注意!!ネタバレあります!!
<あらすじ>

彼の名はリュウ。生前、彼は奇術師だった。フーディニやサーストンすら試みなかったような一大奇術をやってのけた。まず第一に、ある殺人犯人に対して復讐をなしとげた。第二に自分も殺人を犯した。そして第三に彼は、その謀略工作のなかで自分も殺されたのである――奇才バリンジャーが仕掛ける驚くべき前代未聞の大トリック。
(東京創元社HPより)
<感想>
出版当初、巻末(結末部分)が袋綴じになっており、「袋綴じ部分を開封していなければ返金保証」という謳い文句で発売された本作。
主人公は被害者にして、殺人犯にして、復讐者というシナリオは度肝を抜きます。
近年でこそこういうタイプの作品にもバリエーションがあります(辻真先さんの諸作品等)が当時は画期的な意欲作でした。
現在においてはそのトリック自体について想像がつくかもしれません。
が、それでもスゴイの一言。読むべし!!
<あらすじネタバレ>
天才奇術師と知られるリュウ。
彼はとある男への復讐に乗り出すことに。
時が過ぎ、復讐相手はリュウ殺害の犯人として裁判にかけられていた。
リュウは男の手にかかり殺されたのだと云う。
不利な証拠が浮かびあがり、追い詰められていく男。
判決は有罪。男は罪に落される。
そんな男を冷ややかに見詰める影があった。
影の正体は―――リュウその人。
自分自身に偽装した死体(墓場から持ち出した)に自らの指を添え、殺害されたように見せかけ姿を消したのだった。
こうして、リュウは復讐を成し遂げた。
リュウは工作の為に指を落としたため、奇術師生命が絶たれ、リュウとしての存在は死んでしまった。
同時にリュウはリュウ自身を殺し、加害者となった。
こうして、被害者であり、加害者であり、復讐者という図式が出来上がったのだった―――エンド。
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