ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
天才ピアニスト・岬洋介、最初の事件!
豪雨によって孤立した校舎に取り残された音楽科クラスの面々。
そんな状況のなか、クラスの問題児が何者かに殺された。
17歳、岬洋介の推理と行動力の原点がここに。
“どんでん返しの帝王”が仕掛けるラスト一行の衝撃。
累計100万部突破!「さよならドビュッシー」シリーズ最新作
シリーズ累計100万部突破!! 中山七里の音楽ミステリー、最新刊です!ニュースでかつての級友・岬洋介の名を聞いた鷹村亮は、高校時代に起きた殺人事件のことを思い出す。岐阜県立加茂北高校音楽科の面々は、九月に行われる発表会に向け、夏休みも校内での練習に励んでいた。しかし、豪雨によって土砂崩れが発生し、一同は校内に閉じ込められてしまう。そんななか、校舎を抜け出したクラスの問題児・岩倉が何者かに殺害されるた。警察に疑いをかけられた岬は、自らの嫌疑を晴らすため、素人探偵さながら独自に調査を開始する。岬洋介、はじめての事件!『このミステリーがすごい!』大賞シリーズ。
(宝島社公式HPより)
<感想>
本作は「岬洋介シリーズ」2016年時点の最新作。
最終章を除き『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK』にて連載されていました。
連載分については過去に書評(レビュー)していますね。
この「岬洋介シリーズ」は「難聴を抱える天才ピアニスト岬洋介が関わった事件を描く」シリーズ作品。
あくまで関わった事件なので、中心視点人物は各作品ごとに別の人物となっており、岬は事態解決やアドバイスなどを行う探偵役の立場となっています。
いつか岬自身が視点人物となる日がやって来るのでしょうか。
なお、今回の『どこかでベートーヴェン』は『いつまでもショパン』の後から始まる物語。
ただし、ある事柄(『いつまでもショパン』での出来事)により一躍有名になった岬を見かけた高校時代の同級生が当時(高校時代)に起こった事件について振り返るとの内容になっています。
さらに、岬が抱える突発性難聴についても触れられています。
難聴により音を失った岬、それは音楽に携わる者にとっては死刑宣告に等しいもの。
これを同じく音を失った「楽聖」ことベートーヴェンと絡めて描くことで、岬の絶望と其処からの再起を描いています。
また、高校時代に岬と半年の短い期間とはいえ深い親交を結んだ鷹村。
彼にとって岬は大きな影響を受けた相手であり、強い尊敬を抱いた相手。
しかし、岬と別れてからは遠い空の下で彼の再起を願い続けるしかなかった。
まさに、どこかに居る岬の再起を。
だからこそ、タイトルは『どこかでベートーヴェン』となったのでしょう。
すなわち「岬が諦めることなく、どこかでベートーヴェンのように音楽の道に関わり続けて居て欲しい」―――そんな鷹村の願いが込められたタイトル。
そして、岬は鷹村の願い通り健在でした。
岬は、今も「どこかでベートーヴェン」のように音楽と向き合い続けていたのです。
鷹村がコレを冒頭の時点で確認していることを読者は終盤で知ることになるのですが、冒頭で既に描かれたソレがラストの「ある事実」により「フィニッシング・ストローク(最後の一撃)」として思わぬ形で甦る点は秀逸です。
まさにサプライズでした。
それは、もしかすると実際に同様の存在があの人にも居たのかもしれない……と読者に思わせるほど。
シリーズファンは絶対に読むべし。
「岬洋介エピソードゼロ」にして「シリーズ最大の衝撃」が読者を待つ筈。
ちなみに、「岬洋介シリーズ」には長編が『さよならドビュッシー』、『おやすみラフマニノフ』、『いつまでもショパン』の3作(刊行順、作中時系列順)と短編が短編集『さよならドビュッシー前奏曲(文庫化に際し『要介護探偵の事件簿』を改題)』(『さよならドビュッシー』の前日譚を描いたスピンオフ)、『間奏曲(インテルメッツォ)』(『いつまでもショパン』と同時期に起こっていた事件を描くスピンオフ)の2作が存在しています。
記念すべきシリーズ第1作『さよならドビュッシー』は映画化もされています。
書籍版については、すべてネタバレ書評(レビュー)していますね。
興味のある方はネタバレあらすじ後の関連過去記事へどうぞ!!
ちなみに、ネタバレあらすじについては管理人によりかなり改変されています。
本作を楽しんで頂くには直接お読み頂くことをオススメします!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
岬洋介:シリーズ主人公、今回は高校時代が描かれる。
鷹村亮:『どこかでベートーヴェン』の視点人物。音楽科の学生。
岩倉:音楽科の学生の1人。イワクラ建設の息子。
板台:音楽科の学生の1人、バンドを組んでいる。
春菜:鷹村が憧れる同級生。町長の娘。
美加:音楽科の学生の1人。
棚橋:音楽教師。
佐久間:数学教師。
横屋:教師。
・鷹村は高校時代に鮮烈な印象を残した岬の姿を思わぬところで目にする。
『どこかでベートーヴェン 第一話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.6』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・鷹村は岬との出会いを振り返る。
『どこかでベートーヴェン 第二話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.7』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・岬の存在が鷹村とクラスメートを変えて行く。
『どこかでベートーヴェン 第三話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.8』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・未曾有の集中豪雨が学校を襲う。
『どこかでベートーヴェン 第四話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.9』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・災害の中、クラスメートの他殺体が発見される。
『どこかでベートーヴェン 第五話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.10』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・容疑は岬へ向かう。
『どこかでベートーヴェン 第六話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.11』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・文化祭にて演奏する岬だが……。
『どこかでベートーヴェン 第七話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.12』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
岬を襲った突発性難聴。
それまで岬にコンプレックスを抱いていた板台たちはここぞとばかりに彼を攻撃し始める。
その姿に自分自身のコンプレックスを見出した鷹村は友である岬の為に彼らと戦うことに。
そんな中、意図せずまたも集中豪雨が発生。
学校が陸の孤島となってしまう。
これに岬は「自身への疑いを晴らすときが来た」と宣言。
マネキンを3体ほど用意するや岩倉殺害時の状況を再現した上で下流へと流す。
結果、3体のうち2体のマネキンが事件時と寸分違わずに遺体発見現場へと流れ着く。
つまり、岩倉は現場で殺害されたのではなく校内で殺害されていたのだ。
岬はアリバイが無く、当時ジャージに着替えていたことから春菜を犯人と指摘する。
春菜は岩倉を殺害後に濡れた制服からジャージに着替えたのだ。
動機は春菜の父と岩倉の父が行った不正について脅迫された為であった。
どうやら、岩倉は春菜を言いなりにしようと目論んでいたようだ。
其処を殺害されてしまったのである。
遺体が発見現場に流れ着いたのは意図してのことではなく、あくまで偶然の産物であった。
だが、それが春菜にアリバイを作ったのだ。
二度目の集中豪雨から数日後、春菜は犯行を自首すべく出頭した。
その日、鷹村は岬に呼び出され彼の演奏を耳にする。
岬にとってそれは最後の演奏になるらしい。
実は春菜の犯行を目撃しつつ、恋心からこれを庇っていた鷹村。
岬に罪を謝罪しつつ、音楽を諦めないように訴える。
ところが、さらに数日後のこと。
岬は黙って引っ越してしまった。
鷹村が知った頃には、既に岬は姿を消していた。
棚橋によれば父親の仕事の都合だと言う。
別れを惜しむ鷹村。
しかし、板台たちはコンプレックスから解放されたと大喜びする。
そして現在、鷹村はあれから一度も岬に出会えていない。
だが、岬により音楽の厳しさを知った彼は挫折を経て自身の力が役に立つ仕事を見つけることに成功した。
それも全て岬との出会いが彼に与えた成長の結果であった。
鷹村は岬との出会いを良き想い出として大切にしながら「岬は大丈夫なのだろうか」と常々気にかけていた。
そんなある日、鷹村は岬の報道(『いつまでもショパン』参照)を目にした。
彼が音楽を続けていたと知り安堵する鷹村、同時に岬の健在を確信する。
そう、岬の音楽は……いや、岬の存在は鷹村のように多くの人々を良い方向に変えて行くのだ。
今回もそうだったに違いない、と。
鷹村は岬についてふと多くの人に語りたくなった。
鷹村にとってそれは難しくない。
何故なら、鷹村は小説家として活躍していたのだから。
鷹村の筆名は中山七里。
そして、岬の活躍を描いたタイトルこそ本作『どこかでベートーヴェン』である―――エンド。
◆「中山七里先生」関連過去記事
【岬洋介シリーズ】
・『さよならドビュッシー』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『おやすみラフマニノフ』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『いつまでもショパン』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『間奏曲(インテルメッツォ)』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2013年版』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『要介護探偵の事件簿』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【刑事犬養隼人シリーズ】
・『切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人』(中山七里著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『連続殺人鬼カエル男』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『静おばあちゃんにおまかせ』(中山七里著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『残されたセンリツ』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい! 四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ポセイドンの罰』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい! 三つの迷宮』収録)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ版】
・金曜ロードSHOW!特別ドラマ企画「さよならドビュッシー ピアニスト探偵 岬洋介 今をときめく豪華キャストで『このミステリーがすごい!』大賞受賞作をSPドラマに!衝撃の結末に誰もが驚愕する!!」(3月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「切り裂きジャックの告白 〜刑事 犬養隼人〜 嘘を見抜く刑事VS甦る連続殺人鬼!?テレビ局を巻き込む劇場型犯罪!どんでん返しの帝王が挑む衝撃のラストとは!?」(4月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「このミステリーがすごい!〜ベストセラー作家からの挑戦状〜 天才小説家×一流映画監督がコラボした、一夜限りの豪華オムニバスドラマ!味わいの異なる4つの謎=各25分の濃密ミステリー!又吉×希林の他では見られないコントも!」(12月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「このミステリーがすごい!2015〜大賞受賞豪華作家陣そろい踏み 新作小説を一挙映像化」(11月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)
「さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)」です!!
さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)