ネタバレあります、注意!!
<感想>
実に13年ぶり、「私立探偵飛鳥井の事件簿シリーズ」2016年4月時点での最新作が『メフィスト』にて連載開始されました。
それが本作『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』、その第1話です。
ちなみに2016年4月時点での「私立探偵飛鳥井の事件簿シリーズ」には他に『三匹の猿』『道―ジェルソミーナ』『魔』『壺中の魔(未完)』がある。
このうち『魔』については『追跡の魔』と『痩身の魔』を過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。
・『追跡の魔』(笠井潔著、文藝春秋社刊『魔』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『痩身の魔』(笠井潔著、文藝春秋社刊『魔』収録)ネタバレ書評(レビュー)
この『〜〜〜の魔』シリーズは上記『追跡の魔』、『痩身の魔』に『壺中の魔』を加えて3部作となる予定であった。
実際は『壺中の魔』が未完に終わっている。
また、この『〜〜〜の魔』シリーズは、現代社会に潜む恐怖や社会問題を作中に取り上げることで「本格ミステリ」と「社会派ミステリ」の融合を志したものと管理人には思われる。
ちなみに『追跡の魔』が「ストーカー」、『痩身の魔』が「過剰なダイエット」をテーマに取り上げている。
そんな中、今回の『転生の魔』はそのタイトルからおそらく「生まれ変わり」を取り上げていると思われる。
おそらく黒シャツの少女が、三奈子が若かりし日の「ジン」なる女性に生き写しとなるのでしょう。
とはいえ、彼女が生まれ変わりとも思えないし「ジン」本人である筈もない。
こればかりは如何なアンチエイジングでも難しいだろう。
考えられるのはその子孫だが、動画で目にして分かるほどそっくりなのは不自然。
だとすれば……本シリーズが社会問題をテーマに用いることを考え合わせれば「クローン」の可能性がありそうだが。
「ジン」に代わり「飯倉」を探させているのも「クローン」研究の関係者だった……とか?
ただ、飯倉は作中描写に基づくと研究者よりも思想家、活動家のように見える。
飯倉のサークルに「カントク」と呼ばれる人物が居たらしいことも気になるところだが。
そもそも「ジン」との呼称も名前ではなく、何かの名称の略称にも思える。
「ジン」と「カントク」、この2つがキーワードになるのかも。
まだまだ第1話だけに先の読めない展開になっています。
先が気になって仕方がありません。
作者の笠井潔先生と言えば『探偵小説と叙述トリック』で第12回本格ミステリ大賞評論・研究部門を受賞され『容疑者Xの献身』論争でも知られる方です。
詳細については、ネタバレあらすじ後の過去記事リンクに詳しいので各記事をご参照ください。
ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし。
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
飛鳥井:これまでに数多くの事件を解決して来た探偵、主人公
鷺沼晶子:飛鳥井と親しいサイコセラピスト
巽:飛鳥井に探偵事務所を提供した元探偵
山科三奈子:今回の依頼人
山科郁:三奈子の孫を名乗る
ジン:三奈子が探している女性
飯倉:三奈子が探している男性
花房:コンサルタント会社の経営者
カントク:飯倉と同じサークルに所属していた人物
探偵・飛鳥井は元探偵・巽から事務所を引き継ぎ、細々と探偵業を続けていた。
今の飛鳥井は巽からの紹介が命綱となっていたのだ。
今日も飛鳥井は巽から依頼人を紹介されていた。
その名は山科三奈子、巽の古い知り合いの娘で60代の女性なのだそうだ。
困り果てていた飛鳥井はこの依頼に一も二も無く飛び付く。
ところが、飛鳥井の事務所に現れたのは三奈子ではなく、その孫・郁青年であった。
どうやら、三奈子は飛鳥井に姿を見せることを極端に恐れているようだ。
郁によれば三奈子の依頼は人探し。
とある動画に映っていた黒シャツの若い女性を探して欲しいらしい。
三奈子はその女性を「ジン」と呼んだそうだが……。
とはいえ、それだけの情報で探し出せる筈もない。
些か残念に思いつつも丁重に断りを入れる飛鳥井。
すると、郁は「では、この人を探して欲しい」と新たな人物の名を上げた。
その人物の名は飯倉、三奈子の大学時代の同級生なのだそうだ。
経歴がはっきりしている以上、捜索は容易いと考えた飛鳥井はこれを引き受けた。
もちろん、「ジン」に代わって「飯倉」の名を上げられたことで関連性があると考えた為だ。
もしかすると「ジン」に繋がる手掛かりや三奈子の狙いも分かるかもしれない。
三奈子の母校を訪れた飛鳥井、其処には奇しくも親しいサイコセラピスト・鷺沼の研究室があった。
飛鳥井は鷺沼に「飯倉」を知る人物を紹介して貰おうと考えたのだ。
これも飛鳥井が依頼を引き受けた理由である。
この計算は図に当たり、「飯倉」本人には辿り着けなかったが彼と親しかったとされるサークル仲間の花房を突き止めた。
花房はコンサルタント会社の経営者。
しかし、先頃に起きた傷害事件で世間を騒がせていた。
花房がコンサルタントを引き受けた会社で行ったリストラが原因でクビにされた社員が傷害事件を起こしていたのだ。
飛鳥井は密かに花房へと接触、彼から飯倉についての情報を引き出す。
ところが、花房によればサークルの解散と共に飯倉は行方不明になってしまったのだそうだ。
元サークルメンバーもバラバラになっており、主だった者は新興宗教の信者や企業の幹部になっているのだそうだ。
また、サークルメンバーに「カントク」と呼ばれていた者が居たことを知る。
この結果に、飛鳥井は「飯倉が既に此の世の人では無いのではないか」と考えることに―――2話へ続く。
◆関連過去記事
・『追跡の魔』(笠井潔著、文藝春秋社刊『魔』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『痩身の魔』(笠井潔著、文藝春秋社刊『魔』収録)ネタバレ書評(レビュー)
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