ネタバレあります!!未読の方は注意!!
<あらすじ>
海と山に囲まれた、風光明媚な街、蝦蟇倉(がまくら)。この街ではなぜか年間平均15件もの不可能犯罪が起こるという。自殺の名所に、怪しげな新興宗教や謎の相談屋。不可能犯罪専門の刑事に、とんでもない市長、そして無価値な置物を要求する脅迫者――。様々な不可思議に包まれた街・蝦蟇倉へようこそ!
今注目の作家たちが、全員で作り上げた架空の街を舞台に描く、超豪華競作アンソロジー第1弾。【第2弾は2010年2月刊行予定】
■収録作品
伊坂幸太郎「浜田青年ホントスカ」
大山誠一郎「不可能犯罪係自身の事件」
伯方雪日「Gカップ・フェイント」
福田栄一「大黒天」
道尾秀介「弓投げの崖を見てはいけない」
(東京創元社HPより)
<感想>
それぞれが凄く面白かった。
ただ、蝦蟇倉市という舞台設定が活かされていない印象。
地名が記号でしかない感じ。
実際にその土地らしさを活かしたのは伯方雪日さんの「Gカップ・フェイント」くらいか。
なので「蝦蟇倉市事件1」は全体的になんか継ぎ接ぎっぽかった。
そこが魅力と捉える向きもあろうが……。
伯方雪日さんの作品が読みたい方にはオススメ。
「蝦蟇倉市事件2」には管理人イチオシの米澤穂信さんも登場とのことなのでそちらに期待!!
・「蝦蟇倉市事件2」ネタバレ批評(レビュー)はこちら。
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<ネタバレ批評(レビュー)>
・伊坂幸太郎「浜田青年ホントスカ」
劇中最初から出てくる浜田青年はニセモノ。
それがトリックのすべて。
伊坂先生は長編の方が映える気がする。
・大山誠一郎「不可能犯罪係自身の事件」
探偵に過去のある事件を推理させる為に更なる事件を起こし、その罪を探偵に着せて刑務所送りにする。そこで時間がたっぷりあるから過去の事件を推理させることが犯人の目的。
ところが、新規に引き起こした事件の被害者が過去の事件の加害者だったと云うオチ。
着眼点が面白いと思う。ただ、ロジックが整理しきれていない印象。
短編では消化不良気味かも。
長編にした方がいい素材のような気がする。
・伯方雪日「Gカップ・フェイント」
唯一、立地を活かしたと思われる作品。
犯人が奇想天外。でも、面白かった。
選ばれた人間でなければ出来ない隠蔽方法(カリスマがそのカリスマを駆使して人手を集め隠蔽工作を行う)が秀逸。
収録作の中で一番楽しめた。
同作者の「誰も私を倒せない」も良かったし、注目の作家さん。
この方の格闘抜きのミステリも読んでみたい。
・福田栄一「大黒天」
タイトルが意味深。
ちょっとわからなかった。
・道尾秀介「弓投げの崖を見てはいけない」
作者らしい作品。
人間観とかが前面に出てた。
面白いけど、舞台を蝦蟇倉市に設定する必然性は余りない気がすることだけが残念。
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