2016年05月21日

『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)

『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

「美しく強かな継母が父を殺した」父の死後、生命保険金と遺産、そして順風満帆のビジネスを引き継ぎ、生き生きと活躍を始めた継母の姿に、女子高生の瑠璃はそう確信する。けれど誰にも信じてもらえない。
天涯孤独となった瑠璃は、死をもって継母の罪を告発するため、自殺の名所と言われる山奥で首を吊ろうとし――
そこで幽霊の裕章と出会った。彼は継母の罪の証拠を見つけようと提案する。期限以内に見つからなければその時死ねばいいと。
今日から六日後――それが瑠璃の自殺予定日となった。すべての予想を裏切る、一気読み必至の傑作ミステリ!
(東京創元社公式HPより)


<感想>

リーダビリティの高い長編作品です。

周囲に絶望していた瑠璃、だがその絶望は真実だったのか!?
一度は死を選びつつも、改めて目的の為に生を選んだ瑠璃が突き止めた真実。
それにより、瑠璃は自己愛で自身の視野が如何に狭窄に陥っていたかを知ることに。

人は誰しも1人では生きて行けない、瑠璃は多くの人に支えられていました。
そして、この出来事を通じてそれに気付き、大きな視点から周囲を見渡すことが出来るようになった。
そんな成長を描いた作品、何と言っても爽やかなラストは心地よいです。

また、本作には次の2つのサプライズが用意されています。

1つ目、れい子の真実。
2つ目、裕章の真実。

果たして、瑠璃が辿り着いた真実とは!?

あらすじはまとめやすくかなり改変しています。
あくまで本作のエッセンスを伝える雰囲気程度とお考えください。
興味をお持ちの方は本作を読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
瑠璃:主人公の少女
裕章:瑠璃が出会った男子
れい子:瑠璃の継母


女子高生の瑠璃は継母・れい子への憎しみを募らせていた。
何故なら、瑠璃はれい子が彼女の父を殺害し財産を奪ったと信じているからだ。
現に、れい子は瑠璃の父が謎の死を遂げた直後から事業を受け継ぐと、悲しむ素振りを見せることなくこれに取り組み、むしろ父の代を上回るスピードで急成長を遂げさせていた。

そもそもれい子が父と結婚したこと自体が不自然だったのだ。
初めから父を殺し会社を乗っ取るつもりだったに違いない。
そう考える瑠璃だが、誰も彼女の言葉には耳を貸そうとする者は居なかった。
誰もがれい子を企業人として優秀で、家庭人として優しい継母であると疑わなかったのだ。

ショックを受けた瑠璃は自殺を試みようと山奥の村へ。
ところが、其処で裕章という同い年ぐらいの男性に止められることに。
しかも、驚くべきことに裕章は瑠璃と同じような経緯で死を選んだ幽霊だと言う。
裕章に説得された瑠璃は6日の期限を設けると、れい子の悪事の証拠を掴もうと動き出す。

遂に、父の死後にれい子が毒物を処分していたことを知った瑠璃は彼女と対決するのだが……。

当のれい子から父の遺書を渡される。
なんと、父の死は経営に行き詰った為の自殺だったのだ。
この保険金で会社が持ち直し、れい子の事業手腕で拡大していたのである。
れい子は瑠璃の心を慮り、事実を隠蔽すべく遺書を隠し毒を処分したのだ。

これを知った瑠璃はれい子と和解。
また、この間に惹かれていた裕章に想いを打ち明ける。
此の世にあらぬ裕章に儚い恋と思われたが……。

実は裕章は生きていた。
幽霊だと告げたのは瑠璃を反発させることなく説得する為の真っ赤なウソだったのだ。

瑠璃と同じく、彼女に惹かれていた裕章。
こうして、瑠璃と裕章は恋人同士として生を謳歌するのであった―――エンド。

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posted by 俺 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする