<あらすじ>
御茶ノ水署生活安全課係長・斉木斉(船越英一郎)とその部下・梢田威(的場浩司)は、スリの現行犯を逮捕。犯人に向かって斉木は「余罪があるなら潔く白状しろよ、タナカイチロウ」とにらみつけるが、そのチンピラは「俺はそんな名前じゃない」とうっかり正直に答える。すかさず「お前が逃げる途中で投げ捨てたこの札入れの中に、タナカイチロウ名義の明邦銀行のキャッシュカードと現金50万円が入っていたが?」と水を向けると、「しまった!」という顔をするチンピラ。観念して、手にドクロの指輪をした若い男のズボンのポケットから札入れを抜き取ったことを供述する。
同じころ―。明邦銀行御茶ノ水支店の窓口で真鍋由美子(酒井美紀)が手続きしようとすると、1人の老人が「急いでくれ! 3時までに振り込まなきゃいけないんだ」と割り込んでくる。「順番ですから番号札を取ってお待ち下さい」と女子行員にやんわりと制されるが、その老人は「急ぎだと言ってるだろ!」と聞く耳を持たない。顔を見ると、ハウスクリーニング会社に勤める由美子がたまに清掃に行く家の老人・杉山辰郎(左右田一平)だ。顔見知りということもあり、「お先にどうぞ」と杉山に順番を譲る由美子。だが、杉山から受け取った振込依頼書に不審の念を持った女子行員はデスクの宮元雅史(斉藤暁)に目で合図を送る。すかさず宮元が飛んできて、振り込め詐欺の疑いがないかどうかを杉山に確認するが、杉山は「失敬な! この私が振り込め詐欺なんかにひっかかるわけないじゃないか!」と怒りだしてしまう。「では、息子さんにもう一度確認していただいて、間違いなければ手続きさせていただきます」と食い下がる宮元に「他の銀行に行くからいい!」と捨てゼリフを残して杉山は出口に向かう。そんな杉山を由美子は引き止め説得しようとするが、「あんた、年寄りだと思ってばかにしてるのか!」と逆に食ってかかられる始末。たまたま「タナカイチロウ」から、カードの紛失届が出されているかどうかを明邦銀行に確認に来ていた梢田が間に入って取りなそうとした時、斉木が現れ、「長く会っていない息子さんから昨日突然電話が来て、“オヤジ、携帯の番号変わったから登録していてくれ”なんて言われませんでしたか? そして今日、その新しい番号から電話が来て、金を振り込んでくれと言われたのでは?」と尋ねると、いちいち思い当たることばかりだった杉山の顔が変わる。「典型的な振り込め詐欺の手口です」とトドメを刺すような斉木の言葉に、思わずよろよろとその場に倒れ込みそうになる杉山。やはり振り込め詐欺だったのだ。すんでのところで被害を食い止められたことに安堵する斉木、梢田、そして由美子。
その後、キャッシュカードと現金50万円をすられたタナカイチロウ(田中一郎)が銀行にも警察にも被害届を出していないことに軽い引っかかりを覚えた斉木と梢田は、「スリに遭ったことにも気づかず、近くのマンションに入っていった」という犯人の供述から、そのマンションへ急行して住人に聞き込み調査を開始、306号室の志賀宣之(浪花ゆうじ)などから話を聞くが、めぼしい収穫は得られなかった。ただ、志賀の部屋の異様な殺風景さと、複数の携帯電話の存在が気にかかったが―。
翌日、斉木が出勤すると、何だか刑事課の動きがあわただしい。ヒトミ(上原さくら)から殺人事件が発生し、しかもその現場は、田中一郎を追って、昨日梢田とともに立ち寄ったマンションだと聞かされた斉木はすぐに現場へ向かうが、シートにくるまれた遺体の顔を見て斉木と梢田は仰天、被害者はなんと話を聞いた志賀だったのだ。さっそく斉木は刑事課の辻村(赤坂泰彦)や川崎(大沢樹生)に「昨日、自分たちは被害者と言葉を交わしているが、その時の印象から、彼は複数の携帯電話を使いこなしており、このマンションは防犯カメラもないことから、悪人がアジトにするにはもってこいだと思う」とさりげなく情報提供をする。
その足で、田中一郎の自宅のある板橋へと足を向ける斉木と梢田。しかしそこでは借金の取り立て屋が大声で「金返せ」「いるのは分かってるんだ、ドアぶっ壊すぞ」などと騒いでいた。警察手帳を見せて取り立て屋を追い払い、「田中さんはどうやらヤミ金融でお金を借りていたようだな」と梢田がつぶやいた瞬間、台所の窓が細く開く。顔をのぞかせたのは、アジア系の女性・シンシア(サヘル・ローズ)だ。「田中一郎さんはご在宅ですか?」「田中一郎さんはドクロの指輪をしていますか?」その両方の質問に対し、首を横に振るシンシア。2人がここには用はないとばかり立ち去ろうとすると、シンシアが「自分はイチロウの友達でシンガポールからの留学生だが、彼はずっと帰ってこない。1人で怖いから一緒に連れて行って欲しい」と梢田の腕にしがみついて離れない。署に戻ったところで、シンシアから詳しい話を聞いた斉木と梢田は、スリの被害者は田中一郎ではなく、したがって田中一郎名義の銀行口座は振り込め詐欺に使われたものであろうという結論に達する。つまり、田中一郎は金目当てに自分の銀行口座を詐欺グループに売ったのだ。 さらに、面倒見のいい斉木はシンシアと梢田をつれ、あるハウスクリーニング会社を訪れる。入り口に「従業員募集」の張り紙が出ていたのだ。そこへ清掃用具を手にした由美子が出てくる。ひそかに由美子に好意を持つ梢田は「!」となる。ここは由美子が働いている会社であり、社長と由美子の好意で、シンシアは住み込みで雇ってもらえることになった。条件は「イチロウから連絡が来たら必ず知らせること」。そしてそんな4人の様子を物陰からじっと見ていた男がいた。斉木はいち早くそれに気づき、本人の後ろにそっと回り、「田中一郎さんをお探しですか?」と声をかける。不意を突かれて驚いた男は「田中? そんなもん知らんわ、どけや」と斉木を乱暴に押しのけ立ち去る。
その後の刑事課の調べで、殺された志賀の部屋は斉木の推察どおり詐欺グループのアジトであり、志賀はそのグループのリーダーらしいことが分かる。犯人捜しに奔走する御茶ノ水署。
そんなある日、第二の殺人事件が起こる。撲殺された被害者の顔を見て息をのむ斉木。先日、ハウスクリーニング会社の物陰から斉木たちの様子をうかがい、斉木に職務質問をされた男だったのだ。名前は児玉昭吾(大和屋ソセキ)。調査の結果、志賀とつながりのある男だったことが判明する。さらに、由美子と児玉が同じ京都出身であることも。そのことに気づいた斉木は連続殺人の真相を暴くため本格的に動き始めるのだが、その結果、驚くべき真実に突き当たる…!!
(金曜プレステージ公式HPより)
では、続きから。
同窓会名簿は杉山がハウスクリーニングの由美子に依頼して廃棄した筈のものだった。
斉木は由美子が児玉に同窓会名簿を売ったのではと推理。
振り込め詐欺の際、由美子があんなに熱心に杉山を止めたのは“良心の呵責”によるものではないかと睨んだのだ。
梢田が由美子にプレゼントした寿司の袋が児玉の遺体の傍から回収される。
由美子に対する疑惑は深まるばかり。
そんな折、児玉殺害のニュースをみて由美子が姿を消す。
戸惑う梢田に斉木は手掛かりを与える。
杉山が振り込め詐欺の被害にあいかけたとき、由美子も銀行に来ていた。
何かの用件があった筈。
アドバイスに従い調べた結果、由美子は振り込みのために銀行を訪れていた。
受取人は京都に住む「藤原和江」。
由美子に惹かれていた梢田は由美子の無実を信じ斉木と共に京都へ。
斉木は京都府警に捜査協力を求める。
「藤原和江」は元芸妓。今は所在が分からなくなっていた。
由美子と児玉は身寄りも無く、児童介護施設で育った仲間だった。
だが、由美子を庇った児玉は顔に傷を負った。
その傷がもとで悪い仲間と付き合い始めたらしい。
最初は引け目を感じていた由美子だが、ついていけなくなり、いつの間にか児玉の前から姿を消していた。
藤原和江の所在が判明。
実は、とある病院に入院していた。
和江によれば、由美子は和江の息子・雄太の大学時代の同級生だと云う。
だが、それは由美子の嘘だった。
それを知る斉木、梢田は合点がいかない。
なぜ、嘘をつかなければならないのか。
ここで、新事実が。
和江の息子・雄太は過去の殺人事件の被害者だった。
犯人は未だ捕まっていないと云う。
情報によればバイクのカップルが目撃されていた。
斉木は雄太殺害に児玉と由美子が関与していたのではと疑う。
和江は由美子が送金していた事実を知らなかった。
隠れて送金しなければならないということは後ろめたい事実がある筈。由美子の和江への送金は雄太殺害の謝罪の為だったと確信する斉木。
さらに新事実が。
事件当時、児玉のアリバイを志賀が証言していた。
斉木はそれが今になって由美子が志賀たちに協力した理由ではないかと推測。
だが、梢田は志賀・児玉殺害犯人=由美子説を頑強に否定。
頷く斉木。「もうひとり動機のある人物が居る」と呟く。
動機のある人物とは雄太の縁者。
だが、母親の和江は病身であり、犯行は難しい。
では、父親ならばどうか。
ひた隠しにされていた雄太の父親は銀行員の宮元だった。
当の宮元は休暇を取り、京都へ来ていた。
由美子が危ない!!
宮元を捕まえる斉木&梢田。
宮元によれば、由美子を殺すことが出来なかったとのこと。
だが、由美子は自ら責任を取ると云い置いてその場を去ったらしい。
由美子は自殺する気だ。梢田は急いで後を追う。
「自殺は罪から逃げること。本当の悪党に成り下がることだ」
由美子の自殺を見逃した宮元を諭す斉木。
由美子はひとり、橋の上に居た。
そこへ駆け付ける梢田。
彼女を止める。
後からやって来る斉木、宮元。
そこで、由美子の口から雄太殺害の真実が。
雄太はゴミを捨てていた児玉を注意して殺害されてしまったのだ。
由美子は真実を隠し、児玉は志賀に偽証を依頼した。
「ごめんなさい」謝罪する由美子。
それを受けて引き継ぐように宮元が今回の殺人事件の真相を語る。
今回の振り込め詐欺を調べていた宮元。
結果、由美子、児玉、志賀の関わりを掴んだ。
お茶の水支店に赴任したことも、由美子に近付いたこともすべて計画的だったのだ。
殺害当日、志賀に話を聞きに行った宮元。
雄太の名前すら忘れ、逆に情報料を請求する志賀にカッとなって殺害してしまった。
次に由美子を尾行し、児玉の居場所を掴んだ。
そのまま罪の意識の無い児玉を殺害。
「由美子さんを殺さずによかった」と語る宮元。
「もっと早く気付いていれば……」悔やむ斉木。
「悪いのは私なんです」自分を責める由美子。
「まだ、君はひとりでいることに甘えている。それは逃げだ。責任を取る方法を考えろ」由美子を叱る斉木。
それを留めようとする梢田。
「ここまで親身になって考えてくれるなんて。私、一生かけて償う方法を捜します」そう告げて由美子は去って行った。
「折角、辞表まで用意してたのにな」斉木に揶揄される梢田。
「それにしてもお前、字が汚ねぇな」斉木の手には梢田の辞表が。
由美子が犯人だったときの為に用意したものだ。慌てる梢田。
エピローグ
署にて頭を抱える梢田。その机の上にはある買い物が。
斉木が梢田の名で勝手に購入したものだ。
勿論、支払いは梢田の負担。梢田の視線の先にあったものは―――
「基本のペン習字」×2、計3万円也。
そこにはシンシアの分も含まれていた。
一方、斉木は……。
杉山を訪ね、由美子に手紙を書くよう頼んでいた。
彼女の重荷を少しでも軽くする為に―――。
エンド。
<感想>
斉木の携帯、着信音が「踊る大捜査線」だった……。
(「踊る大捜査線 MOVIE3」の情報はこちら)
船越さんは流石の風格。
的場さんともいいコンビ感が出てました。
にしても、梢田。いつになれば刑事課に異動できるのか……。
可哀想ですが、シリーズの為にはこのままでいて欲しいものです。
今日の話、ストーリーはちょっと苦しかったけど、アリでしょう。
このシリーズ次回も楽しみです。
<キャスト>
斉木 斉 …船越英一郎
○
梢田 威 …的場浩司
○
暮林ヒトミ…上原さくら
辻村隆三 …赤坂泰彦
川崎刑事 …大沢樹生
○
一色署長 …六平直政
富井一郎 …徳井 優
杉山一平 …左右田一平
シンシア …サヘル・ローズ
藤原和江 …山本みどり
○
宮元雅史 …斉藤 暁
真鍋由美子…酒井美紀
(金曜プレステージ公式HPより)
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