「この柔らかいタッチの絵は『天才柳沢教授の生活』で有名な山下 和美さん!?」
残念ながら「十角館の殺人(以下、十角館)」は管理人の手許にありません。
で、今回は管理人のうろ覚え批評(レビュー)です。
間違ってても笑って〜♪許して〜♪
「十角館」をお持ちの方は管理人のうろ覚えレビューと突き合わせてみると面白いかも。
もの凄くネタバレあります!!注意!!
犯人……いや、まだこの時点では何ら罪を犯していない以上、この呼び名は相応しくないが、彼は間違いなく今後犯人になる人物である……その彼がボトルレターを海へと流している。
それは、なんらかの決断をした瞬間だったのかもしれない。
この瞬間、運命は決していたのだ。
角島へやってきたミステリ研究会の面々。
彼らは、尊敬すべき偉大なる作家の名を己の呼び名としていた。
まずは、リーダーであるエラリィ。
エラリィに比肩する推理力の持ち主、医学に造詣が深いポウ。
気性の激しいカー。
エラリィからワトソン役を仰せつかることが多い苦労人ヴァン。
気弱なルルゥ。
女王として君臨するアガサ。
引っ込み思案なオッツィ。
島内の中村青司が作ったとされる「十角館」で彼らは過ごすことになった。
中村青司は伝説の建築家で、過去、妻を殺害し自らも命を絶ったとされるいわくつきの人物。
ただ、生死ははっきりしているわけではなく、一説には「生きているのでは」とも云われていた。
一方、中村青司の娘、中村千織が急性アルコール中毒で死亡した事件でアルコール・ハラスメントであるとする怪文書がミステリ研究会メンバー宅に届く。
メンバーのひとり、江南はその事件の調査に立ち上がるも、事件に関与した人間が揃って角島へ旅行に出てしまっており慄然とする。
「何か起こるのではないか」
不安に駆られる江南。
そんな折、島田潔と名乗る人物に出会う。
彼は江南の話に強い興味を持った様子で、協力を申し出てくる。
心強い味方・島田を得た江南はもうひとり本土に残っていた守須に連絡を取る。
守須は詳しいことは一切知らないらしく、学生時代最後のモラトリアムを楽しむべく、風景画を描いていた。
江南が守須を訪ねる度に完成されていく絵と同じく、角島ではメンバーがひとりまたひとりと殺害されていた。
オッツィが腕を切断された無残な姿で発見される。
次いで、カーがカップに塗られた毒で殺害される。
浜辺でルルゥが石で撲殺。
リップに仕込まれた毒でアガサが死亡。
煙草に仕込まれた毒でポゥが死亡(ポゥはヘビースモーカー)。
残されたのはエラリィとヴァンのふたりのみ。
どちらかが犯人かと思われたが、エラリィは外部犯行説を主張。
ついに真犯人と対決するが……翌未明から十角館は炎に包まれすべては灰に。
本土からも確認できたその炎。
江南の不安は的中してしまった。
だが、焼け跡から出てきたのはメンバー6人の死体だった。
ここから、本当に完全ネタバレです!!未読の方は気をつけて!!
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江南から事の顛末を聞いた島田が守須に尋ねた。
「へぇ〜、エラリィにポゥねぇ。
じゃぁ、守須君はモーリス・ルブランなのかい?」
それは、かの怪盗紳士を生み出した偉大な巨匠の名だ。
頷くかと思われた守須。だが、彼は首を横に振る。
「いえ、僕の名はヴァンです」
実は、守須は千織と恋人関係にあり、恋人を奪うアルハラを行ったメンバー全員に復讐したのだった。
島の内外を簡易ゴムボートで行き来し、アリバイを成立させた。
絵は進み具合に合わせたものを事前に数枚用意し、状況に応じて見せただけだった。
メンバー内に犯人は居たのだ。
ラスト。
誰も真相に気付かず、容疑の圏外に居る守須。
海で佇んでいる。
そこへやって来た島田。
彼は守須に犯行が可能であることを示す。
が、証拠がない。
そこへ、子供がボトルレターを持ってくる。
それは、守須の良心。
自分がこれから行う犯行のすべてを書き記した唯一の証拠だった。
千織の意志がそこにあることを感じた守須は自首を決意し、島田にすべてを話すのだった……。
エンド。
<感想>
うーん、やっぱり名作です。
読者を騙そうとする意欲作であることは間違いありません。
そして、ミステリ史上に残るエポックメイキングな作品。
ここから、島田潔の旅が始まったと思うと感慨深いものがありますね。
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