過去記事はこちら。
登場人物一覧:
井野良吉(谷原章介)
劇団「白楊座」の俳優。映画「春雪」への端役出演をきっかけに、大作映画「赤い森林」の相手役に抜擢される。
葉山瞳(原田夏希)
劇団「白楊座」の看板女優。
「赤い森林」で共演することになった井野に接近する。
山田ミヤ子(原田夏希・二役)
福岡・八幡の酒場「初花」で働く女給。
買出し列車の中で井野と知り合い、恋仲になる。
石岡貞三郎(高橋和也)
八幡で鉄鋼関係の会社に勤める。ミヤ子の働く酒場の常連客。
田村刑事(大地康雄)
迷宮入りになったミヤ子の殺人事件を担当。9年後、石岡と再会する。
<あらすじ>
昭和31年・東京。売れない劇団俳優・井野良吉(谷原章介)は、ある映画に端役で出演する。
その独特の風貌が注目され、同じ劇団の看板女優・葉山瞳(原田夏希)が主演する大作映画の相手役に抜擢される。
一躍、スターへの道を歩み始めた井野。しかし井野には、映画が注目され、自分の「顔」が売れるのを恐れる理由があった。9年前、井野は恋仲だった山田ミヤ子(原田夏希・二役)という女を殺した。
![]() | 殺害現場へ向かう列車の中で、ミヤ子と一緒にいる所を、偶然、ミヤ子の知り合いの石岡貞三郎(高橋和也)という男に目撃されていたのだ。 |
ミヤ子を殺し、逃げるように上京してから9年。もし石岡が映画で自分の「顔」を見たら、ひた隠しにしてきた過去の殺人が暴かれてしまう。
しかし、このチャンスを逃したくはない。名声をつかみ取りたいという欲望と、破滅への恐怖の狭間でゆれる井野の心に、いつしか一つのシナリオが芽生えていく。――。
(あらすじ・写真ともに公式HPより)
では、続きを。
ミヤ子殺害から9年が経過していた。
名声を掴みたいが顔の露出は避けたい井野。
ジレンマの果て、ついにある結論を導き出す。
その結論とは唯一の生き証人、石岡の殺害。
1年がかりで石岡を調べ上げた井野。
つけ髭と眼鏡で変装を施し、偽名の梅谷を名乗る。
石岡宛にミヤ子殺しの犯人の首実験をお願いしたいと申し出て、10月8日午後2時京都知恩院に呼び出すことにする。
手紙を目にした石岡は悩んだ末、ミヤ子の事件を担当した田村刑事に相談。
田村刑事は手紙の差出人・梅谷こそがミヤ子殺害の犯人であると看破。
犯人を誘き寄せるためあえて罠に飛び込む事に。
呼び出し当日。
落ち合った二人。
井野は面通しをお願いしたい相手が留守だったことを理由に時間つぶしと称して比叡山へ連れて行く。
その途中、石岡は井野に「何故、犯人が分かったのか」と尋ねる。
「旅行先でたまたま出会った相手がミヤ子殺害犯らしかったんですよ」誤魔化す井野。人気のない山奥へと進む。
山中、石岡の咽喉の渇きを見越し、水筒を差し出す井野。
喜んで口にする石岡。途端、口から泡を噴き出し倒れ込む―――。
―――というのは、すべて京都へ向かう車窓での井野の想像。
計画が上手くいけばこうなる筈だ。
一方、田村たち。
予定より早く到着した彼らは京都見物と洒落込む。
昼食にいもぼうでもとろうかとふらりと入った店の奥。
たまたま井野とかち合う。
驚く井野だが、井野の顔を見ても全く気付かない石岡。
そんな石岡の様子に安心した井野は計画を取りやめる。
憂いも無くなった井野。大手を振って映画の撮影に取り組む。

とあるシーンで煙草を咥える動作を監督に提案。
認められるが……これが命取りに。
映画が公開。井野の演技は好評。次回作は井野主演に決まる。
順風満帆、得意絶頂の井野だったが、暗雲はすぐ傍まで迫っていた。
井野が監督に提案したあのシーン。
それを観た石岡。
ミヤ子と共にいた男の顔を電撃的に思い出す。
もちろん井野はそんなこと露知らない。
わが世の春を謳歌していた―――。
次回作の発表会見の席。井野の顔は晴れやかだ。
そこへ乱入者が。
「ミヤ子」
井野にとって禁断の言葉を呟くその人物こそは。
誰あろう石岡その人。隣には田村刑事たちの姿もある。
己の命運を悟り、目を剥く井野。
取り調べ。
戦時中、赤紙により徴兵された井野。
戦地で負傷した戦友に頼まれ、彼を手にかけてしまう。
その記憶はトラウマになっていた。
ミヤ子を絞殺という方法で殺害したのもそんな理由があったのかもしれない。
命からがら帰国したものの実家のある長崎は原爆で消失。
家族も身寄りも失っていた。
買い出し列車に乗ったある日、運命の出会いを果たす。
それがミヤ子だった。
ミヤ子との楽しい日々。
貧しくとも幸せだった―――思い起こす井野。
だが、その幸せはある日を境に暗転する。
とある夜、井野の知らぬ所で米兵と肩を抱き笑い合うミヤ子の姿。
ミヤ子たちはそのまま夜の闇の中へ消えた。
その光景を目撃してしまう井野。
翌日、昼食に出たのは当時では考えられない高級食材。
その入手法を考える度に、井野は心が燻ぶるのを感じていた。

上京する意思をミヤ子に伝える井野。
そんな井野にミヤ子は「子供が出来た」と告げる。
「冗談じゃない」その言葉の意味はとても深い。
「あなたの子よ。私とあなたは運命だもの」
運命を口にするミヤ子に井野は何も云い返せなくなる。
井野の中ではミヤ子への疑心に溢れかえっていた。
そして、遂に爆発する時が来る。ミヤ子をその手にかける井野。
そこまで語った井野に衝撃の事実が突き付けられる。
ミヤ子は妊娠していなかったのだ。
「解剖した結果、そんな事実は無かったよ。そこまでして、あんたの心を繋ぎ止めたかったんだねぇ」田村刑事の言葉が井野の心に響く。
再び回想する井野。
上京した井野、とあるカフェで瞳を目にし驚愕する。
そこにミヤ子がいた。
「私たち運命なのよ」ミヤ子の言葉が井野の脳裏に蘇る―――。
現在。
在りし日のミヤ子を思い出し、取調室で絶叫する井野。
その小さな幸せは井野自身の手でぶち壊しにしてしまったのだった。
エンド。
<感想>
オープニング。谷原章介さん扮する井野良吉が燻らせる煙草の煙。
その煙が形をなして「顔」という文字が作られる。
直接的には、井野が煙草で身を滅ぼしたことを。
間接的には、一度は掴んだものの煙のように消えてしまった栄華を。
それぞれ表現しているように思え、まさに、この「顔」のすべてを体現したような演出でした。
ところどころ入る谷原章介さんのモノローグも良かった〜〜〜。
井野の得たもの失ったものが最後に明らかになるシーンもグッときました。
瞳の存在がすべてミヤ子と井野の「運命」の為にあったことも意外でした。
短編を膨らまして2時間作品にする場合も多いと聞きますが、この「顔」はあえて2時間にしなかったことが、内容を充実させグイグイ惹き込むストーリーテリングに成功していると思います。
2013年10月4日追記:
フジテレビさんにて同じ原作によるドラマが放送されました。
NHKさん版と相違点がありますね。
特に注目は主人公の性別自体が異なっていること。
興味のある方は下記リンクよりどうぞ!!
・「フジテレビ開局55周年特別番組 松本清張スペシャル『顔』 清張作品の原点 傑作がドラマで甦る!大女優へのぼり詰めた女には“殺人”という秘密の過去があった。顔がスクリーンに映し出される前に過去を消さなければ」(10月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)
追記終わり
◆ドラマ「顔」公式HPです(外部サイトに繋がります)。
http://www.nhk.or.jp/drama/kao/
◆ドラマ「顔」スタッフブログです(外部サイトに繋がります)。
http://www.nhk.or.jp/drama-blog/99290/
【関連する記事】
- 月曜名作劇場「駅弁刑事・神保徳之助10 〜近江八幡人情編〜 人気シリーズ第10弾..
- 土曜ワイド劇場「再捜査刑事・片岡悠介9 死を呼ぶプロポーズ〜結婚詐欺連続殺人!美..
- 月曜名作劇場「横山秀夫サスペンス 刑事の勲章 横山秀夫最高傑作「64(ロクヨン)..
- 土曜ワイド劇場「森村誠一の棟居刑事 偽完全犯罪 美女作家のニセ者は二度死ぬ?血痕..
- 水曜ミステリー9「マザー・強行犯係の女〜傍聞き〜 伝えたい話を別人の会話から漏れ..
- 月曜名作劇場「横山秀夫サスペンス 陰の季節 横山秀夫最高傑作「64(ロクヨン)」..
- 「科捜研の女 春スペシャル 謎の美人四姉妹の周りで次々と殺人が!犯人は…魔女!?..
- 土曜ワイド劇場「温泉(秘)大作戦(17) 香川うどん県こんぴら温泉 瀬戸内海の孤..
- 金曜プレミアム「松本清張スペシャル 一年半待て 密室夫殺人事件!正当防衛を訴える..
- 水曜ミステリー9「ソタイ2 組織犯罪対策課〜この男、危険なり! ドラッグ密売組織..
- 月曜名作劇場「税務調査官 窓際太郎の事件簿30 月曜名作劇場第一弾は窓際シリーズ..
- 土曜ワイド劇場「検事・朝日奈耀子(17)医師&検事〜2つの顔を持つ女! イケメン..
- 金曜プレミアム「松本清張スペシャル かげろう絵図 大奥に暗躍する巨悪に立ち向かう..
- 土曜ワイド劇場「京都南署鑑識ファイル10 狙われた社長令嬢・誘拐犯が殺された!2..
- 「松本清張特別企画 喪失の儀礼 松本清張の長編推理小説!中伊豆の旅館と深大寺の公..
- 月曜ゴールデン「内田康夫サスペンス 浅見光彦シリーズ35 風のなかの櫻香 尼寺で..
- ドラマスペシャル「ストレンジャー バケモノが事件を暴く 永遠の時を生き続ける不老..
- 土曜ワイド劇場「タクシードライバーの推理日誌39 スキャンダルな乗客 舞台上の連..
- 金曜プレミアム「山村美紗サスペンス 赤い霊柩車36 惻隠の誤算 放送開始24年目..
- 水曜ミステリー9「犯罪科学分析室 電子の標的2 猛毒ウィルスを密かに開発していた..
そしてやっぱり松本清張は短編でも引き込まれますね〜ドラマ化も効果ありです。同作品が何度も何度も作られるのがよくわかります。
カツサンドではなく、コンビーフだと思いまーす。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
谷原さん良かったですよね。
物語自体も意外な展開と妥当な結末のバランスも素晴らしかった。
流石の作品でした。
コンビーフだったんですね。
ご指摘ありがとうございます(^O^)/!!