2010年05月15日

「氷菓」(米澤穂信著、角川書店刊)

「氷菓」(米澤穂信著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります!!注意!!

<あらすじ>

氷菓1

何事にも積極的に関わらない奉太郎が、姉の命令で入部させられた古典部で、部員の少女の叔父が関わった三十三年前に起きた事件の真相に迫る。省エネ少年と好奇心少女が繰り広げる青春ミステリー。
(角川書店公式HPより)


<感想>
古典部シリーズの一冊。
古典部は作品内時系列順に「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「遠まわりする雛」が刊行されている。
最新作は「ふたりの距離の概算」。

古典部シリーズは登場人物それぞれに起承転結の役目が振られているような気がする。
起・千反田(裏に姉がいる場合あり)
承・伊原(福部の場合あり)
転・姉や福部(伊原の場合あり)
結・折木
千反田が発端となり折木が出馬。伊原か福部が情報(推理の叩き台)を持ち込み折木が一応の推理を出す。後に伊原か福部が折木の推理を否定し、最終的に折木が結論に辿り着くといった感じ。

本作「氷菓」は記念すべき古典部シリーズ1作目。
主にキャラクターや舞台設定の説明にページが割かれているが読める読める、そのストーリーテリングは既に健在。
ラストの切なさは胸にくる。

<ネタバレあらすじ>
神山高校古典部―――そこには4人の部員が居る。
姉&千反田に頭があがらないモラトリアム主人公・折木奉太郎。
桁上がりの四名家(神山市内にある4つの旧名家のこと。苗字に十、百、千、万とつくことから里志が命名)の出身で好奇心の強いお嬢様・千反田える。
歩くデータベースにしてホームジストを自称する男・福部里志。
ダブルスタンダードながら正義を標榜する・伊原摩耶花。
全員一年生だ。

ここからは「起承転結」でネタバレあらすじをやってみる!!



問:何故、扉は締められたのか? 
答:用務員さんが必要としていたから。

問:何故、その本は借りられたのか? 
答:美術の授業で使うから。

問:何故、先輩は協力的ではなかったのか? 
答:喫煙しているのを知られたくなかったから。

このように抜群の推理力で一応の解決を示した奉太郎。

そんな中、千反田えるの叔父・関谷が外国旅行の最中消息を絶った。
関谷は神山高校を退学したOB。

えるは関谷のことをとても気にかけていた。
一方で神山高校には一部の者から禁忌とされる「カンヤ祭」という呼び名の文化祭があった。



奉太郎たちは関谷がなぜ退学したのかを調べることに。

過去、神山高校に学生運動が存在し、関谷がそのリーダーであったことを突き止める。
関谷が学生運動の先頭に立った英雄だった為に自ら退学することにしたのではと推理する一同。
文化祭に「カンヤ祭」と名付けられたのも関谷=カンヤで裏付けとなっていた。



一応の推理の帰結を見出した古典部一同。
そんな折、奉太郎に姉から電話が。
関谷の話をしてみるものの姉と話が合わない。
まさか―――何かに気付く奉太郎。



当時学生だった司書教諭・養子から16年前の真実を聞く一同。

学校に対する学生運動が盛り上がりを見せていた頃、調子に乗って校庭でキャンプファイヤーを行った学生たち。
思いのほか火の気が強く、建物に延焼してしまった。
流石にこれを処分なしとするわけにはいかず「犠牲の羊」として選ばれたのがリーダーとして祭り上げられていた関谷。
決して好んでリーダーをしていたわけではないが、結局、全責任を負い退学させられることに。

これで「カンヤ祭」という名称が一部の人間(真実を知る者)にとって禁忌である理由が明らかになった。

関谷は退学の際、「氷菓」という誌名に執着をみせていたらしい。

すぐに理由に気付く奉太郎。
他のメンバーは気付かない。その理由こそが関谷の最期のメッセージだった。

「氷菓って何のことだ?」
「氷菓子?」
「そう、じゃ、氷菓子を英語で言うと?」
はっとした様子の里志と摩耶花。えるだけは気付かない。
英語の成績の良いえるには逆に答えが見えにくくなっていたのだ。
「アイスクリームだよ」
えるにも理解できるよう奉太郎は文字を書く。
筆記体で書かれたそれは「Iscream」。
関谷は主張することを許されなかった―――だからこそ……。

エピローグ


えるは関谷の墓参りに向かう。
奉太郎はといえば古典部入りを勧めた姉に手紙を書いていた。
そこには、奉太郎の信念であるモラトリアム主義を揺るがす存在との出会いが古典部で待っていたことが書かれていた。
ひょっとして……姉はそこまで見越して……いや、それはないよな。
筆はそこで置かれていた―――エンド。

◆米澤穂信先生のその他の著作に対するレビューはこちら。
「インシテミル」(文藝春秋社)

「儚い羊たちの祝宴」(新潮社)

「追想五断章」(集英社)

[小市民シリーズ]
「夏期限定トロピカルパフェ事件」(東京創元社)

[古典部シリーズ]
「愚者のエンドロール」(角川書店)

「クドリャフカの順番」(角川書店)

「遠まわりする雛」(角川書店)

「ふたりの距離の概算」(角川書店)

『鏡には映らない』(米澤穂信著、角川書店刊『野生時代』2012年8月号 vol.105掲載)ネタバレ書評(レビュー)

「氷菓 (角川スニーカー文庫)」です!!
氷菓 (角川スニーカー文庫)



【関連する記事】
posted by 俺 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック