2009年11月25日

しあわせの書〜迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術〜 (新潮社)

今回は「しあわせの書〜迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術〜(新潮社)」をご紹介します。

ネタバレあります、注意!!

ヨギ ガンジー1
「しあわせの書表紙 コメディタッチの雰囲気が出ていますが、実はもの凄い本です」

ヨギ2
「裏表紙」

ヨギ3
「著者の泡坂妻夫氏、多彩な経歴です。管理人の好きな作品が多く並んでいます」

泡坂妻夫:著
新潮社 :刊
初版:1987年7月31日
備考:もの凄い大仕掛けアリ

[内容紹介]
二代目教祖の継承問題で揺れる宗教団体“惟霊講会”。
布教のための小冊子「しあわせの書」に封じ込められた驚くべき企みとは何か?
(新潮社HPより)


≪レビュー≫
本名厚川昌男氏。偉大なマジシャンにして江戸から続く紋章上絵師。しかしてその正体は…著名なミステリ作家「泡坂妻夫」氏であります。
氏はつい先頃、2009年2月3日にお亡くなりになりました。享年75歳。惜しむべき巨匠の死でした。
亜愛一郎、曾我佳城、ヨギ ガンジー等の名探偵の生みの親である氏は本名「あつかわまさお」をアナグラム(並べ替え)した「泡坂妻夫(あわさかつまお)」の筆名でご活躍され、その悪戯心溢れる筆名どおり、また、マジックを手妻というように、作品はトリッキーかつ優雅なものが多くあります。ご自身のマジシャンとしての経験を活かした作品も多く、管理人は大ファンです。

今回の「しあわせの書」は、作品的内容よりも作品それ自体に大きな仕掛けがあり、ともかく「すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」の一言。
実際、その凄さは「まぁ、読め。とりあえず読め」レベル。

とはいえ、それではレビューになりません。
ストーリー自体を軽く説明すると、
得体のしれない胡散臭い修行僧ヨギ ガンジーが弟子と共に「惟霊講会」の後継者争いに巻き込まれ、2人の候補から次期後継者を1人決める断食競争の審判を任されるのですが、裏には大きな陰謀が蠢いていた……という内容。

以下、軽いネタバレ
実は作中にも「しあわせの書」が登場しますがこれが曲者。
後継者を決めるために行われるのは断食競争。
競争相手を蹴落とすためには、こっそり食事をとればよいわけで…。
この「しあわせの書」はミネラルたっぷりデンプンたっぷりの紙で出来ており、水に溶かすと食料になるという設定。
2人の後継者候補のうちの一方がこれをやっていたというわけ。
他にも、小さい悪戯心はあちこちに見受けられます。



でも―――実は―――もっと―――凄い秘密がこの書には隠されていたのです。


ヨギ4
注意:上の通りです。この「しあわせの書」の本当の秘密を知ると本編が純粋に楽しめなくなる恐れがあります。それでも構わない方は下の「続きを読む」から進んでください。







ここから完全にネタバレになります、よろしいですか?

では、完全ネタバレです。ご覚悟を!!

まずは、以下の写真をご覧ください。
ヨギ5
           写真1

次に、こちら。
ヨギ6
           写真2




じっくり見てください。文中にもヒントがあります。
気がつきましたか?









では、写真1の右上隅にご注目!!
そう、「取り柄でしょうか」。
次に写真2に移りまして、左から2行目、一番下の単語。
「海尻さんの取り柄


お気づきでしょうか?実はこの2枚の写真。見開きのページなんです。写真1が230ページ。写真2が231ページ(写真にもありますね)。
2つの写真には共通項があります。
そう、「取り柄」という単語。
つまり、右上隅(偶数ページ先頭)と左下2行目の単語が同一のものなんです。
これこそがトリック。
この「単語が同一」現象。このページだけではありません。
この本のすべてのページでこれと同じことが起こっています。
単語は「取り柄」だけではありません。
さまざまな単語が同じ法則に基づき一貫して仕掛けられているのです。すべてのページに。270ページ近くに。
もう、脱帽でしょ。

これ、気がついたときには震えがきました。



あなたを幸せにするかもしれない「しあわせの書」はいかが?
しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)



その他のヨギガンジーはこちら。
「ヨギガンジーの妖術 (新潮文庫)」です!!
ヨギガンジーの妖術 (新潮文庫)





「生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)」です!!
生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)





参考資料
著者:泡坂妻夫氏について

小説家。昭和8年、東京・神田生れ。家業の紋章上絵師を続けるかたわら、昭和51年『DL2号機事件』で第一回幻影城新人賞に入賞し推理作家としてデビュー。以後『乱れからくり』(日本推理作家協会賞)、『折鶴』(泉鏡花文学賞)、『蔭桔梗』(直木賞)、『家紋の話』、『泡坂妻夫 マジックの世界』など著書多数。創作奇術の作者としても著名。
(新潮社公式HPより)
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posted by 俺 at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
著書前書き、後書きにも秘密を明かさないように書いてありはずですが。
作者の意思を尊重するのが、エチケットでしょう。特にこの手の本は。
Posted by sugikan at 2011年12月27日 14:57
Re:sugikanさん

コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です!!

ネタバレについては特に注意していたのですが、不快な想いをさせてしまい申し訳ありませんでした。

本ブログでの「ネタバレ書評(レビュー)」の扱いについては次のようになっています。

まず、「ネタバレ」であることを強調すること。

次に、「あらすじ」「感想」「ネタバレあらすじ」の順に記載することで「ネタバレを避けたい方には感想までで留めて貰う」こと。

これにより、ネタバレを避けたい方には感想までで止めて頂ければその作品について知って頂くことが出来るかと思います。

とはいえ、管理人の感想が伝わりにくいこともあると思います。
その際には「なぜ、こう感じたのか」「なぜ、こう思ったのか」「どこがどう凄いのか」を知って頂くためにネタバレを見て頂く方が理解が進むこともあるかもしれません。

管理人は泡坂妻夫先生の作品が大好きです。
『亜愛一郎シリーズ』『曾我佳城シリーズ』『七枚のトランプ』『乱れからくり』など。
稚気があり、工夫が凝らされており、手間を惜しまない―――泡坂先生の作品にはこれらが溢れています。

特に『ヨギ・ガンジーシリーズ』の1つである本作『しあわせの書』は大好きで、1人でも多くの方に知って頂き、管理人と同じ驚きを味わって貰いたいと思います。
その為に本作のネタバレ書評(レビュー)を記事にしました。

その気持ちが先走ってしまったことはあるかもしれません。

それと、他のネタバレ書評(レビュー)をご覧頂ければお分かりになるかと思いますが、本作についてはその作品の特殊性から、管理人なりにネタバレ部分には注意を払っております。

まず、ネタバレあらすじ部分を出来得る限り簡略化することで本作への興味を出来るだけ削がないようにしています。

次に、本作の秘密については先頭に写真を置くことで配慮しています。
ここから先を読んでしまえば、本作を楽しめなくなる可能性があると伝えるためです。

ただ、些かネタバレであることについての強調が弱かったかもしれません。
そこで、本作についてはご指摘を活かし、ネタバレであることをさらに強調しようと思います。

管理人の拙い批評(レビュー)が、1人でも多くの読者の本作との出会いの機会を作れればと願って止みません。
ご指摘ありがとうございました。
Posted by 俺 at 2011年12月27日 20:23
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