月曜名作劇場「横山秀夫サスペンス 陰の季節 横山秀夫最高傑作「64(ロクヨン)」の原点!第5回松本清張賞受賞作品 不朽の名作「陰の季節」が蘇る!「ロクヨン」と並ぶもう一つの未解決事件!その真相に涙する!」(4月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。
ネタバレあります、注意!!<あらすじ>
平成13年3月1日。赤間警視正(滝藤賢一)が新たな警務部長として県警に着任した。警務部長は県警のナンバー2で警察庁のキャリアが就任する。データ魔の赤間は警務課職員たちに早速あれこれとケチをつける。警務部警務課の調査官・二渡(仲村トオル)は赤間が異動するまでの辛抱だと同僚をフォローする。
そんな県警に静かな大事件が勃発した。元刑事部長で建設業界の団体に天下った尾坂部(伊武雅刀)が期限を過ぎても辞めないと言い出したのだ。OBたちのポスト調整も警務部の重要な仕事。歯車がひとつ狂えば行き場を失う者も出てくる。警察組織の掟は守ってもらわねばならない。二渡は尾坂部を説得すべく調査を始める。まず声をかけたのは連続殺人事件の捜査をしている刑事課長の前島(千葉哲也)。しかし前島は尾坂部が現職を続けることを既に知っていた。直接話をすべく尾坂部邸を訪れるが、尾坂部は関係ないと言い残して立ち去ってしまう。その後も何とかして退任させようと調査を続けるうちに、二渡は尾坂部が未解決事件を追っているのではないかと感じ始める。
一方、県警では別の問題も起こっていた。ひったくり犯の似顔絵を描き事件を早期解決に導いた鑑識課の警官・平野巡査(山下リオ)が無断欠勤しているという。さらにはその翌日、平野が失踪したという連絡が入った。女性警察官担当の七尾(和久井映見)は鑑識課長の森島(西沢仁太)に話を聞くが、同行した二渡は森島の言動に違和感を覚える。
(公式HPより)
では、続きから……(一部、重複アリ)。二渡真治は警務部警務課の調査官。
警務部は人事権を握っており、中でも二渡は若くして警視になったことから「エース」と呼ばれていた。
そんな中、管轄内で3つの大事件が勃発する。
1つ目、元刑事部長で産廃協会に理事として天下りしていた尾坂部道夫が在任期限が過ぎても退任を拒否したこと。
実は天下りには在任期限が定められている、後任者のポストが失われる為だ。
産廃協会理事の場合、後任には生活安全部長の工藤が決まっており尾坂部が居座る限り工藤の椅子が宙に浮いてしまう。
これは警務部の面子にも関わる重大事だ。
二渡は上司の赤間肇警視正に命じられ事件解決に乗り出した。
2つ目、婦警である平野瑞穂巡査が姿を消してしまったこと。
瑞穂は数日前にひったくり犯の似顔絵を描き事件を早期解決に導いたお手柄婦警と讃えられていた。
その直後に、何故か姿を消してしまったのだ。
こちらは二渡と部下の七尾友子が解決に乗り出す。
瑞穂の上司である鑑識課長の森島光男には特に心当たりはないそうだが……。
3つ目、管内で発生した連続女性暴行殺害事件。
既に2件ほど被害者が出ている事件で、カージャックした後に暴行を働き殺害するとの身勝手極まりない犯行であった。
被害者からは犯人の体液も検出されている。
これは所轄の刑事課長・前島が解決に乗り出した。
まず、二渡は尾坂部への対処を優先する。
尾坂部から話を聞ければ進展するかと思われたが全く相手にされず引き下がることに。
困った二渡は尾坂部の元部下であった前島に手掛かりを求める。
前島は尾坂部の凄さを語りつつ「あの人が犯人は現場に戻らないと教えてくれた」と口にする。
犯人は犯行現場に戻るとされているが、実際は後ろめたさがある為に犯行現場に戻らないのだそうだ。
また、前島は自身が追っている連続女性暴行殺害事件についても言及。
これが尾坂部が手掛けた中でただ1つだけ未解決になってしまった「8年前のOL殺し」と手口が似ていると語る。
「8年前のOL殺し」とは当時、連続発生していた女性暴行犯による殺人事件。
犯人は未だ捕まっておらず、勢い余って殺害してしまい恐れ戦き鳴りを潜めたものと思われていた。
また、当時の犯人は手掛かりも殆ど残さず体液も残していなかった。
その頃、友子は瑞穂を追っていた。
瑞穂が車に乗って消えていたことから、例の連続女性暴行事件との関連を疑う友子だが。
二渡はと言えば、前島から聞いた情報から尾坂部が未解決となった8年前の未解決事件を密かに追っているのではないかと考え、密かに尾坂部の運転手を務める青木に接触する。
青木は白髪が印象的な壮年の男性、元ハイヤーの運転手だそうだ。
その車から尾坂部が記したと見られる地図を発見する二渡、其処には市内全土が細かに記載されていた。
どうやら、尾坂部は青木と共に市内を縦横無尽に巡っているようだ。
だが、青木は白髪をかきつつ「1年前に運転手になったばかりで分からない」と繰り返す。
矢先、二渡は部下・上原勇三から8年前の連続女性暴行事件の被害者の1人が尾坂部の娘・恵であると聞かされる。
恵は数日後に結婚式を控えている身であった。
やはり、尾坂部は8年前の事件を追っている―――そう確信した二渡は尾坂部を説得しようと赴いた。
ところが、尾坂部は青木立ち会いのもとで二渡に事情を説明するように促す。
青木を気に掛けながら8年前の事件について触れた二渡。
すると、尾坂部は「安心しろ、すぐに決着する」と言い出した。
なんと「8年前の事件で毛髪が残されており、犯人逮捕が近い」らしいのだ。
驚く二渡を他所に尾坂部は自信満々である。
同じ頃、前島が追う事件で3人目の被害者が出ていた。
瑞穂の安否を心配する友子は「被害者の共通点として顔が知られていること」を挙げ、「似顔絵でお手柄として新聞に報道された瑞穂も危ない」と繰り返す。
ところが、直後にこの犯人が逮捕されることに。
さらに、瑞穂自身もショッピングモールで保護された。
連続女性暴行殺害事件と瑞穂の失踪は無関係だったのである。
逮捕された犯人を目にした前島は「これは8年前とは違う奴だなぁ」と洩らす。
聞き咎める二渡に前島が理由を明かす。
なんと、尾坂部が語っていた毛髪は白髪だったと言うのだ。
逮捕された犯人は黒髪であった。
その一方で、瑞穂から失踪の理由を聞き出した友子は森島に詰め寄っていた。
なんと、森島は瑞穂に似顔絵の改竄を強要していたのだ。
実は、瑞穂の描いた似顔絵は犯人・遠藤とは程遠いものだった。
ところが、これを見たコンビニオーナーがたまたま悪いイメージを抱いていた遠藤を思い浮かべ、これが実際に犯人だったことから早期解決に繋がったのであった。
だが、森島は勇み足で瑞穂の手柄を吹聴しており、報道されるまでに至った。
其処で遠藤をもとに似顔絵を描き直させたのである。
似顔絵があって犯人が逮捕されたのではない。
犯人が先に逮捕され、似顔絵が作られたのだ。
似ていて当然であった。
「瑞穂を辞めさせろ」と責任転嫁する森島に激怒する友子。
これを伝え聞いた二渡は瑞穂を庇うと共にある行動に出る。
一方、二渡は前島から8年前の事件の毛髪が既に存在しないことを明かされる。
血液型鑑定の為に粉々にされていたのだ。
もちろん、これは尾坂部も知っている。
では、尾坂部は何の為に嘘を吐いたのか?
二渡は青木に聞かせる為だったことに気付く。
そう言えば、青木は白髪だった。
まさか、青木が!?
青木に事情を尋ねるべく訪問した二渡たちだが、青木は既に自殺を遂げていた。
やはり、青木が犯人だったのだ。
目的を遂げた尾坂部は全てを語り出す。
1年前、尾坂部は青木を見かけて疑念を抱いた。
其処で確かめるべく自身の運転手に雇うと8年前の犯行現場を転々とさせた。
すると、悉く現場を避けるではないか!!
尾坂部は「犯人は現場に戻らない」ことを知っている。
其処で青木が犯人だと確信し、無言の圧力をかけた。
そして二渡が迫って来たことを利用し、青木に罠を仕掛けたのだ。
青木は尾坂部の罠に嵌り、自殺したのであった。
恵は無事に結婚式を迎えることとなった。
人事が発表され、森島は更迭された。
上原は刑事官に昇進となった。
目的を果たした尾坂部は退任し、工藤は後任の産廃協会理事となった。
未解決事件ファイルを眺める二渡。
其処には8年前の連続女性暴行事件の名も並んでいる。
だが、二渡は知っている。
その事件が密かに解決したことを。
そして、その下には「ロクヨン事件」が並んでいた。
この事件もまた解決に繋がることとなるのだが、それは映画版の物語である―――エンド。
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月曜名作劇場「横山秀夫サスペンス 刑事の勲章 横山秀夫最高傑作「64(ロクヨン)」の原点!書籍未収録の「刑事の勲章」に名作「動機」を加えたストーリー!刑事達が手にする真の勲章とは!?二渡が下す人事とは!?」(4月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)<感想>
ドラマ原作は横山秀夫先生によるD県警シリーズの短編『陰の季節』と『黒い線』(文藝春秋社刊『陰の季節』収録)。
共に過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。
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『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)・
『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)瑞穂は『黒い線』の登場人物ですが、後に『顔 FACE』(徳間書店刊)の主人公となっています。
ちなみに『陰の季節』、『黒い線』には同じTBS系「月曜ドラマスペシャル」にて上川隆也さんが二渡役を演じられていたバージョンもあります。
ちなみに、こちらの『陰の季節』では「犯行を見抜かれたと思い込んだ青木が尾坂部を襲って逮捕される」との原作とは異なるラストになっています。
そして今回、二渡を演じられたのは仲村トオルさん。
どうやら、映画版「64」公開を控えて、同じキャストでのリメイク作品となったようです。
映画版「64」でも仲村トオルさんが二渡役です。
また、映画版「64」で活躍する三上役の佐藤浩市さんも少しだけ登場されていました。
映画版「64」は前後篇での公開を予定しており、前篇が2016年5月7日、後篇が2016年6月11日とのこと。
ちなみに「64」は2015年4月にNHKさんにて連続ドラマ化されています。
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『64』(横山秀夫著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)・
土曜ドラマ「64(ロクヨン)」(NHK系、2015年)まとめ・
横山秀夫先生『64』(文藝春秋社刊)が続々実写化!!まずは2015年4月に連続ドラマ化、次いで2016年に映画化とのこと!!では、ドラマ版の感想を。
今回の物語は次の3つの柱からなっていました。
それぞれ「尾坂部の居座り事件(8年前の事件)」、「連続女性暴行事件」、「瑞穂行方不明事件」。
序盤で「尾坂部の居座り事件」、「連続女性暴行事件」、「瑞穂行方不明事件」について挙げ、それぞれ独立した事件と思わせる。
中盤で「瑞穂も女性暴行事件の被害者」ではないかと思わせて「連続女性暴行事件」と「瑞穂行方不明事件」とを関連させる。
ところが、終盤で「尾坂部こそ女性暴行事件」に関わって来る、すなわち「連続女性暴行事件」と関わっていたのは「尾坂部の居座り事件」の方だったとする。
しかし、最終盤にて3つの事件はどれも無関係であったと判明するとのもの。
これを踏まえて、本作ですが……。
基本原作重視だったのですが、余韻重視の2作品を混ぜた為に台無しになっていた印象。
少なくとも『陰の季節』で尾坂部の口から全部説明させてしまうのはどうなのだろうか……。
他にも、どうにも説明調の台詞が多かったし。
それと、終盤は恵の結婚式がメインみたいになっていたけど、だったらもっと尾坂部と恵の交流を描くべきのような……。
そもそも『陰の季節』は尾坂部の執念が犯人を突き止める『64』的な話なだけに、青木が如何にして追い込まれたかを丁寧に描くべきだろうに、途中で『黒い線』のエピソードが混ざった為にこれが深まっていない。
結果として2作品の継ぎ接ぎダイジェストみたいに感じた。
過去に放送された「月曜ドラマスペシャル」版は此の辺りが上手く出来ていただけに何だかもどかしい。
もしかして「月曜ドラマスペシャル」版を強く意識してしまったのかなぁ……。
それと、基本原作重視な割には「二渡自身が工藤に交渉」しちゃったり「尾坂部が車を所持」していたりと細かいながらもポイントになりそうな点が無視されていたのも引っかかるかなぁ。
そう言えば、劇中で尾坂部が妻・かや子相手に庭で恵の件について触れていたのが気になった。
誰に聞かれるともしれない庭で娘に関わる秘密を話すのはどうかなぁ……。
現に二渡に立ち聞きされているし。
それだけならまだしも、その前に二渡が上原相手に「恵さんの秘密を軽々しく扱うな!!」と激怒していたシーンがあっただけに「えっと、残念ながら当の尾坂部家では割とオープンに語られているようです」としか……。
それと、原作に無かったアレンジ部分として登場人物の推測パートがあったけどあれもストレスだったなぁ。
だって、前島の「8年前と現在の事件の犯人が同一犯かも」とか友子の「被害者の共通点から瑞穂も狙われるかも」も共に的中していないのだもの、明らかなミスリードでしかない。
物語の流れで視聴者にミスリードさせるならともかく、登場人物の推測を用いてミスリードさせるのは好ましくないだろう。
前島は「似ている」としていたけど8年前の青木の事件と現在の事件には共通点なんて無いよなぁ……。
そもそも、青木の事件は強殺は最後の1件のみだし、体液も残していないしで手口に共通点が全く無い。
流石に無理がある気がする。
現在の事件がカージャックである必然性も薄いよなぁ。
あれは瑞穂も被害者かも……と繋げる為の物でしかない。
敢えて前島や友子の言を活かすならば、逆にもっと密接に8年前と現在の事件を関連付けるべきじゃないかなぁ。
例えば、物語の構造自体は本作と同じだが、結果として「8年前の事件の犯人である青木が現在の事件も犯人」とかどうだろう。
現在の事件はカージャックされていた。
尾坂部により精神的に追い詰められた青木が、その抑圧から再犯に走った。
だからこそ、青木は自身が車で受けた圧迫を返す為にカージャックを繰り返した……とのストーリー。
どうだろ、3つの事件をバラバラなものにするなら、これくらい大胆なアレンジもアリだと思うけどなぁ。
もちろん、これよりは原作に沿って『陰の季節』だけをじっくり描いてくれた方が嬉しいけど。
原作にはそれだけのポテンシャルがあるように思う。
少なくとも、もっと個別の事件を深く描く必要があったのではないか。
さて、いろいろ言ってしまいましたが、原作通り尾坂部が青木相手に仕掛けた「傍聞き」のシーンは盛り上がりました。
そして、潤んだ瞳で夕日を見守る尾坂部も良かった。
あれ、振り返ると印象的なシーンは全て伊武雅刀さん演ずる尾坂部が関わっていたりするなぁ。
やっぱり、尾坂部メインで『陰の季節』だけでドラマ化で良かった気がする。
次週(4月25日)の「月曜名作劇場」は同じく横山秀夫先生の短編『刑事の勲章』と『動機』がドラマ化。
『刑事の勲章』は「D県警シリーズ」、『動機』は「ノンシリーズ」ですね。
今回の上原の異動後の姿が描かれるようで楽しみです。
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『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)ネタバレ書評(レビュー)<キャスト>
二渡真治:仲村トオル
七尾友子:和久井映見
上原勇三:長谷川朝晴
平野瑞穂:山下リオ
前島泰雄:千葉哲也
森島光男:西沢仁太
青木源一郎:浅見小四郎
尾坂部かや子:根岸季衣
赤間 肇:滝藤賢一
尾坂部道夫:伊武雅刀 ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)
◆関連過去記事
【横山秀夫先生著作記事】
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『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)・
『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)・
『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)ネタバレ書評(レビュー)・
『64』(横山秀夫著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)【ドラマ関連】
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横山秀夫先生『64』(文藝春秋社刊)が続々実写化!!まずは2015年4月に連続ドラマ化、次いで2016年に映画化とのこと!!