2009年12月01日

乱れからくり(東京創元社)

今回のネタバレ批評(レビュー)は「乱れからくり」(東京創元社刊 泡坂妻夫著)です。当然、ネタバレありますのでご注意。

からくり1
「乱れからくり 表紙 不思議な絵です」

からくり2
「乱れからくり 裏表紙 ムムム……」

泡坂妻夫:著 
東京創元社:刊
初版:1993年9月24日
ジャンル:ミステリ
備考:日本推理作家協会賞受賞
ページ数:378ページ

内容:
【日本推理作家協会賞受賞】
玩具会社部長の馬割朋浩は隕石に当たるという奇禍で命を落とす。その葬儀も終えぬ内に彼の幼児が睡眠薬を過って飲み死亡する。さらに馬割家の人々のあいだで不可解な死が連続して……。ねじ屋敷と呼ばれる馬割家の庭に造られた巨大迷路に隠された一族の謎とは? 伝法肌の女性探偵と新米助手の活躍が楽しい、日本推理作家協会賞受賞作。
(公式HPより)



まずは、登場人物から。

からくり3
「乱れからくり 登場人物一覧 さて、誰が犯人だ?」

物語は、主人公・勝 敏夫を中心に進んでいきます。
探偵役は宇内 舞子。

では、ストーリーを。

ボクサーになる夢を諦め、定職を探していた青年・勝。
そんな彼が見つけた仕事は宇内経済研究所の助手だった。
経済研究所とはいうもののやっていることは探偵事務所とそう変わりは無い。
事務所ボスの宇内は元警官。
警察を辞めたことにも理由がありそうだが……。

なんやかんやで勝にとって初仕事が舞いこむ。
依頼人は「ひまわり工芸」という名の玩具会社で部長職を務める馬割朋浩。
依頼内容は妻の素行調査だった。
朋浩によればその妻・真棹に不貞の疑いがあるという。
数日間の尾行の結果、真棹は夫・朋浩のいとこにあたる宗児と関係があることが判明。

数日後、朋浩、真棹夫婦は仕事の関係で海外へ。
空港へ向かう途中、念のため後をつける勝、宇内の目の前で、夫婦の乗った車が事故に巻き込まれる。
車が炎に包まれる中、仕事道具を取りに火の中へと飛び込む朋浩。
その時の傷が元で、朋浩は病院で死亡してしまう。
死の間際、うわ言のように真棹に「仕事を投げ出すな海外へ行くように」と指示する朋浩だったが、真棹は約束を守らず、家へと戻ってしまう。

朋浩の葬儀がしめやかに執り行われたその晩、新たな悲劇が。
真棹の子供、透一が多量の睡眠薬を服用させられ死亡したのだ。
その遺骸の傍らには透一お気に入りの「あかべこ」という電池式の玩具が転がっていた。
それを見て涙ぐむ真棹。
透一は幼児。自らの手で薬を飲む筈がない。
何者かに服用させられたのだ。
だが、朋浩の葬儀当日とあって出入りが激しく犯人を特定できない。

捜査陣が困惑する中、宇内と勝は独自の調査を進める。
その過程で、宋児の妹・香尾里から亡き朋浩が優しくナイーブな人物で、旅立つ直前に万華鏡をプレゼントしてくれるようなロマンチストであることを聞く。
さらに、宋児自身から彼と朋浩の仲が険悪だったこと、彼と真棹の不倫関係も確認される。
宋児と再婚するために亡き夫の忘れ形見、透一を殺害したのでないかとの疑いが真棹にかかる。
調査は進み、結果、透一が服用させられたと思われる睡眠薬をその数日前に真棹が購入していたことが判明。
真棹は「夫に頼まれただけ」と釈明するが、疑惑は深まるばかり。

その矢先、今度は宋児がからくり人形に仕掛けられた毒により命を落とす。
人形のねじを巻いたところ、毒針が仕掛けてあり、それにやられたのだ。
事件発生自体が宇内、勝の目の前という異常事態だった。

続いて、その妹、香尾里が誕生日に眼球を撃ち抜かれた姿で射殺体で発見。
周囲は泥地で犯人らしき足跡は発見されず不可能犯罪に。
捜査陣を嘲笑うかのような犯行。
姿の見えぬ犯人に苛立ちが募る警察。

そんな中、宇内が警察を辞めた理由は、辞めたのではなく、冤罪で辞めさせられたことがわかる。
世の中の理不尽に怒りを覚える勝は、もう一人の理不尽による被害者・真棹への同情の念を深くし、やがて惹かれるようになる……。

その頃、当の宇内はねじ屋敷の秘密へと近づいていく。
ねじ屋敷の迷路の謎。

そして、ついに4人目の被害者として鉄馬が毒殺される。

この連続殺人の犯人は誰か?
その目的とは?
ねじ屋敷に隠された謎は?

完全ネタバレは下の「続きを読む」からどうぞ。








ここから、完全ネタバレ。

鉄馬が殺害されるにおよび容疑は完全に真棹に向かう。
他に利益を得る人物がいないからだ。
だが、真棹はねじ屋敷の迷路の奥へと消える。
追う勝、宇内。
宇内は語る、犯人は真棹ではないと。
真犯人は死亡した朋浩だった。

透一は、睡眠薬を甘いお菓子と思い込み口にして死亡した。
睡眠薬によく似た形状のお菓子を常々食べさせられていた透一。
「あかべこ」の電池ケースの中へ乾電池に似せて仕込んでおいた睡眠薬の瓶。
中からは普段口にしている甘いお菓子に似た錠剤が。
透一は自発的に口にしたのだ。

宗児は、からくり好きだった。
いつかは触る筈だったからくりに毒針を仕掛けそれを触った宗児が死に至った。

香尾里は、ロマンチストな気質を利用された。
自身の誕生日に朋浩のプレゼントである万華鏡をのぞき込み、万華鏡を回した。それに仕掛けてあった銃により死亡したのだ。

鉄馬は、日常服用している薬を薬瓶ごと事前にすり替えられていた。
中身はすべて毒薬だったが、そのすべてがプラスチックカプセルで覆われていた。
当然、服用しても胃では溶けださず、効果はない。
ただし中の一粒のみカプセルがゼラチンであった。
瓶の中身は14、5錠。
2週間以内には毒入りカプセルを引き当てる計算になる。

朋浩は玩具を扱う感覚で次々と殺人トラップを仕掛けそれを発動させた。
しかし、その効果は決して朋浩の望む形ではなかったのである。

朋浩本来の狙いは自分と真棹が海外に居る間に、自分たち以外の馬割家の人間を殺害し、ねじ屋敷の秘密を己の物にすること。
実は、透一は宗児と真棹の間の子供。
朋浩にとっては憎むべき不義の子だった。
誰でも実行可能な犯罪(透一)、衆人環視の元の殺害(宗児)や不可能犯罪(香尾里)は朋浩の狙いには無いものだったのだ。
朋浩の留守中に事が終わればそれでよかった筈だった。
だが、現実には張本人の朋浩が真っ先に死亡し、彼がねじを巻いた犯罪計画は止めようもなく忠実に実行された。
そして、その事実に真棹も気が付いていた。
だから、真棹は己の罪深さに身を隠したのだ。

結局、宇内と勝の活躍により、真棹は保護され、ねじ屋敷の秘密も白日に晒された。
ねじ屋敷の秘密とは埋蔵金が隠されていることだった。
その埋蔵金をめぐって多くの血が流れたのだ。
真棹に惹かれていた勝だったが、莫大な遺産を手にした真棹ははるか遠い人になってしまった。

END
と、云う感じの物語です。

埋蔵金の隠し方や、玩具についての蘊蓄など非常に面白いのですが管理人の文章力ではお伝えできませんでした……(泣)。
興味のある方は是非、一読をお勧めします。

他にも章題がすべて玩具の名前になっていたりと、遊び心は枚挙に暇がありません。
以前ご紹介したヨギガンジーの作者である泡坂妻夫さんだけに抜かりはなく、その章題と章ごとの内容は深く関わっており、注目してほしいポイントのひとつです。

実はこの「乱れからくり」映画版がありまして……
原作とはかなり違います。
次回は映画版「乱れからくり」について取り上げたいと思います。
2月26日追記:映画版「乱れからくり」はこちら

「乱れからくり」です。管理人のレビューと比較してみては?
乱れからくり (創元推理文庫)





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posted by 俺 at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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