2009年12月21日

月曜ゴールデン特別企画 松本清張生誕100年記念スペシャルドラマ『火と汐』(12月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)

月曜ゴールデン特別企画 松本清張生誕100年記念スペシャルドラマ『火と汐』(12月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

<あらすじ>
ある日、三浦半島沖で事故が発生した。芝村健介(渡部篤郎)の乗ったヨットから、同乗していた上田(東根作寿英)という男が海に投げ出され行方不明になったという。この海上事故と同じ頃、京都の雑木林で女性の遺体が発見される。被害者は芝村美弥子(西田尚美)、芝村の妻だった。
京都府警の警部・熊代(寺尾聰)は、後輩刑事の東(山本耕史)と共に、殺人事件として捜査を開始。熊代は早速、妻の遺体の確認で京都に来た芝村に状況を聞く。芝村によると、美弥子はクラス会に出席するために、京都へ来ていたという。そして、彼女が京都へ行っている2日間、芝村は友人の上田と共にヨットで、油壺〜三宅島間を往復するクルージングに出ていたという。しかし、東が調べたところでは、美弥子が言っていたようなクラス会の予定は存在せず、彼女は芝村の友人である曽根(遠藤憲一)と2人で京都に来ていた。しかもその曽根は、現在行方不明。芝村は、妻を亡くし、その妻が自分の友人と不倫旅行をしていたことを知り愕然とする…。
偶然にも同時期に起こった事件と事故。熊代は、この二つが何らかのつながりを持っていると直感し、柴村の周辺を探るために上京する。そして熊代と東は、美弥子の親友・かほり(清水美沙)に話を聞く。芝村と美弥子の関係は冷めており、半年ほど前から曽根と不倫関係にあったことなどを告白するかほり。また2人は、上田の妻・咲子(佐藤仁美)にも、当時の状況を聞く。
そんなとき、2つの事件と事故の捜査を続ける熊代のもとに、曽根が確保されたとの報せが入った。熊代は府警に戻り、曽根を尋問する。すると、不倫は肯定したものの殺害は否定、それどころか、美弥子は曽根と大文字焼きを見に行っていたとき、突然、自分の前からいなくなったという…。
(公式HPより)


登場人物:
芝村健介(渡部篤郎):シバムラ精密機器の2代目社長。渦中の人物。
芝村美弥子(西田尚美):被害者。雑木林で死体で発見された。
曽根(遠藤憲一):商業デザイナー。美弥子の不倫相手
かほり(清水美沙):美弥子の友人
上田(東根作寿英):芝村のヨットから事故死(ワイルドジャイブ)?
咲子(佐藤仁美):上田の妻
熊代(寺尾聰):京都府警の警部
東(山本耕史):熊代の後輩

補足:ワイルドジャイブとは―――
『追い風で走っている最中、風向きが変わり帆が振られること』。
今回は振られた帆に当たり、上田が転落したとされた。


芝村によればワイルドジャイブが起き死んだとされる上田=海=汐
不倫の末、雑木林で死んだとされる美弥子=大文字焼き=火

ここに「」が産まれた―――

では、本編を。

美弥子の服についていたサルトリイバラ(サルトビイバラ?)、その意味は?

かほりによれば「京都で答えを出す」そう語っていたという美弥子。
今回のクルーズから帰れば店を出すと語っていたという上田。
事実ならば、資金援助のあてがあったことになるが……。

(上田の資金援助元は芝村で)アリバイ作りの代価ではないか。
そう語る熊代。

そんな中、ついに和歌山で曽根が発見される。
美弥子との不倫を認める曽根。
しかし、殺害は否定。
大文字焼きの最中に姿が見えなくなったと云う。

果たしてシバムラ精密機器社長・芝村の計画とは……。
事件の真相は?

注意!!ここからネタバレです!!

曽根の聴取。
曽根にとって芝村はパトロンのような関係らしい。
気になるメールがあるという曽根。
生前の美弥子によればメールの主はアドレスを変えたかほりだったそうだが……。
さらに、美弥子は夫との欺瞞に満ち溢れた生活に終止符を打つと語っていたらしい。

メールの件で確認。かほりはアドレスを変えた覚えはないと云う。
メールの主はかほりではない?

東の捜査で、芝村は会社の実権が無く、借金で汲々としていたことが判明。
美弥子の保険は2億円。
咽喉から手が出るほど欲していた筈、動機はある。

だが、芝村に8月15日朝〜17日の夜までのアリバイがある限り手が出ない。

昼前に三宅島についたという芝村の証言をもとに確認をとる熊代、東。

8月16日13:30時点で地元の人間と交渉しており、アリバイは成立。
サルトリイバラについても心当たりはないと云う。

空港に備え付けた監視カメラの映像を確認する。そこには帽子にサングラス姿の人物が。これは芝村か?はっきりとは証明できない。

上田と共犯だったとして、行きは問題ない。だが、帰りは?
どうやってヨットに戻ったのか?

ワイルドジャイブは起きなかった―――そう仮定する熊代。
真鶴付近で事故が起こったと偽装するからにはそこである必要があったから。
つまり、芝村がヨットに戻ったとするならそこだ。

どうやって芝村が美弥子の居場所を突き止めたのか?
それが問題だとする東。

妻との待ち合わせであることに気付いた熊代。

一方、東もある情報を掴む。
美弥子は8月20日生まれ、毎年誕生日をレストランで祝っていた芝村夫婦。
ところが、この年に限って8月15日時点で芝村がキャンセルをいれていたという。
事前に、美弥子の死を知らなければ出来ないことだ。

捜査本部は曽根の犯行と断定、起訴に踏み切ろうとする。
それに対し熊代が頑強に抵抗。ついに2日の猶予を引き出す。

再び、曽根の聴取。
美弥子との不倫も芝村への当てつけだったと語る曽根。
美弥子自身も何かへの当てつけがあったようだ。
美弥子からかほりを紹介されたこともあったらしい。
「これで芝村から自由になれる」どこかほっとした表情の曽根。

1日目、東京へ出張。芝村家を訪ねるが上手くあしらわれる。

焦った東は熊代と別れ、現在掴んだ情報すべてを芝村にぶつけるが……芝村に挑発される結果に。

東と別れた熊代はかほりに接触。芝村の情報で揺さぶりをかける。

サルトリイバラの広告を見つける東。
三宅島にも生息しているらしい。

ここで1日目が終わる。

2日目、三宅島へ。
「サルトリイバラ」は三宅島の住民には「サルキライ」として認識されていた。
前回と違い、存在を確認した熊代たち。
芝村はここを通ったのだろうとの勘をたよりにサルトリイバラの群生地を虱潰しに探す。
島内ではタクシーも使えない。
歩いて空港に向かったに違いない。
看破する熊代。

同じ頃、上田の死体がついに発見される。

港。
ヨットの上で何やら作業をしている芝村。
芝村に自首を勧めるかほり。
かほりが美弥子の京都行きを芝村に教えてしまったらしい。
それに対して芝村から曽根のことを愛していたんだろうと揶揄される。
「すべて警察に話します」
「証拠がないよ」平然とした様子の芝村。
そこへ現れた熊代。

熊代によれば―――

大文字焼きを見に行った美弥子。
かほりに成り済ましメールを送る芝村。
巧みに居場所を聞き出しつつ、曽根と美弥子の距離をとらせる。
ついに美弥子に接触、驚愕のあまり声も出ない美弥子を雑木林に連れ去り、殺害した。
美弥子の頬を撫で、その場を去る芝村。

真鶴で上田の操るヨットに合流。
事故に見せかけて上田を殺害した。

「証拠は?」尋ねる芝村。
サルトリイバラを掲げて見せる熊代。
サルトリイバラ。花言葉は「不屈の精神」。

「証拠にならない」鼻で笑う芝村。

だが、本当の証拠はここからだった。

上田の遺体から美弥子の携帯が出てきたのだ。
芝村の挙動に不審を抱いた上田。
保険代わりに美弥子の携帯をポケットに忍ばせていたらしい。

これが決め手になり、芝村は逮捕された。

警察の廊下。連行される芝村、擦れ違う曽根の姿が。
「自由になりたかった?今頃言うなよ。お前はいつも逃げてるよな」
芝村が云う。
「お前はどうなんだよ」芝村の言葉に曽根が反撥する。
「俺もお前が必要だったさ」力無い芝村のセリフ。
芝村と曽根。どこかお互いに依存していたのだろうか?

刑事部屋。
「人間の弱さが犯罪を生む」呟く東。
「弱い人間を追い詰めるときはやりかたに気をつけろよ」
成長した後輩を好ましく思いながら窘める熊代。

かほりと会う熊代。
かほりが芝村に告げ口したこと。
熊代がそれに気付いたのはかほりが美弥子、上田の二人の死に責任を感じていたからだった。
「(美弥子に)嫉妬していたのかもしれません」
そう語るかほり。
何もかも手に入れながらさらに求める美弥子を浅ましく思ったと云う。
だが、そんな自分こそがもっとも浅ましいのではないか、悩むかほり。
「いいんじゃないですか。誰の人生を変えられなくても、あなたさえその気なら」
熊代の言葉がかほりの胸に重く響く―――。

その頃、自宅では熊代の妻が熊代からの手紙を眺めていた。
微笑む妻。
帰路につく熊代。その背中に夕焼けが眩しい。

終わり。

<感想>
熊代夫妻と東夫妻(東のセリフのみだが)の対比が面白かった。
それぞれの夫婦の姿を通して、夫婦の在り方、在り様を考えさせられた。
特に「下り坂の景色もある」そう語る熊代に夫婦の年輪を感じた。

管理人は以下のくだりに感銘を受けました。

疑惑を抱いた理由を東に問われ、勘だよと答えた熊代。
それに付け加えて次のセリフ。
「科学者が実験するのは何の為だと思う?」
わからないといった表情の東に。
「直観に根拠を与える為だよ」
熊代は年長者として諭すように語る。

熊代役が寺尾聰さんだったこともあって、「博士の愛した数式」思い出しました。

熊代の妻を演じられた萬田久子さんも良かったですね。
満足です!!


「火と汐」TBS公式サイトです(外部サイトに繋がります)。
http://www.tbs.co.jp/hitoshio/

原作「火と汐」(松本 清張著)です。興味があればどうぞ!!
火と汐 (文春文庫)



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