場!相模湖畔で消えた女と福岡の変死体を結ぶ謎1000キロの距離と時間を超えた難事件…鉄壁のアリバイを崩せるか?真実はカメラが知っている」(4月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「テレビ東京開局50周年特別企画 松本清張『強き蟻』 3年後に夫は死ぬ!10億円の財産狙う美貌の妻に群がる4人の男 屋根裏の情事に隠した殺人トリックと欲望!最後に生き残るのは」(7月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「松本清張サスペンス 悪女の事件・第一夜 坂道の家〜魔性の女が招く連続殺人の罠!美しい理容師に全財産を奪われた初老の男!!嫉妬と憎しみの殺意…浴室の氷のトリック(松本清張二夜連続ドラマスペシャル 坂道の家)」(12月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「松本清張サスペンス 悪女の事件・第二夜 霧の旗 無実の弟の弁護を断った弁護士に対する復讐を描く傑作サスペンス!殺人の汚名を着せられたまま獄中で死亡した弟への悲しみが、1人の女を悪女へと変貌させる!(松本清張二夜連続ドラマスペシャル 霧の旗)」(12月07日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「テレビ東京開局50周年特別企画 松本清張ドラマSP『黒い画集−草−』 清張医療サスペンスの傑作!大病院の闇…不倫、失踪、医療ミス そして雨の夜に3件の連続殺人…白い巨塔に隠された驚愕の陰謀」(3月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「月曜ゴールデン特別企画 松本清張サスペンス 影の地帯 大学教授失踪!?森に消える白い家・幻の黒髪の美女は敵か味方か…湖に捨てられた木箱の謎?蛍の里山に渦巻く悲しき欲と業」(7月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「松本清張特別企画 共犯者 夫を殺して!報酬は5000万円…整形手術で成功を手にした女社長が堕ちた罠!!福岡から東京へ…封印した過去から迫る謎の脅迫者!傑作清張サスペンス」(9月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「松本清張二夜連続ドラマスペシャル 第一夜 地方紙を買う女〜作家・杉本隆治の推理 金沢の地方紙で連載している推理小説を、東京の女性から購読したいという依頼があったことを聞き、疑念を抱くことから始まる傑作ミステリー!」(3月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「松本清張二夜連続ドラマスペシャル 第二夜 黒い樹海 唯一の肉親である姉を事故で亡くした新聞記者・祥子。その事故に隠された姉の嘘と秘密とは…。松本清張の傑作が再び甦る!!」(3月13日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【その他】
・『眼の壁』から出題がありました。
「ミステリーキューブ 名作ミステリーを凝縮▽華麗なトリックを見破り密室から脱出せよ!▽松本清張が仕掛けたわなに挑戦だ」(8月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【特報】松本清張先生、未収録短編発見さる!!その名も『女に憑かれた男』!!

【2015年】松本清張先生『女に憑かれた男』に続く未収録短編作品見つかる!!その名は『渓流』とのこと!!

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