<あらすじ>
新宿中央公園で後頭部を殴打された若い女の死体が発見され、牛尾刑事(片岡鶴太郎)ら新宿西署の捜査員が現場に急行する。派手な身なりのその女は、所持品から都内の高校生・八木ひとみ(水崎綾女)と判明する。
被害者のバックの中には、新札で十万円入りの封筒が残されていたことから、行きずりの犯行ではなく、援助交際のもつれによるものとの見方が強まる。被害者の携帯電話がなくなっていることも顔見知りの犯行を示唆していた。また、犯行時刻は前夜の9時から午前零時の間と推定された。
被害者の父親で銀行員の八木順一(小木茂光)の話では、ひとみは中学時代からグレだし、万引きや恐喝、果ては援助交際にまで手を染めて、家族のもてあまし者になっていたという。八木は一昨日から、ひとみを除いた家族で長野の野尻湖へ行っていたため、ひとみの前夜の行動は把握していないということだった。
牛尾は、いつかこんなことになるんじゃないかと思っていたという、八木の言葉が胸に刺さった。
翌日から、警視庁捜査一課の那須警部(辰巳琢郎)の指揮のもと、本格的な捜査が開始された。
やがて、捜査線上に、ひとみが“ドクター”と呼んでいた男が浮かぶ。そのドクターなる男は、ひとみに高級腕時計を買い与えたり、ひとみを連れてホテルに出入りしたりするところを目撃されていた。
そんな中、『週刊トピックス』の記者・川村冴子(水野真紀)が牛尾のもとを訪ねてくる。冴子によると、以前取材の折に知り合った吉見音松(ケーシー高峰)という老人が行方不明になっているというのだ。
半年ほど前、冴子の乗り合わせた路線バスが、彼女が降りた直後に運転手が急病死したため暴走、車内にいた三人の客の中の一人がブレーキを踏んで、大事故になるところを未然に防ぐという騒ぎがあった。それまでは赤の他人だった三人が、たまたま乗り合わせたバスの車内で、死の恐怖に直面したという事実に運命的なものを感じた冴子は、この三人による座談会を企画したが、三人にはあっさりと断られてしまっていた。そして、その乗客の一人、妙高高原で喫茶店を開いている吉見正造(六平直政)の父親が音松だった。
座談会の話は正造にけんもほろろに断られてしまったが、その時親切にしてもらった音松のことは、冴子の心に残った。そんなこともあり、別の取材で近くに来たついでに音松のもとに立ち寄ったところ、彼が行方不明になっていることを知ったのだ。
そこで、ライバル誌の緒方浩平(船越英一郎)に相談したがらちがあかず、牛尾のもとに来たというわけだった。
冴子から話を聞いた牛尾は、他の乗客の一人が殺されたひとみの父親・八木だということを知る。さらに、もう一人は山寺元直(杉本哲太)という医者、つまりは”ドクター“だという。同じバスに乗り合わせた三人のうち、一人は娘を殺され、一人は父親が行方不明になっている。果たしてこれは偶然のことなのか? 牛尾は冴子とともに正造に会うため妙高に向かうが…。
(写真・あらすじ共に公式HPより)
妙高に向かった牛尾と冴子。
正造にとって音松が目の上のこぶのような存在だとわかる。
帰り際、登山服姿の山寺を見かけた二人。
なぜ、山寺がここに?
疑問に思う牛尾。
ひとみと交際していた「ドクター」は山寺以外の医師であることが判明。
そのひとみの交際相手にもアリバイがあった。
ひとみ以外の女子高生2人と援助交際していたのだ。
混沌とした時代を感じさせる事態に暗澹とした気持が隠せない牛尾。
そんな中、山寺が死体で発見される。
山寺の家を訪ねる牛尾。
山寺の家のひとり息子が家庭内暴力を起こしており、山寺が悩んでいたことがわかる。
八木、吉見、山寺。
それぞれがそれぞれの家庭に事情を抱えていた。
それもたったひとりにそれぞれの家庭が振り回されているという事情だ。
都合よくそのひとりが八木、吉見家から姿を消した。
これが意味するところは……。
ここで、牛尾が八木、吉見、山寺の3人による交換殺人だったのではないかと思い付く。
バス事故という死線を越える経験を共有した3人。
運命共同体としての意識が芽生えてもおかしくは無い。
だが、山寺の場合、死んだのは山寺自身だ。
これをどう説明するのか。
ここで、山寺が生前口にしていたと云う言葉を思い出す牛尾。
「俺はまだ死ぬわけにはいかない。やらなければならないことがある。山に行かねば、雪の……」
山寺の言葉を“山が雪に閉ざされる前にやらなければならないことがある”そう推理した牛尾。
そう、妙高に何かある。
音松の行方も気になる牛尾は妙高を調べることに。
ただし、容疑が確定していない以上捜査本部を動かすことは出来ない。
牛尾ひとりの捜索に。
数日が経過したある日、噂を聞きつけた冴子が牛尾の手助けにやってくる。
そして、ついに冴子が音松を発見する!!
八木と吉見が取調室に連行される。
そこで、八木の顔を蒼白にする出来事が。
なんと―――音松は生きていた!!
息子に依頼された八木に殺されかけた音松だったが、運良く息を吹き返した。
誰の差し金がすぐにわかった彼は、家に戻るわけにもいかず、かといって息子を告発するわけにもいかず、人知れず山中に身を隠していた。
だが、牛尾から交換殺人のからくりを聞いて告発する決意を固めたのだ。
逮捕された八木と吉見。
罪を全面的に認める。
真相はこうだ。
バス事故後、酒の席を設けた3人。
山寺が酔いに任せた冗談で交換殺人を口にする。
それは冗談に終わる筈だったのだが、八木家ではひとみの放火事件が起こる。
ついに耐えきれなくなった八木。
反対した山寺には秘密で吉見と交換殺人を実行。
吉見との間に、娘への最後のチャンス―――吉見の援助交際の誘いをひとみが断ること―――を設け、断れば殺害計画は中止とした上で実行に移した。
結果は、ひとみは吉見により殺害されることに。
八木も約束通り音松を襲い、殺害に成功したと思っていた。
驚いたのは山寺。
自分が口にしたこととはいえ実際に人が死んでしまったことにショックを受け、事実を八木、吉見に確認した。
これに、山寺をも邪魔者とみなした二人が山寺を殺害してしまった。
ラストシーン。
牛尾が山寺家を訪れる。
山寺の妻に八木の言葉を伝える牛尾。
八木は生前山寺が語った言葉と前置きした上で、山寺が交換殺人に踏み切らなかった理由を告げる。
山寺は医師としてとある青年の死を看取った際に、「なぜ、これが息子ではないのか」と考え、ハッとしたと云う。
病院と家を往復した毎日。
夜の闇の中、家路を急ぐその眼に見える灯。
息子の部屋の明かりこそが山寺を癒していた。
最近こそ、息子は恐怖の対象だが、幼い頃の彼に支えられたことも多かった筈だ。
そして、それは今も続いている……。
山寺は、それに気が付いたのだ。
八木はなぜ、あのときの山寺の言葉に耳を貸さなかったのか今では後悔していると云う。
泣き崩れる山寺の妻。陰で聞いていた息子も涙を流す。
帰り道、生前の山寺と同じように家路を急ぐ牛尾は思う。
街の灯の数だけ人生がある。
そして、その灯は暖かい家族の象徴なのだ、と。
終わり。
<感想>
ラストの部分は管理人から観た「灯」になっている(主観アリ)ので、ちょっと違うかもです。
でも、大意は合っている筈。
交換殺人自体は割と早めにわかるかと。
ただ、そこから家族の絆に繋げたところがこの話のミソ。
最後の山寺のセリフ、牛尾のモノローグ、共にジーンときました。
誰しもが一度は味わう感覚なのかも。
人はひとりでは生きてはいけない、少なくとも身近に家族がいなければ。
それは、妻であり、子であり、親であるのかもしれません。
次回は2010年1月9日(土)「法医学教室の事件ファイル」です。
こちらも長〜く続くシリーズもの。楽しみですね。
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先日再放送を観て、(たぶんリアルタイムの時も観たにもかかわらず)感動してしまい、いつごろの再放送なんだろうと思ってブログを検索すると、ありました!このブログ、長くやっておられるのですね。
しかも、昔は、写真入り、感想が太字・・・私からみた「灯」も管理人さんの文章と同じで共感しました。
牛尾刑事が山寺家を訪問するラストのシーンが涙があふれて仕方なかったです。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
本作の批評(レビュー)は当ブログを始めたばかりの頃のものですね。
ご指摘の通り、現在とはいろいろと異なり試行錯誤の跡が見えてお恥ずかしい限りです。
いや、今もまだ試行錯誤はしてるかも。
本作『灯』はそんな頃に管理人が視聴して涙腺を刺激された作品でした。
今思えば「2時間ドラマ」の批評を続ける1つの原動力となった作品かもしれません。
ラストの映像と牛尾刑事のモノローグが印象に残っています……名作です!!