2009年10月28日

水車館の殺人(綾辻行人著、講談社刊)

水車館の殺人です。

水車1
「水車館の殺人 表紙 陸の孤島となった館の雰囲気が出ています。
 ちなみに、こちらは1992年度版の表紙。
 2008年に新装版が出ておりますので、お買い上げの際にはご注意を」

水車2
「水車館の殺人 裏表紙 おどろおどろしい言葉が並んでいますね」

水車4
「館もの定番の見取り図でーす」


綾辻行人:著 
講談社 :刊
初版:1992年3月15日
備考:氏の描く「館」シリーズの堂々たる2作目。「館」シリーズは全十作完結予定らしい。


[内容紹介]
古城を思わせる異形の建物「水車館」の主人は、
過去の事故で顔面を傷つけ、常に仮面をかぶる。
そして妻は幽閉同然の美少女。
ここにうさんくさい客たちが集まった時点から、惨劇の幕が開く!
密室から男が消失したことと、
1年前の奇怪な殺人とは、どう関連するか?
驚異の仕掛けをひそませた野心作。
                  (講談社HPより)


≪レビュー≫
(注意)ネタバレ含みます。それでも構わない方はご覧ください。

まずは、以下の登場人物一覧をご覧ください。

水車3
「水車館の殺人 登場人物一覧」

あからさまに怪しげな人物ばかりです。
犯人は……この中にいるっっっっっ。(←当たり前だっつうの)
と、冗談は置いといて「水車館の殺人」。
今回、これを取り上げたのには理由があります。
前回、取り上げた「アヒルと鴨のコインロッカー」とミステリ的なテーマが近いからなんです。
もっともこちらが明らかに先行作なのですが。

で、その近いテーマというのが。

1.ストーリーは過去と未来が交錯している。
2.入れ替わり
3.叙述トリック

もうおわかりでしょうか。そう、基本骨子は前回と同じなんですね。(クドイようですがこちらが先行作です。


ストーリー、メイントリックについては→「続きを読む」をクリックしてください。(完全ネタバレ)

最終的な結論としては……
「水車館の殺人」がサスペンス的な作品に対して「アヒルと鴨のコインロッカー」はジャンル通り青春ミステリであるということ。
トリックの完成度を楽しむのなら前者。雰囲気を楽しむなら後者。
管理人のように比較するもよし、好みによって選択しましょう。

この「水車館の殺人」は上のミステリ的テーマ以外にも、大がかりなトリックが多用されており、それが緻密に仕掛けられています。ラストの「幻影群像」のくだりもゾクッとします。非常におすすめの一本です。


*「館」シリーズについては今後も当ブログにて取り上げていくつもりです。お楽しみに。このシリーズは基本叙述に頼りつつ、トリックの骨子がきっちり完成しているものが多く、なかなか侮れません。


講談社ホームページアドレス http://www.kodansha.co.jp/
















ここからは完全にネタバレになります。


上の登場人物一覧をご覧ください。
(写真クリックで別ウィンドウ開きます)
藤沼紀一氏めちゃめちゃ怪しそう……。
そして何より、藤沼紀一、由梨絵、正木慎吾の3人は2行も費やして解説されていますね。どこか、怪しい。

そう思われたあなたは正しい。正しいは正義です。

裏表紙に記載された密室から消えた男とは一年前の古川氏のこと。
で、それと前後して正木がバラバラ死体(薬指だけ確保、残りは焼却炉)となって発見される。薬指の指紋は正木のもので間違いない、犯人は消えた古川と思われるわけですが……。

はい、その通りです。犯人は正木。自分の薬指を切り落として(@_@;)!!!、現場に残したのでした。
で、古川の消失は正木によって殺害されバラバラ死体として運ばれたので、誰も気づかなかったため。

で、肝心の正木が一年後の現在、どこにいるかというと藤沼紀一といれかわっているんです。紀一本人は殺害されています。
もちろん、藤沼の妻である由梨絵も共犯。

ここまでに、色覚障害や現在の紀一についての身体的特徴などを含めて非常に丁寧に仕掛けが施されています。
一例としては、地の文に庭の木々が灰色にみえたと記載されているのですが、読者は心象表現だと読み流してしまうわけです。
これが色覚障害のヒントなんですね(緑色が灰色にみえる)。
うーん、芸が細かい。

ラストは「館」のシリーズ探偵である「招かれざる客」こと島田潔
により、すべてを暴かれてしまうのでした。
にしても、「幻影群像」のくだりは秀逸。
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posted by 俺 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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