ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>
病床のポアロに会うべく懐しのスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズ。が、そこには殺人事件の悪夢が待っていた。過去五件の殺人事件を背後で操る真犯人Xが、体の自由がきかないポアロに挑戦するかのように次なる計画を練っていた……奇怪な殺人事件と名探偵ポアロの最期を描き出す衝撃作。(解説 山田正紀)
(ハヤカワ書房より)
<感想>
名探偵エルキュール・ポアロシリーズ最期の作品。
月日の流れを強く感じさせる本作。
全体が老いなどの斜陽感に包まれている。
過去2度の殺人事件(作品中に詳細あり)の舞台となったスタイルズ荘で3度殺人事件が発生。
現場にはあのエルキュール・ポアロが居た!!事件は解決するのか?
トリック自体は、とあるケース(犯人は……パターン)の代表作のひとつ。
意図せずポアロが犯人を捕まえられなかった事件はこれが初めての筈(ポアロ自身が犯人に同情して見逃したケースがあった)。
必読!!
<ネタバレあらすじ>
妻とも死別し、子供たちも自立したヘイスティングズ。
ポアロに呼ばれポアロと初めて出会った思い出の地であるスタイルズ荘を訪れる。
スタイルズ荘には様々な宿泊客の姿が。
そこにはヘイスティングズの愛娘も居た。
ポアロは病に倒れていた。今では薬なしでは生きていけないほどに。
ショックを受けるヘイスティングズ。
ポアロによれば「ここで殺人事件が行われようとしている」らしい。
犯人Xはこれまでに5件の殺人を行っているが罪に服することなく逃げ延びているとのことだった。
ヘイスティングズは輝かしい昔を思い出し、阻止するべく協力を申し出る。
数日は何事も無く済んだ。
起こったことと云えば些細な夫婦喧嘩や宿泊客同士のいがみ合いばかり。
そんな中、ヘイスティングズの愛娘に恋人がいることが判明。
恋人は宿泊客のひとり。
娘は恋人の名前を明らかにしない。
娘の様子からプレイボーイこそが娘の恋人だと判断したヘイスティングズ。
娘が弄ばれていると思い込み、スタイルズ荘滞在中に酒の席で耳にした方法で相手の殺害を企む。
決行当日、ポアロが部屋を訪れ話し込んでいるうちに眠り込んでしまうヘイスティングズ。
翌朝、目を醒ました彼からは衝動的な殺意は消えていた。
よくよく聞けば娘の恋人はヘイスティングズの考えていた人物とは全くの別人。それどころか誠実な人柄の男性だった。
「なぜ、弄ばれているなどと考え、殺意を抱いてしまったのか」過ぎてみれば誤ちとしか思えなかった。
一体、誰に吹き込まれたのだったか……ヘイスティングズが頭を悩ませていた所に殺人事件が発生。
被害者は自室のベッドの上で眉間をピストルで撃ち抜かれていた。
それを見て何かを感じるヘイスティングズ。
だが、それが何かはわからない。
ポアロは自殺と結論。
自殺ならば眉間ではなく、こめかみを撃ち抜くのでは―――ヘイスティングズは違和感を覚える。
数日後、犯人がわからないままに今度はポアロが死んでしまう。
持病による病死だった。
ただし、ポアロが服用していた常備薬が無くなっており、ヘイスティングズは前の事件と併せて同一犯による他殺を疑う。
しかし、結局犯人はわからずじまいだった。
こうして、自殺と病死としてスタイルズ荘の殺人事件は終了を迎えた。
さらに数日後、ヘイスティングズのもとへ一通の手紙が。
その手紙に書かれていたのは―――ポアロの告白。
今回のスタイルズ荘での殺人はポアロの犯行だった。
ポアロの病死は責任を取って自殺したものだったのだ。
ポアロが手にかけた人物こそ犯人X。
犯人Xの犯行方法は「自らが直接手を下すことなく第三者の憎悪を煽り殺人を犯させる」というもの。
それゆえにポアロでも告発することが出来なかった。
殺人を阻止するためにXを追いスタイルズ荘へと赴いたポアロ。
そこでもXは暗躍し、夫婦喧嘩や細かい諍いをあちこちで引き起こした。最後にはヘイスティングズに娘の恋人を誤認させた挙句、噂話に乗じて殺害方法を吹き込んだのだった。
それに気付いたポアロは、眠り薬を用いてヘイスティングズを落ち着かせることに。
こうしてあわやというところで阻止したのだった。
親友ヘイスティングズさえも被害に遭いかけたことにポアロは戦慄と共に激怒。
遂に自らの手でXを殺害することにより、これ以上の被害拡大を防ぐことを決意。実行に移したのだった。
ポアロは生前シンメトリーに強い興味を抱いていた。
すべてを悟ったヘイスティングズの脳裏にある光景がよみがえる。
銃口を中心としたシンメトリー(左右対称)―――が。
エンド。
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