同作者の前作「豪華客船エリス号の大冒険」についても触れています!!注意!!
<あらすじ>
●著者のことば
「100人の名前をおぼえる必要はありません!
6ページの登場人物表付! 親切設計!」 ――山口芳宏
大富豪の館でメイドとして働く妹に頼まれ、名探偵・西園寺とその館にかけつけた神尾は、奇妙な殺人事件に遭遇する。衆人環視下、謎の方法で館の主が殴り殺され、容疑者は、なんと100人! 館の主・高崎幸之助が開いたパーティに訪れていた客に加え、肉親もスタッフも誰もかれもが疑わしい!? しかも外界に通じる唯一の道である橋が爆破され、閉鎖空間内で次々事件が……。鬼才があなたに“本格ミステリ”の意味を問う、驚愕の最新作。
(東京創元社公式HPより)
<感想>
登場人物がなんと100名。
登場人物紹介だけで6ページ。
とはいえ、実際に本編に必要な人物は10人程度なので安心。
ストーリーやトリックは割とトンデモ系で複雑。
割り切れれば面白いかも。
したがって人を選ぶ。
真相よりも、ラスト付近で明かされる学生服探偵と義手探偵の登場により、実は「豪華客船エリス号の大冒険」と同じ世界の出来事とわかることにビックリ。
前作に馴染みがあれば「夜叉姫かよ!!」と驚くこと請け合い。
そういえば、前作ラストで夜叉姫の後継者逃走してましたもんね。
爆死した方は出て来なかったので前作で間違いなく「夜叉姫」の名跡は引き継がれているようです。
でも、前作知らなくても雰囲気が好きならば楽しめるかなと思います。
◆関連過去記事
・「雲上都市の大冒険」(山口芳宏著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
<ネタバレあらすじ>
とりあえず本筋に関わる人物だけ紹介。
高崎:館の主
高崎鮎子:高崎の妻
高崎博之:高崎一族のひとり・その1
高崎翔:高崎一族のひとり・その2
龍ヶ崎:館の執事
川島:招待客のひとり
西園寺:探偵
神尾智彦:結衣子の兄、西園寺と共に屋敷に赴く
神尾結衣子:高崎家に最近仕えたメイド
謎の少女:盲目の少女
こんなところかな……。
では、あらすじをば。
ちなみに相当端折ってるよ。
本編読んだ方がわかりやすいよ。
これ書いてる管理人自身がよく理解できていないよ。
それでもいいなら進んでね。
妹・結衣子よりSOSを受け取った兄・智彦。
結衣子は高崎家にてメイドをしており、叔母に紹介された名探偵・西園寺と共に館に赴くことに。
館では「ゴースト」と名乗る謎の人物により館の主人・高崎が「100人を招待するよう」脅迫されていた。
招待客100人を迎えた屋敷はてんやわんや。
そんな中、衆人環視の中で高崎が謎の鈍器により命を落とす。
次いで、外界との唯一の連絡手段である橋も爆破されてしまい、何者かにより龍ヶ崎、博之らが殺害されていく。
智彦は西園寺の出馬を願うが、西園寺自身が別の誰かと連絡を取り合う不審人物ぶりを発揮。
その間にも盲目の少女と出会ったり、覗き魔に悩まされたり、殺人の被害者が出続けたりと進展し、ついに結衣子が犯人に誘拐されてしまう。
別の誰かと連絡を取り合っていた西園寺だったが、その誰かは西園寺の双子の弟。安楽椅子探偵を気取る兄に比べ、行動派の弟こそが本当の名探偵・西園寺だったのだ。そして、その弟は犯人に気取られぬよう招待客に混ざって事前調査しており、結衣子誘拐に伴いついにその姿を現す。
本物の西園寺のアイデアで誘拐犯と対峙し、ついに倒すことに成功する。
2発の銃弾を浴びた誘拐犯こと殺人鬼は招待客のひとり、川島だった。
西園寺の推理(当事者は全員死亡しており真相は不明)によれば、高崎は財を成すまでに龍ヶ崎を使い邪魔者を消してきた。執事・龍ヶ崎は殺し屋だったのだ。
その過程で標的の娘だったと思われる盲目の少女(龍ヶ崎が失明させた?)を保護した高崎、龍ヶ崎。
高崎たちはいつの間にか情が湧き、少女に全財産を残そうと考えるようになる。
だが、それには高崎の妻・鮎子の存在がネックだ。
そこで鮎子殺害後、高崎自身が殺されることにより、遺産を信頼できる管財人の手に帰し、少女の養育をその人物に任せようと目論む。
そこで、博之を巻き込み鮎子と高崎殺害の秘策を授けた。
それが凍らせた肉塊を万国旗のワイヤーにぶら下げ振り子で高崎にぶつけるという大技だった。
暗闇の中、衆人環視の前で高崎に肉塊をぶつけ高崎が死亡すれば何者かによる殺害であることは明らかである。
そして、このトリックには細かな方向調整が必要であり、肉塊の上に乗りバランスを取れる人物が必要とされた。
それこそが博之。
事後、博之を口封じで殺害するよう、殺し屋として川島も雇い入れた。
川島が潜入し易いように100人集めることも忘れなかった。
これで事前に鮎子が死亡していれば、遺産もスムーズに受け渡される筈だった。
その後、痕跡の残る館ごと爆破しすべてを覆い隠す―――これが計画の全容。すべて高崎の計画だったのだ。
ところがここで思いも寄らぬ事態が発生。
鮎子と博之は愛人関係にあり、高崎のトリックを奪った博之が高崎のみを殺害したのだ。
コレに驚いた龍ヶ崎は対応に手間取るうちに川島に殺害されてしまい、後は川島がやりたい放題殺人(博之たち)を繰り返していたのだった。
覗き魔は翔だった。
館は当初の高崎の計画通り爆破されたものの、もしもを考えていた龍ヶ崎の手により回避方法を知った西園寺たちは無事。
こうして事件は解決を迎えた。
ここから後日談。
犯人・川島の消息は不明。
爆破に巻き込まれたかと思われたが遺体は見つからなかった。
後に学生服を着た美男子と義手の探偵が訪ねて来て「夜叉姫」について尋ねて帰って行ったと云う。
結衣子と智彦はといえば、結衣子の新しいバイト先について頭を悩ます毎日。どうも、次のバイト先は孤島の研究所になるらしい。また、何か事件が起こるかも―――エンド。
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