ネタバレあります!!未読の方は注意!!
<あらすじ>

我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。
(あらすじ・写真共に公式HPより)
<感想>
2010年6月5日映画公開(コミック化等過去記事はこちら)が決定している本作。
・コミック版「告白」ネタバレ批評(レビュー)はこちら。
コミック版「告白」(湊かなえ原作、木村まるみ画、双葉社刊)ネタバレ批評(レビュー)
・作者の湊かなえ先生による他の作品はこちら。
「少女」(湊かなえ著、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「贖罪」(湊かなえ著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
第一章「聖職者」が独立した短編であるように、第一章である程度の完結を見ています。
他の章は「実は……」「実は……」みたいな感じで、一章の後日談、補足説明ぽい。
ともかく、最後まで読み終えるといたたまれない気持ちになること請け合い。
気分が重く、暗くなる。
見事にストーリーに救いがない。
作者の狙い通りなんだろうけど、読後感は最悪。
これを世間体を廃した生の感情を記した小説とみるか、単なる悪趣味とみるかで評価が分かれそう。
「これでもか」と人間の悪意が出てくる。
登場人物皆が皆、どこにでも居そうでそう居ない人物たち。
全員がなにがしかの罪を背負っているが、罪の意識が薄い。
主人公の女教師は娘の死の責任を負わず(職場に娘を連れて来ておいて放置はないと思う)、復讐に奔走する。
A君こと渡辺は、利己的な理由による殺人&殺人未遂を繰り返す危険人物。
B君こと下村は、気が弱いながらも自尊心が強く、その自尊心の為なら人を殺すタイプ。
夫の教え子こと某先生は、(女教師によれば)自分で善悪が判断できないタイプ。
渡辺の母は、自分の利益を優先させるタイプ。その為にはどんなものでも切り捨てる。
一番、罪深いのはやっぱり女教師かなぁ。
娘を放置した責任や教師として生徒を導く責任、病身の夫の介護(第一章の計画が成功していれば介護できないだろう。というか、第一章の復讐方法が愛する夫を馬鹿にしている)を一切放棄して、復讐だけに生きるのはどうか……。何より、年若い渡辺のことを「人を小馬鹿にしている」と指摘しつつ、その渡辺や夫の教え子を馬鹿にしているのは自分と云う罪深さ。そして、最後にやったのがアレでは……救いようがない。
渡辺母の事情も斟酌すべきでは。なんで、こんな人物造詣にしたんだろう。もうちょっと、自分の正義について悩んでくれれば良かったのに。宮部みゆきさんの「クロスファイア」みたいだったら良かったのに。
それでも、人間、魔がさしたり、道に迷ったりする弱い生き物であることを作中で肯定してくれればいいんだけど、それも無いから登場人物全員が悪意の塊に見える。
性悪説でもここまで酷くはないだろうに。
っていうか、性悪説によっても年長者である女教師に罪があることになるか。まさに、アクが強すぎ。
今、気がついたが、女教師の復讐は安全な所から見下すようにして行っているから肯定しようがないのだろう。
復讐内容も人を馬鹿にしているようなものばかり。
昔、週刊少年「チャンピオン」で「アクメツ」って漫画があったけど、あちらはリスクを負って復讐を行っていたんだよね。
信念があった。それがこの女教師からは感じられない。
同じ復讐ものの東野圭吾さん「さまよう刃」と比較してもそれは明らかだろう。
あちらは身体をはって失われた者への想いで動いているのが良く分かるのに、こちらはそれが伝わってこない。
なので、復讐する側、される側ともに実験を繰り返すような冷静さで淡々と人を殺す。
だから、最後のあの渡辺への復讐にもまったく同意できない。
母の母性はどこにも存在しない。
意外な展開、意外な展開を狙って行ったらああなったという感じだったりするのかもしれない。
これ、本当に映画化できるのかなぁ。映画化して大丈夫かなぁ。要らぬ世話だろうけど心配。
2月16日追記:参考までに映画版キャストは―――
復讐を誓う女性教師・森口悠子役に松たか子さん。
森口の後任、新米熱血教師・寺田良輝役には岡田将生さん。
「少年B」として告発される男子生徒の母親役が、木村佳乃さんとのこと。
◆映画化関連リンクです(外部サイトに繋がります)。
・「映画『告白』なぜかピンク色なポスター解禁!木村佳乃は過保護すぎる母親役、岡田将生はウザい新人教師役」(シネマトゥデイさん)
http://www.cinematoday.jp/page/N0022153
<ネタバレ>
とある中学校の女教師。
ミルクタイム(クラスの生徒が牛乳を飲む時間)終了後にとある話を始める。
それは女教師の娘が死亡した事故の真実だった。
女教師によればこのクラスのAとB、二人の生徒により娘は死んだと云う。
長々と真実を語り終えた女教師は最後に意外な言葉を口にする。
「復讐を終えた」と。
女教師はAとBの二人の牛乳に夫のかかったある病気を仕掛けていたのだった―――。
ここからA君こと渡辺、B君こと下村の物語が始まる。
下村は女教師の“告白”以降、次第に学校で追い詰められていき自らの母を手にかけてしまい、精神崩壊。
渡辺は過去に実母に捨てられており、研究者だった実母への憧れの余り、発明家への道を志望する。
そこで作ったのが悪戯発明「電流の流れる財布」。
この発明を否定した女教師に恨みを抱き、その娘を殺害する計画を練る。
下村と共に娘に近付き電流財布で殺害(実際は気絶だった。渡辺に馬鹿にされていた下村が見返す為に気絶した娘をプールに沈め殺害した)。
だが、女教師の“告白”後、クラスで孤立。それすら天才に対する嫉妬と喜びにしていたが、尊敬する実母が自分を捨て再婚&妊娠していることを知り逆上。協力していた唯一のクラスメイトを絞殺後、クラスメイトを巻き込む集団自殺を計画し、爆弾を製造。
そのすべての動機は実母に認められたかったことと、自分を捨てた実母への復讐(あてつけ)だった。
動機一切をしたためた「(母への)ラブレター」をHPで公開後、爆弾のスイッチを押すが……。
ここから完全にネタバレです!!注意!!
スイッチを押すが反応がない。
慌てた渡辺の目に飛び込んできたものは……消えた爆弾だった。
「爆弾がない」驚く渡辺に一本の電話。
相手はあの女教師。
彼女は語る。“告白”時に仕掛けた罠は妻の様子を不審に思った夫により無効化されていた。その気持ちを汲み、暫くは我慢していたがやはり許せなくなったと云う。
下村の死も夫の教え子である新任教師・寺田をそれと悟られないように利用し追い詰めたものだった。
彼女は続ける。渡辺の爆弾は最高だった……と。
そして、今それがどこにあるか。いや、あったか。
言葉の意味を悟り愕然とする渡辺。
爆弾は渡辺の実母のもとへ届けられていた。
渡辺は自ら愛憎半ばする実の母を爆殺してしまったのだ。
こうして女教師の復讐は成し遂げられた―――エンド。
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そんなに言うならとアクメツを見てびっくりしました。
このマンガと比較して女教師がバカだと思う理由がよくわかりませんでした。
コメントありがとうございます(^o^)/。
本記事で参照した「アクメツ」まで読まれたとのこと、管理人の記事に隅々まで目を通して貰えたと思うと嬉しいです。
ただ、一部に管理人の本意と違う解釈をされている箇所があるようです(T_T)/。
このままでは寂しいのでそこの所を説明したくコメントさせて貰います。
云わば、釈明会見みたいなもので。
長いコメントになりますが良ければ目を通してみて下さい。
まず、管理人は「告白」を“酷評”していません。
「読後感は最悪」とか「同意できない」とか反撥する言葉は書かれていますが、一言も「ダメな作品」とは書いていない筈です。
管理人にとって“酷評”すべき作品は“読後に何も残らない物”です。
つまり、正であれ負であれ何の影響も受けないような作品。
その点、「告白」は負の感情を刺激される作品ですが大いに影響を受けています。
それについては同じ作者による「贖罪」や「少女」の感想を読んでもらえれば分かるかと思います。
人の感情を刺激する作品というのはそれだけでも大したものだとは思いませんか?
更に本記事の「感想の長さ」。
これからも管理人が作品から影響を受けていることを分かって頂けるかと思います。
要は「“好き”の反対は“嫌い”ではなく“無関心”」ということですね。
これだけ主人公について批判的な言葉が出るだけこの作品について考えさせられたということです。
女教師を批判するその行動自体が作中に没入している行為に他ならないと思われませんか?
次に「復讐という行為」に対して“賢い”も“賢くない”もありません。
そこにあるのは「復讐を果たせたか否か」のみです。
知恵を尽くしてエレガントに復讐を行ったところで復讐を果たせなければ意味がありませんものね。
あくまで「頭の良い・悪い」の二元論では語れません。
しかし、折角なので強いて“復讐”に存在するものを挙げるならば、「激情」と「狂気」そして「信念」と「覚悟」でしょう。
「告白」が読者の負の感情を刺激するのは「激情」に欠け、「信念」に欠け、「覚悟」に欠け「冷徹な狂気」のみが残されていることではないでしょうか?
ちなみに「アクメツ」はリスクに対する覚悟の比較として出したのであって頭のいい・悪いの比較の為に出したのではありません。「アクメツ」を読まれたのならばそこも分かってもらえるかと思います。
第一、復讐方法に限定すれば女教師の方法がかなり頭脳的なのは事実ですよね。
本記事の「実験を繰り返すような冷静さで淡々と人を殺す」の通りです。
以上、ちょっと熱く語っちゃいました。
恥ずかしいですね(^O^)/。
人それぞれ、さまざまな考え方が存在するということで納得していただけたらと思います。
今後も当ブログを宜しくお願い致します。
管理人“俺”でした〜〜〜。
ただ知人との会話の中でこのタイトルが出てきたのでググってみただけのこと。
そしたら偶然アンタの不愉快な言論を目にするハメになった通りすがりの被害者です。
アンタの親兄弟、親友を、アンタの目の前で嬲り殺しにするとさぞかし気持ちいいだろうなぁ(笑)
結局最後は「人そろぞれだから俺の考えを認めろ」で締めるんですね。
頭の悪い人がいつも言うこと。
ああ不愉快。
消え失せろ。
管理人です。
気が変わったら「告白」を読んでみて下さい。
全体的に浅い読解力だな。
あと
人物紹介に下村の母がないのはなぜ?
コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です。
ご指摘ありがとうございます。
下村の母については、そもそも“人物紹介”そのものが記事にないので……ご了承ください。
浅い読解力については自身でも気付いているのですが、管理人の限界です(ToT)/。
出来る範囲で頑張ります(^O^)/。
そういうことを伝えたいのではないんだと思います。
完全に間違っています。
コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です!!
ご指摘頂き助かります。
ただ、管理人の読解力の低さゆえと思いますが、“そういうことを伝えたいのではない”というのが分かりません(T_T)/。
良ければお手数ですがお教え願えないでしょうか。
それを受けて今後の反省点&改善点に出来たらと思います。
コメントお待ちしております<(_ _)>。
『告白』で読書感想文を書こうと思っているのですが、
とても参考になりました。
ありがとうございました^^
コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です!!
お役に立てて良かったです。
管理人も嬉しいです!!
『告白』については、管理人自身が作品に影響を受けてかなり感情的な書き方となってしまっています。
それだけ読者に影響を与える力を持った作品なのでしょうね。
この作品を読んで、「スカッとした」「犯人たちは自業自得だ」という意見をネット上でよく見かけます。しかし、自分はどうしても同意できませんでした。
復讐云々の前に、森口先生はただ楽しんでいるようにしか見えないものですから。あと、自分が犯人Bの性格に共感してしまったのも原因かも。
「悪意」は本の中だけではないようですね。
ブログにコメントを残されている方々からも感じます。
管理人さん、負けずにまた感想をよろしくお願いします。
コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です!!
確かに森口先生は「復讐の為に復讐を行っている」ようなところがありますね。
『告白』を読んで、時間を置いた今だからこそ感じるのですが、この作品には不思議な力があるように感じられます。
読者の中の何かを刺激するような……。
その点でも、この作品は稀有なものだったのかもしれません。
ネタバレ書評(レビュー)や感想については、今後もマイペースに続けて行きたいと思っていますので良ければ読んでみてください。
こんな前の記事にコメントもどうかなと思ったのですが…。
映画を開始後30分から見始めて、ストーリーがわからないのでググってきました。
だいたい見終わって、、
本とは少し構成などが違うようでしたが、概ね気持ち悪かったです。
読後感…見終わって頭が締め付けられるように痛いし、吐き気もします。
血が出るものは弱いので、グロいシーンは目をつぶってました…。
それでも、この作品は、かなり的確に描いているなー、と思いました。
今の…というか、もうすでに私もぜんぜん若くない世代なのですが…
世間で言うところの、酒鬼薔薇、秋葉原無差別、バスジャック…など皆、私と同じ歳です。。まだ他にもいましたが忘れました。
本当に怖いのは、、ここに出てくる親が(大人が)、誰も子供とありのままに向き合えてないってことなんですよね、、。
イイコのはず、そんなはずない、、理想の息子…。
賢いはず、私に似てるはず、、自分の夢を押し付け虐待…。
職場に連れてきて放置(ここは私は見れませんでしたが…)そのあげく殺されたにも関わらず、ひどい復讐のみにはしる…。
そして若い先生は人に聞いてマニュアルだけを行い…自分でちゃんと向き合って考えられない。
そして父親は不在。もしくは他人のよう。
ここに描かれていることって、、日常にあふれてるんですよ。
精神的に子供を殺し続けている親は、多いです。
その結果が、表れているんです。
だから、悪意とかじゃないんです。
助けてと言わんばかりの、こころの叫び…そうおもいます。
少年A、という言い方が、、
酒鬼薔薇を連想します。
そして人殺しといじめる周りのものたちも、、
まさに今も起こっていることなのでは…
うまくかけませんが…
私なりの想いを書いてみました。
なぜ、秋葉原や酒鬼薔薇の名前を出したかというと、彼らが、母親により精神的に殺され続けた結果であるからです。
やったことは絶対に許される事ではありませんし、作品で描かれている殺人も目をおおうものが多かったです。
でも、その奥で拭えない不信感や不快感を与えているのは、大人たちですよね。。
子供は、もともと真っ白です。
私は、最悪な結果を描きながらも、誰もが苦しんでいる、つまり誰もが善意の塊のつもりなんです。
私は逆説的に性善説を描いていると思いました。
ほんとに長々とすみません。
それでも、大人が精神的に子供を苦しめて歪めていることが、まだまだ世間に認識されていないことに、危機を感じます。。
コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です!!
『告白』は、どこか読者に働きかける作品ですね。
感情を刺激し、問題提起する……読者は自分の視点でさまざまに考えることでしょう。
かくいう管理人も本記事の感想にてその感情をぶつけてしまっていますね。
管理人は「悪意」と「復讐」に注目しましたが、確かに『告白』は「親と子の物語」でもあるんですよね。
この点でも、親である人、子である人が読めば、それぞれの感想が出て来ると思います。
親である人は子へのスタンスが問われるかもしれないし、子である人は自身の周囲との接し方が問われるかもしれない。
それに対してどう答えるかは、やはり自分自身ということになるのでしょう。
ある人は登場人物の行動すべてに恐怖を感じ否定するかもしれないし、又ある人は登場人物の行動を一部とはいえ肯定するかもしれない。
それとは別に、全く何も感じないということもあると思います。
此処での感想は、その人の信念や考え方に強く裏付けられたもの。
その意味で『告白』は、まさに「鏡」とでもいうべき作品なのかもしれません。
『告白』に代表されるような「ミステリ」には「イヤミス(嫌なミステリの略)」というジャンルが存在します。
これは読後感の良くないミステリのことです。
(真梨幸子先生『ふたり狂い』はこのジャンルの傑作です、是非!!)
現実社会に不安を感じることが多い中、フィクションでも不安を感じさせる……それにより、己を抑圧し内面を覗き込ませる。
そこに映った己の姿を糧に、人は明日を生きるのかもしれません。