『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。
ネタバレあります、注意!!<あらすじ>
天下りなどの人事問題に真っ正面から取り組んで、選考委員の激賞を浴びた松本清張賞受賞作ほかテレビドラマ化されたD県警シリーズ
警察一家の要となる人事担当の二渡真治は、天下り先ポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべもなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた……。「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞受賞作を表題作とするD県警シリーズ第1弾。解説・北上次郎
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
横山秀夫先生による「D県警シリーズ」の1作。
「D県警シリーズ」は架空の「D県警」を舞台に其処で働く人々が関わる事件とその真相を描いたシリーズ作品。
シリーズ既刊には『陰の季節』の他に『顔 FACE』『64』が存在しており、共通の世界観を保持しています。
また、未収録作品として『刑事の勲章』も存在しています。
いずれも視点人物が異なるものの、二渡が共通して登場している点がポイントです。
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『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)・
『64』(横山秀夫著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)本作『黒い線』は短編集『陰の季節』に収録された1編。
『陰の季節』には、他に表題作『陰の季節』、『地の声』、『鞄』など合わせて4編が収録されている。
なお、表題作でもある『陰の季節』は第5回松本清張賞受賞作となっています。
さて、『黒い線』は七尾友子が視点人物。
そして、友子が直面したのは「何故、手柄を立てた平野瑞穂が姿を消したのか?」との謎。
つまり「ホワイダニット」作品であり、その陰に潜む事情はなかなかに残酷です。
特に、似顔絵により犯人が逮捕された=似顔絵が先と思いきや……この逆転の構図が諧謔的です。
また、瑞穂は後に『顔 FACE』(徳間書店刊)の主人公として登場もしています。
なお、ネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
七尾友子:婦警を管轄する責任者
平野瑞穂:鑑識課員、似顔絵担当
森島:鑑識課課長
二渡真治:警務部警務課に所属する警視
七尾友子はD県警の婦警を管理する立場にある。
また、D県警内女性初の警部でもあった。
そんな彼女のもとに意外な報が飛び込んで来た。
なんと、婦警の1人・平野瑞穂が姿を消してしまったと言うのだ。
瑞穂は鑑識課の似顔絵担当。
つい先日もある事件の被疑者の似顔絵を描き、犯人逮捕に繋げたとのことで大手柄とされていた。
直後の行方不明である、もしかして犯人の関係者に報復されたのではないか……七尾は事件を思い浮かべずには居られなかった。
ところが、報告を受けた二渡は少し確認しただけで奇妙な余裕を見せ始めた。
何かに気付いたようだが納得の行かない七尾は自身で瑞穂の行方を追い始める。
まずは、お手柄となった似顔絵の件だ。
鑑識課長・森島によれば目撃者の協力を得て瑞穂が似顔絵を作成したらしいのだが……。
さらに、七尾は瑞穂の行動を追跡し始めた。
すると、犯人逮捕後に事件に関係する場所や人を調べ回っていたことが分かる。
既に犯人は逮捕されているのに何故なのか!?
その矢先、瑞穂が実家に戻っていることが判明。
何かにショックを受けてしまっているようだ。
これに七尾は真相を察した。
原因は森島にあった。
目撃者の証言に沿って似顔絵を作成した瑞穂。
だが、森島は最初から被疑者を絞り込んでいた。
其処で瑞穂に似顔絵の描き替えを強要したのだ。
瑞穂は断り切れずに従ってしまったらしい。
七尾は思う、二渡も早期に同様の結末に至っていたのだろう。
だとすれば、今度の人事でこそ彼の真価が問われるのかもしれない、と―――エンド。
◆関連過去記事
【横山秀夫先生著作記事】
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