<ネタバレあらすじ>
周囲から隔絶された一軒の館がある、いわゆるクローズドサークルだ。
そんな館の一室にチハヤ(千流)の他殺体が転がっていた。
だが、その遺体を眺め見ているのもまたチハヤである。
そして、その周囲には1話のオカマと眼帯チハヤを含む多数のチハヤが立っていた。
彼らは口々に言う、殺人鬼の仕業だ―――と。
オカマは死体を一瞥し、特徴的な刺し傷に目を留める。
細長い凶器による刺殺、おそらく日本刀だろう。
ならば、日本刀を所持している人間が犯人だ。
こうして周囲を見渡すオカマだが、即座に絶句する。
そう、チハヤは皆が皆、「猫柳」を所持しているのだ。
つまり誰もが犯行可能である。
肩を落とすオカマに反してチハヤは何処か楽観的であった。
館の主人への面会を求めようとするチハヤに頭を下げるメイド。
どうやら、主人とされるオウカは部屋に籠ってしまっているのだそうだ。
その夜、2周目チハヤと17周目チハヤが話し合っていた。
今回の犯人と思しき「殺人鬼」のことだ。
17周目チハヤは「殺人鬼は倒せない」と主張する。
その理由を問う2周目チハヤに「記憶」について語り出す17周目。
周回を重ねるごとにチハヤ、オウカ以外の人々の記憶はリセットされる。
ところが殺人鬼はリセットされていない、これが理由なのだそうだが……。
同じ頃、複数のメリックが輪を組んで踊っていた。
その中には三つ目のメリックが混ざっていた。
2周目チハヤがオカマと話していた、話題はオウカのことだ。
オカマは第8層での出来事について振り返っていた(1話参照)。
オカマはボスの正体を知ってしまった為に殺されかけたところをチハヤに救われていた。
そして、チハヤが知る限りボスの正体はオウカの筈であった。
オウカの話題に触れたついでにオウカの可愛さについて語り出すチハヤは、そっと彼女の写真をオカマに見せる。
ところが、オカマはボスの正体はオウカでは無いと否定してしまった。
そんな馬鹿な……と驚くチハヤ。
合理的な解釈として「オカマが見たボスは影武者だったのではないか」との仮説を述べるが。
即座にオカマに否定されてしまう。
オカマが目にしたボスが影武者だったならば命を狙う必要が無いと言うのだ。
むしろ、影武者だったならば偽物を本物と周知する為に生かしておく筈なのだ。
このオカマの言葉に何やら考え込むチハヤ。
と、其処にメイドの悲鳴が響き渡る。
駆け付けたところ、浴槽で眼帯チハヤが浮かんでいた。
もちろん絶命している。
その眼帯の下を目にしたチハヤは彼女が「眼帯覆面」であると断定する。
すなわち「殺人鬼」だ。
「殺人鬼」が「殺人鬼」に殺害された!?
この事態にチハヤは真相に気付く。
オカマ、メイド、残るチハヤたちを一同に集めた2周目チハヤは推理を切り出す―――第9話へと続く。
<感想>
『メフィスト』の新連載第8回。
5話、6話、7話に続き、8話でも新たな情報が!!
今回手掛かりとして明かされた情報の中で重要と思われるのは次の2点。
1.周回毎にオウカとチハヤ以外の記憶はリセットされる。
2.1話でオカマが目にしたボスはオウカではない。
館の主人はオウカでは無さそう。
むしろ、メイドこそがオウカか。
そう言えば、オカマに8層での記憶が残っているのは同一周のオカマだからなのか?
これが異なれば、オカマこそがもっとも怪しいキャラになるが。
また、オカマから「影武者」なるキーワードが提示されました。
眼帯が「殺人鬼」の影武者であり、他に「殺人鬼」が居ることを示すのか?
どうにも謎が深まるばかり。
そして、7話にて敢えてチハヤを牢に捕え枯葉と共に置こうとしたオウカの意図も気になります。
オカマと共に枯葉には何かがありそう。
もしかして「枯葉=オウカ」なのでしょうか?
探さずとも実は身近に居た的な展開も思い浮かびますが……。
さらにメリックが目にした「空に浮かぶ弾丸」。
それは少しずつ迫っているようです。
チハヤが存在する世界はオウカの脳内世界。
オウカは「魔銃パラベラム」の弾を頭部に撃ち込み、世界を構築しました。
それが大きく見える(近付く)と言うことは……もしかするとタイムリミットが存在しており迫りつつあるのか!?
弾が到達したときこそが、オウカの死になるのかもしれません。
だとすれば、チハヤは素早い対処を求められることとなりそうですが……いずれにしろ「殺人鬼」との対決は避けられないでしょう。
謎が謎を呼ぶ展開です、次回も見逃すなかれ!!
では、此処からは8話までのまとめ。
状況を簡単にまとめるとこんな感じかな。
まず、オウカが死ねないことを知りつつパラベラムを用いて自殺未遂、昏睡状態に。
これを救うべくチハヤがオウカの深層心理世界に飛び込む。
その目の前で深層心理世界のオウカが自殺。
これにより、チハヤがオウカに内包される。
内包された状態のチハヤが深層心理世界のオウカを救うべくさらにダイブ。
これを繰り返すことで、マトリョーシカ状態のオウカとその中で複数のチハヤが存在しているものか。
どうやら、オウカの身体の中が既にパラレルワールドとなっているようだ。
そして、オウカ自身の自殺未遂も何らかの目的があってのことか。
考え得るのは幾重にも続く運命の螺旋にチハヤを取り込むことかなぁ。
それにより、永遠にチハヤと共に居ることが可能になるとか。
そんな中、迫り来る弾丸の描写が。
あれはタイムリミットを示唆したものか!?
ちなみに「スーサイド」が「自殺」や「破滅」を意味する英語、「パラベラム」が「戦いに備える」とのラテン語だそう。
本作タイトルを仮に和訳すれば「破滅(自殺)への戦いに備える」と言った意味合いか。
あるいは意訳すれば「(次なる)戦いに備えた破滅(自殺)」とも解釈出来そう。
そして4話に登場した「サムサラ・エクスプレス」。
「サムサラ」は「輪廻転生」を表す言葉。
つまり「サムサラ・エクスプレス」は「輪廻転生列車」。
だからこそ環状線になっており、今生の終着駅は次の人生の始発駅となるのだろう。
オウカが4話で語った夢のうち、列車旅は4話、アイドルは3話、ギャングのボスは1話で達成済み。
オウカはその度に、次のステージへと移動して行く。
これをチハヤが追い続ける。
この流れも「輪廻転生」と言えそうだ。
これらからは「輪廻転生」と同じく「終末へ向けてのリセット(またはその繰り返し)」と言った意味が引き出せる。
全体的に抒情的な世界で繰り広げられるチハヤとオウカの追いかけっこ。
次なる舞台は何処になるのか?
次回も楽しみです!!
ちなみに『メフィスト』が遂に電子書籍化されています。
詳しくは下記記事をどうぞ!!
・講談社刊『メフィスト』も遂に電子書籍に参入とのこと!!
◆関連過去記事
・『スーサイド・パラベラム』第1話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)
・『スーサイド・パラベラム』第2話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)
・『スーサイド・パラベラム』第3話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)
・『スーサイド・パラベラム』第4話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)
・『スーサイド・パラベラム』第5話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)
・『スーサイド・パラベラム』第6話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2015vol1』連載)ネタバレ批評(レビュー)
・『スーサイド・パラベラム』第7話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2015vol2』連載)ネタバレ批評(レビュー)